ウッドメイクキタムラからつながる三重の森のはなし
鈴鹿山脈や大台山系をはじめ、県土面積の3分の2を占める森林が、
土砂災害や地球温暖化を防ぎ、多様な生物が生きる環境を守ってくれている三重の森。
しかし、そのうちの62%である人工林が、木材価格の低迷や
林業の衰退により手入れ不足で、現在、機能の低下が危惧されている。
そこで県は、認証材である〈三重の木〉や〈あかね材〉の存在を広めながら、
公共施設の木造化、森林環境教育の取り入れ、〈みえ森と緑の県民税〉の導入など、
多彩な取り組みに力を注ぎ、災害に強い森林づくりと、
県民全体で森林を支える社会づくりを目指している。
なかでも2014年には、木質バイオマスを利用した発電所の運転を開始。
虫食いなどの被害材や廃棄材を燃料用チップとして有効利用するだけでなく、
それらの木材を生産するための人材雇用を拡大するなど、
林業全体が活性化するための方策づくりに挑戦している。

元大工、裸一貫で工房を開く
三重県南部、紀勢地方にある紀北町海山(みやま)。
地名の通り、海も山もそばにあるこの場所で、
約20年間、木製品づくりを続けている〈ウッドメイクキタムラ〉。
工房を立ち上げたのは、このまち生まれの北村英孝さん。
なんでも、少年時代は「どうもならんことばっかりしょった」悪ガキで、
16歳の頃、学校の校長先生の一声で親方のもとへ送られた元大工だそう。

ぎっしりと木材が立ち並ぶ工房。ヒノキの香りと北村さんの愛嬌ある方言に癒される。
隣町の尾鷲市で、きびしい親方のもとに6年勤めて、名古屋へ。
「大工職人としては25年やったかな。
時代の流れでプレハブ建築が増えてきて、ベニヤを使う機会が多なってね。
いまこそ規制が厳しいけど、当時のベニヤは扱ううちに目が痛うなった。
ホルムアルデヒドが嫌で、天然の木でできる仕事をしようと思うて。
裸一貫で工房を始めたんさ」

日々、この工房で、北村さんと“若い職人”の堀内敏彦さんがものづくりに励む。
現在は住宅建築こそ請け負わないが、可動式の小屋やシステムキッチン、
住宅のリフォームなど、“ちいさな大工仕事”は手がけている。
さらに、テーブルやイスなどの家具、建具、クリップボードや名刺入れなどの小物まで、
オーダーによってさまざまな製品を生みだしている。

左はスマートフォンスタンド。奥は「面白半分でつくった」大工さんの道具箱。表示板は、試作中の新作。蓄光(夜光塗料)が埋め込まれている。
アイテムは多彩だけれど、使う木材はただひとつ。
地域のブランド材〈尾鷲ヒノキ〉だ。
それもすべて、江戸時代後期から紀北町で林業を営む
〈速水林業〉から仕入れるFSC認証材のみ。
FSC認証とは、国際的機関であるFSCによる評価のひとつで、
環境・社会・経済のすべての面において
適切に管理された森林から伐りだされた木材にのみ与えられる証明のこと。
速水林業は、そんなFSC認証を日本で初めて取得した先駆者。
そのパートナーとして、木製品づくりを行うのがこの工房だ。
「ここら、見渡す限り山ばっかり。
だから、なんで輸入材を使わんならんのか? って、ずっと思ってたんよ。
FSCというのは、製材所も認証を受けたところでひいてもらわんと認められんのさ。
だから、うちは製材も地元の塩崎商店という認証を受けたところだけ。
どこの森の木で、どうやってうちまで来たかが全部わかる木なんさ」
トロのように極上な尾鷲ヒノキ
工房の木材群を通り抜け、「これだけの年輪のものはなかなかないと思う」と、
北村さんが大切そうに見せてくれたのは、樹齢およそ100年の一枚板。
製作中の神棚にも、ちょうど同じ年の一枚板を使っているという。
ほんのりとピンクを帯びた白色。上品でひかえめな木目が美しい。

土台に100年ものの一枚板を使った神棚。紀勢地方では、大抵、新築した家庭は神棚も新しいものを設えるそう。
その横で、角材をボンドで接いだ板がある。
一枚板でも幅が足りないテーブルなどを製作するときには、
まず、こうした集成材をつくる。不揃いの小口を見れば、集成材だとわかる。
けれど表面は、まるで一枚板かと見まがう自然な木目に驚く。

速水林業から仕入れる尾鷲ヒノキを集成材に。机の天板や、スライスしてクリップボードなどに使われる。
「これが、速水林業の木のすばらしさ。
100年、200年と木を育てるために、もちろん間伐をする。
その間伐材というのも、70~80年生きた木なんさ。
それも山師が丁寧に枝打ちをして、節のない木を育てているから、
どこをひいても無地。マグロでいうたら、トロやね。
腕効きの山師が育てた極上の木材なんさ」



















































































