滴生舎からつながる岩手の森のはなし
本州一の森林大国「岩手県」。森林面積1,174,000ha、
森林蓄積(森林の立木の幹の体積で木材として利用できる部分)220,000,000㎥。
ともに岩手県の森林資源をデータ化してみたものだが、
ここで示されるのは北海道に次ぐ森林大国としての姿だ。

浄法寺に広がる漆の林。漆を採集したら伐採し、再び若芽を萌芽させ、次の漆の採集に向けて育成する。
本州で最大の面積を持つ岩手県。
その広大な県土の中央には、北の大河、北上川が南北を貫き、
西側には奥羽山脈、東側に北上高地の山並みで占められている。
岩手県の森林資源の豊かさは、このふたつの山並みの広さと
深さに支えられているといっても過言ではないだろう。
飛行機に乗って眺めてみるとよくわかるのだが、
いわゆる「平地」と呼ばれる地域は、北上川に沿ってわずかに存在するだけで、
県土のほとんどは、人工林、天然林を含めた「山また山」である。
こうした背景から岩手県では、県産材の地産地消や木質バイオマスといった
森林資源の活用促進に熱心に取り組んでいる。
今回から、岩手県の森林資源の豊かさと、
木に関わる暮らしをプロデュースする人たちの活動をご紹介しよう。

初夏の森で行う漆掻きの作業。初夏に採れる漆は「初辺」と呼ばれ、拭き漆などで用いられる。
国産漆の産地「浄法寺」
岩手県二戸市浄法寺は浄法寺漆器の産地として知られる。
しかし、輪島や会津などの一般的な漆器の産地とは大きく性格が異なっている。
それは、ここ浄法寺が生漆の国内最大の生産地であることに深く関係している。
漆器はかつて、西洋から「japan」と呼ばれていたように日本を代表する伝統工芸だった。
この地位は現在においても変わりはなく、
蒔絵、沈金、螺鈿などの独自の技術を用いた漆芸の世界は
日本の美意識の核を担っていると言っても過言ではないだろう。
また、日常においても漆器は身近な存在だ。
過去はもちろんのことだが現在においても
漆塗りのお椀を珍しいと感じる日本人はほとんどいないことだろう。
こうした歴史ある手仕事だけに、しっかりとした伝統が守られていると思われがちだが、
現代の経済システムに乗らざるを得ない漆器製造の現場は、そう簡単なものではない。
まず、国内工場でつくられているものはある意味優良。
人件費の安い海外工場で製造されるものも少なくない。
また、国内生産であっても、木地が本来の木材ではなく、
プラスチックだったりすることもある。
さらに漆器が漆器たる所以となる漆については、
正直なところ、我々が一般的な暮らしのなかで触れることができる漆器に
国産漆で塗られたものを探すほうが難しい。
現在、国内で流通する生漆の約98%が中国やベトナム産。
国内産漆はある意味、貴重を通り越して幻とも言える存在に近い。
もちろん、外国産漆がすなわち悪と決めつけるつもりはないが、
日本の風土に育まれてきた国内産漆は、外国産に比べ、
より堅牢で美しい質感を持つとされる。
また、高価で貴重な国内産漆があるからこそ、
日本の漆器文化が守られるという側面もある。
たとえば、わざわざプラスチックの木地に高価な国産漆を塗る塗師が存在しないように、
貴重で美しい質感を生み出してくれる本物の漆があるからこそ、
木地段階から吟味を重ね、漆を何度も塗り重ねて
本物の漆器をつくるという世界が継承されるのだ。





























































































































