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posted:2022.9.30 from:新潟県三条市 genre:ものづくり
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〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
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writer profile
Hiroyo Yajima
矢島容代
やじま・ひろよ●フリーライター。岐阜県生まれ。大学卒業後に上京。東京ではフードを中心としたライターとして女性誌やカルチャー誌などで執筆。一度、日本を離れ、フランス、タイ、ドイツで生活したあと、2019年、日本海に面した新潟県村上市に移住。塩引鮭や村上牛、村上茶など、豊かな自然に囲まれながら、おいしい食文化を楽しむ日々。
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撮影:水野昭子
三条といえば、言わずと知れたものづくりのまち。
そしてその礎となっているのが「鍛冶」です。
鍛冶とは、金属を熱して打ち鍛え、刀や包丁、農具など、さまざまな道具をつくること。
その世界は奥深く、熟練の仕事によって生み出される品々は、まさに芸術品。
そんな三条の鍛冶の歴史や名工たちの仕事に触れられる〈鍛冶ミュージアム〉が、
図書館等複合施設〈まちやま〉内にオープンしたので、さっそく訪ねてみました。
突然ですが、鉄と鋼(はがね)の違いを知っていますか?
答えは、鉄に含まれる炭素量の違い。
炭素が少ないものを鉄(生鉄)、多いものを鋼といい、含有量が多いほど硬くなります。
職人は道具の特性に合わせて鉄や鋼を細かく使い分け、
抜群に使いやすい道具へと変貌させます。
意外と知らない鍛冶の世界。
そんな三条の鍛冶について気軽に触れられるミュージアムが誕生しました。
さまざまな資料や製品が展示されており、
道具が誕生するまでの背景を知ることができます。
「このミュージアムは鍛冶仕事の導入部的な役割を担っています。
ここで鍛冶の奥深さを知ってもらい、実際に製品を使いながら
その良さを実感してもらえたらと思っています」と話すのは、
学芸員でもある三条市生涯学習課の藤野哲寛さん。
たとえば、この美しい製品、何かわかりますか?
工具のようですが、実は爪切り。喰切(くいきり)とよばれる、
釘や針金を切断するための伝統工具を発展させたものだそうです。
1926年に喰切の製造から始まった三条の〈諏訪田製作所〉が、
一貫した手作業にこだわってつくっているこの爪切りは、
無駄のない美しいデザインもさることながら、一度使ったら手放せない切れ味が特徴。
プロのネイリストや医療従事者にも愛用者が多いそうです。
このほかにも調理道具や木工道具、山林道具など、
世界に誇る三条の鍛治文化を間近で見ることができます。
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ミュージアムは「常設展」に加え、
数か月に1度開催される「企画展」と
毎月内容が変わる「ミニ企画展」で構成されています。
取材時は、企画展として、砂鉄と炭から鉄や鋼をつくり出す
「たたら製鉄」をテーマにした展示が開催されていました。
たたら製鉄とは、古代から近世にかけて発達した製鉄法のこと。
大正時代に一度、終わりを迎えますが、数年前、島根県で再開。
その理由は、伝統技術の継承に加えて、鉄と鋼の質の高さにあるそうです。
本企画展では、実際にたたら製鉄の様子を映した映像や
昨年度に実施したたたら製鉄時の炉壁などとともに、
たたら製鉄について詳しく学ぶことができます。
そしてこの日のミニ企画展は、玄翁(げんのう)鍛冶で知られる三条の名工、
道心斎正行(どうしんさいまさつら)が手がけた、大工道具の展示でした。
玄翁とは、大工が鑿(のみ)を叩いたりするとき使う、
両端のとがっていない金鎚のこと。
下の写真は赤錆をまとわせた玄翁。
錆をつくるのが難しく、梅雨の時期しかつくれない希少なものだそう。
また鮎をモチーフにしたものなど、個性的なデザインが印象的な切出小刀は、
明治から昭和にかけて活躍した巨匠、
千代鶴是秀(ちよづるこれひで)が考案した伝統工具を
道心斎正行がこの企画展のために模作したもの。
完成度の高い仕上がりに、その道のプロたちも本物と見紛うほどだとか。
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鍛冶ミュージアムのある図書館等複合施設〈まちやま〉は、
2017年に閉校になった三条小学校の跡地につくられました。
広い敷地に無料の駐車場が完備されており、ここを拠点に散策も楽しめます。
ユニークなフォルムが目を引く建物の設計・デザインを手がけたのは、
建築家の隈研吾さん。既存の施設〈ステージえんがわ〉を生かしながら、
すべてが一体となるよう“山”をイメージしています。
施設内は木材に金属を組み合わせ、ものづくりのまちである三条らしいデザインに。
1階にはパリの和食店〈あい田〉がプロデュースするカフェ
〈ビブリオテックカフェ アイーダ〉、そしてステージえんがわ内には、
スパイス料理が味わえる〈三条スパイス研究所〉があり、
のんびり食事やお茶を楽しむこともできます。
また施設の近くには、和釘やペーパーナイフづくりなどを体験できる
〈三条鍛冶道場〉もあるので、ミュージアムで鍛冶について学んだあとは、
実際に挑戦してみるのもいいですね。
地域の人も県外から訪れた人も、いろいろな楽しみ方ができそうです。
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