河津製材所からつながる、熊本の森のはなし
県土の6割を森林が占める熊本県。天然林が多いのは、天草地方だ。
海と山の景観が背中合わせに広がるこの一帯には
シイやクス、カシなどの広葉樹が生い茂る。
スギやヒノキといった人工林が多いのが阿蘇地方と球磨地方。
県全体で約15品種のスギが植えられ
建築用材や建具、家具材など、幅広く利用されている。
しかし、木材価格の長期低迷と高齢化により、林業の担い手は減少している。
人工林のうち多くを占める間伐対象林の間伐は、緊急課題のひとつだ。
さまざまな恩恵をもたらす森林を次世代へつなぐため
県では「県民参加の森林づくり」を掲げ、森林整備にあたってきた。
林業と木工業との前向きな連携もスタート。
学校や公共施設だけでなく一般住宅でも県産材を使った家づくりに注目が集まる。
また、子どもたちを対象とした木育イベントも盛んだ。

アヤスギやヤブクグリなど、木目がまっすぐでやわらかく、加工しやすいスギが植えられている。
小国杉を育む森
熊本県の北東部にある阿蘇郡南小国町は隣りあう小国町とともに
小国杉の産地として知られている。
阿蘇外輪山の麓に広がるこの一帯で人工造林が始まったのは江戸時代のこと。
以来、小国の林業は250年以上にわたって脈々と受け継がれているのだ。
標高400~800メートルの山間のまちは、九州にありながら夏も比較的涼しい寒冷地。
冬には氷点下になることもあり一面を雪が覆い尽くす日も多い。
さらに、年間を通じて降雨量が多いのも特徴だ。
こうした環境によりゆっくりと時間をかけて育つ小国杉は
堅木で色目が薄く、目の詰まった美しい木材となる。

伐採後、枝払いなどをした小国杉は山中で、4メートル丈のぶつ切りにする“玉切り”という作業を施され、市場へと運ばれる。

ギュッと目の詰まった小国杉。淡いピンクやオレンジ色の色目も特徴だ。
小国杉のやさしい色味を生かす〈Wood Blind〉
熊本県阿蘇郡南小国町の「河津製材所」。
小国杉の特徴を生かした伝統工法「浮造り(うづくり)加工」などを得意とし
壁やフローリングといった内装材を数多く手がけている。
冬の朝陽を受け、もうもうと蒸気を上げるのは
伐りだして間もない丸太だ。
風に乗り、ほのかな木の香りが漂ってくる。

山主から買い上げた木を丸太の状態で乾燥させ、さらに板にして4か月天然乾燥。ゆっくりと時間をかけて含水率を低くすることで、木が持つ風合いを残し、割れや変色を防ぐ。

13人の社員のなかには、傍らで農業をしている人も多く、田植え休暇なども。小国の暮らしに寄り添う製材所だ。
祖父の代から続く製材所を父とともに支えるのが専務の河津秀樹さん。
建築系の専門学校へ進学した河津さんは卒業後、
店舗デザインを手がける会社へ就職した。
「いずれは製材所を継がねばならないというのもわかっていましたが、
正直なところ、将来への不安もありました」
17年前、後継者として実家へ戻った河津さんはあらためて小国杉の魅力に気づき、
その風合いを生かした加工品を手がけるようになっていく。

河津製材所の3代目、河津秀樹さん。小国杉の特徴を生かした「マネできないもの」をつくりたいと語る。
代表的なプロダクトのひとつが〈Wood Blind〉。
節がなく、色合いのいい柾目の板を使った木製ブラインドだ。
「小国杉特有の淡いピンクやオレンジ色を生かした無垢のブラインドです。
無機質な空間にもぬくもりを添えてくれるので、都市圏の方にも好評です」
と、河津さん。
スラット式の横型とバーチカル式の縦型があり、公共施設や病院施設のほか、
戸建住宅やマンションなど一般消費者からのオーダーも多い。

スラット板を組んだブラインドは、完全オーダーメイド。窓サイズに応じた注文が可能だ。

地元の人たちの暮らしを包むやさしい光。小国町の庁舎には幅2メートルほどの大きな〈Wood Blind〉が掲げられている。