カメラマンひと筋だった妻の
移住後の変化とは?
移住してから妻は何が変わった?
伊豆下田に移住した津留崎さん一家。
カメラマンの妻は相変わらず撮影の仕事を続けつつ、
パンの販売にイベントやワークショップの主催、
さらに商品の企画販売まで(!)、多彩な活動を展開中。
20数年、東京でカメラマンひと筋でやってきた彼女に
いったい何が起こったのか……?
移住カメラマンとしての仕事も
先日、初めてお会いしたある方に、こう言われました。
「今日は謎の奥さんはいないのかい?」
ん? 謎の奥さん? 妻のこと……?
どの辺でそんな呼ばれ方をしているのか詳しくは知りませんが、
下田の一部の人にとってはどうやら妻は「謎」の人らしいのです。
何が謎なのか?
本業はカメラマンですが、そのほかにもいろいろと活動していて、
はた目にはその活動に一貫性がないと感じられるからかもしれません。
移住前にはカメラマンひと筋でした。
「謎の奥さん」ではなかった。
でも、移住して2年、気づいたら「謎の奥さん」と
呼ばれるようになっていました。
確かに身近で見ていて「暮らす場所よって
人ってこんなに変わるんだな~」と感心することもあります。
今回は身内ネタになりますが、移住によって
わが妻にどんな変化があったのか? についてです。

海からあがってきた漁師さんを撮影する妻。このように食の生産現場に出くわすとスイッチが入ったかのように撮影に没頭します。下田は海にも山にも恵まれて食の生産現場が身近にあるのでスイッチ入りまくりです。
経歴を少し。
大学を卒業後、出版社マガジンハウスの社員カメラマンとして
数々のタレントや料理などを撮影してきました。
40歳のとき、自分に合った育児と仕事のバランスを考えて独立。
そして、2年前に念願の移住が実現。
移住後も都内へ出向いてのカメラマンの仕事は続けています。

移住後の仕事はこんな感じです。料理写真がメインではありますが、ときにはタレントの撮影も。
そして、最近の仕事としては雑誌『クロワッサン』(5月25日号)の記事
「伊豆下田は採れたて海藻天国!」にて
6ページにわたり妻の写真が掲載されました。

こちらでは企画の段階から携わり一部の文章も担当。
都内の出版社との仕事と下田移住がリンクした
「移住カメラマン」ならではの仕事ともいえ、
本人もかなり気合をいれて取り組んでいました。

掲載された写真の一枚、最高の笑顔です。「はんば海苔」の作業をする82歳にして現役の海女さん。仲良くさせていただいている方のお母さまで、下田に住んでいるからこそ撮れた写真かと。
そして、その掲載写真を中心に、
下田のまちなかにあるレストラン〈Table TOMATO〉で
写真展『海と暮らす/海藻と人』を開催(8月まで開催予定)。


母と娘と共に。写真展開催を記念しての一枚。(撮影:山田真由美)
実は、本人はいつか写真展をやりたいと思いながらも、
「これ!」という題材に巡り会えなかったそうなのですが、
移住した下田には妻が「これ!」と思う被写体が多いのでしょう。
移住した下田で初の写真展開催となりました。

「普段食べている海藻がこんな工程を経て食卓にのぼるなんて知らなかった」と下田の方からもうれしい感想をいただきました(下田でも海に関わりのない人もいます)。写真展はTable TOMATOの営業に合わせて8月まで予定。写真展に関する問い合わせは妻、津留崎徹花まで。

写真展でも展示していた天草(てんぐさ)の出荷準備の共同作業風景。実はこの写真は取材に行ったのではなく、家族でお客さんを連れて海に出かけたときに偶然出会った風景です。あれ? いない? と思うと、こうしておもしろい現場を見つけては撮影に没頭してる……ということが下田に移住してから日常になってきました。
また、知り合った下田の方々からご依頼いただいた撮影もしています。

こちらは我らと同じく下田に移住した農家の松川さんご一家。開設予定の作物販売サイトに使う写真を撮影させていただきました。
[ff_assignvar name="nexttext" value="カメラマンひと筋から何かが変わった?"]
[ff_file_include_from_theme filepath="/include-unit/unit-layout-magazine-child-pagenation.php"]
パンの販売からイベント開催まで
ここまではカメラマンとしての仕事。
そして、ここから「謎」を呼ぶカメラマン以外の活動を紹介します。

移住後、時間的に余裕ができたこともあり、
移住前から趣味で焼いていた自家製酵母のパンを
頻繁に焼くようになりました。
毎日のように焼くので家族では消費できず、
下田の友人たちによくプレゼントするように。

すると……、
「こんなおいしいパン食べたことない!! 買うよ!!」
との声を多くいただき、では試しにやってみようか! と
2日間のパン販売イベントを企画。
本人も下田に移住してきてパンの販売をすることになるとは
予想外の展開だったようですが、ありがたいことに大盛況でした。

写真展と同じくTableTOMATOにて開催。

自家製玄米酵母はわが家の米づくりの先生、中村大軌さんの玄米を使用。中村さんも足を運んでくれました。
このイベントによって、20年以上カメラマンひと筋でやってきた
妻の中の何かが変化したようです。
何か吹っ切れたというのか、発想が柔軟になったというのか。
「自分にはここまでしかできない」という思い込みが
取っ払われたというのか。
この変化が妻の活動の幅をさらに広げていきました。
パン販売終了後間もなく次々とイベントを企画、主催し始めたのです。
まずは、「下田インド化計画 南インド料理を食べさせられ放題」
というイベントを下田の友人とともに企画、主催しました。
たまたまFacebookで目にした、都内を中心に活動する
南インド料理のユニット〈マサラワーラー〉に関する投稿に惹かれた妻。
「マサラのカレーを食べてみたい!」と思い、
じゃあ東京に行ってみよう! という発想ではなく
「下田に来てもらおう!」と動き始め実現しました。

オーナーご家族にお世話になっているペンション〈ガーデンヴィラ白浜〉に併設された〈伊豆白浜バーベキューガーデン〉にて開催。最高のロケーションです。

みんなで南インド料理を手で食べる。「食べさせられ放題」なのでどんどん足されていく。なんとも楽しいイベントでした。

マサラワーラーや主催者、手伝ってくれた方々と。妻は中央手前、なりきりエスニック。
そして、自らが講師となり開催した
「味噌づくりワークショップ」。

毎年、味噌を仕込んできた経験を生かして、妻が友人やその友人たちに教えるワークショップを開催。こちらも伊豆白浜バーベキューガーデンにて。世の中に味噌づくりワークショップは多くありますが、この絶景での味噌づくりはない気がします。
自分が習いたいという思いから企画した
「食べられる野草ワークショップ」。

伊豆の修善寺から先生をお招きして、南伊豆の友人たちと開催しました。中村大軌さんの家の裏山をお借りして。興味があることを教えれくれる人がいる、場がある、とても恵まれた環境だと感じました。
[ff_assignvar name="nexttext" value="惚れこむとバッグをつくっちゃう…!?"]
[ff_file_include_from_theme filepath="/include-unit/unit-layout-magazine-child-pagenation.php"]
さらに、プロダクトの企画販売も!
そして、つい先日は友人が東京で参加した
コーヒー豆を焙煎するワークショップがすごく良かったという話を聞き、
やはり「東京に行ってみよう」ではなく
「下田に先生をお招きしよう!」という発想で
「コーヒー豆手焙煎ワークショップ」を開催しました。

(一社)日本焙煎技術普及協会 理事の竹林利朗さんをお招きしてのワークショップ。またも伊豆白浜バーベキューガーデンにて。目から鱗のコーヒーにまつわる話に、おいしさだけでなく安全性にも気をつけたい、そんなことも痛感したワークショップでした。
移住前もこうしたイベントに参加していたことはありましたが、
企画や主催はしていませんでした。
というのも、東京であればさまざまなイベントが開催されていて
その必要を感じませんでした。
ここは人口2万人の小さなまち。
開催されるイベントは多くはありません。
なので、「体験したいこと、学びたいことがあったら
下田でイベントを開催して、みんなで共有できたら」
と考えているようです。
なかなか参加者が集まりにくい場所では開催が大変ですが、
下田は東京からでも日帰りで来てもらうこともできます。
自然豊かな観光地ということもあり
イベントの開催場所にも恵まれています。
次は何のイベントを企画するのか? まだ具体化されてはいませんが、
魚のさばき方や子ども向け料理教室の話をしています。

自宅で娘の友だちが遊びに来たときにはお菓子のつくり方を教えることも。子どもたちも、そして妻もとてもイキイキしてます。
そして、もうひとつ大きな動きが、プロダクトの企画販売です。
〈Himono bag〉というアジの干物の写真(もちろん自ら撮影)を
プリントしたトートバッグをつくって販売しています。

詳しくは妻が書いた記事をご覧いただきたいのですが、
わが家から徒歩圏内にある下田を代表する人気店
〈ひもの万宝〉に惚れ込んだ結果、できあがったバッグです。
実は、このバッグづくりは移住前から
妻が個人的に取り組んでいたことでもあります。
例えば、取材で知り合った大分のシイタケ農家さんに
惚れ込んで(惚れ込みやすいのです)、
シイタケの写真を無地のトートバッグに自らプリントした
不思議なバッグをつくり、持ち歩いてました。
でも、正式な商品にするのは下田に来てからのこと。
惚れ込むとなぜバッグ???
というのが僕にとっては謎ですが……、
妻にとっては自然なことのようです。

手に取った方に「干物」と〈万宝〉の魅力が伝わるようにとリーフレットにもこだわり、下田の友人たちにデザインや英訳を頼んで完成。
発売から数か月。下田市内で数店舗、都内や京都にも販売店舗があり、
ネット販売もしています。
ありがたいことに、先日は結婚式の引き出物に
選んでくれた方もいらっしゃいました。

〈Himono bag〉商品撮影中。カメラマン歴20うん年、さまざまな被写体を撮影してきた妻ですが、自ら企画したバッグを撮影したのは初めてのこと。
[ff_assignvar name="nexttext" value="妻の一番の変化とは"]
[ff_file_include_from_theme filepath="/include-unit/unit-layout-magazine-child-pagenation.php"]
移住して広がった活動の幅
このように下田移住後は、本業のカメラマン以外に、
パン販売、そしてイベント・ワークショップの企画・主催に
プロダクトの販売などの活動をしてきました。
僕としても、移住前は妻がこのように
活動の幅を広げるとは思いませんでした。
パンの販売イベントをやり遂げたとき、
「やりたいと思ったことを一歩踏み出して行動すると実現するんだね~」
と感慨深けに語っていたことを覚えています。
とはいっても、東京だったら
こんな展開にはならなかったように感じます。
例えばイベントをやるにも賃料が高いので
採算性をしっかり考えて企画しないとできません
(妻はそういうことがすっごく苦手です)。
そもそも「カメラマンが何やってるの?」と思われるような
雰囲気も少なからずあります。
でも、移住した下田は違います。東京に比べると比較的家賃が安いです。
そして、きちんと関係性を築いていけば
店舗などのオーナーさんや共にイベントを企画する方々は
とても協力的です。企画が実現しやすい環境といえます。

バーベキューガーデンのオーナー、宝田さんご家族もコーヒー豆焙煎ワークショップでは焙煎に挑戦。宝田さんご家族に、この空間に出会っていなかったらこんな展開はなかったでしょう。出会いは人生を変える、移住して強く実感しました。

himono bagも、妻の提案に快諾してくれて、撮影だけでなく販売にもご協力いただいている、ひもの万宝の平井さんご一家あってのこと。最高にあたたかいご家族です。出会いに恵まれすぎてます。
また、都会とは違い、あたり前のように
いくつもの仕事をしている人がいます
(下田だけでなく多くの地方ではあたり前のことかと)。

TableTOMATO店主・山田真由美さんは下田で飲食店を営みながらも湘南に拠点を置いて編集者・ライターとしても活躍されてます。妻のパンイベントと写真展は彼女の理解・協力なくしては実現できませんでした。
本人としては、写真ひと筋でなくなったいまの状況が
正しいことなのか? 少なからず迷ったこともあるそうです。
実際、「こんなにあちこち手を出していていいのだろうか?」と
友人に相談したこともあるといいます。
すると、「みんないろいろやってるじゃん。
いいんだよ、好きなことやれば」との言葉をもらい、
いまではさまざまな活動を楽しめるようになってきたそうです。
「自分にはここまでしかできない」という思い込みを取り払うことで、
人はいつからでも変われる。その変化はきっと無駄ではない。
そして、そうしたさまざまな活動がカメラマンとしての仕事にも
深みを与えることになるのでは?
移住してからの妻の変化を間近で見ていて、そんなことを感じています。

クロワッサンが発売されたあと、掲載させていただいた海女さんたちのもとへ雑誌を持ってご挨拶に。「知ってる知ってるクロワッサン、あ~写ってる、ゲラゲラゲラ!」と大反響! こうして喜んでいただいたことが何よりうれしかったそうです。