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椿油を作り続けて八十余年
「今村製油所」

おでかけコロカル|長崎編

posted:2013.11.15   from:長崎県  genre:旅行

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

editor’s profile

Ikuko Hyodo

兵藤育子

ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。

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撮影:山口徹花
取材協力:長崎県、五島市

昔ながらの製法にこだわった上質な椿油が人気。

「東の大島、西の五島」というフレーズにピンと来るのは、なかなかの通ではないでしょうか。
伊豆大島と五島列島、遠く離れたこのふたつの地域は、
日本有数の椿の自生地として知られています。
椿は冬の寒々しい景色を彩る、可憐な真紅の花。
花が落ちたあとにできる実から種を取り出して、双方の地では古くから椿油が作られてきました。
椿油は食用や女性の髪結などに使われ、昭和30年頃まで五島の椿油の生産量は、
全国生産量の3分の1を占めていたそうです。
最盛期は、島内の集落ごとに製油所がありましたが、製造に手間がかかったり、
代わりとなる安価な油がたくさん出回るようになってきたことなどから次第に減少。
現在、下五島には4軒の製油所を残すのみとなってしまいました。

そのなかでも今村製油所は、昔ながらの製法を唯一守っているところ。
二代目の今村光次さんと奥様の紀子さん、息子の光博さんの3人で工房を切り盛りしています。

終始にこやかな表情で話しをしてくださった、今村光次さん。

固くつややかな椿の種。

椿の種は、朝顔の種を直径1cmほどに大きくしたかたちで、
ゴルフボール大の実の中に、4〜6粒ほど入っています。
搾油作業は、乾燥させて選別した種を細かく粉塵するところから始まります。
粉状になった種を、その日の天候や湿度などを考慮しながら蒸して、
熱が冷めないうちに玉締め機という機械に詰め込んで、
ゆっくりと圧力をかけて油をしぼります。
今村製油所の最大の特徴が、この「玉締め式」と呼ばれる伝統的な方法。
玉締め式は余分なものを抽出しない搾油方法といわれ、しかも使うのは一番しぼりのみ。
1kgの種からできる椿油は、たったの300mlほどだそうです。
このことからも、いかに品質にこだわっているかがわかるはず。
最後に、搾油した椿油を紙だけを使ってろ過して、不純物を取り除きます。
こうしてようやく、オリーブオイルのように薄く緑がかり、ナッツのように香ばしく、
ふんわり甘い香りのする椿油ができあがります。

化学薬品や添加物を一切使用していない「純つばき油」は、全国にファンを持つ人気商品。
肌や髪だけでなく、料理にも使うことができます。
一般的な調理油と比べると決して安くはないので、
料理に使うのは少々もったいないような気もしますが、
椿油の主成分であるオレイン酸は酸化しにくいので、長く使うことができるのも魅力です。
昔は工房の横に自宅が隣接していたため、
子どもの頃から手伝いに借り出されていたという今村さん。
「家から逃げようとしたら、すぐに見つかってしまいますからね(笑)。
夏休みも近くの海にたまに泳ぎに行くくらいで、それ以外は毎日手伝いをしていました」
工房の中にある機械は、年季の入ったものばかり。
修理も余程のことがない限り、自分で全部やってしまいます。
季節の変わり目だったこの日はちょうど、
湿度の変化に合わせてローラーのベルトの長さを調整していました。

原料となる椿の種子は、地元の人が庭や土地に生えている椿をそれぞれ収穫したものを、
製油所が買い取るかたちで成り立っています。
地元の人にしてみればちょっとしたお小遣い稼ぎにもなるわけですが、
五島の特産である椿油は、地域全体で作っている一品ということができるでしょう。
今村製油所では純つばき油のほかに、
カメリアオイル、シャンプー、スキンクリーム、石鹸なども販売しています。

information


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今村製油所

住所 長崎県五島市平蔵町3783
TEL 0959-73-0148
営業時間 8:00~17:00
http://imamura-camellia.p2.bindsite.jp
※季節によっては、販売をしていない時期もあります。

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