町家から流れる奈良発ラジオ 茶房やバーを併設する 「奈良オリエント館」

町家の情緒を残す、情報発信地。

町家を改装し、複合施設として生まれ変わった奈良オリエント館。
江戸末期より米問屋を営み今も米蔵、麦蔵が残る建物には、
地元FM放送局や茶房、バーなどの新たな機能がつくられています。

「ならどっどFM」は、奈良市で唯一のコミュニティFM局。
スタジオ横の「茶房 暖暖」から、放送の様子を見学することもできます。
「茶房 暖暖」では、美しい中庭を眺めながら、奈良の郷土料理が味わえます。
手づくりのわらびもちがおすすめ。

米蔵を活用した「らいぶ&ば〜 蔵武D」では、
奈良の地酒を楽しむことができるだけでなく、
定期的に開催されるライブも人気のひみつ。

施設の入り口には、地域情報誌や工芸品も並び、
地元の人たちによる情報発信の場にもなっています。
まちあるきの休憩にでも、ふらっと立ち寄ってみるのもおすすめです。

160年の伝統が今も残る 砂糖専門店「砂糖傳増尾商店」

からだに優しい自然の甘さ。

1854年創業の砂糖専門店、砂糖傳増尾商店。
およそ160年間、自然素材を用いてつくってきた
「御門米飴」がここの名物です。
店内では、水飴やこんぺいとうなどの試食ができ、
その優しい甘さに、思わず顔がほころびます。

かつてはお薬として献上されており、「阿米」という名前で
正倉院の目録におさめられていると言います。
御門米飴は、そのままお召し上がりいただいてももちろんおいしいですが、
料理や菓子作り、また、健康志向の高い方の甘味料として重宝されています。

ほかにも、こんぺいとうは、塩味や黒糖、ブルーベリー味など種類豊富で、
色もカラフルなため、おみやげとしても人気です。
ならまちのお散歩に疲れたら、ぜひ立ち寄って、
自然素材の甘さでひとやすみしてみてはいかがでしょうか。

約400年の歴史ある名餅菓子 「本家菊家」の御城之口餅

古都のおみやげに、歴史ある和菓子を。

16世紀から続く、奈良で最も古い和菓子屋さん「本家菊屋」。
店内に入って、天井を見上げると、さまざまな形状の木枠が。
これらはすべて、お店で使われていたお菓子の型だそうです。
そのひとつひとつに深い歴史を感じることができます。

本家菊屋名物の御城之口餅(おしろのくちもち)は、
400年前、豊臣秀長が兄の秀吉をお茶会でもてなすために
つくったのがはじまりだと言われています。
粒餡を餅で包み、きな粉をまぶしたひと口サイズの餅菓子は、
今でも多くの人々に愛され、奈良では知らない人はいないほど。

国産最上級の丹波大納言の小豆を使用し
餅米から餅をつくといったこだわりで、
柔らかく上品な甘さが口いっぱいに広がります。
古都が誇る歴史ある和菓子をおみやげにひとついかがですか。

古都の歴史を感じる宿 重厚美麗な「奈良ホテル」

老舗ホテルで贅沢なひとときを。

1909年に奈良公園の中に誕生した奈良ホテル。
大正、昭和、平成と続く100年の間に
さまざまな著名人が訪れ、その優雅な空間で
贅沢なひとときを過ごしてきました。

館内には、骨董品や著名人の写真が展示され、
宿泊客以外の人も、観賞目的に訪れるのだとか。
フロントに伸びる赤絨毯の大階段とシャンデリアは、
迎賓館時代を彷彿させるような存在感。
奈良ホテルが誇る撮影スポットでもあります。

また、メインダイニングルーム「三笠」では、朝食として、
奈良の郷土料理である「茶がゆ」がいただけます。
窓辺の席に座ると、運が良ければ、朝のお散歩中の鹿にも会えるかも。

ノスタルジックな空間で古都の歴史を感じ、
美しく広々とした庭園を散歩する、
そんな贅沢な時間を堪能できるのも、このホテルの魅力です。

季節の野菜を使った料理が味わえる 町家を改装した人気カフェ 「カナカナ」

素材のおいしさを生かしたヘルシーな料理。

行列の絶えないならまちの人気カフェ「カナカナ」。
一見、小さな看板がぽつんと立っているだけの古民家ですが、
町家づくりを生かした店内は、格子戸から差し込む日の光が美しく、
清潔な障子や畳など、至るところに古都の情趣を感じることができます。

ひとりでランチをする人も多く、気軽に入れるのが嬉しいところ。
心地良い音楽と周りのおしゃべりを聞いていると、
ついつい長居してしまいそうです。

看板メニューは、「カナカナごはん」。
種類豊富な小鉢料理が盛りつけられた和食ランチプレートです。
野菜中心のヘルシーで素朴なおかずは、多くの女性から支持されています。
素材のおいしさが生かされた丁寧な味つけも魅力のひとつ。

「趣味の似た人が集まれる場所をつくろう」と
12年前に夫婦でカフェをオープンされたオーナーの井岡さんは大の旅好き。
ご自身で執筆された本や、セレクトされた写真集、雑貨などが店内に並んでいます。
古いまち並みが残るならまちの雰囲気が詰まったカフェで、
ゆったりした時間を過ごしてみては?

レトロな空間でのんびりと ならまちの小さな町家カフェ 「よつばカフェ」

手づくりのお菓子や雑貨をどうぞ。

静かなまち並みにひっそりと佇むよつばカフェ。
築90年の民家である建物は、今もその時代の良さをとどめています。
コーヒーカップの絵が描かれた看板と、バス停のような案内板が目印。
靴を脱いで、小さな入り口から店に入れば、
おばあちゃんの家に訪れたときのようなほっこりする空間が広がっています。

こぢんまりとした店内には、扇風機やオルガンなどのレトロな調度品がたくさん。
その上には、手づくりの雑貨や本、漫画などがあちらこちらに並んでいます。
作家さんたちによる手づくり雑貨やアクセサリーは購入可で、
オーダーの待ち時間も退屈しません。

ドリンクには、よつばの手づくりクッキーつき。
店主のこだわりとユーモアが伝わってくる、嬉しいサービスです。
小さな縁側から吹き込む風を感じながら、
時間を忘れてくつろぐのもいいかもしれません。

直火で炊き上げられた 香ばしいおこげが自慢 創業50年の釜めし専門店「志津香」

旬の具材も味わえる、老舗の釜めし。

奈良国立博物館の目の前に店を構える釜めし専門店の老舗「志津香」。
店内には、おいしそうな釜めしの香りが広がります。
ランチタイムを過ぎても、行列の絶えない人気店です。

注文を受けてからひと釜ずつ直火で炊き上げるのは、
創業当初から変わらない、「志津香」ならではのこだわり。
そうして丁寧に炊かれた釜めしは、最後のひと粒まで楽しむのが通。
出汁のうまみが凝縮され、塩味の効いた香ばしいおこげは絶品です。

季節限定釜めしでは、春はしらす、秋は栗や松茸、
冬は牡蠣といった季節折々の具材が味わえます。
和の風情漂うお座敷で、具材とお米とのハーモニーをご賞味あれ。

明治時代にタイムスリップ! 伝統的な町家を再現した 「ならまち格子の家」

ならまちの歴史を感じる町家建築。

かつては商人が住んでいたという、伝統的な町家を
平成4年に再現建築した「ならまち格子の家」。
昭和30年代の建物では、薬・化粧品・タバコ屋などの商家として使われていました。

靴を脱いで部屋に上がると、まるでタイムスリップしたような気分に。
みせの間、中の間、奥の間、中庭、台所など、
明治期の町家の典型的様式を隅々まで見学できます。
離れには町家の資料が展示されているため、
ここでならまちの歴史を勉強してから、まちを散策するのがおすすめです。

ならまちには、今も同じ構造の町家で生活している方がたくさんいらっしゃいます。
昔ながらの暮らしを想像すると、また違った景色が見えるかもしれません。

ならまちのシンボル!? 猿を祀った小さなお堂「庚申堂」

人々の暮らしを見守る猿たち。

ならまちに根づいた庚申信仰の中心地、西新屋町にひっそりと建つ「庚申堂」。
地元の人からは「庚申さん」と呼ばれる小さなお堂には、
青面金剛(しょうめんこんごう)が祭祀されています。

このあたりのまちを歩くと目につくのは、軒先に吊るされた「身代り申」。
青面金剛の使いである猿を型どった魔除けのお守りだそうです。
背を丸くした赤い猿が大量に吊るされている光景は、このまちならでは。

お堂には、猿の石像や「見ざる」「言わざる」「聞かざる」の3匹の猿、
親子の猿などが祀られており、ならまちの人々の暮らしを見守っています。
ちなみに、「身代り申」のお守りは、近くの奈良町資料館で買うことができます。

「山を読む、二日間」後編

灯籠を介して、生まれるコミュニケーション

ひじおりの灯」のトークイベント「山を語る」(前編参照)終了後には、
今年は「山を描く」と題して、絵語り、夜語りが行われた。
この日は絵を描いた学生たちが来ていて、制作秘話を聞くことができる。
少しほろ酔いで歩くもよし、湯冷ましがてら歩くもよし。
浴衣に、下駄姿。温泉街を歩くお客さんの姿は肘折温泉の変わらない風景だが、
夏の「ひじおりの灯」開催中は、夜もちらほらと浴衣姿が見受けられる。
愉しげな明かりが通りを灯すから、少しだけそぞろ歩き。

灯籠に灯された、肘折温泉の共同浴場「上の湯(かみのゆ)」。

「ひじおりの灯」期間中は、夜になると、 肘折青年団も、
通称「くろ」と呼ばれる屋台カフェをオープンする。
冬に会った須藤絵里さんや、早坂隆一さん、早坂 新さんもお店を切り盛りしていた。
「『くろ』を見ると、今年もこの時期がやってきたなって思う。
みんながまとまって何かをするイベントのひとつになっています」と絵里さん。
「ひじおりの灯」が始まった当初は、
青年団が集まって話す機会なんてほとんどなかったのだという。
いくつかのきっかけがあったり、毎年「ひじおりの灯」を開催するごとに、
変化していった関係。少しずつ同年代の人との会話が増えていく。
いつのまにか、これを楽しみに来てくれる常連客に会うようになり、
青年団のみなで、毎年「くろ」を出店するようになった。

こちらが通称「くろ」。この日は、日本酒がお客さんたちに日本酒が振る舞われた。お盆に日本酒を持つのが隆一さん、奥にいるのが新さん。

制作について熱心に語る学生の隣で、滞在や制作をサポートした旅館やお店の方々も、
少し誇らしげだった。 まるで、我が子を褒めるようにあたたかく見守り、一緒に会話する。
灯籠絵をきっかけに、コミュニケーションが生まれる。
それも、この「ひじおりの灯」の面白さのひとつだ。

肘折温泉には、何度も来ているという浴衣姿のお客さんたちは、楽しそうに学生の話を聞いていた。

自然のままの森を、歩くということ

「ひじおりの灯」開催中に、開かれたイベント「山を読む、二日間」。
2日目に行われたのは、「山を歩く」。取材チームも参加することになったが、
カメラマンも私も登山初心者。
心配ばかりが募ったが、どんな風景に出会えるのかは楽しみでもあった。
イラストレーターで山伏の坂本大三郎さんを先達(道の案内人)に、
肘折温泉周辺の山へ登る。 まずは、肘折温泉のシンボル・開湯伝説を伝える「地蔵倉」へ。

肘折温泉の共同浴場「上の湯」脇にある石段を登り、
最初に「湯坐神社」と肘折の人々に親しまれている「薬師神社」にお参り。
そして、「地蔵倉」と書かれた看板の方向へ裏山を登っていく。
肘折温泉を訪れる湯治客の多くが訪れるというだけあり、歩きやすい山道だ。
途中で、何度も可愛らしいお地蔵さまに出会った。
「肘折温泉にはたくさんのお地蔵さまがいる」と言って、
東北芸術工科大学の学生が灯籠絵に描いていたのがよくわかる。

地蔵倉までの道を、まるで案内してくれているようにお地蔵さまがいた。

国道 458 号線を渡り、そしてまた山へと入っていく。
肘折温泉の集落を出て 20~30 分が過ぎたころ、
片側の崖に沿ってわずかにつくられた、せまい道が現れた。

崖に沿って少しスリリングな道を進み、松がたっている中央の角をまがると地蔵倉が見えてくる。

反対側は、肘折温泉の集落やそれらを囲む山々を見渡せる。
遠く連なる山々は美しく、目の前に広がる雄大な景色は日本とは思えない。
どうやって、こんな道ができたのだろう。
少しスリリングだけど、他にはない景色を見て、気分は壮快。
心地よい風に吹かれながら、この崖っぷちを歩いて行く。 そして「地蔵倉」に着いた。

地蔵倉のお地蔵さま。

岩壁に守られるように、石地蔵が反対側の山を望んで並び、
その奥には小さなお堂が据えられていた。
地蔵倉は、「縁結び」「子宝」「商売繁盛」の神さまとして崇められていて、
岩肌には、無数の五円玉が奉納されていた。
ここもまた、今までに見たことのない景色だった。

地蔵倉の景色。

一度、肘折温泉の集落へ戻り、続いて登る道が今回の「山を歩く」の本番だ。
ここからは、全員が参加。 参加者は、サポートスタッフを含め 20 名弱。
東北芸術工科大学の学生や、地元の若者など縁あって申し込みをした人たちだ。
番所峰を越え、霊泉とも言われている「今神温泉」を通り抜け、今熊山の山頂を目指す。
まずは、山への登り口「大蔵鉱山跡」までバスで向かった。

山を登り始めるときに、先頭では大三郎さんが、後方ではつたや肘折ホテルの柿崎雄一さんが法螺貝を吹いた。

大三郎さんを先頭に一列になって歩き、法螺貝が、周囲に鳴り響く。
平坦な砂利道から、少しずつ傾斜がかかっていく。
観光地化された登山道のような整備がされているわけではない、
地元の人や山に慣れた人が入っていくような道だ。
緑が深くなり、傾斜も急になっていく。すると、視界が開けた場所に出た。

ここで、大三郎さんが念仏を唱え、私たちも後に続いて、
配られたプリントに書かれた念仏を読みあげた。
あとで聞いたことだけれど、ここは地蔵倉の向かいの山。
山へ入るための、ご挨拶とも言える、念仏を唱えたのだという。

冬には3~4メートル以上の雪が積もるから、雪の重みで根元が少し曲がっている。

両脇に、木が迫ってくるうような細い山道をひたすら登る。
緑が近いから、古木に生える見たこともないコケが目に入ってくる。
少し息もあがってきた。不思議と風が抜ける場所に到着。最初の目的地、番所峰。
ここは昔、鉱山を守る役人が居た場所だったんだそう。
急傾斜が続いたので、先頭を歩いていた学生たちは、少ししんどそうだった。

ブナの森を歩いていく。

続いて、目の前に広がったのは、ブナの森。
ブナの森は、日本古来の原世林の姿とも言われている。
昭和の後半から急速に失われてしまい今では数えるほどになった風景。
このブナの森は、古から地元の人々が大切に守ってきたものだ。

道があるようでない、落ち葉でふかふかの地面を歩いていく。
どんぐりから芽吹いたであろう、小さな若木がたくさん生えていて、
時折地面を照らす木漏れ日がとってもきれい。
見たこともない光の重なりや、見たこともないかたちの植物に目を奪われながら、
自然と足取りも軽くなり、みなリズミカルに下りていく。
ここが豊かな森であることが、視覚からも触覚からも、身体から伝わってくる。

ブナの林で見つけた食べられるキノコ。ミルクのような液が出ることから「ちち茸」と呼ばれ、出汁がとてもおいしいのだそう。堀内さんが教えてくれた。

そして、道はブナ林から少しじめっとした湿地帯へ入っていく。
ごつごつした岩が現れ、コケがはりついている。
滑りやすいところや、飛び石を渡るときなどは、 サポート役として一緒に登ってくれている、
肘折青年団の早坂 新さんや、 山が好きで肘折に通っているという、
堀内 大(ひろし)さんが手を貸してくれる。 山の湧き水だろうか。触るととびきり冷たかった。

「森のなかに、ぼこっと大きな穴が空いていたりするでしょう。
ほとんどは、大木が倒れてしまって空いたものなんだけど、
山の世界では、“山の神が遊んでいる場所”って言われているんです。
だから、通るときは遊んでいる神様を驚かせないように、
咳払いをしてから通るんだよって、僕は教えてもらいました」
と、ときたま大三郎さんが教えてくれると、
何気ない山の風景がどこか違ったものに見えてきて面白い。

今神温泉の入り口。

湿地帯を抜けて 12 時を回った頃に、到着したのは「今神温泉」。
ここは、長期滞在のみを受け付ける湯治専門の温泉で、 724 年の開湯という歴史を持ち、
別名「念仏温泉」とも言われているそう。
私たちはご主人にご挨拶をして、お水をいただき、昼食をとった。

次に目指すのは、「御池」を見られるという今熊山の頂上。
今熊山にも、かつては山伏がいたと言われている。
想像以上の急傾斜をロープをつたいながら、登っていく。
先頭でへばっていた女子学生たちは、いつのまにか足取り軽く、山をかけあがっている。

イタヤカエデの木。

途中、肘折こけしの材料として使われていたという「イタヤカエデ」があり、
前日のトークイベントを思い出した。
こんな風に木地師たちは、山をかけのぼっていたのだろうか。
そして、山頂らしき、視界がひらけた場所に着き、 御池が見え、参加者から歓声があがる。

今熊山から御池を見る。

水面が鏡面のように美しかった。
御池は、日照りの時も大雨の時も水量が変わらないと言われる、不思議な池。
龍神さまが住むと言われ、地元の人に信仰されているのだそうだ。
今熊野神社のご神体と言われる今熊山の山頂には、 祠があり、
そこでもまた大三郎さんに続き、念仏を唱える。 そして、もときた道を下山。
5時間におよぶ「山を登る」プログラムは終了した。
帰りは、バスで肘折温泉へ戻った。 肘折温泉のある大蔵村から、
山を越えて戸沢村に来ていたようだ。

中央のふたりが、今回私たちの登山をサポートしてくれた堀内さん(左) と新さん(右)。手前の4人は、山形市から参加してきたみなさん。

山を登り終えたわたしたちは、少しだけ、感想を言い合った。
「今回登った道は、かつては銅の番人がいたり、山伏が修験をしていたりと、
山ごとにあった文化を感じられる道でした。 みなが今までに
歩いたことのないような道だったんじゃないかと思います」 と大三郎さんが教えてくれた。
山を歩いているときは、そのままを感じてほしいと、あまり説明はなかったのだ。

最初かなりしんどそうにしていた東北芸工大の女子学生が、興味深い感想を言っていた。
「最初は辛かったんですが、最後は山と身体が馴染んできました。
同じ傾斜でもコンクリートの階段を登るよりも、
地面に生えている草につかまりながら登る山のほうが疲れないのかもと思いました」

傾斜に合わせて身体を使っていく。
そして、森の音に耳をすませ、目をこらし、感覚を研ぎすます。
「いまの日常ではあまり使わない想像力が膨らむ経験でした」という感想も。
それは、都会で塞いでしまっている、
身体の感覚を解放していくような効果もあるのかもしれない。

「自分たちが見ているもののなかから、こぼれ落ちてしまっている情報が
山には残っているんだと思う。そこにある時間の蓄積を読むことで、
もっと文化を立体的に捉えられるようになるんじゃないかなと思います」
と、最後に大三郎さんが話してくれた。

実は、この「山を登る」プログラムを実行するためには、
肘折の青年団が一度登ってコースを確認したり(こちらに詳しく)、
戸沢村の方々の協力があったりして実現したことだったという。
手つかずの森に初心者が入るとなれば、いくつかの準備も必要となる。
しかし、そんなふうに、毎年「ひじおりの灯」が行われることで、
地元のみんなで新しい試みにチャンレジンする機会にもなっている。
特に今回は「この土地の根源的な文化に触れられるテーマだった」と、
共同企画者、東北芸工大の宮本武典先生。
今回のプログラムで、新たな試みを動かしつつあるようだ。
「大三郎さんが肘折に来たことで、この土地と“山”との関係を見つめ直しました。
今後も『肘学―山行』として、季節やコースを変えながら、
周辺の山々をめぐる企画を考えています」とつたや肘折ホテルの柿崎雄一さんは話す。

1日目に行われた「山を語る」で聞いていたことが、
実際に山を歩くことで、体感できた今回の「山を読む、二日間」。
実はあまり、山に馴染みがないという地元の若い人たちや、
東北芸工大の学生たちにとって、山が身近な存在になったはず。
素朴で昔ながらの山道が教えてくれることは、まだまだたくさんありそうだ。

information

肘折温泉

住所 山形県最上郡大蔵村南山
http://hijiori.jp/

心が落ち着く美しさ「高浜海水浴場」

五島列島随一の美しさと人気を誇る海水浴場。

展望所に上って視界が開けたとき、
その場にいた人たちの歓声とも、ため息ともつかない声が一斉に漏れました。
島の人たちが自慢げに教えてくれる場所だけあるなあ、
というのが高浜海水浴場を見たときの第一印象。
沖縄のようにいかにも南国といった感じの底抜けに明るい海というより、
眺めていると心が落ち着くような美しさ。
魚籃観音展望所は、高浜海水浴場を見渡すことのできる絶好のスポットです。
魚籃観音とは、三十三観音に数えられる観音菩薩のひとつで、
漁業や海を守る仏様のこと。展望所からまさに海を見守るようにして立っています。
緩やかなカーブを描く砂浜を取り囲むようにして山々が連なり、
木々の深い緑と白銀色の砂、そして海の青のグラデーションが、
豊かな風景を作り出しています。

展望所を下りて海水浴場に立ってみると、海の広さを体感できます。
夏は特に、この海水浴場を目当てに島外から来る人も少なくないようで、
遠浅であるため家族連れにも人気です。
西の沖には嵯峨島が浮かび、海を赤く染めながら夕日が落ちていく様子も幻想的です。
環境庁の日本の海水浴場100選に選ばれているのも、納得の美しさ。
海水浴シーズンでなくても、おすすめしたいスポットです。

information


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高浜海水浴場

住所 五島市三井楽町貝津1054-1
遊泳期間 7月14日~8月26日
シャワー 200円

居間のようにくつろぎたい 「ソトノマ/外の間」

いつも賑やかで楽しいコミュニティカフェ。

ソトノマは、漢字で書くと「外の間」。
居間や茶の間が、家の外にあるような感覚で利用してほしいという思いのこもった、
ステキなネーミングです。

夕暮れどき、晩ご飯を食べるにはまだちょっと早い時間帯にソトノマを訪れると、
遊んでいる子どもや、おしゃべりをしている大人、子守をしている人、
小腹がすいたのか軽めのご飯を食べている人などが、
我が家の居間のように思い思いにくつろいでいました。
「ねえねえ、どこから来たの? 私は毎日ここに来てるんだよ!」
とオシャマな女の子に話しかけられたり、
「賑やかでごめんなさいね」と片付けをする女性に言われてみたり。
もはや誰と誰が親子で、誰がスタッフで誰がお客さんなのかも、よくわからない状況……。
だけど常連の人ばかりのコミュニティに入っていくときの、
気おくれする感じも不思議とありません。
人が出たり入ったりする大家族の居間って、きっとこんな感じなのかなあ、
そう思わせるような飾らない温かい雰囲気が印象的です。

小さな常連さん・近所の小学校に通う、るかちゃんが見せてくれたソトノマへのメッセージ。

お腹をすかせた地元の青年。カメラを向けるとおどけた顔。

ソトノマがオープンしたのは、2013年2月。
できてまだ1年も経っていないのに、これほど地域になじんでいることに驚いてしまいます。
2011年、有川智子さんはだんなさんと2歳の息子さん、
そして育児を手伝ってくれていた実のお母さんとともに、大阪から福江島に移住してきました。
母の和子さんはもともと福江島の出身で、
智子さんも小学校まで島で過ごしています。
なので右も左も分からない土地ではなかったものの、
移住を反対したのは意外にも島の親戚や知人などでした。
彼らからすると、都会でちゃんとした職を得て暮らしているのに、
なぜそれを捨ててまで、仕事もなく人口も減り続けている島に来る必要があるのか、
理解に苦しむところだったのです。

思わぬかたちで出鼻をくじかれてしまったものの、
無事に移住を果たして1年半後にソトノマをオープン。
自分たちのほかにも、震災後に移住してきた人が多いこともわかり、
こうした人たちが今ではソトノマのスタッフとしても働いています。

ソトノマがどんな空間なのか、もう少し詳しく説明しておきましょう。
畳になっているくつろぎスペースの本棚には、漫画や本がズラリ。
本当に居間感覚で何時間もダラダラしてしまいそうです(そして、それを許してくれそうな雰囲気!)。
壁面には子どもたちが描いた塗り絵の力作が飾られ、
五島うどんなどの特産品や地元で取れた野菜なども売られています。

さらに五島在住の作家さんの手作りアクセサリーや雑貨などの販売コーナーも。
現在、お店を取り仕切っている母の和子さんは、厨房担当でもあります。
人気の「ソトノマ日替わりごはん」は650円という安さで、
大満足のボリューム(14時以降は700円)。
野菜をはじめとする食材の多くは五島産で、バランスの取れたメニューになっています。

ソトノマ日替わりごはん。

優しい甘さのシフォンケーキセット。

日が暮れてご飯どきになると、惣菜を買い求めに来る人や、
カウンターでおつまみと一緒に一杯楽しむ人、おしゃべりをしに来る人など、
さまざまな人が出たり入ったり。泣いている子どもがいれば、
親以外の大人もみんなで面倒をみたり。
“地域の居間”ができたことで、島の人たちの日常にも新たな楽しみが生まれています。

ソトノマでは地元の写真家による写真講座や、
椿油でのマッサージ体験などさまざまなイベントも企画しています。
地域の居間でできること、やりたいことは、まだまだたくさんありそうです。

information


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ソトノマ/外の間

住所 長崎県五島市堤町1348-1
TEL 0959-88-9081
営業時間 9:00~21:00
定休日 火曜日
http://sotonoma.wix.com/home

周辺のひなびた雰囲気がたまらない 「荒川足湯温泉」

日本最西端の温泉地で、ゆったり足湯に浸かる。

高浜海水浴場から南へ5kmほど離れたところにある玉之浦町の荒川温泉は、
安政3年(1856年)に発見された、日本で最も西にある温泉地です。
古くは湯治客で賑わっていたそうですが、現在は海沿いのひなびた集落といった風情で、
一歩路地を入ると食堂やスナックなど、
まるで映画のセットのような味のある建物が軒を連ねています。
2010年にオープンした県道沿いにある足湯は、
古くなったバスの待合所をリニューアルしたもの。
今でもバス停としての機能も果たしており、
足湯スペースと待合所スペースに分かれています。

路地を散策していると、地元の人に会いました。
世間話になって今から足湯に行くことを伝えると、
「もう時間が過ぎちゃってるけど、私が閉める係だからゆっくり入っておいで」とのこと。
散策に夢中になって閉館時間の17時を過ぎてしまっていたことに、
そのとき初めて気がついたのですが、
この大らかさがなんとも言えずありがたく、そして心地よくもありました。
荒川温泉の源泉は、60~70度の弱食塩泉。足湯は加水して40度前後に冷ましており、
歩き回った疲れをほどよく癒してくれます。
バス停を改装しただけあってこじんまりとしたスペースで、
知らない人とでもすぐに会話が弾みそうです。
「どう、気持ちよかった?」
足湯からあがる頃、先ほど立ち話をした地元の人がちょうどよいタイミングでやって来ました。
地元の人が守り続けてきた温泉地ならではの、
アットホームな雰囲気がそこにはあります。

information


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荒川温泉足湯

住所 長崎県五島市玉之浦町荒川
営業時間 9:00~17:00 
無休 無料

福江島唯一の本格焼酎醸造所 「五島列島酒造」

五島産の原料で、ここでしか生まれない味を作る。

福江島で唯一の焼酎醸造所である五島列島酒造は、
遣唐使船の最後の寄港地として知られる三井楽町にあります。
2009年に創業した新しい醸造所ですが、平成24年福岡国税局管内酒類鑑評会で、
麦焼酎「五島麦」が出品143銘柄のうち1位に相当する大賞を受賞。
いまや島を代表する特産品となっています。
福江島は五島列島のほかの島々と比べて平坦で、田畑が多いところ。
せっかく島内で米も麦もサツマイモも作っているのだから、焼酎を造らない手はない、
ということで焼酎造りが始まったそうです。
社長であり、杜氏でもある谷川友和さんが、
蔵を案内しながら焼酎の醸造工程を説明してくれました。

杜氏の谷川友和さん。

まず、蒸した麦や米に麹菌を加えて麹を作ります。
最初に行うこの麹作りは、できあがりの味を左右する最も重要な工程のひとつ。
原料自体のできも毎年微妙に異なるので、
それを踏まえたうえで一定の味の焼酎を醸造できるかどうかが、
杜氏の腕の見せどころなのだと谷川さんは言います。

次に酵母を増殖させる一次しこみ、
そこでできたもろみに芋と麦を混ぜ合わせて加え、二次しこみを経て蒸留。
もろみを蒸留器で沸騰させて、発生する水蒸気を冷やしたものが、焼酎の原酒になります。
蔵の奥にどっしりと鎮座している蒸留器は、ウイスキーのポットスチルと同じように、
タンクの上部から突き出たパイプが、途中で折れ曲がっている独特の構造をしています。
このパイプの形状が、味と香りのバランスの決め手となるのだそう。
さらに原酒をろ過して2年間熟成させることで、ようやく商品として出荷されます。
「麹は生き物と一緒なので、毎日の温度管理が大切。
麹作りの時期に台風が来て停電して、機械が動かなくなってしまったため温度管理ができず、
麦の麹を泣く泣く全部捨てたこともあります」と谷川さん。
そんな苦労を経て昨年大賞を受賞できたことは、さぞかし励みになったはず。

もともとレストラン関係の仕事をしていた谷川さんは、
熊本で酒造りの修業をして、その面白さと奥深さにどっぷりのめり込んでしまったそう。
以前は飲まなかった焼酎も、
今では大好きどころか、お酒の話をするだけで自然と頬が緩んでしまいます。
「居酒屋なんかで、自分が造った焼酎をおいしそうに飲んでいる人を見かけると、
本当にうれしいですね」
五島列島酒造の焼酎は、五島で育てられた大麦を100%使用した麦焼酎「五島麦」と、
五島の特産「かんころ餅」の原料となる高系14号という品種のサツマイモを
100%使用した芋焼酎「五島芋」の2種類。
どちらも五島産の原料のみで造っています。
通常のサイズは720mlですが、島内限定商品として
900mlのボトルを同じ値段で買うこともできます。(メイン写真は900ml)

美しいボトルの芋焼酎「五島芋」は1470円、麦焼酎「五島麦」は1298円。ともに720ml。

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五島列島酒造

住所 長崎県五島市三井楽町濱ノ畔3158
TEL 0959-84-3300
営業時間 9:00~18:00
休日 日曜・祝日
蔵見学は要予約
http://www.gotoretto.jp

島民にも 観光客にも人気の割烹 「心誠」

魚も肉も、五島のグルメを堪能するならまずここへ。

五島に来たからには、やっぱり新鮮な魚が食べたい!
だけど五島牛や五島うどんも捨てがたい……。
そんな食に対して貪欲な人におすすめなのが「心誠」です。
五島市役所からほど近い、まちの中心部にあるのでアクセスも便利。
テーブル席やカウンター、お座敷などがあって、居酒屋のような雰囲気なのですが、
行ってみて驚くのがその豊富なメニュー。
ランチタイムは定食や釜飯、丼ものなどが中心で、
夜になると、定食のほかに刺身料理や活造り、焼き物、
そして五島牛をはじめとする肉料理などの一品料理や、コース料理などもあります。

新鮮なお魚をたっぷり食べたいという人には、海鮮ちらし丼がおすすめです。
マグロ、サーモン、タコ、イカ、ホタテ、アナゴ、イクラ、キビナゴなどなど、
これでもかというくらい海鮮がこんもり盛られた贅沢な一品。
どれも新鮮で、おいしいのは言うまでもありません。

そして、見た目も豪勢で遊び心たっぷりなのが、心誠名物「びっくり弁当」。
30cmもありそうな巨大な器のフタを開けると、
刺し身や天ぷら、焼き魚、煮物など、
五島の新鮮な食材を使った料理がぎっしりと詰まっています。
かなりボリュームがありますが、
いろんなものを少しずつ食べたいという食いしん坊にはぴったりです。

この店イチオシの人気メニューは、釜飯です。
五目釜飯やウニ釜飯、タコ釜飯、五島美豚釜飯、
さらにはドリア釜飯といった変わり種まで、その数20種類以上。
お米は五島産ヒノヒカリを使用していて、ひと釜ずつ直火で炊いているので、
ふっくら熱々の炊きたてを食べることができます。

魚じゃなくて肉が食べたいという人は、ぜひ五島牛のハンバーグ定食を。
潮風のミネラル分をたっぷり含んだ牧草を食べて育った五島牛は、
流通が少ないため「幻の肉」とも称されるほど。
そんな貴重なお肉をハンバーグで食べるなんて、贅沢なことこの上ない感じですが、
これもやっぱり五島に来たからこそ味わえる料理といえるでしょう。

昼も夜も使えるうえに、メニューも豊富なので食べたいものがみんなバラバラ、
なんてときも重宝するお店です。

新鮮な海の幸を堪能できる「海鮮ちらし」丼2000円。五島名物キビナゴが光ってます!

まずそのデカさにびっくり、フタを開けて豪華な中身にびっくりする「びっくり弁当」1500円。

種類が多くて人気の釜飯。写真は「五目海鮮釜飯」1800円。

五島牛を使った「ハンバーグ定食」850円。濃厚なデミグラスソースが美味。

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心誠

住所 長崎県五島市福江町10-5
TEL 0959-74-3552
営業時間 11:00~14:00/17:00~22:00
不定休
http://www.shinsei.asia

大自然に抱かれたリゾート 「五島コンカナ王国」

癒やしとくつろぎの王国の世界へ。

鬼岳のふもとにある五島コンカナ王国は、広大な敷地を持つリゾートホテルです。
南国ムード溢れる敷地内には、コテージやレストラン、温泉、プール、エステルーム、
陶芸館などが点在しています。
お部屋のタイプは、リッチな雰囲気を楽しめるデラックスツインと、
ベッドルームと和室を兼ね備えた和洋室、シンプルで落ち着いた内装の洋室、
そして木の温もりが心地よいログハウスコテージの4タイプがあります。

デラックスツインのお部屋は1泊朝食付きで、22500円から。

露天風呂や大浴場、打たせ湯などさまざまなお風呂のなかでも特におすすめなのが、
鬼岳温泉の天然の湯を堪能できる露天風呂。
鉄分を含む湯は褐色に濁っていて、美肌効果が期待できるそう。
昼間は抜けるような青い空を、
そして夜は満点の星を眺めながら入る露天風呂は格別です。
温泉は日帰り入浴することもできます。

完全予約制のエステルーム「ル・カメリア」では、
五島の特産である椿オイルを使ったエステを体験できます。
椿オイルは天然植物油のなかでも、人の皮脂成分に最も近いオイルといわれています。
保湿力が高く蒸発しにくいので、しっとり感を長時間キープできます。

王国に隣接する五島コンカナファームでは、6年ほど前からぶどうを栽培していて、
五島で唯一、オリジナルのワインを作っています。
風土的にもぶどうの栽培に適していることから始めたそうで、
現在、ワインの製造自体は島外で行っているものの、
来年からは栽培、収穫、そしてワインにするところまで、
すべてここで行うことになっています。
五島のぶどうで作ったスパークリングワイン「キャンベル・アーリー」は、
「レストラン カウベル」で味わうことができるほか、王国内で販売もしています。
レストラン カウベルは、
五島牛や五島コンカナ王国農園で栽培している新鮮な野菜などが自慢。
「和食処ばらもん」では、五島灘でとれた新鮮な魚介類を中心に、
五島ならではの食材を使ったメニューを楽しめます。
手作りの五島紺加那(こんかな)焼の器も、料理を美しく演出してくれます。
王国内にある陶芸館では、五島紺加那焼の手びねりや絵付けなどの陶芸体験もできます。

五島のぶどうで作ったスパークリングワイン「キャンベル・アーリー」

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五島コンカナ王国

住所 長崎県五島市上大津町2413
TEL 0959-72-1348
1泊朝食付き 8400円~、1泊2食付き 12600円~、素泊まり 1部屋 126000円~
http://www.conkana.jp

島のパワースポット 「鬼岳」「五島椿森林公園」

お山のてっぺんで、しばし日常を忘れましょう。

お椀をひっくり返したようにかたちのよい、鮮やかな緑の丘陵は、
遠くから見ても目立つ福江島のシンボル。
鬼岳というちょっといかつい名前とは裏腹に、
憩いの場所であり、パワースポットとしても知られています。
福江島の南東に突き出たかたちになっている鬼岳火山群は、
鬼岳、火ノ岳、城岳、箕岳、臼岳という5つの火山でかたち成されています。
そのなかで最も高い鬼岳の標高は、315m。
全面が芝生に覆われているので、頂上まで歩くのもとっても楽。
なだらかになっている頂上からは、島の絶景をぐるりと眺めることができます。

頂上めざしてゆるやかな山道を登ります。ちょっとしたピクニック気分!

火口からは、火山の爆発の際に小さなマグマが固結した
「ペレーの涙」というガラス質の粒が産出され、県の天然記念物に指定されています。
ハワイでよく見られる火山涙で、ペレーというのはハワイに伝わる火山の女神の名前。
日本では鬼岳をはじめ、ごく一部の火山でしか見ることができないそうです。
そんな鬼岳の頂上は、海から吹いてくる風が心地よく、
ベンチに座って何時間でもぼーっとしていられそう。
パワースポットといわれるだけあり、
そこに佇んでいるだけで清々しい気持ちになれる空間です。
鬼岳が芝生で覆われているのは、3年に1度、野焼きを行っているから。
野焼きとは、新しい草がよく生えるように枯れ草に火をつけて焼くことで、
焼かれた直後の山肌は真っ黒になってしまいますが、
すぐに新しい緑を取り戻して美しい山容に変わります。

鬼岳頂上から五島市のまち並みを臨む。

鬼岳の中腹にある五島椿森林公園は、世界でも十数か所しか認定されていない、
国際優秀椿園に2010年に認定されています。
6ヘクタールの敷地に植えられている椿は、約275品種、3000本。
椿の種類がこんなに多いことに驚きですが、なかには珍しい品種もあり、
花の咲く冬季はその姿をひと目見ようと多くの人が訪れます。
公園内にはアスレチック遊具のほか、芝スキーなどもあり、自然を満喫することができます。

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鬼岳

長崎県五島市上大津町

キリシタン復活のシンボル「堂崎教会」

海辺にひっそりと立つ、宣教の拠点となった教会。

長崎県に130ほどある教会のうち、五島列島には50あまりの教会が点在しています。
国内のみならず海外からも多くの人が訪れるこの「カトリック教会群」は、
世界遺産登録を目指しています。
福江島で教会巡りをするならぜひとも訪れたいのが、堂崎教会。
福江港から緑豊かな風景を眺めながら、車で北上すること約20分、
奥浦湾の先端に位置しています。
教会の数十m手前にある駐車場に車を止めて外に出ると、
砂が透けて見えるほどの美しい海に、思わずうっとり。
入り江になっているので波がなくてとても静かで、のどかさが一層際立ちます。
穏やかな海を横目に見ながら歩いて行くと、
レンガ造りの教会が海を見つめるようにしてそびえていました。

教会と向き合うかたちで立っているのは、
この地に最初に聖堂を建てたマルマン神父と、
のちに現在の赤レンガの教会を建てたペルー神父の銅像。
さらにその傍らには、十字架にはりつけにされた日本人男性の像があります。
この男性はヨハネ五島といって、
1597年に大阪で捕らえられて豊臣秀吉の命令によって長崎で処刑された、
26人のカトリック信者のうちのひとり。五島生まれの19歳の青年でした。

ヨハネ五島を記念して1879年に創建された堂崎教会は、
1873年の禁教令解禁後、五島に初めて建てられた自由の象徴といえる教会で、
必然的に宣教の拠点となっていきます。
ちなみに現在のレンガ造りになったのは1908年のことで、
五島初めての洋風建造物だったそうです。
島の教会の多くがそうであるように靴を脱いで中へ入ると、
キリシタン資料館になっています。
布教から長くつらい迫害の時代を経て、
復活に至るまでの貴重な資料は200点余り。
弾圧の時代に信仰の対象にされていた、マリア観音と呼ばれる観音菩薩像をはじめ、
宗教画やロザリオなども、どこか和の雰囲気が漂っていて、
この地でひっそりと、しかし確実にキリスト教が育まれていたことを感じさせてくれます。

資料にばかり目が行きがちですが、ゴシック様式の教会の内装も必見です。
五島のシンボル、椿の花をイメージしたと思われるカラフルなステンドグラスは、
素朴でとてもかわいらしく、郷土を愛する気持ちが伝わってきます。
そしてシンプルな造りの内陣には、ヨハネ五島の聖骨が安置されています。
ここでは第1日曜日の早朝のみミサが行われていて、
今も変わらず地元の人々のよりどころになっています。

再び外に出ると、教会の先には草原とキラキラ輝く海が広がっていました。
こんなにのどかで平和な場所に弾圧に苦しむ人がいたという事実は、
にわかに信じにくいものです。
しかしここで起こった歴史を忘れないためにも、
この教会がキリシタン復活のシンボル的存在としてあり続けているのでしょう。

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堂崎教会

住所 長崎県五島市奥浦町2015
TEL 0959-73-0705
開館時間 9:00~17:00(11月11日~3月20日は16:00閉館)
休日 年末年始
拝観料 一般300円 中高生150円 小学生100円 ※20名以上団体割引あり

椿油を作り続けて八十余年 「今村製油所」

昔ながらの製法にこだわった上質な椿油が人気。

「東の大島、西の五島」というフレーズにピンと来るのは、なかなかの通ではないでしょうか。
伊豆大島と五島列島、遠く離れたこのふたつの地域は、
日本有数の椿の自生地として知られています。
椿は冬の寒々しい景色を彩る、可憐な真紅の花。
花が落ちたあとにできる実から種を取り出して、双方の地では古くから椿油が作られてきました。
椿油は食用や女性の髪結などに使われ、昭和30年頃まで五島の椿油の生産量は、
全国生産量の3分の1を占めていたそうです。
最盛期は、島内の集落ごとに製油所がありましたが、製造に手間がかかったり、
代わりとなる安価な油がたくさん出回るようになってきたことなどから次第に減少。
現在、下五島には4軒の製油所を残すのみとなってしまいました。

そのなかでも今村製油所は、昔ながらの製法を唯一守っているところ。
二代目の今村光次さんと奥様の紀子さん、息子の光博さんの3人で工房を切り盛りしています。

終始にこやかな表情で話しをしてくださった、今村光次さん。

固くつややかな椿の種。

椿の種は、朝顔の種を直径1cmほどに大きくしたかたちで、
ゴルフボール大の実の中に、4〜6粒ほど入っています。
搾油作業は、乾燥させて選別した種を細かく粉塵するところから始まります。
粉状になった種を、その日の天候や湿度などを考慮しながら蒸して、
熱が冷めないうちに玉締め機という機械に詰め込んで、
ゆっくりと圧力をかけて油をしぼります。
今村製油所の最大の特徴が、この「玉締め式」と呼ばれる伝統的な方法。
玉締め式は余分なものを抽出しない搾油方法といわれ、しかも使うのは一番しぼりのみ。
1kgの種からできる椿油は、たったの300mlほどだそうです。
このことからも、いかに品質にこだわっているかがわかるはず。
最後に、搾油した椿油を紙だけを使ってろ過して、不純物を取り除きます。
こうしてようやく、オリーブオイルのように薄く緑がかり、ナッツのように香ばしく、
ふんわり甘い香りのする椿油ができあがります。

化学薬品や添加物を一切使用していない「純つばき油」は、全国にファンを持つ人気商品。
肌や髪だけでなく、料理にも使うことができます。
一般的な調理油と比べると決して安くはないので、
料理に使うのは少々もったいないような気もしますが、
椿油の主成分であるオレイン酸は酸化しにくいので、長く使うことができるのも魅力です。
昔は工房の横に自宅が隣接していたため、
子どもの頃から手伝いに借り出されていたという今村さん。
「家から逃げようとしたら、すぐに見つかってしまいますからね(笑)。
夏休みも近くの海にたまに泳ぎに行くくらいで、それ以外は毎日手伝いをしていました」
工房の中にある機械は、年季の入ったものばかり。
修理も余程のことがない限り、自分で全部やってしまいます。
季節の変わり目だったこの日はちょうど、
湿度の変化に合わせてローラーのベルトの長さを調整していました。

原料となる椿の種子は、地元の人が庭や土地に生えている椿をそれぞれ収穫したものを、
製油所が買い取るかたちで成り立っています。
地元の人にしてみればちょっとしたお小遣い稼ぎにもなるわけですが、
五島の特産である椿油は、地域全体で作っている一品ということができるでしょう。
今村製油所では純つばき油のほかに、
カメリアオイル、シャンプー、スキンクリーム、石鹸なども販売しています。

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今村製油所

住所 長崎県五島市平蔵町3783
TEL 0959-73-0148
営業時間 8:00~17:00
http://imamura-camellia.p2.bindsite.jp
※季節によっては、販売をしていない時期もあります。