たくさんの場所を巡ってきた焼酎ハイボールのアテ探し旅。
今回はあらためてその原点ともいえる場所を訪ねてみよう。
酎ハイ街道から東向島へ。あらためて紹介すると、
東武伊勢崎線鐘ヶ淵駅と京成線八広駅を結ぶ、
鐘ヶ淵通りを中心に広がる、酎ハイの名店が揃う場所。
この「下町の焼酎ハイボール」の味こそが、
タカラ「焼酎ハイボール」〈ドライ〉の原点。
まずは、明治通り沿いの〈三祐酒場 八広店〉へ。
焼酎ハイボールを生み出したいわば元祖のお店だ。

焼酎ハイボールを生み出した本店は、区画整理のため惜しまれつつ閉店。昭和41(1966)年、現店主の父が開業したこの地で歴史は続く。明治通り沿いとその裏側の2か所にのれんがかかる。開放的でもあり、居心地良い秘密基地的な趣もあり。
新型コロナウィルスの影響で、酒場の灯りが陰った時期から、
4年ぶりの再訪。少し緊張して暖簾をくぐると、
マスターの奥野木晋助さんがシウマイの仕込みをしながら、
「前に取材で来られたとき、おいしそうに飲まれていましたね」
と爽やかな笑顔で話しかけてくれる。
そう、元祖の味を楽しみ、酎ハイ街道の歴史と文化を知る取材のあと、
焼酎ハイボールと多彩なつまみとともに、ずいぶん楽しませてもらったものだ。
4年の月日があっという間に縮まれば、すぐに口も喉も、
そして心までも焼酎ハイボールを求めてしまう。

「店だけじゃなく我が家の夏の大定番」とマスターが誇る、
「胡瓜とセロリのスタミナ漬け」とともに早速乾杯だ。

「胡瓜とセロリのスタミナ漬け」(385円)と、時代の憧れと下町の創意工夫とが結びついて生まれた元祖焼酎ハイボール(473円)。氷、炭酸サーバー、色、味わい。そのすべてにこの地の歴史、時代背景という理由がある。バランスが秀逸なこの酒。その味わいのなかには素材のブレンドだけではないなにかがある。
最初はすーっと軽やかに、少しずつ焼酎の旨みがじわじわと。
あいかわらず変わらないバランスの良さだ。
大ぶりな胡瓜を噛めば、音がいい。まさにポリッという擬音。
酸味もしっかり。醤油、ニンニクで漬けたということで、
濃いパンチがあるかなと思ったけれど、
焼酎ハイボールとともに味わえば、
胡瓜の甘味と爽やかさがやってきて、まろやかに抜けていく。
気が付けばグラスはもう半分に。次のアテはと、
飲みながらメニュー札を見ていると、それさえもアテになる。
元祖とうたう焼酎ハイボールの誕生は1951(昭和26)年。
マスターの叔父が進駐軍の駐屯地内で、
ウィスキーハイボールに出合って感銘を受け、
これを店で出せないかと試行錯誤したのが始まりだという。
当時の焼酎は、原料は粗悪なものもあり、技術も設備も足りない状況だったけれど、
「これならみなさんに喜んでもらえるのではないか」
という思いから生まれたのだ。
焼酎ハイボールのおかわりとともに、
「三祐特製シウマイ」と「ポークとろタンシチュー」を追加。
マスターが海外のリゾートホテルで働いていた時代に身に着けた、
中華や洋食の技と発想が生んだバリエーションだ。
2杯目を味わいながら、この4年間を振り返ってもらった。

ポークとろタンシチュー(1760円)分厚い豚タンは、口に入れれば、歯を立てずともサクッと、ほどける。とけるというより肉質を最後まで感じられる。シチューのテイストはポテトなど野菜にもあう。添えられたガーリックトーストも厚みたっぷり。酒場にしてこのボリューム感。「うちは2、3品でお腹いっぱいかな。昔、労働者のまちだったから少ないと怒られたんですよ(笑)」
「原材料は上がっちゃったよね。まあ、それはしょうがない。
うちの焼酎ハイボールも100円値段が上がっちゃいました。
それもそうだけど、飲む人の考え方がまったくかわっちゃったかな。
コロナの影響は大きかったですよ。もう夜遅くはお客さんも来ないし……」
以前は夜中2時まで。今は0時に暖簾を下ろす。
「それから暑さかな。前は夏が一番忙しかったんですよ。
でも今は夏が暑すぎちゃって。とりあえず家かえってシャワー浴びたい。
部屋の中でエアコン効かせて、家飲みが増えたんじゃないかな」

本店から続がれてきたもの、先代からの継承に加えて、マスターが考案した定番メニューや市場でのひらめきによる一品まで。下町酒場らしい和の料理に加え、洋風、中華、季節限定の品々など、メニュー札と白板を眺めているだけでわくわくするメニューの数々。マスターは「なんかやっちゃうんですよね」と明るく苦笑。
長い店の歴史のなかでもこの4年は激変だったようだ。
「でもね」とマスター。おもしろい出会いは増えたという。
「インバウンド客が増えましたねえ。このあたり民泊が多くて。
日中観光に出かけて、帰ってきてうちに来てくれる。
飲みながらあれこれと食べられるというのが楽しいんじゃないかな」
人気は豚キムチと揚げ出し豆腐。欧米からのゲストもハマっているらしい。

外国のホテルでの経験は料理だけでなくおもてなしにも生かされる。英語で説明されたメニューも「画像載せて選んでもらうより、料理の説明をして、出てきたものを見て驚いてもらって、楽しんでもらうほうが好きなんですよ」
さて、蒸し上がったシウマイを頬張る。
先代から続く定番とマスターが開発したメニューが三祐酒場の自慢だが、
このシウマイは3年前、
大阪旅行の際に食したラーメン屋の焼売に感化され考案したもの。
大変なことは多いけれど、へこたれずに楽しいことを見つける。
これもまた下町気質なのだろう。


ゴロっと肉がぎっしりの「三祐特製シウマイ」(1023円)。大阪の豚まんを思わせるボリューム感。皮の味わいもいい。包むのではなく細く刻んだ皮を巻きつける。お酢だけつけていただくと、焼酎ハイボールのコクとからみあい、皮と肉の甘味、旨みがより感じられる。