人が集まる場所をつくってみたい。
「暮らし研究所」という構想
海が見えるバーベキュー場で
味噌仕込み会
毎年、自家製味噌をつくっている津留崎徹花さん。
下田に移住後、今年は伊豆の友人たちを招いて味噌仕込み会をすることに。
せっかくなら気持ちのいい屋外でやってみようと
海の見えるロケーションの〈ガーデンヴィラ白浜〉で開催。
人が集まり、暮らしのひとコマを一緒に楽しむ。
この日の体験から、ある構想が生まれたようです。
海の見える場所で
味噌仕込み会!
2月といえば全国的にまだまだ寒さが厳しい時期ですが、
下田は時折春のような陽気に包まれます。
東京と比べて気温が5度以上高い日もあり、え? 本当にいま冬だっけ?
というようなTシャツ姿の人を見かけることも。

わが家の庭にある河津桜も次第に開き始めました。メジロが数羽遊びにきています。
そんな2月のある日、友人たちと一緒に味噌を仕込む会を開きました。
会場は〈ペンションガーデンヴィラ白浜〉に併設された
〈伊豆白浜バーベキューガーデン〉です。
夏はバーベキュー目当ての観光客や地元のお客さんで賑わい、
寒い時期は施設内にある小屋の貸し出しや、
イベント会場としても利用されています。


奥に見える2棟の小屋は、それぞれ1時間単位で借りることができます。お弁当を持ち込んで友人たちとランチを楽しんだり、先日はアクセサリー販売の会場としても利用されていました。
移住して以来、何かとガーデンヴィラさんにお世話になっているのですが、
そもそものきっかけは写真家のMOTOKOさんからの紹介でした。
地方活性の担い手としても活躍されているMOTOKOさんは、
移住に向けて右往左往しているわが家のことを
ずっと気にかけてくれていました。
わが家が下田へ移住することを知り、
MOTOKOさんの下田人脈と私たちをすぐにつないでくれたのです。
そのうちのひとりがガーデンヴィラの宝田麻理子さんでした。
その後、友人や家族が宿泊させていただいたり、
昨年は南インド料理のイベントを一緒に開催したり、
いろんなカタチでおつき合いさせていただいています。
そして、今回は味噌仕込み会をやろうということに。


以前この連載でもお伝えした「下田インド化計画」というイベント。南インド料理をつくるユニット〈マサラワーラー〉を下田へ招き、100人以上の参加者がバナナの葉に盛りつけられたカレーを食べるという、いままでにない体験。今年2019年も開催予定です。
今回の味噌仕込み会は麻理子さんからの提案でした。
昨年、味噌仕込みの様子をFacebookで投稿したところ、
それを見た麻理子さんが仕込み方を教えてほしいと
声をかけてくれたのです。

わが家の味噌仕込みは今年で7回目になります。
はじめは家族だけでやっていたのですが、
そのうち友人たちも加わり一緒にやるように。
東京で暮らしていたときは自宅に5世帯くらいが集まって味噌を仕込み、
そのあと酒宴を楽しむというのが恒例となっていました。
今年は下田の友人を誘ってみようと思っていたところに、
麻理子さんが声をかけてくれたのです。
それならば、みんなで一緒にバーベキューガーデンで
やろうじゃないかということになりました。

昨年仕込んだ味噌。毎年わくわくする最初のひと口、う~ん甘い、おいしい。
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下準備も楽しみながら
味噌に使用する大豆や糀(こうじ)は、事前に私が手配しておきました。
なるべくなら地元のものをと思っていたのですが、
大豆に関してはまとまった量が確保できず九州のものを取り寄せました。
糀はいつもお世話になっている〈糀屋〉さんにお願いしました。
開催前日、大豆を洗って翌朝までたっぷりの水に浸水。それを終えてから
糀を引き取りに松崎(下田から車で40分ほどの場所)へ。

〈糀屋〉さんの3代目となる佐藤可ね子さん。甘酒をふるまっていただいたりお米をいただいたり、いつも温かく迎えてくれるので心が和みます。

私が焼く玄米酵母のパンもこちらの糀を使っています。マクロレンズでのぞいた菌の世界は神秘的です。
当日は早朝から大豆を茹で始めます。
7キロ近い大豆を茹でるのは初めてのことで、
時間までに間に合うのかというプレッシャーを感じながら
なんとか間に合いました。
大豆と糀を車に積み込み、バーベキューガーデンへと急ぎます。

今回使用した大豆は〈みさを大豆〉という熊本県の在来種の大豆。大量生産に向かないことから一時は姿を消しかけ、幻の大豆といわれているのだそうです。自宅にあるボールや鍋などを総動員して、大豆を浸水。

熊本県の農家さん〈発酵農園〉さんが農薬や化学肥料、動物性肥料を使わず、手間ひまかけて育てたみさを大豆。小振りながらもしっかりとした歯ごたえと味わいからは、豆そのものの強い生命力が感じられます。湯気も茹で汁も甘い香り。

2月に屋外で味噌仕込みなんて、寒くて凍えるのでは?
とも思っていました。
けれど、ありきたりではない味噌仕込み会にしたい。
せっかくなら気持ちのよいこの屋外でやってみようよと、
麻理子さんと事前に話し合ったのです。
寒い中でも気分が盛り上がるように、たき火と焼き芋、
温かい味噌汁や甘酒も用意もしておきました。

たき火にかけられると、味噌汁も何だか特別なものに感じられます。
そうして迎えた当日。
真っ青な海と空が広がり、コートがいらないほどの陽気となりました。
子どもたちはすでに芝生の上で走り回ったりトランポリンではしゃいだり。
その様子を見ただけでうれしくなってしまいます。
あ~、よかった。

今回参加してくれたのは合計8世帯。
東京から参加してくれた麻理子さんの友人家族や私の友人たち、
そしてバーベキューガーデンのスタッフの方々です。
麻理子さんが用意してくれたお昼ごはんをいただきながら、
まずは材料について少しだけ説明をしました。
みさを大豆のこと、そして松崎の糀屋さんのことなど。
つくり手さんやその背景を知ると味噌仕込みが一層楽しくなりますよね。

麻理子さんが用意してくれたケータリングは、南伊豆の〈なおかこあん〉さんによるビーガン料理。色彩も美しく、そして体にすっとなじむやさしい味わいです。(撮影:宝田麻理子)

下田でつくられている味噌や、わが家が昨年仕込んだ味噌など、味噌の味比べをしてみました。それぞれ塩加減や奥行きが違っておもしろい。

(撮影:宝田麻理子)
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味噌仕込み会であらためて思ったこと
いよいよ作業に移ります。まずは「塩きり」という作業。
塩きりというのは塩と糀をよく混ぜ合わせる工程です。
これをしっかりやることも、おいしい味噌ができる秘訣だといいます。
「手がさらさらになる~、気持ちいい~」なんて感想が漏れていました。

次に茹でた大豆をつぶしていきます。
今回は子どもたちがやりやすいように、ビニール袋を使いました。
ひとりがやり始めると、「私も私も!」と
みんながせっせと手伝い始めます。
しばらくするといきなりテーブルにのぼり出し、
足で踏み始めた子どもたち。
その姿があまりにもかわいくて、大人も子どもも一緒に大笑い。




テーブルから落ちると危ないからということで、場所を芝生に移してさらにフミフミ。
大豆をつぶしてひとしきり盛り上がった子どもたちはここで退散。
また遊び場へ戻っていったので、
ここからは大人がしっかりと仕上げていきます。
つぶした大豆と塩きりした糀を混ぜ合わせていくのですが、
これがなかなか力のいる作業なのです。
無言になりながら黙々と手を動かし続けます。
こうして大人が集中できるのも、
子どもが飽きずに遊べるこの環境ならでは。
子どもたちが安心してのびのびと遊べる場所ってなかなかないですよね。


遊びの合間に味噌をつまみ食い、そしてまた遊び場へと戻っていくの繰り返し。

当日はちょうど節分ということで豆まきをしました。娘と友だちが事前に鬼のお面を制作。豆を入れる箱を折り紙で折り、「鬼は~外!」、の背後で黙々と作業する大人たち。
大豆と糀がよく混ざり合ったら、団子状にして容器に詰めていきます。
詰め終わったら容器についた汚れを落とし、
カビを予防するための塩を少量ほどこしてラップや和紙などで密閉。
重石をして保存し、10か月くらいするとおいしい味噌ができ上がります。



味噌に使用した糀で甘酒をつくりました。作業を終えてほっとしたところで、最後にみんなで乾杯。
東京から参加してくれた男の子が、
帰り道にこんなことを話してくれたそうです。
「いままでの旅行で、一番楽しかった!」と。
もちろん味噌仕込み会のことだけではないと思いますが、
その断片に関われたことは私にとって貴重な経験でした。
最近、ふとこんなことを思い出しました。
初めてバーベキューガーデンを訪ねたときのこと。
その日は満月に近く、漆黒の海に反射した月がそれはそれは幻想的で。
その光景を夫と眺めながら、私は半ば興奮状態でした。
「いつか自分たちもこんな場所をつくってみたい」そう思ったのです。
今回の会を開催してみて、その「いつか」というイメージが
少し具体的になったうように思います。
人が集まり、暮らしのひとコマを一緒に楽しめるような場所を、
自分たちもつくれないだろうか。
そんなことを夫と話しています。
まだまだぼんやりとですが、カメラマンという仕事を軸にしながら、
ときどきパン屋を開店したり、みんなで味噌を仕込んだり、
子ども向けの料理教室をやったり。
同じ施設内で夫がゲストハウスをやるとか。
そんな、みんなの基地となるような場所、
「暮らし研究所」なんていうのはどうかな。
今回の味噌仕込み会を機に、そんなことを考え始めています。

