下田の干物がトートバッグに。
〈Himono bag〉の販売で生まれた、
新たなつながり。
干物愛あふれるトートバッグ
伊豆下田に移住してから、干物のおいしさに開眼した
カメラマンの津留崎徹花さん。
干物を撮影するうちに、バッグにしたらかわいいかも? と思いつき
ついに、自分でつくってしまいました。
それほどおいしい干物屋さんとの出会いや
〈Himono bag〉が生まれるまでのストーリーです。
おいしい干物がかわいく見えてきた
下田に移住してからというもの、
パンの販売や味噌仕込みのワークショプなど、
カメラマン以外のことをいろいろと経験しています。
そして最近またひとつ新しいことを始めました。
〈Himono bag〉という商品の販売です。
どんなものかというと、鯵の干物を撮影して転写シートに起こし、
それをプレス加工したバッグ。
なぜそうした商品をつくることになったのか、
それは下田に移住したことがきっかけでした。

東京に住んでいたときには、ほとんど関心がなかった干物。
けれど、下田で出会った干物があまりにおいしくて、
「あ~、干物食べたい……」なんてつぶやいてしまうほど
病みつきになってしまったのです。
ある日いつものように馴染みのお店へ出かけると、
きれいな目をした鯵がずらりと並んでいました。
それを見ていたらふと頭に浮かんできたのです。
「これ、バッグにしたらかわいいんじゃないか……」と。

とりあえず1枚、自宅で干物バッグを試作してみました。
でき上がったバッグを持ち歩いていると、
不思議がられながらも「かわいい!」となかなかの評判。
フランスから遊びにきた友人も、
「なにこれ?? フランスでうけるかもしれないよ!」と。
周りのリアクションが想像以上によかったので、
正式に商品化することを考えるようになりました。
もちろん「こんなバッグ買う人いるの?」という声もありましたが、
自分の直感ではいいイメージしか湧いてこない。
ここで迷いが生じていたらやめていたと思うのですが、
不思議なことに少しの迷いも感じなかったのです。
ごく自然に動き始めた感覚でした。
まずは土台となる布バッグを探してみたのですが、
イメージに合うものがどうしても見つからない。
自分のなかにあったのは漂白されたような純白で
スムースな風合いの生地に、干物がぽつんと佇むイメージ。
アパレル業界の友人にも相談したのですがやはり見つからず、
一から縫うしかないとのこと。
既製品のバッグを使うのと比べると倍以上の値段になってしまいますが、
どうしてもそこにはこだわりたかったので
縫製業者に発注することにしました。

最初は白だけでつくる予定でしたが、試作した黄色も評判がよかったので、同じ生地で制作することにしました。
土台となるバッグが決まり、次はバッグの肝ともいえる
「鯵の干物」の撮影です。
今回撮影させていただいたのは、外浦海岸にある〈万宝〉さんの干物。
なぜ万宝さんにお願いしたのかというと、
「こんなすてきなお店が下田にあるんだよー!」
とみんなに知ってもらいたいほど魅力的なお店だからです。

親子2代にわたりお店を切り盛りしている平井さんご家族。右側から平井恭一さん、国子さん、亜沙美さん、勇一さん。
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干物屋〈万宝〉と平井さん一家に魅せられて
このお店の魅力をあげるとすれば、
もちろんそのひとつは干物のおいしさにあります。
店主の恭一さんと息子さんの勇一さんは、
素材の仕入れに徹底的にこだわり抜いています。
市場へ出かけても、お眼鏡にかなう魚がなければ手ぶらで帰ってくるほど。
逆に、いい素材に出会ったときにはとびきりテンションが上がるという
干物ひとすじに打ち込んでいるのです。
そうして選び抜かれた上質な魚だけを丁寧にさばき、
素材やその時々の気候に合わせた塩加減で調味しています。

万宝さんの干物を撮影してみると気づくのが、その見た目の美しさ。
傷や身の剥がれのない干物のパリッとした佇ずまい。
目の透明感や肌の輝きも美しく、職人としてのこだわりと
丁寧な仕事ぶりが見て取れます。
Himono bagに使用した写真は、ほとんど修正をしていません。
それほど状態のよい干物というのも、なかなか珍しいのです。

撮影に使用したカット。自然光で照らすとキラキラと銀色に輝き、背中は青みがかったグレー。光の当て方で目の雰囲気がかわいくも、鋭くもなる。なかなか干物の撮影も奥が深いと知りました。

上の写真から転写シートをつくり、プレス加工するとかわいらしい鯵の干物になります。
万宝の店内のケースには、いかにもおいしそうな干物が
ずらりと並んでいます。
その中から食べたい干物を選んでお店の方にお願いすると、
店内の囲炉裏で焼いてもらえます。
これがまた、このお店に通ってしまう理由なのです。
炭火でじっくりと焼かれた干物は旨みと甘みが凝縮されていて、
ひと口食べると「う~ん、うまい!」とうなってしまうほど。
そして、干物が焼けるまでのあいだ
お店の方と交流できるのがまた楽しい時間です。
「どっから来たの?」と旅行者にも
気軽に話しかけてくれる平井さんご一家。
さらに、恭一さんのやわらかな伊豆弁がなんとも味わい深く、
心が次第にほどけていきます。
私も移住して間もない頃、声をかけてもらい、あれこれとお話をしました。
家族で移住してきたことを伝えると、
「そうけぇ〜、下田はいいところだからさぁ、
ねぇさんかんばらっしぇ〜!」と励ましてくれたのを覚えています。

身を食べ終わったあとに残った頭や骨は、再度炭火で焼いてくれます。すると、かりかりっと香ばしくいただくことができるのです。これがまたおいしい!
実は、Himono bagをつくり始めたときは、
ただ干物を撮影させてもらうだけのつもりでした。
それが万宝さんに段々と通っていくうちに、いつの間にか
一緒につくり上げていく感覚になっていったのです。
こんなことも伝えたい、あんなことも知ってほしい。
そうして次第に膨らんでいきました。
そのひとつが、恭一さんの幼少期の思い出です。
「オラは伊豆でも山のほうで育ったんだけど、
海まで遠かったから、魚なんてめったに食べれなくてさぁ。
ときどき行商のおばちゃんが山越えて干物売りに来てくれんだよぉ。
そうしんとさぁ、家族みんなで囲炉裏に炭起こして炙って食べるんだよぉ、
そんりゃうんまくてさ~」
にっこりと頬を上げて、何ともうれしそうな笑みを浮かべた恭一さんが
とても印象的でした。
この話もみなさんに伝えたいと、リーフレットに記載することにしました。

鯵にするか金目鯛にするか迷っていたとき、写真をプリントして持参。恭一さんはプリントを見るなり「これは背中の脂がきれいだね~」と、魚の質をすかさずチェック、さすがです。

恭一さんの言葉の横には英訳をつけました。これも友人の協力によるもの。感謝です。
職人としてのこだわり。朗らかできっぷのいいご家族。
東京から来た友人が「このお店こそ下田のハイライトだね!」と、
感動していました。
こんなすてきなお店が下田にあるということを、
このHimono bagをきっかけに知ってくれたら。
そんなつながりができたら、おもしろいと思うのです。


リーフレットのデザインやWebショップの立ち上げなど、私が苦手なことは友人たちが力を貸してくれました。本当にありがたいです。
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Himono bagで生まれる新たなつながり
発案からおよそ1年、ようやくHimono bagが完成しました。
ほっとした気持ちと同時に、
もうあとには引き下がれないという不安もよぎりました。
けれど、実際に販売を始めてからは
その不安もしだいに消えていったのです。
SNSで販売開始を告知すると、友人たちが注文してくれたり
情報を流してくれたりと、商品が次第に動き始めました。
さらに、東京や下田の店舗でも扱ってもらえることになりました。
東京の〈STOCK THE PANTRY〉と下田の〈Table TOMATO〉、
そして万宝さん。また、ゴールデンウィークに開催されるイベントでも
友人が販売してくれます。
正直なところ、みなさんの応援に涙が出るほど感動しています……。
こうして、いろんな方の助けを借りながら、
少しずつ広がり始めているのです。

さらにまた、うれしくなる出来事がありました。
夫が以前この連載で取り上げた白浜にある温泉民宿〈勝五郎〉さん。
その土屋さんご夫妻がHimono bagを買いに
万宝さんに出かけてくれました。
それだけでとってもうれしかったのですが、
さらなるつながりがここから生まれたのです。
土屋夫妻がHimono bagを購入してくれたことを、
万宝さんがFacebookに投稿しました。
それを見た万宝さんの常連客の方が、
勝五郎さんに宿泊してくれことになったのです。
Himono bagがきっかけで、新たなつながりが生まれたのです。
国子さんがこんなことを話してくれました。
「三人寄れば文殊の知恵っていうでしょ。
このバッグがきっかけで小さいつながりができるといいよね。
いろんな個性を持ってる人が結びついて、
また新しいものが生まれて広がっていくような」

いつもこうして見送ってくれる平井家のみなさん。「お客さんは数ある干物屋の中からうちを選んでくれたんですよね、それだけで感謝です。せっかく来てくれたんだから喜んでくれたらいいな~って思うんですよね」と、国子さん。
いままで踏み込んだことのない新たな世界を経験しています。
「カメラマンなのに、私はいったいなにをやっているのだろうか……」
と思うときも正直あります。
けれど、やはり新しいことに挑戦するのは刺激的であり楽しいものです。
いままで見えていなかったことに気づいたり、
新しいつながりが生まれたり。
Himono bagをつくってみて、そんなことを感じました。

Himono bagは以下で販売しています。
よろしくお願いいたします!
IKACHI
Instagram:@ikachi65
万宝
Instagram:@himono.manpou
STOCK THE PANTRY
Instagram:@stockthepantry
Table TOMATO
Instagram:@tabletomato
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