北海道・岩内町で、地元に愛される
〈村本テント〉の山菜リュックとは

培った技術と地元の声から生まれたプロダクト

周囲を海に囲まれた北海道の積丹半島には、
海の幸がおいしいというイメージを持つかもしれないが、春は山菜もおいしい。
山に山菜採りに出かける趣味を持つ人も多い。5月頃は、姫竹(根曲がり竹)がよく採れて、
身欠きにしんと一緒に煮物に使われたりする。

そんな積丹周辺の山菜採り愛好家に人気なのが、〈村本テント〉の山菜リュックだ。
山菜はひとつひとつは小さいが、たくさん採ると、ずっしりと重くなる。
そんなときにも背負いやすく、耐久性があると人気なのだ。

岩内町に〈村本テント〉の店舗と工房はある。
現在4代目の村本剛さんとその家族で営んでいる。山菜リュック自体に定義はないが、
いろいろなメーカーから「山菜リュック」という名称で発売されている。
要は山菜採りに適したリュックということ。

〈村本テント〉4代目の村本 剛さん。

「もともとは2代目、つまり祖父の代から山菜リュックをつくり始めました。
近くに営林署があって、そこに納めていたこともあるようです。
少しずつ改良を重ね、現在の形になりました」と語る村本 剛さん。

山菜は湿っているので、水抜き用の穴が空いている。
また重くなったときに肩への負担が軽減されるように
ショルダーストラップにフェルトを付けている。
修理もするし、お客さんからの要望があれば最大限応えていく。
こうした工夫は、ユーザーとのコミュニケーションの賜物。
その結果、使い勝手のよい山菜リュックへとアップデートしていった。

デイリーユースとして買う人も増えているという。

「革の部分が水に弱いので修理交換したり、
ポケットがサイドに付いていると薮の中では邪魔だから前面に移したり。
パーツの増減もありました。すべてお客さまの声のおかげです」

耐久性が求められる山菜リュックには、業務用の強くて固い生地が用いられている。
そうした生地は、実は〈村本テント〉のもうひとつの顔が関係している。

「トラックやダンプカーを覆うシートや
コンクリートミキサー車に使われるカバー、重機を覆うシートなど、
建築現場や運輸関係で使われる業務用のシートやカバーを製作しています」

テントといっても、アウトドア的なそれではなかった。
タフなコンディションで高い安全性が必要な商品に使う生地は、
山菜リュックにも適した生地だったのだ。
こうした素材が身近にあったことも、山菜リュックが生み出された要因のひとつだ。

岩内の石塚水産の石塚貴洋さんに協力してもらい愛用している山菜リュックを見せてもらった。これは、山菜前袋。カラビナでアレンジ。

右の新品を使い込むと左のように味が出るが、まだまだ使える。

石塚さんに山菜採りに連れていってもらったら、おいしそうな姫竹を発見。

〈三条ものづくり“山”学校〉 ものづくりの聖地・新潟県三条市 にて開催! アウトドアギアの ストーリーを知る2日間

2017年6月25日(日)、新潟県三条市にて、
アウトドアのものづくりとカルチャーを考えるイベント
〈三条ものづくり“山”学校 Vol.1〉が開催されます。

世田谷ものづくり“山”学校

ものづくり“山”学校とは、アウトドアウェブマガジン〈.HYAKKEI〉が
「アウトドアギアの開発ストーリーやつくり手たちの思いを知って
もっとアウトドアを好きになってほしい」という思いから、2016年にスタートさせたイベント。
これまでIID 世田谷ものづくり学校(東京)を舞台に開催されてきましたが、
このたび三条ものづくり学校にて初開催されます。

三条ものづくり学校

世田谷ものづくり“山”学校

イベント当日はトークやワークショップのほか、お買いものもできるそう。
トークのゲストは、アウトドアショップ〈DECEMBER〉〈PINOWORKS〉
〈Rock GARAGE〉〈FREE MADE〉のみなさん。
ワークショップでは、PINOWORKSの方がシエラカップのレザーハンドルカバーづくりと
レザーアイテムのアイデア出しを教えてくれます。

三条といえば、多くのアウトドアメーカーが本社を置き、
職人が集う、ものづくりの聖地。どんな話が聞けるのか楽しみですね!

三条ものづくり学校

舞台となる三条ものづくり学校は、三条市が民間企業のノウハウを生かし
南小学校をリノベーション・管理運営委託している施設。
ものづくりのまちに開かれた、新しい産業拠点として、
さまざまな取り組みが行われています。

“おせっかいな”デザイナー
〈minna(ミンナ)〉が語る、
デザインの意味って?

これまで5シーズンにわたって、
持続可能なものづくりや企業姿勢について取材をした〈貝印×コロカル〉シリーズ。
今回からは、刃物やキッチン用品などの
商品企画・デザインを手がける貝印株式会社のスタッフが、
コロカル編集部と共に日本全国の未来志向のクリエイターを訪ねて、
ものづくりの技術から、デザインフィロソフィー、
ビジネススキームの話まで引き出していきます。

デザイナーという職能の現在位置

〈minna(みんな)〉というポップでユニークな名前を冠したデザイン会社がある。
この社名には、会社として、そしてデザイナーとして目指す方向性が示されている。
「みんなのためにみんなのことをみんなでやっていきたい。」
というコンセプトに込められた3つの「みんな」が柱だ。

今回、minnaに取材にうかがったのが、
貝印商品本部デザイン室チーフマネージャーの大塚 淳さん。
大塚さんは、3つのデザイン賞(ジャーマン・デザイン・アワード、
レッド・ドット・デザイン賞、グッドデザイン賞)を受賞した
〈Pure Komachi〉というグレーターなども担当しているデザイナーだ。

貝印商品本部デザイン室チーフマネージャーの大塚 淳さん。

大塚さんがデザインを手がけたもののひとつ〈Pure Komachi〉。

同じデザイナーという職種でありながら、インハウスと外部という違いがある両者。
まずは上記の3つのコンセプトについて話が始まった。

美術大学在学中の3年生の当時から、先輩と共同でデザイン会社を立ち上げ、
卒業後もそのまま働いていたminnaの長谷川哲士さん。
卒業して1年ほどで独立したが、多くの人が「一旗揚げたい」と思って独立するのに反して、
独立自体が目的ではなかったという。
「デザイナーとして達成したい目標、
そして社会に対して提供したいバリューについて自問自答を繰り返すなかで、
これは独立しないと目標に近づけないかも……と思ったんです。
角田と話し合い、考えを深めていき、
最後に残った言葉が『みんな』というシンプルな3文字でした。
これを僕らの社名にしたいと心底思ったんです」(長谷川さん)

仲むつまじいminnaのふたり。

公私ともにパートナーの角田真祐子さんもこう話す。

「学生時代から、見た目ばかり重視していては、
社会に機能するデザインにならないのではないかと、もどかしく思っていました。
社会に出たときにどう機能していくのかイメージできないと
意味がないと感じていました」

こうした想いを練り上げていった結果、前述したminnaのコンセプトにつながった。
たとえば「みんなのために/for everyone」。
まだまだ世の中にデザインが届いていないという思い。

「デザイン業界にいると、みんなデザインに興味があるし、
世の中のものが何かしらデザインされなくてはいけないということを理解できますが、
役所や病院など、普段の生活を振り返ると、
デザインされていない側面がたくさんあることに気がつきます」(長谷川さん)

まだまだデザインされていない場所やものが、たくさんあるということ。
そしてもうひとつは、そもそもデザインという仕事がどんなものか認知されていないこと。

「地元の友だちに“デザイナー”をやっていると言うと、
『ファッションをやっているの?』と聞き返されます。
デザイナーはもっと広いジャンルに関わっているのに、それくらいにしか認識されていない。
それはデザインの意味や必要性が伝わってないということ。
逆に、僕たちがきちんと伝えられていないということでもあります。
どちら側の問題でもあるけど、
デザイナー側から歩み寄って解決できることも相当にあると思っています」(長谷川さん)

髪型が変わったら一大ニュースの似顔絵アイコン。

ふたりの母校である武蔵野美術大学の広報物。

〈NO PROBLEM展〉 B品でも問題なし! 市場に出ない訳あり品に 光をあてる展覧会

ちょっと傷が入っていたり、ロゴの誤植があったりしたために
市場に出せなかった“B品”。
その多くは安く売られたり、メーカーの倉庫に眠ったままになっていたり、
時には破棄されてしまうこともあります。
でも、せっかく手をかけてつくられたものが
B品扱いされてしまうなんてもったいないと思いませんか?

VISION GLASS

東京と神戸で、そんなB品に光をあてる展覧会〈NO PROBLEM展〉が開催されます。

本展のきっかけとなったのは、
インドの理化学ガラスメーカー〈BOROSIL社〉が製造する
耐熱グラス〈VISION GLASS〉の輸入元、國府田商店の
國府田典明さんとフードデザイナーのモコメシ/小沢朋子さんが
始めた〈VISION GLASS NO PROBLEM〉プロジェクト。
傷やゆがみがありながら使用上問題がないものを「NO PROBLEM品」と呼び、
通常品と同価格で販売しています。

VISION GLASS

「VISION GLASSは、インドで30年以上販売し続けられている定番商品です。
VISION GLASS JPが検品を行う際、それらの良し悪しは、
白と黒のようにはっきりと区別できるものではありません。

小さな汚れから大きな傷まで、あらゆる種類と程度の何かがあり、
それらを日本の市場が求めているであろう基準と照らし合わせながら
出荷したり、あるいは控えたりを繰り返しています。
日々私たちの目の前に積まれてゆくNO PROBLEM品は、
インドの価値観と日本のそれとの狭間で行き場を失ったグラスであり、
その量の多さは狭間の大きさを示しているのです。

私たちはVISION GLASS NO PROBLEMというプロジェクトを通し、
自分と異なる価値観に対して思考停止することなく、
立ち止まって自分事として考えることの大切さを
伝えていきたいと思っています」(VISION GLASS JP)

NO PROBLEM展では、國府田さんとモコメシさんをはじめ、
プロダクトデザイナーや映像クリエーター、グラフィックデザイナー、
エディターらが参加するプロジェクトチームが1年あまりかけて
取材した成果を展示します。

開花堂

開花堂

取材先は、開化堂、木村硝子店、芝原人形、松野屋、マルニ木工、
マルヒロ、ヤマサキデザインワークス、
B・B・B POTTERS、BRICK&MORTAR、SIWA | 紙和、
インドのBOROSIL社、スタジオ・ムンバイなど。
日々ものづくりと向き合う、メーカーや企画デザイン会社、卸問屋ばかりです。
これは気になりますね!

BRICK&MORTAR

BRICK&MORTAR

木村硝子店

伝統の剣道着を かぶり心地最高のキャップに! 〈藍染剣道着CAP〉

海外でも注目されている“藍染”。
身近な藍染の服といえば剣道着がありますが、
このたび、剣道着の生地をキャップにしてしまった
〈藍染剣道着CAP〉が、着物を使ったキャップブランド〈W@nderFabric(ワンダーファブリック)〉より発売されました。

藍染をてがけるのは、埼玉県羽生市にある、創業明治5年の
〈小島染織工業株式会社〉。 羽生市は、江戸時代から続く藍染のまち。
日本唯一の剣道着素材の産地として、地域商標“武州正藍染”を守り続けています。
この藍染は色合いに深みがあること、またその耐久性や密度が高いことなどから
剣道着素材として使われているんです。

キャップに使われたのは、小島染織工業で、
創業以来生産されている〈武州正藍染剣道着生地〉。
2枚の織物が重なって織られる“二重刺子織り”で作られています。
藍で染め上げられた生地は洗いをかけ、ヴィンテージ感のあるブルーに。
自然な縞模様とムラ感が独特で、厚地かつやわらかく、ふっくらした仕上がりになっています。

TYPE-A 9,612円(税込)

TYPE-B 9,612円(税込)

剣道着の身頃と袖部分を使ったTYPE-Aは、シンプルな織り。
腰部分を使ったTYPE-Bは、ダイヤモンドのような表情。
天ボタンとツバ裏の生地は、剣道の防具・面や小手など使用される、
薄くて硬めの刺子生地を使用しています。

TYPE-B

TYPE-B 9,612円(税込)

〈森の位牌〉で供養にも個性を。 〈いのりオーケストラ〉が手がける 108種類の天然木から選べる 十人十色の位牌

位牌も自分好みの素材を選びたい。
そんな方にぴったりな〈森の位牌〉が、
静岡県静岡市の〈いのりオーケストラ〉より2017年8月に発売されます。
いのりオーケストラは、現代のインテリアに調和する
仏壇や手元供養のためのアイテムをセレクトしているブランド。

〈森の位牌〉のコンセプトは、「十人十色の個性ある供養」。
位牌では日本一の素材ラインナップとなる、
108種類の天然木・銘木から選べるのがポイント。
着色などをせず、自然がつくる模様や色味をそのまま表現した
ナチュラルな風合いです。デザインも限りなくシンプルなものになっています。

日本最多、108種類の天然木から選べるお位牌

木のラインナップは、さくらんぼ・梨・リンゴなどのフルーツ、
ホワイトシカモア縮杢・キングウッドなど楽器に使われる希少材、
そして神代クス・神代ニレ・神代ケヤキなど樹齢1000年を超える神代のものも。
その他、御山杉(伊勢神宮杉)や屋久杉・青黒檀・ホーリーウッドなど、
入手困難な希少材のも含め、豊富な種類の天然木が揃っています。

〈CPCM 益子陶器市〉開催。 東京・原宿に阿久津忠男ら 益子の人気作家のうつわが勢揃い!

2017年6月9日(金)より、
東京・原宿にあるクラフト&カルチャーショップ
〈CPCM(シー・ピー・シー・エム)〉にて〈CPCM 益子陶器市〉が開催されます。

お店に並ぶのは、〈道祖土和田窯〉や
〈あくつ工房〉をはじめとする、益子のうつわたち。

なかでも豊富に取り揃うのは、道祖土和田窯の新作。
和田窯のはじまりは、合田好道さん、和田安雄さん、益子の有志数人により、
1981(昭和56)年に創立された〈合田陶器研究所〉。

合田さんは若き陶芸家志望者たちに
陶器の知識や民芸の考え方を植えつけた、
益子焼の歴史を語る上で欠かせない存在なのだそう。
道祖土和田窯の名をかかげたのは、2000年のこと。
合田さんが他界され、合田さんの一番の理解者である
和田安雄さんが和田窯として新たなスタートを切ったのだとか。

人気のあくつ工房からも、阿久津忠男さんと阿久津雅士さんの新作を多数入荷。

厚みのあるうつわは手に馴染みやすく、土の味わいを感じられます。
今回の入荷分も早い者勝ちになりそう!

また今回は、陶器市に合わせて、
東北地方のこけしもたくさん入荷されます。

〈亀の子束子の110年〉 亀の子たわし、 BEAMS、UNITED ARROWSにて 限定記念グッズを発売!

永く愛されて、110周年。

1907年(明治40年)に誕生した
亀の子束子(たわし)が、今年で110周年を迎えます。

これを記念して、2017年6月7日(水)〜7月4日(火)まで、
亀の子束子 本店と谷中店、BEAMS、UNITED ARROWSに
ポップアップストアがオープン!
復刻パッケージの亀の子束子や、
限定カラーの亀の子スポンジを販売するほか、
束子づくりのワークショップなども行われるそう。

このたび復刻されるのは、歴代パッケージの中でも
特に人気の高かった「紙巻」パッケージ。

〈亀の子束子 紙巻パッケージ〉340円(税抜)2017年6月7日より、BEAMS JAPANにて赤ロゴ、UNITED ARROWS 原宿本店 ウィメンズ館にて緑ロゴを販売開始予定。

BEAMS JAPAN限定 旧赤ロゴバージョン

BEAMS JAPANでは旧赤ロゴバージョンを、
UNITED ARROWSでは輸出用に使われていた
旧緑ロゴバージョンを、各色限定1000個復刻するとのこと。
これはかわいいですね!

さらに、3社のブランドカラーをイメージした
3つのオレンジカラーの亀の子スポンジを発売。

〈亀の子スポンジ 3オレンジパック〉 900円(税抜)UNITED ARROWS 原宿本店 ウィメンズ館、UNITED ARROWS 仙台店、UNITED ARROWS 日本橋店、UNITED ARROWS 名古屋駅店、BEAMS JAPAN、B:MING LIFE STORE by BEAMSにて2017年6月7日より販売開始予定 ※B:MING LIFE STOREのみ6月中旬販売開始予定

同じオレンジでも、この違い! それぞれに3社の個性が出ています。
そのほかにも、新宿のBEAMS JAPAN、UNITED ARROWS 原宿本店ウィメンズ館にて
オリジナルコラボ商品を販売。

UNITED ARROWS限定〈アルミ 亀の子プリント弁当箱〉2,484円(税込)東京葛飾の老舗アルミメーカーで製作したお弁当箱です。

BEAMS限定〈亀ノート〉1,300円(税抜)東京・千駄ヶ谷にあるパピエラボが製作。亀の子束子とBEAMS JAPANのロゴが活版印刷で入っています。

また、各店にて職人さんと一緒に「亀の子束子」をつくるワークショップを開催します。

【たわし作り体験ワークショップ 開催日時】

UNITED ARROWS 原宿本店 ウィメンズ館 6月17日(土)

BEAMS JAPAN 6月18日(日)

亀の子束子本社特設会場 7月1日(土)〜2日(日)

家でもお弁当!〈ieben イエベン〉 料理家・窯元・デザイナーの アイデアから生まれた 美濃焼のお弁当箱

おいしいものを詰めるとき、
蓋を開けるとき、わくわくしてしまうお弁当。
携帯食は世界中にあるけれど、
お弁当箱が発達しているのは、日本がダントツなのだとか。

今日は、そんなお弁当を家でも楽しむために生まれた、
美濃焼のお弁当箱〈ieben(イエベン)〉をご紹介します。

likestoneシリーズ〈ieben〉色は織部グリーン、黄瀬戸、ホワイトの3色。サイズは大と小があります。

手がけたのは、お弁当を愛する料理家、野上優佳子さんと
岐阜県の窯元〈芳泉窯(ほうせんがま)〉の北邑(きたむら)宜丈さん、
プロダクトデザイナーの島村卓実さん。

3人のお子さんを育てながら料理家として
忙しい日々を送っている野上さんは、
家で夜ごはんを食べれないとき、
「すぐに食べられて、片付けも楽で、
そして蓋を開けるときの楽しさによって
少しでも寂しさが軽くなれば……」という思いから
家族のためにお弁当を用意して出かけるといいます。

「残り物をただ皿に乗せてラップをすれば
残り物でしかないけれど、それらをひとつの弁当箱に詰めると、
その集合体は“お弁当”という食事に変身します。
ふたを開けるだけ。食べ終わったら洗い物は、お弁当箱ひとつだけ。
弁当の、その清々しさが好きです」と、野上さん。

そんな野上さんの思いと芳泉窯の技術、
島村さんのデザインから開発されたのが、ieben。

丈夫ながらも、重さは軽い方がいい。
そんなリクエストを受けて芳泉窯の北邑さんが試行錯誤を重ね、
ほど良い厚みと重さのお弁当箱ができました。

電子レンジや食洗機、オーブンにも使用できます。
また、一箇所だけ丸みのない角になっているところからは、
スープなどの汁物を飲みやすく。
いたるところに、細かい工夫が施されています。
重ねられるから、冷蔵庫のなかで場所をとらないのもいいのだとか。

likestoneシリーズ〈KOISHI〉

森とクラフトの町・飛騨で デザインキャンプ 〈Smart Craft Studio 2017〉 がスタート!

豊かな森、豊富な木材、
そしてそれらを生かす伝統的なものづくりで知られる岐阜県・飛騨市。
その飛騨を舞台に、5月28日(日)から、
昨年に続き2度目となるデザインキャンプ
〈Smart Craft Studio Hida 2017〉がスタートしました。

23日間に渡るデザインキャンプには、
ニューヨークのパーソンズ美術大学や、カナダのトロント大学、
香港大学や台湾の実践大学など、世界の大都市で学ぶ学生約30名が参加。

メディアテクノロジー、ファッション、プロダクトデザイン、建築などを専攻し、
さまざまなバックグラウンドを持つ彼らと、各大学の教授が、
実際に飛騨に滞在しながら、飛騨の林業や木工、伝統の組木技術を学ぶと共に、
最先端のIoT技術などを用いて、サービスやプロダクトを制作していきます。

飛騨の林業や木工、組木技術を学ぶ23日間

昨年の〈Smart Craft Studio 2016〉の様子

学びの拠点、制作の会場となるのは、
全6種のデジタル工作機器が設置されている、デジタルものづくりカフェ〈FabCafe Hida〉。
プログラム期間中は会場を解放し、誰でも、いつでも、自由に見学が可能です。
世界各国の学生たちとの交流はもちろん、
期間中に実施される特別ゲストからのトークや講義、
中間発表や最終発表の場にも無料で参加できます。

昨年の〈Smart Craft Studio 2016〉にて。広葉樹を扱う製作所を訪問

昨年の〈Smart Craft Studio 2016〉にて。組木技術を学び、実習する学生たち

文具のカキモリが 福岡・HIGHTIDE とコラボ! 活字文化を知るイベントも

文具店〈カキモリ〉の限定ショップ&カフェ登場

2017年5月26日(金)〜28日(日)、
東京都台東区で開催されるイベント〈第9回 モノマチ〉に
文具店〈カキモリ〉の限定ショップ&カフェがオープンします。

モノマチとは、製造・卸の集積地として歴史をもつ徒蔵(カチクラ)エリア
(御徒町から蔵前、浅草橋にまたがる2km四方の地区)を歩きながら、
ものづくりの魅力にふれられるイベント。

3日間のあいだ、職人、メーカー、問屋、
お店、デザイナーなどが各店で一斉にイベントを行います。

〈カキモリ〉はそんな徒蔵エリアにある文具店。

カキモリ 蔵前

蔵前の職人たちとつくったオリジナル文具や
オーダーノート、セレクト文具などを扱っています。
今回のモノマチでは、8月にオープンする新店予定地にて、
限定ショップやカフェを展開するそう。

さらに今回は、福岡からスタイリッシュな文具・雑貨ブランド
〈HIGHTIDE(ハイタイド)〉もやってきます。

HIGHTIDE STORE(福岡)

HIGHTIDE STORE(福岡)

カキモリとHIGHTIDEのコラボレーションによる限定表紙の
ノートを販売するほか、限定ショップ〈HIGHTIDE STORE mini〉も
オープンするとのこと。楽しみですね!

カキモリとHIGHTIDEのコラボによるノート。迷彩柄やスパダ柄など、普段のカキモリにはないテイストのノートが登場します。

ひと休みしたくなったら、カキモリカフェ〈WAPLUS COFFEE × MIWAKO BAKE〉へ。
こちらでは、秩父のWAPLUS COFEEがスペシャリティコーヒーの豆を自家焙煎し、
ハンドドリップで淹れてくれます。

カキモリの近くのカフェ〈CAMERA〉で
焼き菓子を提供しているMIWAKO BAKEのお菓子もおいしそう!

MIWAKO BAKE

子どもを洗える世界一やさしい筆 〈福筆 Fukufude〉を世界に。 豊橋筆の未来をつなぐ 支援者を募集中

豊橋筆の高い技術が生んだ、子ども用洗浄筆〈福筆〉

愛知県豊橋市近郊で、生産されている伝統工芸品〈豊橋筆〉は、
書道用をはじめ、日本画用や化粧用など、
用途に合わせて何百種類もつくられている高級筆。
専門家からも高い評価を得ています。

そんな豊橋筆の高い技術から着想し、誕生したのが
この “子ども用の洗顔ブラシ”〈福筆〉です。

〈福筆〉

〈福筆プロジェクト〉の発起人は、豊橋市役所の吉開仁紀さん。
もともとは、豊橋筆の素晴らしさを伝えるために、
自主的に筆の体験イベントを開催していたそう。

さまざまな人に豊橋筆についての相談をしている中で、
あるとき、親友のデザイナーから
「筆の技術で子どもを洗うブラシを開発しては?」と
アドバイスをもらったことが開発のきっかけに。

〈豊橋筆〉は職人が毛一本単位で作るため、穂先は非常に繊細。
その技術が、デリケートな子どもの肌を洗うためのブラシに最適なんです。

そして、忙しいママやパパにとって、
お風呂は大切な親子のコミュニケーションの時間であることに目をつけ、
「親子浴のためのツールを作れば、豊橋筆の新たな展開が生まれる!」と
子ども用洗顔ブラシのアイデアに可能性を感じた吉開さん。
それから1年間、職人さんと試行錯誤を重ね、ようやく完成したのが〈福筆〉です。

左から、福筆プロジェクトの発起人・吉開仁紀さん、豊橋筆の職人・川合福男さん、お弟子さんの中西由季さん。福筆というネーミングは、川合さんの下の名前から1文字いただいたそうです。

福筆の毛先は天然素材100%。きめ細やかな肌触りを表現するため、
一度も切られていないバージンヘアーのみを、
1本1本、手作業で選別していきます。

持ち手には、奥三河の柔らかな感触のヒノキが使われ、
木工職人がひとつひとつ手作りで仕上げていきます。
持ち手は、子どもが握りやすいデザインになっているのもこだわりのひとつ。
子どもが自分自身で洗ったり、親の顔を洗ってあげることも可能です。

毛の選別作業。最良の毛を見つけるために1本1本丁寧に選別していく。

益子・濱田窯の初公開作品あり 『濱田窯・在る日の益子』を開催 ビームスジャパン1周年記念

約40年ぶりの蔵出し。貴重な作品多数

2017年4月28日(金)より、オープンから1周年というアニバーサリーを迎えた
BEAMS JAPANの5階「fennica STUDIO」にて、
それを祝するイベントのひとつとして『濱田窯・在る日の益子』が開催されます。
ほかにも会期初日はドリンクサービスや
1周年記念アイテムの販売がある〈宴〉も行われるそうですよ。

益子焼のルーツは江戸時代の末期まで遡ります。
自然が豊かな栃木県益子町には、陶器に適した土が豊富にあり、
産業として大ヒットしたのですが、それが逆に仇となって粗製品が出回るようになったり、
その影響で売り上げが下がったりという憂き目もあったそう。

そんな状況を持ち直し、さらに益子焼を芸術品に昇格させた立役者が濱田庄司さんです。
庄司さんが着目したのは、益子焼の昔ながらの製法と益子町で産出できる土、
釉薬の品質の高さ。そして日用品がもつ普遍的な美でした。

〈濱田庄司 柿釉抜絵皿8寸〉200000円(税抜)。独特な茶褐色が生まれる柿釉(かきゆう、鉄釉の一種)にロウ抜きの黍文(サトウキビの文様)を施したお皿。

〈濱田窯・在る日の益子〉で展示・販売されるのは、
庄司さんと同じく陶芸家として活躍した三男の篤哉さんが大事に使っていたという、
ふたりの没後からしばらく開けられていなかった
濱田窯長屋門と呼ばれる蔵に保管されていた、いわゆる“蔵出し”作品の数々。

そこに、新柄を施した濱田庄司復刻モデル、濱田窯三代目当主の濱田友緒さんの新作も加わり、
相当なボリュームが展開されます。ここでは、その一部をご紹介します。

〈濱田庄司 黒釉錆流掛皿8寸〉200000円(税抜)。黒釉(くろゆう/くろぐすり、代表的な釉薬)にダイナミックな流し掛けを施したお皿。黍文と流し掛けは濱田さんが好んで用いた文様・技法なのです。

この機会が実現したきっかけとなったのは、
一昨年、BEAMS fennicaが益子で行われた『土祭』に参加した際、
濱田窯長屋門を販売・展示スペースとして借りたことだったといいます。
その際、まず篤哉さんの作品が主に収められている“西側”を整理し、
昨年、〈濱田篤哉陶展〉と題し、「fennica STUDIO」でお披露目。
今回は満を持して、庄司さんの作品が多数あった
“東側”にフォーカスを当てているというわけです。

〈濱田窯ヴィンテージ 6寸皿〉3500円(税抜)

〈濱田篤哉 1寸皿〉40000円(税抜)

どれも流通していないため、貴重なものであることはいうまでもありませんが、
器は生活に用いてこそ意味のある道具です。
「鑑賞するのではなく、使ってほしい」

庄司さんはそう願い続けました。
その願いにぜひ、応えていただけたら、これ幸いなのです。
会期は5月7日(日)まで。

〈濱田篤哉湯呑〉10000円(税抜)

〈第2回 にほんくらし籠展〉 COSMIC WONDERと 日本の名工による美しい籠たち

2017年4月15日(土)から30日(日)まで、
東京・南青山の〈Center for COSMIC WONDER〉にて
〈第2回 にほんくらし籠展〉が開かれます。

会場に並ぶのは、日本各地のさまざまな用途の籠。

あけび蔓の籠(秋田県)

山葡萄の手提げ籠、沢胡桃の手提げ籠(秋田県)

すず竹の市場籠(岩手県)

篠竹や山桜樹皮等のげし笊(宮城県)

欅の手提げ籠、山胡桃の手提げ籠(新潟県)

真竹のふご(千葉県)

女竹の花籠(千葉県)

根曲竹の林檎籠(長野県)

淡竹の買い物籠(長崎県)

真竹の米揚げ笊(熊本県)

真竹の角籠(熊本県)

葛藤の手提げ籠(鹿児島県)

蓬莱竹のバーキ(沖縄県)

わらびの手付き籠(沖縄県)

月桃の籠(沖縄県)

いずれも、コズミックワンダーが各地の職人を訪ね、
新たに編まれた籠たちです。
初日の4月15日・16日には、2015年度日本民藝館賞を受賞された
あけび蔓籠職人の中川原信一さんによる制作実演もあるそう。

主宰は、現代美術作家の前田征紀さん率いる
〈COSMIC WONDER〉(コズミックワンダー)。
近年は手仕事による工藝を組み合わせた美術作品、服、印刷物などを制作し、
コレクションとして発表するほか、美術館などにも活動の幅を広げています。

昨年の冬には京都・美山の重要伝統的建造物群保存地区にスタジオを移し、
ますます枠にとらわれない活動を行っているよう。
どの仕事にも、ていねいな手業や自然に宿る息吹が吹き込まれているようです。

最新のコレクションは、日本の古の衣や古代諸国の民族衣装の構造を用い、
最小限の表層からさまざまな印象を伝える〈竜宮衣〉。
苧麻布のドレスや手紡ぎ綿の羽織、有機栽培綿の仕事着コート……。

いずれも手紡ぎの自然栽培綿や有機栽培綿・麻、
刺し子織の大麻布などの天然素材によって構成され、
自然と寄り添うかたちに辿りついた「わたしに帰する衣」。
そんなコズミックワンダーが永いときを超え伝えられてきた
籠に惹かれたのは、自然なことだったのでしょう。

〈ようびの日用品店〉 岡山県・西粟倉の森に生まれた、 小さな家具のショールームへ。

ヒノキの家具のパイオニア

岡山県、西粟倉村の森のなかに、
家具と建築を手がける〈ようび〉のショールーム〈ようびの日用品店〉が生まれました。
もともと別荘として使われていた空き家を、ヒノキやスギが香る空間へと改修。
里山の風景のなかで、ようびの家具を体感できます。
住所は来場者のみに公開という仕組みで、完全予約制です。

ようびは地域の風土と職人の技術によって生まれた、
白くて軽くて香り高いヒノキの家具をつくる、
家具のパイオニアとして、これまでもcolocalで紹介してきました。

ショールームがあるのは、西粟倉村のなかでも、さらに山のなか。
本当にあるのかな、とちょっと不安になるほどですが、ご安心を。
美しい里山の風景のなかに、そのお店はあります。

お店までの道のりから見える風景。

「私たちがお店を失ってから(2016年1月に工房を全焼、現在は仮工房で製作中)、
たくさんの方が応援してくださったり、会いに来てくださったりしたのですが、
家具を見ていただく場所がない状態にだったので。すぐに探したんです」
と話すのは、店主の八島結花さん。

そこで、山の麓に広がる風景に、スタッフ一同感動し、ここでやりたいと心に決めて、
何とか人づてに、建物も借りることができたのだそうです。
約1か月をかけて、たくさんの人に手伝ってもらいながら、完成しました。

ショールームにある家具はすべて、ヒノキでつくられています。

ショールームは、森と鳥をテーマにしていて、照明もここに歩いてくるまでに生えているスギやヒノキの枝を拾って、その恵みでつくられています。

〈D-BROS 銀座店〉オープン! 茶筒に着想を得たお弁当箱など 55アイテムを発表

GINZA SIXに日本の伝統文化をテーマとした
〈D-BROS 銀座店〉オープン!

2017年4月20日(木)、東京・銀座に新たな複合施設〈GINZA SIX〉が誕生し、
4階に〈D-BROS(ディーブロス)〉のお店がオープンします。

D-BROSは、広告デザインを手がける〈ドラフト〉が
1995年にスタートしたプロダクトブランド。
グラフィックデザイナーならでは発想から
ステーショナリーや食器などをつくっています。

〈BUNKOBAKO 漆器〉150,000円(税抜)限定4個

〈KIKOF〉

このたびオープンするお店は、日本の伝統文化をテーマとしたコンセプトショップ。

「プロダクトを通して、ものづくりの背景にある日本の伝統文化や技術を伝えたい」という
思いから生まれたファーストコレクションを発表します。
こちらは、茶筒をヒントに生まれた銅製のお弁当箱〈BENTO〉。

お弁当箱〈BENTO〉全6種 27,000円〜(税抜)

大きな特徴は茶筒の構造からアイデアを得た、気密性。
へら絞りの精度の高い技術を駆使し、真空状態を生み出しているのだとか。

今回のコレクションでは、日本のグラフィックデザインともいえる「家紋」にフォーカス。
家紋をモチーフとした風呂敷や扇子などの〈KAMON〉シリーズを発表します。

〈KAMON 風呂敷〉全16種

〈KAMON ハンカチ〉全5種

現存する約2万点の家紋の中からD-BROSがセレクトした350点を収録した本。本の紙には福井の〈越前和紙〉を使用し、製本には京都につたわる和本の伝統的な製本技術「康煕(こうき)綴じ」を採用しています。〈KAMON 家紋本 特装版〉500,000円(税抜)限定50冊

そのほか、職人の手作業による漆塗りで仕上げられた本漆の文庫箱や、
D-BROSのアートディレクター、KIGI(植原亮輔、渡邊良重)が
滋賀県の職人さんたちと立ち上げたプロダクトブランド〈KIKOF〉なども。
伝統を汲みつつも新しい、スタイリッシュなものたちが並びます!

〈KIKOF〉

折りたためるビニール製の花瓶〈フラワーベース〉4,000円(税抜)4種1セット

日本の岐阜から世界の「GIFU」へ
〈SEBASTIAN CONRAN
GIFU COLLECTION〉

岐阜のものづくりが世界へと羽ばたく日

日本の地域から世界へとすぐれた製品を羽ばたかせる“Local to Global”。
それには海外志向の製品開発やデザインが重要になる。
岐阜県では、これまでも県内の品質の高いものづくり企業と
海外のデザイナーをマッチングさせる努力を続けてきた。

そのひとつとして実ったのが〈SEBASTIAN CONRAN GIFU COLLECTION〉だ。
世界的なデザイナーであるセバスチャン・コンラン氏と、
岐阜県内の飛騨木工、美濃和紙、美濃焼、関刃物などの業界から
10社がコラボレーションしてプロダクトを生み出した。
1月にパリで開催された国際見本市〈メゾン・エ・オブジェ〉で、
すべての製品が発表され好評を得た。
その1社として参加しているのが刃物を中心にビューティ、調理器具などの
日用品を取り扱う〈貝印〉の製造部門である〈カイ インダストリーズ〉だ。

開発部 部長の宮崎宏明さん(左)とデザイン室チーフマネージャーの大塚淳さん。

「こちらからは最初にピーラーやネイル用のやすりなども提案しました」という
貝印刃物開発センターの開発部部長の宮崎宏明さんは、
最初にコンラン氏が訪れたときに打ち合わせをした担当者だ。
実はコンラン氏は、〈貝印〉のハサミやナイフを普段から使っているユーザーだったという。
そのなかで結果的に製品としてつくることになったのは、
ハサミとグレーター(おろし金)だった。

今回、コラボで開発されたハサミ。

コンラン氏は、美濃市や高山市などに残る古いまちなみなどを見たインスピレーションから、
「格子」をコレクションのメインモチーフにしている。
特に〈貝印〉創業の地である岐阜県関市は刃物のまちであり、
ものづくりの「野鍛冶の精神」を受け継ぐ企業だということを知り、
刀や甲冑の要素をデザインに盛り込んだ。

ハサミは、貝印にすでに存在する7000番シリーズのハサミがベースになっている。
コンラン氏が気に入っていたというステンレス刃のマットな質感、
そしてハンドルに使われているシボ加工の繊細なテクスチャーをそのまま採用。
そして刀の鞘をイメージしたケースが付けられた。

海外向けに製造されている7000番シリーズのハサミ。

グレーターも甲冑を思い起こさせるデザイン。
これにもベースとなる〈Pure Komachi〉というグレーターがあり、
3つのデザイン賞(ジャーマン・デザイン・アワード、レッド・ドット・デザイン賞、
グッドデザイン賞)を受賞した商品だ。

「グレーターの刃に施されるエッチングの技術を、
もっといろいろな製品に使ってみたいと思っていたんです」という
貝印のデザイン室 チーフマネージャーの大塚 淳さん。

「最初は折りたたみ式のグレーター案だったのですが、
実際に使うときは開閉時の危険性があったり、汚れを落としにくい構造だったので、
刃物メーカーとして安全性のあるデザインの提案をしました」

2面使えるグレーターを開発。

ロゴもしっかり刻印。

ユキノチカラの主役たち(3)
“雪の力”の恩恵を受けた、
西和賀の農作物で新商品づくり

岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000人の小さなまちです。
雪がもたらす西和賀町の魅力あるコンテンツを、
全国へ発信していくためのブランドコンセプト〈ユキノチカラ〉。
西和賀の風景をつくりだし、土地の個性をかたちづくってきた雪を、
しっかりタカラモノとしてアピールしていくプロジェクトです。
昨年度の第1弾に続き、今年度も第2弾として4事業所による新商品が誕生しました。
西和賀ならではの気候や自然、食文化がぎゅっと詰まった味わいです。

「地元の野菜や特産品の西わらびをもっと活用したい!」 そんな熱い想いをカタチに

2月半ばのその日は、西和賀の冬では珍しい雨模様の天気だった。
アスファルトの道路は、所どころがシャーベット状。
でも脇の田畑には、厚い雪がこんもりと積もっている。
「昨年の12月中旬から1か月間ほど、この雪の下に人参や大根、
白菜などの野菜を保存していたんですよ」と説明するのは、
〈西和賀産業公社〉の副部長兼生産加工課長の廣瀬稔さんだ。

〈西和賀産業公社〉の廣瀬稔さん。

昨年度にどぶろく〈ユキノチカラ〉を開発した同社では、
今年度は地元の野菜を使って、
漬け物以外の、付加価値の高い加工品をつくりたいと考えていた。
そこで着目したのが、「雪」。
野菜を雪の中に保存して糖度を高め、「雪下野菜」として差別化し、
さらにその風味を生かしたドレッシングをつくることを思いついたのだ。

12月中旬から1月中旬の雪の中の温度は0度前後。ここに保存されることで、野菜の甘みは増す。

このドレッシング〈ユキノチカラ 生ドレ〉は、
〈雪下ばっけ〉〈山ぐるみ〉〈雪下人参〉〈雪下野菜〉の4種類。
「ばっけ」とは「ふきのとう」の方言で、
〈山ぐるみ〉には県内で採れたくるみを使っている。
4種類ともそれぞれの素材の味を生かすため、
化学調味料を使っていない点もこだわりだ。

〈ユキノチカラ 生ドレ〉4種。どれもとろみがあるので、ドレッシングとしてはもちろん、ディップや肉料理のソースとしてもおすすめ。

今年度開発したもうひとつの商品が、〈西わらびピクルス〉。
「当社ではすでに、西わらびの加工品として
〈西わらび水煮〉を製造・販売していますが、
年々生産量が増えている西わらびの用途を拡大するためにも、
西わらびを使って別の加工品をつくれないだろうかと考えていました。
水煮はおひたしなど和風のイメージなので、
今回は洋風のピクルスに決まったんです」と、
同社の統括部長・藤原勝さんは開発の経緯を振り返る。

黒胡椒が効いたスパイシーなおいしさの〈西わらびピクルス〉。西わらびならではの食感や色を重視し、塩蔵した西わらびを戻して使っている。

そのほか同社では、すでに商品化している
〈寒ざらしそば〉〈西わらび水煮〉もパッケージをリニューアルした。
前者は、ソバの実を冷水に浸したあと寒風にさらして、アクや雑味を抜いたもの。
ひと手間もふた手間もかけただけあって、
できたそばは甘みと風味が強く、喉ごしが良い。
また、アクが少なくやわらかく粘りのある西わらびを、
一年中楽しませてくれるのが後者。
どちらの商品もすでに安定した人気を獲得しているが、
今回パッケージのリニューアルによって「ユキノチカラブランド」に組み込み、
ブランド強化を目指している。

〈寒ざらしそば〉や〈西わらび水煮〉の味わいは、西和賀の冬の寒さや雪が育くんだもの。

滋賀とスウェーデンの意外な関係。
東近江市〈ことうヘムスロイド村〉で紡ぐ、ものづくりのストーリー

ヘムスロイド=手工芸の村ができるまで

滋賀県の南東部にある東近江市は、
1市6町が合併した琵琶湖から鈴鹿山脈まで広がる自然豊かな地域。
その東近江市の誕生前、湖東町と呼ばれていた場所に、
全国的にも珍しい、ものづくりの作家が集まる村がある。
その村は、〈ことうヘムスロイド村〉と名前もちょっと変わっているのだが、
立ち上がりの経緯を東近江市湖東支所の山川 恒さんはこう説明する。

「旧湖東町は稲作が盛んなまちなのですが、
一方で梵鐘をつくる鋳物師や宮大工が多く、匠の郷として知られてきた場所です。
伝統を守りつつ、現代のものづくりも推進することを目的として、
平成3年に『工芸と交流の里構想』が策定され、
平成5年3月にヘムスロイド村が完成しました」

東近江市湖東支所の山川 恒さん。

ものづくりの拠点となるような場所をつくるにあたってモデルにしたのが、
スウェーデンのダーラナ地方。
“スウェーデン人の心のふるさと”といわれるこのエリアは、
手工芸など昔ながらの伝統や文化が色濃く残っており、
スウェーデン語で「手工芸」を意味する「ヘムスロイド」と冠した店が
多数存在するそう。こうして田んぼに囲まれた森のなかにできあがった、
ことうヘムスロイド村は、北欧風の建築で朱色の屋根がかわいらしい工房4棟と、
ルンド(人が集まる場所、という意味)と呼ばれるセンターハウスで構成されている。

ちなみにヘムスロイド村が完成して間もなく、
ダーラナ県にあるレトビック市と湖東町は、ともに手工芸が盛んであることや、
地理的に湖の東に位置することなどから姉妹都市提携を結び、現在も交流が続いている。

以上がヘムスロイド村の概要なのだが、
気になるのは、どんな作家がものづくりを行っているか。
現在入居している5組6名の作家の工房と、
カフェとなっているルンドにそれぞれお邪魔してみることにした。

愛犬とともに出勤し、音を気にせず制作に没頭

木工工房〈tanaka wooden works〉の田中智章さんは、
湖東町と同じく現在は東近江市になった、木工の盛んな永源寺町出身。
ヘムスロイド村に入居したのは2015年9月で、
それ以前は東近江市杠葉尾町で制作活動を行っていた。

〈tanaka wooden works〉の田中智章さん。工房には機材も木材も数多く置かれているがどれも整理整頓されていた。田中さんはいつもお気に入りの音楽をレコードで流しながら作業に励む。

「ヘムスロイド村のことは前から知っていて、
どうすれば入居できるんだろうってずっと憧れていたんです」

何よりも憧れたのは、その制作環境。
「ここに来る前はごく普通の集落のなかにある、
住居の隣の小屋を工房にしていたので、大きな音をたてると気兼ねしてしまうし、
残業ができなかったんです。何回か工房を引っ越したのですが、
そのたびにここの存在がちらついていました」

田中さんの前に入っていた木工作家が退去することになり、
知り合いの大工さんからいらない機械を引き取らないかと言われ、
待ってましたとばかりに応募。
広々としたこの工房には木工作家が代々入居していたこともあり、
使い勝手のよさを感じている。

「広くて天井も高いので、大きな家具をつくるときもまったく苦になりません」と田中さん。

きれいな光が入るのでせっかくだからと、工房の一角に展示スペースを制作中。

車で片道30分の距離を、愛犬の縁(ユアン)も毎日出勤。
ヘムスロイド村に着いたらまず散歩をするのが日課だ。
「雷は怖がるんですけど、機械の音は落ち着くみたいで、
仕事中はずっと工房で寝てますね(笑)」

制作に没頭できるこの環境は、作家にとって理想的といえるだろう。

とても人懐っこい愛犬、縁(ユアン)と。

〈亀の子スポンジ〉が リニューアル! スタンダードを生み出す 亀の子束子のこだわりとは?

亀の子束子が手がける〈亀の子スポンジ〉をご存知ですか?

たわしといえば〈亀の子束子(かめのこたわし)〉。
あまりにも身近すぎて、その名がブランド名であるということを
忘れてしまう存在ですよね。

亀の子束子は1907年(明治40年)に亀の子束子西尾商店の初代、
西尾正左衛門さんが発明した商品。
それまでは藁や縄を束ねた洗浄道具が使われていましたが、
やしの実の繊維を針金で巻いた亀の子束子は丈夫で使い勝手がよく、
たわしのスタンダードになりました。

そんな亀の子束子西尾商店の〈亀の子スポンジ〉が、
このたびリニューアルされるそう。

〈亀の子スポンジ〉カラー:イエロー・ホワイト・グレー 価格:300円 〈亀の子スポンジホルダー〉800円(価格はすべて税抜)

亀の子スポンジは、2015年に発売されたばかりのニューフェイス。
一見するとごく普通のスポンジですが、
商品開発には、引き続きコラムニストの石黒智子さんに協力を依頼し、
いろんなこだわりがつまったスポンジに仕上がりました。

ひとつめのこだわりは、銀イオンによる抗菌効果。
このたびのリニューアルでは、スポンジ全体に銀イオンを練り込み、
抗菌効果が旧商品の約6倍長持ちするようになっています。

新商品は素材そのものに抗菌材を練り込むことによってスポンジ中心部からも抗菌が可能になり、抗菌効果がさらに長持ちするようになったのだとか。

ふたつめのこだわりは、手になじむ厚みと握りやすさ。
厚くすると腰が強くなりすぎ、薄いと頼りなく感じるスポンジ。
27mmという厚みが最適な握り心地なのだそうです。

左:旧商品(塗布あり)、右:新商品(塗布なし)塗布面を洗浄に使用すると、塗布された抗菌剤が剥がれてしまうというデメリットもなくなりました。

リニューアル後は、表面に塗布していた銀イオンを
全体に練り込んだため、より柔らかに。

みっつめのこだわりは水切れと泡切れの早さ。
スポンジの目を粗めにすることで水切れと泡切れが良くなり、
スポンジが清潔で長持ちします。
こうしたひとつひとつの工夫がスタンダードを生み出していくんですね!

パッケージデザインは、引き続き
グラフィックデザイナー/アートディレクターの菊地敦己さん。
印刷が剥がれないように印刷面を2枚のフィルムに挟むなど、さまざまな工夫も。
このデザインは「日本パッケージデザイン大賞2017大賞」を受賞しました。

名古屋市有松で、受け継がれ、
更新されていく。
伝統の〈有松・鳴海絞〉と
まちの進化

〈有松・鳴海絞〉が今もなお残っているという奇跡

JR名古屋駅から、電車で約20分で行くことができる名古屋市緑区有松。
旧東海道の両脇に当時の豪壮な旧家が今も残された有松のまち並みは、
2016年7月に重要伝統的建造物群保存地区に選定され、
2017年1月、新たに2か所の観光案内処がオープンしました。

観光案内処は2か所つくられ、いずれも古い建物を利活用したリノベーション物件。

まるでタイムスリップしたかのような雰囲気を味わうことができる
古き良き景観だけがこのまちの魅力ではありません。

〈有松・鳴海絞〉と呼ばれる、400年の歴史を持つ染物産業が
今もなお、受け継がれ、日々進化を遂げているのです。

有松の歴史は江戸時代にまで遡ります。
もともと平地が少ない丘陵地帯であったこの土地は
耕作に向かず、農業は発展することがなかったため、
この地に住む人々は、名古屋城築城の際に九州から来た職人たちから、
絞りの技法を学び、伝承・工夫を重ね、
東海道を往来する旅人の土産物として手ぬぐいなどをつくり、商売を始めます。
そして、尾張藩の庇護のもと絞染の産地として発展を遂げたのです。

絞染の工程はいくつかに分かれます。
大まかな工程は、まず図版をつくる職人が下絵を描き、
括り職人が布に糸をきつく巻き付け、染色専門の職人が染め付け、その後糸を抜き、
広げると下絵のとおりの模様の布ができあがり。

有松・鳴海絞を使用した着物。

この有松・鳴海絞の最大の特徴は、下絵通りに染め上がるよう布に糸を巻き付ける
括り職人たちの技術力と、技法の豊富さにあると言われています。
括り方はなんと約100種類。そのうち75種類ほどが
現在でもこの有松地区には残っているというから驚きです。

多種多様な模様を生み出す技術力こそが、有松・鳴海絞の特筆すべき点。

全国各地に新興の絞産地が出現し、
その大半が時代の移ろいとともに昭和初期までに消えてしまいました。
有松・鳴海絞もまたそれぞれの時代において訪れる苦難を乗り越え、
今日までその伝統は守り抜かれてきました。

そこには、有松ならではの伝統を守り抜くための創意工夫の精神があったのです。
ほかでは真似ることができない数々の技法を生み出し、
現在では世界の絞研究者から注目を浴びている有松・鳴海絞。
そのキーパーソンたちを紹介していきましょう。

創作のまち真鶴の原点。
『世界近代彫刻シンポジウム』と
小松石の物語

真鶴だけでとれる小松石という素材

羽田空港、皇居、美空ひばり……。
一見関係のなさそうなこの三者に、実は共通しているものがある。
それが「小松石」と呼ばれる石だ。

世界で神奈川県真鶴町でだけ採掘される小松石は、
いまから約20万年から15万年前、箱根火山の活動と連動して
この地で噴火した溶岩が固まったものだ。
青みがかって落ち着いた風合いは墓石に適しており、
一番古いもので奈良時代のお墓に使用されていたことがわかっている。
有名なものとしては、皇族や代々の徳川家、美空ひばりのお墓にも使われている。

小松石が産業として発展したのは江戸時代。
その頃から石垣や建築材としても使用され、
皇居の石垣や二重橋、羽田空港の埋め立てにも使われているという。

「一般的な石に比べると、小松石は加工の手間がすごくかかるんです。
その分、性質はすぐれていて、かたくて粘り強く、火に強い。
例えば御影石という白くてつぶつぶのある石に比べ、角が飛びにくいんです」

そう語るのは、真鶴にある〈竹林石材店〉の竹林智大(ともひろ)さんだ。
竹林石材は昭和16年に始まり、現在3代目。
だいぶ減ってしまったとはいえ、真鶴に石材業者はまだ20社程度あるが、
採石から加工までの工程すべてを行うところは珍しいという。

竹林石材店の竹林智大さん。社長ながら会社では一番若い。

竹林さんは石の魅力についてこう語る。

「コンクリートのほうが安いので使われることが多いですが、
本当は石のほうがかたくて丈夫なんです。
石は何百年ともちますが、コンクリートは50年ぐらいでヒビが入ってきます。
石のほうが地震にも強く、例えば護岸工事に使っても、
自然のものなので魚や海の生物にとってもいいんです」

山から墓石ができるまで

小松石を「石材」として使うまでには長い工程がある。
竹林さんにその工程を案内してもらった。
まず案内してもらったのは採石場。真鶴駅から海とは反対方向に向かって、
車で20分程度山を登ったところにそれはあった。

その圧倒的な光景に取材陣一同息を飲む。ダイナマイトで崩すこともあるが、石が傷つく可能性もあるので重機を使うことが多いという。

「江戸時代は海岸沿いを手で掘っていましたが、
いまでは重機を使って山から切り崩すのが主流です。
あんまり下まで掘ると石が細かくなってきて、そうすると“終わり”なんです。
町有地を借りているので、掘ったらその分、土を埋めて返すことになります」

小松石には3色あり、色によって値段が変わる。
最も安いものが赤みを帯びたもの。次がグレー。最高級品が青みを帯びたものだ。
青いものは全体の3~5%しかないという。

「色によって性質が変わるわけではなく、
基本的には赤や青が混じっていることがほとんどなんです。
ただそれは割ってみないとわからないですね。墓石の場合、
色を1色に統一させないといけないので高価になるんです」

次に向かったのは、重機で山から採った石を割る工場。
ここでは昔ながらの方法で石を割っていた。
ドリルで開けた穴に「セリ矢」と呼ばれる鉄製の道具を入れる。
そしてそれを上からハンマーで叩きつけていく。
いとも簡単にふたつに割れたように見えたが、知識と経験がないとできないものだと、
担当していた川ノ辺創(かわのべはじめ)さんは言う。

セリ矢を打ち込んで、叩いて割る。大昔からこのやり方は変わらないそう。

「修業っていうと大げさだけど、一人前になるまでは5年ぐらいはかかりますね。
やっぱり危ないから。いまみたいにふたつに割るのでも、
木こりが木を倒すのと一緒でどっちの方向に倒すかを決めているんだよね。
知らない人がやって自分の体のほうに落ちたら大変。
『覚える』っていうと違うんだけど、体験を重ねていかなきゃわからない。
理屈も大事だし、体も大事」

真鶴出身の川ノ辺創さん。この仕事を始めて25年になる。

ハンマーとセリ矢。なんと道具は自分で熱して叩きながら改造していくという。「自分のやり方にぴったりあった自分の道具をつくらないと。鍛冶屋までできて初めて石屋は一人前になる」と川ノ辺さん。

「この仕事にはものをつくるおもしろさがあるんです。
石を見て、良いか悪いか判断して、少しずつ割っていく。最終的にはお墓になる。
車や冷蔵庫と違ってつくる過程で機械もほとんど使わないし、
自分の手で、自分の判断で全部できるのはおもしろいね」
と川ノ辺さんは語る。

最後に訪れたのは、割った石を加工する工場。
ここでは大型の重機も動いていたが、やはり手を使って加工している職人がいた。
竹林石材は全盛期は20人ほど職人を抱えていたというが、
安価な中国産の石の増加や、職人の高齢化に伴い、いまでは7、8人になったという。

慣れた手つきで「コヤスケ」という道具を使って石を整える職人。「中学を出てからやっているので、今年で37年やっています」

いまも墓石に使われることが多い小松石だが、建材用に加工しているものもある。

社長である竹林さんは言う。
「小松石は本当にいいものだと思うし、需要が少なくなってきたとは言っても、
小松石が好きな人はいるので、なくさないようにやっていかないといけないと思います」

小さな港町に、世界とつながる
〈真鶴テックラボ〉誕生

Uターンしたら、まずは仲間を見つける

のんびりとした漁港のまち真鶴に、
なんとファブリケーション施設が生まれようとしている。
〈真鶴テックラボ〉だ。
3Dプリンターやレーザーカッターなどを使って、
自分たちの手でものづくりをすることができるという「ファブリケーション」。
世界的にもその流れは広がっていて、特別な技術がなくても使えることから、
カフェと併設されているようなスペースも増えている。

昨年11月から試行を続け、真鶴港が眼前に広がる空き家を利活用して、
新年度に本格稼働の段階を迎える真鶴テックラボは、
真鶴町観光協会の柴山高幸さんが中心になって進めてきた。

柴山さんは真鶴生まれで、都心部でシステムエンジニアとして働いていた。
あるとき、大きなプロジェクトを終えて憔悴してしまったという。
そのときにこれからの生き方を考え直し、Uターンすることを決断した。

「だけど、真鶴のまちの状況なんてまったく知りませんでしたね。
自分が通っていた小学校は統合されてしまってもうなくなっているし、
そこに向かう“メインストリート”は、お肉屋さんも、魚屋さんも、駄菓子屋さんも、
すべてなくなっていました」

大好きな釣りの話を始めたら止まらなくなる柴山高幸さん。

そんな状況を目の当たりにしても、Uターン当初は「自分にできることはない」と、
何かアクションを起こそうとは考えなかった。
しかし、次第に観光協会や行政に同級生や先輩後輩など、同世代がいることに気がつく。
「ひとりではできないけど、仲間がいれば何かが起こせるのではないか」
という気持ちになっていった。

まずは、自分自身が真鶴を出ていってしまった理由を振り返ってみた。

「ひとつは、若い人の意見があまり受け入れられなかったこと。
同様に外から来た人に対しても冷ややかで、
当時、移住者のことを“新住民”と呼んでいたりして。
よく考えればお嫁に来てくれた人だって移住者じゃないですか。
移住者はたくさんいるのに……」

かつて自分が感じていた息苦しさを払拭するために、
移住者や若者も含めてみんなで楽しめる〈真鶴なぶら市〉を立ち上げた。
補助金などに頼らず、すべて自分たちの手弁当で運営。
月1回の開催で、今年で3年目を迎える。

漁師も料理人も石材職人も、“エンジニア”である

なぶら市とともに着手した一手が、新たな仲間との出会いとなった。
2014年6月に〈スタートアップウィークエンド(週末起業体験)〉を真鶴で開催。
ハスラー・ハッカー・デザイナーでチームを組み、
必要最低限のビジネスモデルをつくり上げる。
世界の700都市で開催され、週末の54時間でアイデアをカタチにする方法論を学び、
スタートアップをリアルに経験できるイベントだ。

日本では都心部で開催されることがほとんどで、
真鶴のような小規模のまちで行われることは国内ではあまりない。
そのユニークさも手伝って、さらなる感性の似た人たちと出会うことができ、
「ひとりじゃない」という感覚を得る。
そのメンバーのなかにジェフ・ギャリッシュさんがいた。

ジェフ・ギャリッシュさんは佐世保生まれで、日本人とアメリカ人のハーフ。

ジェフさんは、日本やアメリカなど各地に住んでいたが、
現在は小田原在住で、行政や観光関係などの英語コンテンツを制作する仕事をしている。

「もともと真鶴が好きで、人や自然、東京との距離感など、
すごく可能性があるなと思っていました」と話すジェフさん。

スタートアップウィークエンドで意気投合したふたりは、
住むまちは違えども同じ志向を持つ者同士、協力して活動していく。
ジェフさんは、その後真鶴で行われた3回目のスタートアップウィークエンドでは
運営側にも回っている。

「僕自身はシステムエンジニアが本職ですが、やはり真鶴ではITはハードルが高い。
スタートアップウィークエンドでは、3日間でプロダクトをつくりあげますが、
アイデアはもちろん、実際に組み立てられるエンジニアがいるから可能なことです。
このエンジニアという領域を広く捉えれば、町内の料理人も、石材加工も、
漁師や海士も入れられて、敷居を低くできるのではないかと」(柴山さん)

次のスタートアップウィークエンドへ向けて。