みんなで野草を食べてみよう!
自然豊かな伊豆、
身近な山で野草を学ぶ

恵まれた環境だからできること

以前から野草に興味があったという津留崎徹花さん。
移住して暮らす下田だったら、身近な山で学べるのでは?
そう考えた徹花さん、友人たちと一緒に
野草を摘んで食べる会を開くことに。
みんなで野草を探し、料理して食べる。
意外にも食べられる野草、けっこうあるんです!

“暮らしの知恵”を学びたい

10日間の長いゴールデンウィーク。
わが家には東京から姉家族が遊びにきてくれたので、
娘もいとこたちと大はしゃぎ。
にぎやかな休日を過ごしました。
そして最終日には、友人たちとちょっとおもしろい会を開いたのです。
それは、「みんなで野草を食べてみよう」という会。

野草摘み

収穫した野草は籠へ

そもそもの発端は、「野草について勉強してみたい」と
私が友人に持ちかけたことでした。

私が野草について興味を持ったのは、
3年前にある女性と出会ったことがきっかけでした。
その女性は、徳島県の祖谷(いや)という山間部に住んでいます。
「山奥での暮らしに不便さや不安を感じることはないですか?」
という私の問いに、彼女は「?」といった感じで首をかしげました。

天ぷらが食べたくなったら裏山で野草を摘めばいいし、
体調が悪くなったら薬として山の野草を使うし、
不便も不安もないといった具合なのです。
当時東京に住んでいた私は、自然とともに暮らす彼女の姿に
強く惹きつけられました。
自分もそうした暮らしの知恵を少しずつ学んでいきたいと思ったのです。

徳島県の祖谷に住む都築麗子さん

詳しくは「美味しいアルバム」で紹介しています。

東京に住んでいた頃は、
「さあ野草について学ぶぞ!」といっても、
どこにどう行けばよいのか皆目見当がつきませんでした。
さらに、野草に詳しい人にも心当たりがなかったのです。

けれど、下田というまちは山々に囲まれています。
春になると植物が芽吹き始め、まぶしいほどの新緑に包まれていくのです。
教えてくれる人さえ探せば、身近な山で野草を学べるのではないか。
そして、この環境なら詳しい人が必ずいる、そう思えたのです。

黄色い花はキンポウゲの仲間

このかわいらしい黄色い花はキンポウゲの仲間で、毒性があるので食べられません。危険な野草もあるので、初心者の方は詳しいガイドの方との同行をおすすめします。

下田の隣町の南伊豆は、下田よりもさらに山の深い地域です。
そのまちに住む友人、赤池彩さんに、
野草に詳しい方を知らないか聞いてみました。
すると、心当たりがあるということで紹介してくれたのが
塚本春菜さんです。

春菜さんは現在は修善寺在住ですが、以前は南伊豆に住んでいて
野草料理を提供するカフェを営業されていました。
さらに、伊豆半島ジオガイド協会に所属し、
伊豆半島の各所で野草を紹介するワークショップなどを開催されています。
彩さんから春菜さんにオファーをしてもらうと、
快く引き受けてくれました。

赤池完介さん彩さんご夫妻、塚本春菜さんとわが家

右から赤池完介さん彩さんご夫妻、塚本春菜さんとわが家。

春菜さんが南伊豆に来てくれることが決まり、
その後メールで打ち合わせを始めました。

まずは、どこの場所で野草を摘むかということが最大の課題です。
下田や南伊豆には山がたくさんありますが、
無断で入っていいかというとおそらくまずい。
彩さんがいろいろとリサーチしてくれたのち、
友人宅の裏山をお借りできることになりました。

その友人というのは、わが家に米づくりを指南してくれている
中村大軌くん

彩さんは大軌くんとご近所さんでとても親しく、
わが家も何かとお世話になっている友人です。

下田で暮らし始めて感じるのは、
こうしておおよその友だちがつながっているということ。
小さいコミュニティの特徴だと思うのですが、
友人との距離が近いので何かと相談しやすいと感じます。

東京から移住してきた身からすると、
友人に山を借りるというのは不思議な感覚です。
友人との距離感も、そして自然とも密接なこの環境ならでは。
本当に恵まれています。

もうひとつの懸念材料。
その時期に、はたして友人の裏山に野草が生えているかどうか。
それを確認すべく、彩さんと春菜さんが事前に下見に行ってくれました。
その後のメールでは、想像以上にたくさんの野草が見つかったとのこと。
ふたりのテンションが上がっているのが伝わってくるような内容で、
こちらもいよいよ当日が楽しみになったのです。

小さい小さい蛙

小さい小さい蛙。娘が捕獲してかわいがっていました。

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食べられる野草は
どれくらいある……?

当日の早朝はかなり強い雨。
大丈夫なのか? と心配でしたが、次第に空が明るくなり
集合時間にはすっかり雨もやんでくれました。

この日集まったのは春菜さんと彩さん、彩さんのご主人の完介さんと
息子さんふたり、そしてわが家の総勢8人。
雨露にぬれた地面を踏みしめながら、
水分たっぷりの気持ちのよい山の空気を吸いながら散策開始です。

野草探し

散策を開始したものの、素人目にはどの草も
食べられそうに見えないし、ただの草に見える。
そうした中から、春菜さんは次から次へと
食べられる野草を見つけ出してくれます。

「これはオニノゲシね、これはギシギシ」
初めて耳にする名前ばかり……。

「あ、ここにミョウガがあるね」
聞き覚えのある名前に一同反応。

「ミョウガって、あのミョウガですか?」
「そうそう、あのミョウガ。
もう少し大きくなってから収穫したほうがいいね」

採りたてのウドはみずみずしい

春菜さんが手にしているのはウド。採りたてはみずみずしいので、サラダにして食べたり、味噌をつけてそのままいただきます。

この日はおよそ20種類の野草を春菜さんに案内してもらいました。
不思議なことに、みんな次第に目が慣れていき、少しずつではありますが、
野草を自分たちで見つけられるようになってくるのです。

さらに、いつも素通りしていた地面を
こうしてじっくり見つめるという行為が何だか妙に心が落ち着く。
しかも、自然が生み出したそれぞれの造形美に
あらためて感心してしまいます。

タラノメ

食べられまい! としているのでしょうか、タラノメのこの芸術的なとげ。不思議です。

ユキノシタ

赤い色が美しいユキノシタは、中耳炎のときに葉の絞り汁を耳の中にたらすと治るといわれています。かわいらしい葉っぱを天ぷらにしていただくと、ほんのりとした苦みが感じられます。

キクラゲ

木に自生していたキクラゲ。これも収穫していただきました。

大きくなったタケノコ

「大きくなったタケノコでも、おいしいんですよ」という春菜さん。普通だともう手を出さないサイズのタケノコですが、食べられちゃうんです。

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みんなでつくって食べる、野草ランチ

さて、かごにたくさん野草が収穫されたところで、
これからがまた楽しみのひとつ。
持ち込んだ調理道具を用いて、みんなで昼ごはんをつくります。

野草ランチ調理中

摘みたての野草

タケノコの処理とクルミを準備中

春菜さんはタケノコの処理を、娘はサラダのクルミの準備中。

タケノコは先のほうだけを調理

タケノコは先のほうだけを使います。普通だとあく抜きをしますが、とったばかりのものならその必要がないのだそう。

天ぷらにしたタケノコ

そうして天ぷらにしたタケノコ。まったくえぐみは感じられず、ただただ香りがよくおいしい!

いろんな野草を天ぷらに

春菜さんが今回考えてくれたメニューは、
野草のサラダと天ぷら、そしておひたし。

野草のサラダ

サラダはタンポポ、コオニタビラコ、ウドに、クルミとゆで卵をトッピング。ほんのりとした苦みや深く濃い味わい。そして、生命力のある野草で体が浄化されるような感覚です。

ウルイとツユクサのおひたし

ウルイとツユクサのおひたし。クセがなく子どもでも食べやすい野草です。採りたての葉は赤ちゃんの肌のように柔らかく、春ならではの青い香り。最高でした。

タケノコとキクラゲの中華和え

彩さんが即興でつくってくれたタケノコとキクラゲの中華和え。さっきまで生息していたキクラゲを食べるなんて初体験。肉厚でコリコリとした歯ごたえ、おいしくて箸が止まらない。

いろんな野草の天ぷら

アカメガシワ、サクラ葉、柿葉、ウド葉、ドクダミ、タケノコ、オニノゲシ、ユキノシタ、ワラビ、セイタカアワダチソウ、スイバ、三つ葉、ウマノミツバ、タラノメを天ぷらに。彩さんは米粉の製造販売をしています。今回はその米粉で天ぷらをしてくれたのですが、小麦粉よりも風味がよく、さらにカリカリに揚がる。これも大きな発見で、わが家はこの日を境に天ぷらは米粉を使うようになりました。

[ff_assignvar name="nexttext" value="あの臭い野草も食べられる!?"]
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まだまだ広がりそうな
下田・南伊豆の「山の楽しみ方」

天ぷらは揚げたそばから手を伸ばし、熱いうちに頬張るというスタイル。
みんなひと口、口にするたび
「ん!!! なんだこれ! うまい!」の感想。
そして、それぞれの野草に独特の香りと
歯触りがあることを発見していきました。

ちなみに、この日驚いたことのひとつに、
ドクダミが食べられるということ。
ドクダミといえば、煮ても焼いても食えない臭い草というイメージですが、
これを天ぷらにすると臭みがやわらぎ、ほんのりとしたドクダミの香り。
ドクダミと知らなければ「なんだか上品な香り」
と思ってしまうかもしれません。

野草の天丼

ご飯に天ぷらをのせて天丼に。これがおいしくて食べ過ぎてしまったほど。

「この草よく見る! 庭にたくさん生えてる!」というような野草が、
こんなにおいしく食べられるということに一同深く感動。
そして、みんなでこうして山を歩き、
一緒に調理して食べる楽しさをあらためて感じたのです。
「なんか、すっごくいい時間だったね~」というのが私と彩さんの感想。

テントの下でランチ中

山の持ち主である大軌くんも、自分の山にキクラゲが生えていることや、食べられる野草がこんなにたくさんあることを知らなかったそうです。桜の新芽の天ぷらを食べてひと言、「何これ? うんめ~!」

自分が何かを求めたとき、それを手助けしてくれる
友人の存在というのがとてもありがたく、
あらためて頼もしいと感じました。

そして、下田や南伊豆はこんなにもすばらしい環境に
恵まれているということ。
海や山がすぐ目の前にあるからこそできること、学べることは、
無限に広がっているのだと思います。

娘もこの日の経験がとても楽しかったようです。
「また山の中でみんなと料理したい!」と言います。
今度はもう少し人数増やしてみようかとか、
こんなこともできるんじゃない? とみんなで話しています。
例えば野草を使って化粧水をつくったり、
薬効に結びつけたワークショップとか。

ひょんなきっかけで始まったこの会が、
これから先いろんなかたちで発展していけたらおもしろい。
そんなことを感じた連休の最終日でした。

収穫したウド

収穫したウドはサラダと天ぷらでいただきました。

野草もりだくさんの天丼

text & photograph

津留崎徹花 Tetsuka Tsurusaki
つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。移住先を探した末、伊豆下田で家族3人で暮らし始める。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。

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