北の宝、北海道の自然環境を守る NPO法人サロンルンカムイの 気になる活動

2023年に設立された、北海道・弟子屈町(てしかがちょう)の自然保護・環境保護を目的としたNPO法人弟子屈自然共生協会「サロルンカムイ」。特別記念物である丹頂鶴、弟子屈町に生息する野鳥・絶滅危惧種や、屈斜路湖、釧路川をはじめとするダイナミックで美しい自然環境を保護する活動を行っている。

TAMATEBAKO AYNU

「サロルンカムイ」は、書家・美術家である川邊りえこが設立。そんな彼女が弟子屈に開設した「TAMATEBAKO AYNU」には、7つのゲストルームと、誰もが集える大きな応接スペースが備えられ、まるでシェアハウスのような場になっている。

「TAMATEBAKO」の庭の池。

「TAMATEBAKO」の庭の池。

AI化によりどんどん便利になる現代。「サロルンカムイ」では、多少遠回りでも未来につながるための営みを続ける、アイヌ文化のライフスタイルについて発信。2025年8月末にはアイヌ村ともいわれる平取町二風谷より、平取アイヌ文化保存会 食文化部長、貝澤美和子先生を迎え「アイヌ伝統料理の宴」を。札幌大学教授の本田優子先生による「アイヌの食文化」の講演を2日間にわたって主催した。

自然、植物、道具、現象、あらゆる存在に宿る魂を持つ霊的存在=カムイの信仰に基づき、カムイに感謝し共存するのがアイヌの生き方。食事ひとつとってもシンプルで無駄がなく、物も情報も過多な現代人にとって学びの宝庫といえる。

大地の恵みと共生し、自然のいち部として生きる知恵に支えられているアイヌ民族は、必要以上に採らず、次の世代や他の生き物のために残すことで自然の循環を守ってきた。未熟な作物を無駄にせず、自然との調和を大切にする暮らしの知恵はまさに目から鱗。

ちなみに弟子屈町の圧倒的な北海道の自然の美しさを守りたい気持ちに誰もがなる、屈斜路エコツアーズーは、屈斜路湖や釧路川源流のカヌー体験、自然体験ができるので併せておすすめ。まだ見ぬ北海道の扉を開く、サロルンカムイの活動は以下のリンクにて参照。

information

サロルンカムイ

沖縄本島北部——森から海の彼方へ ゆんたくが導く旅

(※「ゆんたく」とは沖縄の方言で、おしゃべりや語らいのこと。初めて会う人同士でも、食卓やお茶を囲めば自然と笑い声が生まれ、心がほどけていく。そこから縁が広がり、思いがけない出会いや出来事へと繋がっていく、沖縄ならではの温かい文化である。)

夕陽が水平線に沈む頃、徳之島を出た船は静かに那覇港へと着いた。
翌朝、車で本島を北上する。目指すのは、沖縄本島北部——島では「やんばる(山原)」と呼ばれる森の地だ。
那覇を出てしばらくすると、名護の街を越えたあたりで空気が変わる。エメラルドグリーンの海の向こうに山並みが現れ、やんばる三村——大宜味村、国頭村、東村が近づいてくる。そこから先は、森と海が互いに寄り添いながら、太古のままの姿で広がっていた。

名護の街を過ぎ、58号線を北上する。

名護の街を過ぎ、58号線を北上する。大宜味村に入った。

安須森(アスムイ)へ——“始まりの地”を訪ねて

旅の始まりに選んだのは、沖縄本島最北端の国頭村にある辺戸岬(へどみさき)。 ここは琉球開闢(かいびゃく)の地とも伝えられ、沖縄の古文書「中山世鑑」には“安須森(アスムイ)”と呼ばれる山が記されている。四つの峰——シノクセ、アフリ、シチャラ、イヘヤ——が並び立つこの山は、祖神アマミキヨが降臨して国づくりを始めたとされる神聖な地である。そして、この山こそが数ある御嶽(うたき)の中で1番目の御嶽とされている。「仰ぎ見る聖地」として、この島の先人から「頂部は人間が足を踏み入れるべきではない」と伝えられてきた場所だ。
沖縄本島には3万6千年前の人骨が見つかっており、徳之島と同様に地質と人類の長い歴史の痕跡が多く存在する地域である。 一説には、琉球王国に繋がる人々は1000年前に北方からこの岬に上陸したとされる。 安須森(アスムイ)の切り立つ山々、打ち寄せる波、そしてこの地にしかない植物が織りなす風景は、まさに“始まりの地”にふさわしい。
沖縄本島の地盤は中南部は主に徳之島と同様の琉球石灰岩であるが、北部は古生代の石灰岩が見られる珍しい場所でもある。この岬から安須森の山は2億年以上前の石灰岩が地殻変動により地表に押し上げられ、その現象が分かりやすく現れた場所なのだ。僕は岬の北端から山手へと少し入った「アスムイハイクス」と呼ばれる歩道を進んだ。安須森の中腹の山中、露出した岩肌の熱帯雨林を2時間くらい歩けるコースがある。かつて祈りを捧げた拝所も多数あり、まさに地球の記憶が息づく場所。 この堆積岩が長い時間をかけて風化し、やんばるの森を育み、現在の多様な生態系の母体となっている事を知ることができた。

辺戸岬より奥に聳える安須森(アスムイ)を望む。かつて人はこの切り立つ山を目指してやって来た。そして此処に上陸したのだろう。

辺戸岬より奥に聳える安須森(アスムイ)を望む。かつて人はこの切り立つ山を目指してやって来た。そして此処に上陸したのだろう。

岬では別天地のような光景が広がっている。

岬では別天地のような光景が広がっている。

森と水の源に触れる

翌朝、沖縄本島最高峰・与那覇岳(503m)へ登った。
そこは緑が隙間なく重なり合う聖域だった。シダやヒカゲヘゴがうねり、霧の中で葉が光を吸い込むように広がる。
登山中、森には名も知らぬ虫の声やアカショウビンやヤンバルクイナ鳴き声が響いていた。
やんばるの森は、日本列島の命を広く包み込む豊かなすみか。
その中には、ここでしか息づけない生きものたちが幾重にも重なり、森を織りなし、川を渡り、山と海をつないでいる。
湿り気を含んだ風、赤く酸を帯びた大地、石灰岩に染み込む水脈——それらすべてが静かな循環となって命を支えてきた。
歩みを進めるたび、足音が地中深くへと溶け込み、はるかな時を遡って遠くまで響いていくように感じられた。
僕はもっとこの豊かな自然に深く触れたく、やんばるの森や川を巡る事にした。

与那覇岳の登山道に向かう途中、ひしめく樹々の山肌がこの森の重厚感を感じさせる。

与那覇岳の登山道に向かう途中、ひしめく樹々の山肌がこの森の重厚感を感じさせる。

与那覇岳の登山道より

与那覇岳の登山道より

世界自然遺産・やんばるの価値

やんばるの森は、2021年に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」として世界自然遺産に登録された。
登録理由は、「生物多様性の保全において顕著な普遍的価値」が認められたためだ。
ここに生息する多くの生き物たちは、琉球列島がユーラシア大陸から分離し、島々が独立していく過程で進化した固有種・固有亜種である。
たとえばヤンバルクイナやノグチゲラ、ケナガネズミといった動物は此処にしか生息しておらず、まさに進化の生き証人といえる存在だ。僕も森の中ではリュウキュウヤマガメ、イボイモリ、クロイワトカゲモドキなどの希少な固有種と出会う事ができた。
やんばるは単なる美しい自然ではなく、地球の進化の歴史と生態系の奇跡が今も生きている命の保管庫なのだ。

やんばるの森は豊かな水と独特の土壌、そこに育つ植生に育まれている。

やんばるの森は豊かな水と独特の土壌、そこに育つ植生に育まれている。

ター滝。

ター滝。

自然と共に生きる人々

この豊かな生物多様性は、そこに暮らす人々に、食料や建築資材といった生活の糧をもたらすだけでなく、気候を和らげ、水を清らかに保つなど、環境を整える働きもしてきた。さらに、景観の美しさや信仰と結びついた精神的な恵みも生み出し続けている。
やんばるの魅力は、森や動植物の存在だけではない。こうした自然を古くから守り、共に生きてきた人々と、その関わりの中で育まれた風土があるのだ。旅では、自然と深く結びついた生業を今も続ける人々に、数多く出会うことができた。

大宜味村押川という六田原展望台のすぐ下の高台にある集落にはシークヮーサー農家がたくさんある。
その中でも無農薬でシークヮーサーを育てている農家の上原吉子さんと出会った。
「ここ山の畑の酸性土壌じゃないと、この酸っぱ味と甘味のバランスにはならないの。酸味が全然違う」寒暖差と地形、そして時間が育む独特の酸味と香り。かつては自然に自生し、各家庭で食すだけの木を植えていた。今では身体に良い効能が認められ、産業へと発展している。
ここの畑も米やサトウキビからシークヮーサーへ──土地は時代に応じて育むものを変えながら、命を育て続けている。
「無農薬栽培は別に難しくないよ。『私はいまから生えますよ』って植物が教えてくれるから」。
笑いながら絞ったジュースを差し出してくれた。

畑で様々な植物を育てている吉子さん。

畑で様々な植物を育てている吉子さん。

三村の中でも西側のメイン通りである58号線からわざわざ足を伸ばさなければいけない東村は本島の中でも離島のような雰囲気を感じるエリア。その中でも更に一足伸ばした高江の山の中で30年以上前からコーヒー栽培を行うヒロコーヒーファームを訪れた。1993年、先代の足立浩志さんは、キャンピングカーで3年を掛けて島を巡り、ここが適した場所だとコーヒー栽培を始めた。沖縄珈琲のパイオニア的存在の和宇慶朝傅(ワウケチョウデン)氏より、2〜3年物の苗木を購入し植付けから始まった。土地の改良から台風対策、皮剥きや焙煎の道具など全て手作りで行ってきた。苗木が台風でわずか数本になった時もあるが守り続けてきた。現在は娘の朋子さんが2代目を継ぐ。 赤土の酸性土壌と寒暖差、軟水の水が、コーヒーの味に酸味と深みを加える。「紆余曲折ありましたが、自由な父が遺した宝物のような農園を守りたかった」と語る朋子さん。沖縄は気温や降雨量が栽培に適した最北端に位置し、日本のコーヒー栽培の発祥とされている。現在は多く存在するコーヒー農園の先駆者として、ここでしか飲めない一杯が、物語と共に味覚に残る。

まるで中南米を感じさせるカラフルな雰囲気。先代の店舗は台風で飛んでしまい、現在の店舗は2代目の朋子さんと愛弟子達の協力で再建した。

まるで中南米を感じさせるカラフルな雰囲気。先代の店舗は台風で飛んでしまい、現在の店舗は2代目の朋子さんと愛弟子達の協力で再建した。

店主のパワフルな朋子さんとカラフルな店内。どちらも全力だがお話を伺うと全てに物語が込められていた。

店主のパワフルな朋子さんとカラフルな店内。どちらも全力だがお話を伺うと全てに物語が込められていた。

大宜味村喜如嘉(きじょか)集落の女性たちは沖縄の伝統織物「芭蕉布」を守り続けている。
糸芭蕉の栽培から糸作り、染織まで一貫して行う暮らしは、自然との共生そのものだ。芭蕉布会館ではその工程を見学することができた。
「芭蕉布(ばしょうふ)」は糸芭蕉という植物から作られる沖縄の伝統織物で、13〜14世紀頃から織られていたと言われ、16世紀の文献にも記録が残る古い布文化である。涼やかで、肌にまとわりつかない芭蕉布は、琉球各地の庶民から王族・士族の着物としてもなくてはならないものだった。
第二次世界大戦後、途絶えかけた芭蕉布の技術と文化を復興させたのが、喜如嘉出身の平良敏子(1921–2022)さんである。戦後、「沖縄の誇り」として芭蕉布を守り継ぐことを志した。
その後、糸芭蕉の栽培から糸作り、織り、染めに至るまで一貫した伝統技術を体系化。1974年には「喜如嘉の芭蕉布」として重要無形文化財に指定され、自身も人間国宝に認定された。
自然の恩恵を最大限に活かし、季節や土地と一体化した暮らしの中で生まれる芭蕉布は、自然との共生が織り込まれた布そのものである。

芭蕉布作りは畑仕事から。糸芭蕉の原木は熟成に2〜3年かかる。野生のものは硬いので、栽培して柔らかくするために葉や芯を時々切り落とす必要がある。

芭蕉布作りは畑仕事から。糸芭蕉の原木は熟成に2〜3年かかる。野生のものは硬いので、栽培して柔らかくするために葉や芯を時々切り落とす必要がある。

栽培から織りまでの地道な工程を体系化し、村人が一丸となって作業を続けている。この形を現在へ繋いだ平良敏子さん。芭蕉布会館にはそっと写真が飾ってあった。

栽培から織りまでの地道な工程を体系化し、村人が一丸となって作業を続けている。この形を現在へ繋いだ平良敏子さん。芭蕉布会館にはそっと写真が飾ってあった。

国頭村桃原の人気店「やんばる家 玉栄」では、今では珍しい海水を使った豆腐作りが続けられていた。 店主・金城えつ子さんは旦那様と共に開業して20年以上が経つ。「海水から作っているのは北部ではこの店だけになってしまった。海水は海人(漁師)に沖合から汲んできてもらっている。甘くて美味しいってお客さんが言ってくれることが本当に嬉しい」と話す。
開業よりずっと海水を汲んでくれていた海人が卒業したため、今は近所の海人・玉村和也さんが引き継いでいる。マグロの一本釣りをしている彼は「色々な沖合に行くから、綺麗で良さそうな水があれば汲んできて豆腐作りに試してもらっている。最近は台風もあまり来なくなり、海が洗われなくなった。気候変動の影響を豆腐づくりからも感じます」海水は現在、紫外線殺菌処理を経て使用しているが、貴重な昔ながらの豆腐の味を頂いた。

毎朝2時過ぎから仕込みをしている。元気いっぱいの金城えつ子さん。

毎朝2時過ぎから仕込みをしている。元気いっぱいの金城えつ子さん。

海水を汲む海人の玉村和也さん。豆腐屋さんの近くで自らのマグロを提供している居酒屋「M96」を週1日だけopenしている

海水を汲む海人の玉村和也さん。豆腐屋さんの近くで自らのマグロを提供している居酒屋「M96」を週1日だけopenしている

朝、宿の親父が食材の調達に漁港の競りに行くというので同行させて貰った。
海人(漁師)や地元の人が親しげに話している。その中に一際ただならぬ雰囲気を放つ海人がいた。「一人追い込み漁」を編みだし、海に潜ってグルクン(タカサゴ)の群れをたった1人で網に追いこむ、山城善勝さん(81歳)。
戦後、焼け野原となった沖縄では、土地も畑も米軍基地にとられていたため、庶民が食べるものは海のものしかなく、それが海人の原点となった。「海は父。山は母。山が破壊されれば赤土が海へ流れ、どちらも死ぬ」と優しく笑う表情の奥には壮絶な人生の年輪を感じる。彼は自然の循環を守るため、かつてヘリパッド建設にも反対した。その横に居た若い海人・平良新希さんは「川の近くには魚が多いからね。居心地が良いんだろうね」と笑っていた。

辺戸名漁港の朝。

辺戸名漁港の朝。

勝ちゃんと呼ばれている山城善勝さん。語り尽くすには壮大過ぎる人生を生きて来られたみたいで、その半生を追いかけたドキュメンタリー映画も制作されたとか。

勝ちゃんと呼ばれている山城善勝さん。語り尽くすには壮大過ぎる人生を生きて来られたみたいで、その半生を追いかけたドキュメンタリー映画も制作されたとか。

平良新希さん。卒業していく漁師が多い中で今後の海を守る新たなる希望の彼。

平良新希さん。卒業していく漁師が多い中で今後の海を守る新たなる希望の彼。

森と海と人の交差点に立つ人たち

東村にはマングローブが残っている。マングローブとは、熱帯・亜熱帯の汽水域(淡水と海水が混じる場所)に生育する常緑樹の総称である。根を地上に張り出し、潮の満ち引きに耐えながら成長する特殊な生態を持つ。マングローブは、魚やカニ、貝など多くの水生生物の産卵・育成の場として重要であり、台風時の防風・防潮林としても機能する。東村の慶佐次(げさし)川には、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種のマングローブが自生しており、これほどの多様性をもった群生地は日本では極めて稀である。この場所は、マングローブの北限域に位置し、気温や塩分濃度、干満差など、あらゆる条件が偶然にも整った生態学的な奇跡の地といえる。
この場所で20年以上ガイドを続ける渡久山真一さんは「沖縄でマングローブの多くは失われたが、ここは先人たちが残してくれた貴重な場所。その恩恵の中で私たちは生かされている。故に次世代へ繋ぐ責任がある」と語る。現在は自ら「慶佐次レンジャー」を立ち上げ、環境の保全と教育活動を続けている。ちょうどその日の午後に村のガイドの方々が集まり、ウッパマビーチでビーチクリーン(ゴミ拾い活動)を行うというので参加すると、村のエコツアーガイドの先駆者である「やんばる自然塾」代表の島袋裕也さんが先導を切っていたので話を聞いた。
「ここのガイドたちは利害関係なく皆んなが集まって共に活動を行っています。これこそがこの村の価値だと思います」
東村には様々な自然へのアプローチを行うガイドツアーが揃っているが、その根底には、自然と地域、人々が一体となった未来を見据えた意識が静かに根を張っていた。

渡久山真一さん。NPO法人東村観光推進協議会の理事長も務める。慶佐次川を歩いている所、声をかけると快く話を伺う事ができた。

渡久山真一さん。NPO法人東村観光推進協議会の理事長も務める。慶佐次川を歩いている所、声をかけると快く話を伺う事ができた。

やんばる自然塾代表の島袋裕也さん。お父さんがこの地でエコツアーガイドを始め地域の結束を作り出した。先代の意思を受け継いでいる。

やんばる自然塾代表の島袋裕也さん。お父さんがこの地でエコツアーガイドを始め地域の結束を作り出した。先代の意思を受け継いでいる。

そして、海の彼方へ——

やんばるに着いた初日、僕は与那覇岳に登るため、登山口にほど近い宿に泊まっていた。
下山して宿へ戻ると、宿の親父が炭火を起こし、魚をじっくり焼いていた。やがて友人らしき人々が次々と現れ、手には料理や飲み物。
素泊まりのはずの僕も、なぜか自然な流れで誘われ、手渡されたビールで乾杯した。
気づけば、宿泊客も加わり、初対面の人たちが思い思いに語り合っている。
親父は「これが“ゆんたく”さ。会えばみんな、家族みたいなもんだよ。良い時に来たね。」と笑っていた。
その輪の中には、シークヮーサー農家の上原さんの知り合いや、豆腐屋の金城えつ子さんの姿もあった。ここやんばるの事を地元の皆様からたくさん教えてもらった。そして親父が漁港の競りで仕入れてきた魚が炭の上で香ばしく焼けていく。

予定を立てずに訪れたこの旅は、この「ゆんたく」からすべてが始まった。語り合ううちに広がる縁の輪。
その導きに身を任せて歩くと、まるで川が流れるように人との出会いが森から海へと、繋いでくれていた。

そして出会った人々は皆、豊かな自然に寄り添いながら、それぞれに壮大な物語の中を生きていた。

宿にあるヒカゲヘゴの樹と満天の星。

宿にあるヒカゲヘゴの樹と満天の星。

ちょうど満月の夜だった。

ちょうど満月の夜だった。

旅の終わり、再び辺戸岬に立った。
足元には切り立った断崖と荒々しい海が広がり、朝靄の向こうには与論島の稜線がうっすらと浮かんでいる。
数日前、僕もこの海の向こうからこの地にたどり着いた。

ここには森があり、海があり、多くの生き物と人がいる。
永い地球の時間と様々な命が交差する場所だった。

森で聞いた鳥や虫の声、集落で交わした笑い声が、海風に溶けて背後へと遠ざかっていく。
それは太古から今へ、そして未来へと絶え間なく流れていく。

ゆんたくから始まった旅は、いくつもの命の声に導かれた。
そして今、また海の彼方へと静かに注ぎ込まれていく——。

海の彼方

ほうじゃのう・いたしい・なんしよん?吉本芸人・ありんくりんが挑戦する、 広島の方言

SNSでの総再生180万回以上!(2025年9月時点)コロカルの人気動画企画、ありんくりんの方言講座。
今回は広島の方言早口言葉、イントネーション講座、方言クイズにチャレンジしました!

広島の方言早口言葉

あんたが、あんたあんた言うけぇ、あんた言うんよ。
あんたが、あんたあんた言わんにゃーわたしも、あんたあんたいわんのよー
(あなたが、あなたあなたと言うから、あなたと言っているのよ
あなたが、あなたあなたと言わなければ私も、あなたあなたと言わないのよ)


広島のイントネーション講座

・ほうじゃのう(そうだなあ)
・えーがの(いいじゃないか)
・こーへぇ(生意気、ませている)
・なんしよん?(何してるの?)
・えー買わん(買うことができない)


広島の方言クイズ

・いたしい(難しい)
・はしる(ヒリヒリ痛む)
・はぶてる(ふくれる、拗ねる)
・ひわる(曲がる、たわむ)
・しごんぼう(いたずらっ子)

profile

ありんくりん

沖縄県出身、2014年に、ひがりゅうたとクリスで結成。コンビ名は方言で「あれもこれも」。『お笑いバイアスロン2018』(琉球朝日放送)優勝。『新春!Oh笑い O-1グランプリ』(沖縄テレビ)2019年、2020年、2022年優勝。現在冠ラジオ『ありんくりんのヨーガクナイト』(RBC琉球放送)、「友近ありんくりんのい~あんべぇ」(沖縄テレビ)に出演中。

Instagram

ひがりゅうた:https://www.instagram.com/arinkrin.higa710/?hl=ja

クリス:https://www.instagram.com/chris_arinkrin/

YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-JBOEI9NRCis8p_han0xww

いんじゃんほい・べっちょない おーきに! 吉本芸人・ありんくりんが挑戦する、 大阪・兵庫の方言

SNSでの総再生180万回以上!(2025年9月時点)コロカルの人気動画企画、ありんくりんの方言講座。
今回は大阪の方言の早口言葉、大阪のイントネーション講座、兵庫の方言クイズにチャレンジしました!

大阪の方言早口言葉

・あれチャウチャウちゃう?ちゃうちゃう!チャウチャウちゃうんちゃうん?
(あれチャウチャウじゃない?違う違う!チャウチャウじゃないんじゃないの?)

・おっとっと/とっとってって/言っとったのに、何でとっとってくれんかったん?
とっとってって言っとったやん
(「おっとっとを取っておいて」と言ったのに、どうして取っておいてくれなかったの?取っておいてと言っていたじゃない」と言っていたんだよ)


大阪のイントネーション講座

・いんじゃんほい(じゃんけんをする時のかけ声)
・似おてる(似合ってる)
・おーきに(ありがとう)
・ぎょーさん(たくさん)
・もうかりまっか(お金たくさん稼いでますか)


兵庫の方言クイズ

住みます芸人のモンスーンT@TSUさん、ソラシド水口さん、みっちょん。さんからの挑戦上です!

・てーてって(連れてって)
・べっちょない(問題ない)
・いきいきごんぼ(今にも死にそう)
・ぴりぴりして来た(小雨が降って来た)
・べっちゃない(大丈夫)
・ピンス焼き(人形焼)

profile

ありんくりん

沖縄県出身、2014年に、ひがりゅうたとクリスで結成。コンビ名は方言で「あれもこれも」。『お笑いバイアスロン2018』(琉球朝日放送)優勝。『新春!Oh笑い O-1グランプリ』(沖縄テレビ)2019年、2020年、2022年優勝。現在冠ラジオ『ありんくりんのヨーガクナイト』(RBC琉球放送)、「友近ありんくりんのい~あんべぇ」(沖縄テレビ)に出演中。

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クリス:https://www.instagram.com/chris_arinkrin/

YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-JBOEI9NRCis8p_han0xww

“ホスピタリティの力”で地域を変える。星野リゾートの人材育成と魅力の秘密| コロカルアカデミー Vol.7開催決定

地域の暮らしや文化に根ざした新しい学びの場「コロカルアカデミー」の第7回を開催します。主催は、日本各地のローカルの魅力を発信し続けるWebマガジン「コロカル」です。

今回は、「旅を楽しくする」をテーマに、旅の様々な過ごし方に合わせた滞在を提案する「星野リゾート」をフィーチャー。コロカル編集部でも話題になっているのが、星野リゾートのユニークな採用・人材育成の仕組み。その根底には「スタッフ一人ひとりの想いやアイデアこそがサービスの源」という明確な哲学があります。

年齢や所属にとらわれず、誰もが自由に発言できる“フラットな組織文化”が魅力。月に一度開かれる「魅力会議」では、フロントも清掃スタッフも垣根なく、宿泊体験をより良くするためのアイデアを出し合い、実際にサービスとして形にしています。

今回のゲストは、「青森屋 by 星野リゾート」総支配人の須道玲奈(すどう・れいな)さん。青森県出身で、同施設初の女性総支配人かつ県内出身者という、新しいロールモデルです。

本セミナーでは、須道さんの経験をもとに、
・星野リゾートの人材育成・採用戦略
・ホスピタリティの哲学と現場での実践
・地方での観光マーケティングや共創の工夫

といったリアルなお話を通じて、組織や地域を超えて活かせるヒントをお届けします。

この60分間は、あなたの「地域を見る視点」や「組織づくりのヒント」にきっと変化をもたらすはず。地方での仕事に関心がある方、観光業の裏側を知りたい方、そして「人を育てる」立場にあるすべての方におすすめのセッションです。ぜひご参加ください。

【概要】
コロカルアカデミー Vol.7
「“ホスピタリティの力”で地域を変える。星野リゾートの人材育成と魅力の秘密」
日時:2025年11月5日(水)15:00〜16:00(14:50開場)
形式:Zoomウェビナー
費用:無料(要事前申込)
募集期間:2025年10月31日(金)12:00まで
※後日見逃し配信あり

【コロカルアカデミーとは】
ローカルを舞台に活躍する人々のリアルな情報を通して、日本の魅力を再定義するウェビナーシリーズです。地域を活性化させるために働きたい方、ローカルでビジネスを始めたい方、自治体や企業で地域創生に携わる方に向けて、新たなヒントを提供します。

いままでのコロカルアカデミーはこちら

登壇者は、地域の文化資産や資源を掘り起こし、その価値を世界に伝える新しいリーダーたち。ローカルビジネスにおける強みと課題、問題解決のプロセス、未来を変える次の一手についてもリスナーの皆さんと一緒に考えていきます。

【本セミナーで学べること】
●星野リゾートの人材育成・採用戦略
●現場で実践されるホスピタリティの哲学
●地方リゾート運営における課題と創意工夫
●地域と連携した雇用・集客・観光施策

【こんな方におすすめ】
●観光・ホスピタリティ業界に関心のある方
●地方創生、地域活性に携わる自治体・企業関係者
●人材育成や組織文化づくりに関心のあるビジネスパーソン
●星野リゾートの取り組みに興味のある学生

【登壇者プロフィール】

園部健二

須道 玲奈(すどう・れいな)
青森県出身。青森屋 by 星野リゾート 初の女性総支配人。
青森を“もっと多くの人に知ってもらいたい”という思いから星野リゾートに入社。サービスや広報業務を経験し、石川県の「界 加賀」でも総支配人を歴任。2023年より青森屋の総支配人に就任。
地元の魅力を磨き上げ、「青森のファンを全国に増やす」ことを目指して奮闘中。

杉江宣洋

杉江宣洋(すぎえ・のぶひろ)
コロカル編集長/MAGAZINEHOUSE CREATIVE STUDIO ブランディングプロデューサー
1997年マガジンハウスに入社。『anan』編集部を経て、2008年『BRUTUS』配属、10年同誌副編集長に。『BRUTUS』では「居住空間学」(インテリア特集)「音楽と酒」シリーズなどをヒット企画に育てた実績を持つ。また、「桑田佳祐」「山下達郎」「松本隆」「スタジオジブリ」などの特集も担当。2022年Hanako編集長就任。2025年より現職。

【注意事項】
・本イベントはオンライン開催です。
・音声や映像の乱れが生じる場合があります。
・録画・録音・再配信はご遠慮ください。

申込締切:2025年10月31日(金)12:00
▶︎お申し込みはこちら

※お申し込みいただいた方には、後日見逃し配信のご案内をお送りします。
当日ご参加が難しい場合も、ぜひお気軽にお申し込みください。

鹿児島県・徳之島──時を旅する島 二億年の記憶に触れる

鹿児島県・徳之島

記憶の入口に立つ──資料館から始まる旅

徳之島には那覇〜鹿児島の島々を結ぶ船で上陸した。
港に降り立った瞬間、空気が変わる。島に船で降り立つこの感触が僕は昔から好きだ。
湿り気を含んだ風、森の奥から聴こえる名も知らぬ鳥の声。
人の気配は少なく、しかし見透かされているような不思議な感覚。

旅の最初に向かったのは、島内にある四つの場所──
徳之島町郷土資料館、伊仙町歴史民俗資料館、天城町歴史文化産業科学資料センターユイの館、そして徳之島世界遺産センター。
この島を深く知り、感じるための記憶の入口である。

各町の資料館の一室には、約3万年前からの石器や5千年前の洞窟での暮らしの痕跡。
土器、貝塚、埋葬された人骨などから現代に至るまでの島の歴史が静かに展示されていた。
展示室には、その静けさと共に深さが空気に満ちていた。
考古学を専攻してきた伊仙町歴史民俗資料館学芸員の輿嶺友紀也さんと天城町ユイの館学芸員の具志堅亮さんは「沖縄出身だが南西諸島や日本の考古学において徳之島は重要な場所なのでここに落ち着いた」と2人とも同じように話していた。

そして徳之島世界遺産センターへ。
ここには、島の自然と命の繋がりが記録されている。徳之島は2021年世界自然遺産に登録された。
その理由のひとつが、ここにしか存在しない命たちである。

徳之島・亀徳新港に入港する

世界自然遺産に登録された所以と歴史

徳之島は、2021年に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」として、ユネスコの世界自然遺産に登録された。その理由は、「生物多様性」、つまり顕著な多様性を示す生きものたちの生息地であることを評価された。

この島に棲むアマミノクロウサギは、世界で奄美大島と徳之島にしか生息していない、非常に古い時代からの“生きた化石”である。近縁な種群は600万年前に出現し、もっとも類縁関係の近い種は350万年前に生息していたと言われている。ほかにも、オビトカゲモドキ、トクノシマトゲネズミなど、この島固有の生物が多い。ユーラシア大陸から切り離された琉球列島で、生物の進化が膨大な時間の中でそれぞれの島に展開されてきた。そして、絶滅が危惧される種も多い。つまり、ここには失われつつある命の多様性が、いまも脈々と息づいているということだ。

だが、もうひとつ重要なのは、人間の存在である。世界自然遺産というと、純粋な“手つかずの自然”を思い浮かべがちだが、徳之島は違う。人の暮らしが森のすぐそばにあり、何世代にもわたって営みが続いてきた。たとえば、アマミノクロウサギの棲む森のすぐ近くには、当部(とうべ)集落や、三京(みきょう)集落がある。この地に暮らす人々は、自然と共に生きるという知恵を当たり前のように継承してきた。

「この島は、人の暮らしが自然遺産の真横にある。この共生のあり方そのものが、これからの世界にとって大切な遺産になる」——そう語ってくれたのは、徳之島世界遺産センターの専門員である中村泰之さん。

(※現在は、立ち入り規制をかけている世界自然遺産登録エリアもあり、こうした場所は認定ガイド同行が義務付けられている)

森の奥に棲む、太古のいのち──アマミノクロウサギ

資料館を巡ったその夜、森へと向かった。
アマミノクロウサギ観察小屋付近をライトで照らしながら土の小道を静かに歩いた。
葉擦れの音や鳥の声も風もない。そのとき、暗がりに動く気配があった。
暗闇の中に黒い塊が動いている。アマミノクロウサギだ!
たしかに目の前にいる。約350万年前から存在する原始的な哺乳類である。耳は短く、走りも遅い。跳ねない。
僕は何げなく草を食べる姿を目の前にした瞬間、いま此処に至るまでの命の繋がりに壮大な時間を超える体験をした。
確かにここで人が自然と共に長く生き延びてきた意識の片鱗を感じることができた。
この体験が、後の旅のすべての道しるべとなった。この島は膨大な時を遡る事が出来るのだ。
僕はその痕跡を辿ることにした。

(※アマミノクロウサギ観察小屋は平日9:00-17:00に利用ができるが事前予約が必要。時間外でも観察は可能であるが、周辺では環境の保護の為、指定されたマナーやルールを守る必要がある。)

運よく会えたアマミノクロウサギ。

運よく会えたアマミノクロウサギ。

大地の記憶をたどる──地質の時間旅行へ

旅の軸足を、まずは大地そのものが語る時間に耳を傾けてみる。最初に訪れたのは、島の中部・剥岳林道に露出する蛇紋岩。これは、なんと二億年前のプレートの衝突によって地表に現れたマントル起源の岩石だ。地球の奥底──深海の地殻を成す岩が、この森の中に静かに眠っている。指で触れると冷たくざらつき、そこに地球の“胎動”を感じる。

次に向かったのは、北側の海岸にあるムシロ瀬。
ここに広がるのは約6500万年前の花崗岩。恐竜が絶滅した時代とほぼ同じ頃の岩だ。
打ち寄せる波に削られ、今は丸みを帯びた柔らかい石畳のように広がっている。
日が水平線に沈む頃、岩に腰掛け波の音を聞いていると、時が海に洗われていくような感覚になる。

ムシロ瀬。日が沈む間際、他に誰もいない幻想的な空間と時間。天城町

ムシロ瀬。日が沈む間際、他に誰もいない幻想的な空間と時間。天城町

さらに、犬田布岬や黒畦海岸、ミヤトバルの岸辺では、百万年前の琉球石灰岩がむき出しになっていた。
かつてサンゴ礁だったこの石は、地殻変動で隆起し、波が時間と共に幾層にもそれを削り、それはまさに時の彫刻である。まるで異星のような光景を至る所で見た。この琉球石灰岩はこの南西諸島にしか存在せず、故にその土壌による固有の植生や生態系が育まれてきたのだ。

犬田布岬。徳之島の琉球石灰岩の地形が一目瞭然で望める。伊仙町

犬田布岬。徳之島の琉球石灰岩の地形が一目瞭然で望める。伊仙町

黒畦海岸。徳之島町

黒畦海岸。徳之島町

犬の門蓋。天城町

犬の門蓋。天城町

ミヤトバル。この窪みに溜まった海水から塩を作っている。伊仙町

ミヤトバル。この窪みに溜まった海水から塩を作っている。伊仙町

犬の門蓋のメガネ岩。天城町

犬の門蓋のメガネ岩。天城町

こうして島を巡ると、足元にある石そのものが、記憶の断片であると感じられてくる。
太古から地球が呼吸していた証が、今もこの島には息づいているのだ。

人の記憶──営みとしての歴史

地質の深い記憶の上に、人の営みが始まる。徳之島は135の遺跡が存在し旧石器時代の石器が出ている最南端である。沖縄では3万6千年前の人骨や貝の道具はでているが石器は発見されていない。徳之島のガラ竿遺跡では3万年前や2万5千年前の地層に石器が発見され、下原洞穴遺跡では約1万3000年前の土器が発見されている。氷河期の終わり、人はここで火を使い、石器で獲物を狩り、暮らしていた。その証が、資料館に展示されていた石器や土器から見える。

さらに、ヨヲキ洞窟やウンブキ水中鍾乳洞遺跡、面縄貝塚では、4000〜3000年前の営みの痕跡が、2000年前の弥生時代の全身の人骨が発見されている。土器、貝塚、埋葬された人骨、炭の跡──それは、漁労と暮らし、祈りと死がひとつの空間に凝縮された、人類の生活の原型だった。そして、徳之島カムィヤキ陶器窯跡では1000年前に農耕の渡来と共に始まったと言われる焼き物「カムィヤキ陶器」の窯の跡や破片が多く見つかっている。

ウンブキ水中鍾乳洞遺跡。ここから海まで700メートル以上もつながる日本最大級の水中鍾乳洞。天城町

ウンブキ水中鍾乳洞遺跡。ここから海まで700メートル以上もつながる日本最大級の水中鍾乳洞。天城町

ヨヲキ洞窟。5000〜1000年前の石器や土器が発見されている。伊仙町

ヨヲキ洞窟。5000〜1000年前の石器や土器が発見されている。伊仙町

面縄貝塚の風葬場。縄文時代より今日に至るまで墓場としてある場所。ガジュマルが柵のように場を形成している。伊仙町

面縄貝塚の風葬場。縄文時代より今日に至るまで墓場としてある場所。ガジュマルが柵のように場を形成している。伊仙町

そして、徳之島が歴史書に初めて登場するのは西暦699年、『続日本紀』に「度感(トク)が宝物を献じ位を授かる」と書かれており、当時、遣唐使の航路(南島路)があったことから島の存在に目を向けていた事がわかる。
その後中世以降は、琉球王朝、薩摩藩の支配を経て、やがて近代国家・日本へと組み込まれていく。
戦後はアメリカ統治も経験し、日本へ返還。為政者が幾度も変わる中、島の人々は常に土地と風土に根ざした暮らしを続けてきた。

これら痕跡は、島の至る場所に静かに佇んでいる。語られぬ歴史が、島の全土に染み込んでいるのだ。

伊仙町阿権集落の石垣。琉球王朝時代に建設された。

伊仙町阿権集落の石垣。琉球王朝時代に建設された。

闘牛という文化──心の歴史

徳之島を語るうえで欠かせないのが、闘牛文化だ。世界でも日本でも闘牛が生活に根付いている地域は珍しい。
500年前、薩摩藩の支配下にあった時代、厳しい農作業の慰めや娯楽の一つとして牛を戦わせたことが起源と言われる。

現在も町を歩けば、早朝や夕暮れに牛と共に歩く人の姿に出会う。
花徳浜の海沿いでは、若者が牛を散歩させていた。それを見守るお父さんが「息子が闘牛を持ちたいと言い出して。牛を3頭買ってあげた」と話していた。

「この子はまだ若くておとなしい」と牛を引く青年の話す目には、親が子を見守るような温かさがあった。
島では闘牛を「なくさみ」と呼ぶ。悲しみを癒すもの、魂を鎮めるもの。
力強くぶつかり合う牛たちの眼差しの奥に、島の人々が重ねてきた心の歴史が宿っている。

花徳浜(徳之島町)の他に喜念浜(伊仙町)でも同じような光景が見られる。

花徳浜(徳之島町)の他に喜念浜(伊仙町)でも同じような光景が見られる。

伊仙町の闘牛場。土日の夕方には飼い主と牛が次々とやって来て稽古を行なっていた。

伊仙町の闘牛場。土日の夕方には飼い主と牛が次々とやって来て稽古を行なっていた。

伊仙町の闘牛場。土日の夕方には飼い主と牛が次々とやって来て稽古を行なっていた。

森と人が隣り合う日常―未来へ向けて

このように徳之島を時間という流れで旅をするきっかけにもなった一つが「徳之島虹の会」を訪ねた事でもあった。
彼らは、2011年にNPOを設立し世界自然遺産に登録される前からこの島の調査・保全活動を行うと同時に、
島に生きる人々と自然の関係性を未来へ繋ぐ役割を担っている。話を聞いたのは、事務局長である美延睦美さん。

この島で生まれ育ち、この島が如何に特殊な環境であるかを知った。島を出なくてもこの場所で地球の事を深く知ることが出来る。石や地質、植物や考古学など各々で興味のある分野を調査活動していた島の人々が寄り集まり活動を始めた。
「この島は、人の暮らしが自然遺産の“すぐ横”にある。森は遠いものではなく、日々の生活と地続きです。だからこそ、この場所の特異性と培われてきた共生のあり方を、未来にちゃんと残していかないといけない。」
その言葉には、知識や情報ではなく、実感として自然と共に生きてきた人の声が宿っていた。
「諸説ありますが、3万年前から人が住んでいた島は世界に数箇所しか発見されていない。ここはその一つです。その頃は狩猟採集により生きていたと思われるが、ここの生物多様性こそがその人達の生活を支えていたと思われる。」この島の地質とその自然の構造、ここで人が長い時間をどのように暮らして来たかを熱く語ってくれた。
オキナワウラジロガシの伐採痕を見ると樹を持続的に利用するために高い箇所で切られていた事がわかる。繁殖力の低いアマミノクロウサギも食していたが生態は守られている。自然を“守る”ことが目的ではない。自然の中に暮らしがあり、暮らしの中に自然がある。ただ守るだけではなく、共に生きる。過剰に手を加えず、けれども無関心でもいない。そんな距離感が、徳之島の自然と人のあいだには太古より脈々と息づいている。それは未来に向けて、世界が学ぶべき人類の在り方なのかもしれない。それが、徳之島に息づく「日常」なのだ。

徳之島の地質について詳しく解説してくれた。緑色が蛇紋岩、ピンク色が花崗岩、紫色が琉球石灰岩である。

徳之島の地質について詳しく解説してくれた。緑色が蛇紋岩、ピンク色が花崗岩、紫色が琉球石灰岩である。

NPO法人徳之島虹の会の皆様。島の宝を繋ぐ様々なイベント活動や島のツアーガイドを行う。中央が美延睦美さん。

NPO法人徳之島虹の会の皆様。島の宝を繋ぐ様々なイベント活動や島のツアーガイドを行う。中央が美延睦美さん。

きゅーがめーら──唄と祈りが繋ぐもの

島の言葉(しまぐち)には、「きゅーがめーら」という美しい言葉がある。
翻訳すると「おはよう・こんにちは」という言葉だが、「きゅう=今日、うがめーら=拝む」という語源ではないかと言われることから“今日、あなたに会えたことに敬意を表します。”という深い意味が込められている。
「今、島の言葉は島唄には残されているが、若い世代では話す人はほとんどいなくなっている。しかし、これはただの挨拶ではない。この島に息づく、人と人との関係や暮らしに宿る精神そのものだ。」"
と徳之島町文化財保護審議会の町田進さんは話してくれた。
信仰のあり方は、神さまの前に先ずは目の前の貴方への敬意と感謝を表する事、そして此処に紡いできてくれた御先祖さまに。
その祈りは、言葉となり、唄となり、踊りとなって今も受け継がれている。

旅の途中、亀津の町を歩いていると、太鼓と唄声が聴こえてきた。90歳を越える人たちが集まり島唄を歌っていた。
夜、ヨナマビーチでは子どもから老人までが三線の唄声に合わせて踊っていた。
この島では今日もどこかで誰かが歌っている。波と風に合わせて、誰かが踊っている。
この営みは、きっと未来へと続いていく。

この島で刻まれた長い時間の記憶は、今を生きる島の人々の中に染み込んでいるのだ。
それは何層にも重なり合うこの島の地層のように、静かにしかし分厚く、萬代(ばんだい)にわたり幾重にも語り続けてくれるだろう。







パリの大学院生・ルイスと ブランドディレクター・カナカが 巡る、青森・八戸&十和田の 1泊2日旅【Day2】

夏休みに日本へやってきたパリの大学院生ルイスさん。今回は、Netflix「オフラインラブ」にも出演されていたカナカさんを旅の相棒に、1泊2日で青森・八戸へ!

Day2 行程表
7:00|みなと食堂(八戸市)
10:30|匠工房 南部裂織の里(十和田市)
11:00|十和田神社(十和田市)
13:00|池田ファーム(田子町)
15:00|おんであんせ ユートリーおみやげショップ(八戸市)

Day2 7:00|みなと食堂

昨夜のディナーの帰り際、「八戸に来たなら絶対に行ってほしいお店がある」と八戸酒造の秀介さん。

ならば行くしかない!と早起きして向かったのは、「陸奥湊駅」からほど近い、ヒラメ漬丼の名店〈みなと食堂〉。ツヤツヤで美しいヒラメを贅沢にのせたどんぶりは、口に入れた瞬間甘みと旨みがふわっと広がり、朝から幸せな気持ちに。

information

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みなと食堂

住所:青森県八戸市湊町字久保45-1

TEL:0178-35-2295

営業時間:6時~14時

休:日、月

Day2 10:30|匠工房 南部裂織の里

案内してくれた秀介さんに別れを告げ、次に向かったのは八戸から車で約1時間の十和田市。お目当ては、青森県の伝統工芸「南部裂織(なんぶさきおり)」体験です。

裂織とは、使い古した着物や布を細く裂き、縦糸に木綿糸を組み合わせて織り込んだ織物のこと。いらなくなった布が、また衣服や生活道具として生まれ変わるから、とてもサステナブル。江戸時代から続く伝統的工芸品です。

「こういう細かい作業大好き!」と黙々と進めるカナカさん。一方、ルイスさんは、先生に教わりながら地機を動かすものの、リズムを掴むのはなかなか難しく苦戦中。それでも先生の優しい指導のおかげで、ついに一枚の作品が完成しました!

information

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匠工房 南部裂織の里

住所:青森県十和田市 大字 伝法寺 字 平窪37-21 「道の駅 とわだ」内

TEL:0176-20-8700

営:10時~16時

休:

体験料金:2,500円(3人以上は1週間前に要予約)

Day2 11:00|十和田神社(十和田市)

ルイスさんが、東北に行ったら一度は訪れてみたいと挙げていた場所のひとつが、東北屈指のパワースポット・十和田神社。創建は大同2年(807年)。十和田湖に突き出す中山半島に鎮座する古社で、坂上田村麻呂によって建立されたと言われています。

杉木立に囲まれた参道を進むと荘厳な本殿と拝殿が姿を現します。静謐な空気に包まれ、神秘的なエネルギーを肌で感じることができました。

information

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十和田神社

住所:青森県十和田市奥瀬十和田湖畔休屋486

TEL:0176-75-2508

Day2 13:00|池田ファーム(田子町)

車を走らせていると、沿道の看板に「にんにく」の文字がたびたび目に飛び込んできました。たどり着いたのは、青森県の田子町(たっこまち)。

田子町に来た理由は一つ。A5ランク黒毛和牛「田子牛」のランチがたべられると聞いたから。ここ〈池田ファーム〉では、年間出荷頭数わずか60頭という希少な田子牛の中からA5・A4ランクのみを厳選。霜降りの美しさは折り紙付きの名店です。

さらに田子町は「にんにくの町」としても名高く、ソースには名産の田子にんにくをたっぷり使用。大自然の中で育った牛と、地元の誇るにんにくが楽しめる贅沢なランチです。

赤みとは思えない、美しい霜降り。

赤みとは思えない、美しい霜降り。

「こんなに霜が降っているのに見た目よりもあっさりで不思議!」とカナカさん。

「こんなに霜が降っているのに見た目よりもあっさりで不思議!」とカナカさん。

information

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池田ファーム

住所:青森県三戸郡田子町大字田子池振外平11

TEL:0179-32-3327

営:11時~17時

休:不定休

Day2 15:00|おんであんせ ユートリーおみやげショップ

旅も終盤。最後に立ち寄ったのは、おみやげショップ「ユートリー」。青森県内の特産品を約2,000点も取り揃えたおみやげショップが併設されており、八戸圏域の品揃えは市内最大級を誇ります。

information

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おんであんせ ユートリーおみやげショップ

住所:青森県八戸市一番町1-9-22 ユートリー1F

TEL:0178-70-1111

営:9時〜18時

「海の幸も山の幸も味わえて、本当に贅沢な場所でした。食も文化も自然もそろっていて、八戸は何度でも訪れたくなる場所ですね。次はもっとゆっくり滞在したい!」とカナカさん。

ルイスさんの夏休みはまだまだ続きます。次はどこに行くのでしょう?次回の旅もどうぞお楽しみに!

パリの大学院生・ルイスと ブランドディレクター・カナカが 巡る、青森・八戸&十和田の 1泊2日旅【Day1】

夏休みに日本へやってきたパリの大学院生ルイスさん。今回は、Netflix「オフラインラブ」にも出演されていたカナカさんを旅の相棒に、1泊2日で青森・八戸へ!

Day1行程表
9:00|東京駅
12:00|八戸駅
12:00|八食センター
14:30|八戸酒造
16:30|八方屋/HAPPOYA
19:00|カーサ・デル・チーボ

Day1 9:00|東京駅で待ち合わせ

東京駅で待ち合わせをしていたのは、パリの大学院に通いながらSNSで現地の暮らしを発信するルイスさんと、Netflix『オフラインラブ』にも出演し、普段はブランドディレクターを務めるカナカさん。以前からSNSでの繋がりはあったものの、実際に会うのはこの日がはじめて。それでも初対面とは思えないほどすぐに意気投合!

2人がこれから向かう先は……?

Day1 12:30|八戸駅から〈八食センター〉へ

東北新幹線に揺られること約2時間40分。たどり着いたのは、青森県・八戸。古くから漁業で栄え、工業都市としての顔も持ちながら、蕪島や種差海岸といった雄大な自然を抱える場所です。

長旅でお腹を空かせた2人がまず向かったのは〈八食センター〉。全長170メートルの通路に、鮮魚店から青果、精肉、惣菜まで約70店舗がずらりと並ぶ巨大市場です。太平洋に面し、全国屈指の漁獲量を誇る港町・八戸。この市場には、今朝獲れたばかりの魚介や地元ならではの食材が所狭しと並び、観光客はもちろん、地元の人々の暮らしも日々支えています。

お腹を空かせた2人は早速市場を歩き回り、八戸港で獲れた魚介や、青森を代表するブランド牛「倉石牛」などを、思いのままに次々とカゴに入れていきました。

真剣な表情で海鮮を選ぶふたり。

真剣な表情で海鮮を選ぶふたり。

店先での会話も旅の醍醐味。

店先での会話も旅の醍醐味。

そしてそのまま向かったのは、施設内にある〈七厘村〉。ここではなんと、市場で手に入れた食材をそのまま持ち込み、自分たちの手で七輪焼きにして味わえるのだそう。

「市場を歩くだけでも楽しいけど、こうして自分で焼いて食べられるのは最高」と大興奮のルイスさん。八戸の旅は、お腹も心も満たされてスタートしました。

information

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八食センター

住所:青森県八戸市河原木神才22−2

TEL:0178-28-9311

営:9時〜18時

休:

七厘村

住所:青森県八戸市河原木神才22−2(八食センター内)

営:9時〜17時

Day1 14:30|八戸酒造

八戸酒造

次に訪れたのは、創業1775年の老舗〈八戸酒造〉。看板銘柄「陸奥男山」をはじめ、2021年の世界酒蔵ランキングで堂々の1位に輝いた「陸奥八仙」など、国内外で高い評価を集める名酒を生み出してきた蔵です。

酒蔵に足を踏み入れると、ふわりとお米の甘い香りが!「このお酒、八戸で造られているんだ!」と声をあげたのはカナカさん。東京でもよく「陸奥八仙」を飲んでいたというほどの大ファンで、この日の酒蔵見学は念願だったよう。

蔵を案内してくれたのは、製造責任者で常務の駒井伸介さん。「仕込み水は地元・蟹沢地区の名水を使い、米も酵母もすべて青森産なんですよ」と教えてくれます。

「『八仙』がここまで人気になるまで、本当に簡単ではなかったです。火入れの仕方や、冷蔵での管理など工程を一つひとつ見直して……。そんな長い積み重ねがあって、ようやく安定した味を届けられるようになりました」

information

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八戸酒造

住所:青森県八戸市湊町本町9-9

TEL: 0178-33-1171

見学時間:10時〜16時(所要時間は40分程度)

見学料金:500円(試飲付き)

蔵見学の予約はこちら:https://airrsv.net/hassenbrewerytour/calendar

Day1 16:30|八方屋/HAPPOYA

八方屋/HAPPOYA

今回の宿は2025年4月にオープンしたばかりの〈HAPPOYA〉。かつて武士が暮らしていた築100年以上の武家屋敷。歴史の趣をそのままに、現代的な感性でリノベーションした宿です。

太い柱梁や家紋を残し、刀や槍などの武具を配した室内は、まるで時代を飛び越えたかのよう。さらに、東京・野方の人気餃子専門店で百名店にも選ばれた「野方餃子」が併設されているのもうれしいポイント。

客室は「八方の間」と「四方の間」のわずか2室のみ。プライベートな時間を大切にしながら、八戸での滞在を心ゆくまでゆっくりと楽しむことができます。

information

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八方屋/HAPPOYA

住所:青森県八戸市上徒士町10

TEL:0178-20-0936

HP:https://www.happoyahotel.com/

Day1 19:00|カーサ・デル・チーボ

八戸の豊かな食材を心ゆくまで堪能したい。そんなときに訪れたいのが〈カーサ・デル・チーボ〉です。

ディナーには、昼に訪れた〈八戸酒造〉の駒井伸介さんの兄で、酒造の専務を務める秀介さんも参加。秀介さんは、特別に日本酒を持ってきてくださり、この日だけのなんとも贅沢なおもてなしの時間が実現。そのお酒に合わせて、池見シェフが料理を振る舞ってくれました。

メニューには「八戸徳師『三宝丸』の水ダコ」や「八戸産アブラボウズ」「八戸産ホヤ」「青森県大向産サザエ」などの文字が並び、まさに青森づくしのラインナップ!

オーナーシェフの池見良平さんは神奈川県出身。銀座の名店『エノテーカ ピンキオーリ 東京店』で腕を磨いた実力派です。八戸に店を開いたのは、妻・悦子さんの故郷であること、そして何よりもこの土地の食材の魅力に惹かれたからだと言います。料理には季節ごとの旬が映し出され、青森で育てられる猪や鴨、隣接する十和田市の野菜など、郷土の恵みを惜しみなく取り入れています。

地元の素材の魅力を最大限に引き出した洗練のイタリアンと、日本酒のマリアージュに、カナカさんもルイスさんも感動。八戸酒造のお酒とともに、忘れられない夜を過ごしました。

information

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カーサ・デル・チーボ

住所:青森県八戸市湊高台1-19-6

TEL:0178-20-9646

営:19時~22時

休:日・月

土曜日のみ、12時15分〜15時でランチ営業も。

Instagram:@casa_del_cibo

〈界 ポロト〉 美しい季節の巡りを感じる、温泉宿

アイヌ文化の一端に触れる

アイヌの人々が暮らした土地は、美しく穏やかな環境であることがほとんどだが、北海道白老町にある〈界 ポロト〉の眼前にも素晴らしい風景が広がっている。ポロト湖畔に位置し、対岸には国有林であるポロトの森。その自然環境に馴染むようにデザインされた温泉宿は、白樺の林が建物の中まで続いていた。

アイヌの文化に着想を得たデザインが、さまざまな形で反映されている。客室の壁には、オールの形をした木彫りがあり、細やかなウロコ彫が施されている。クッションにはアイヌ文様を模した柄が用いられ、テーブルは炉をイメージしているという。

もっとも象徴的なのが、「△湯」という名の湯小屋だろう。アイヌの人々は、狩りなどに出かけた際に、丸太を三脚のように組み合わせて仮の小屋を建てるという。△湯では、その際に用いる「ケトゥンニ」と呼ばれる構造を基本とし、大きなトド松を組み合わせている。経年変化によって鈍く光るようになった銅張りの外観だけでなく、空間内にも随所に三角形がデザインされている。三角形の不思議な親密さを感じる空間に、堆積した植物の有機物が含まれるために茶褐色のモール温泉。洞窟の中にいるような不思議な落ち着きのある温泉だった。

不思議な響きが、暖炉の周りに満ちていく

ロビーには暖炉があり、△湯と呼応するような、上部の銅張りのフードは今も輝きを保っている。夕食を食べた後には、その火に誘われるようにして、自然と人が集まってくる。その土地の文化の担い手から、直接、話を聞くことのできる「手業のひととき」では、アイヌ文化の伝承者である髙橋志保子さんからアイヌの歌「ウポポ」を教わった。熊狩りの歌に始まり、途中からはアイヌ語で一緒に歌った。アイヌの家「チセ」では、子どもたちが炉の周りに座って、おばあさんたちが昔話を語るのを聞いていたという。口承文化は、そうやって紡がれていくのだろう。暖炉の火と、ウポポの抑揚のある響きは、その時代の豊かさを想像させた。

アイヌ文化の伝承者、髙橋志保子さん。美しい歌声と快活なキャラクターにファンも多い。

アイヌ文化の伝承者、髙橋志保子さん。美しい歌声と快活なキャラクターにファンも多い。

朝風呂と贅沢な朝食。これぞ、温泉宿

翌日、少し早く起きてポロト湖の周りを歩いてみる。すでに咲き終わった水芭蕉の葉が茂っていた。夏を過ぎれば、イタヤカエデが紅葉で黄色に染まり、あっという間に雪が降るらしい。その土地ならではの季節の巡りを感じることが旅に出かける理由かもしれない。部屋に戻って、モール温泉のしっとりとした湯で汗を流してから、自宅では絶対に作らない品目数の朝食を食べた。自家製豆腐にかけた昆布醤油に、北海道を感じる。これぞ、温泉宿に泊まる醍醐味ではないか。

炊き立ての米と、鮭節やいくらおろし、がごめ昆布入り山わさびなど、北海道らしいご飯の友。じゃがいものすり流し鍋がつく。

炊き立ての米と、鮭節やいくらおろし、がごめ昆布入り山わさびなど、北海道らしいご飯の友。じゃがいものすり流し鍋がつく。

〈界 ポロト〉宿泊券が当たるプレゼントキャンペーンを実施

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応募期間は2025/09/25〜2025/10/09まで。
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__________________________________⁠
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【宿泊期間】2025年11月1日~2026年4月30日 ※除外日あり

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界 ポロトmap

界 ポロト

住所:北海道白老郡白老町若草町1-1018-94

TEL:050-3134-8092(界予約センター)

Web:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/

〈界 ポロト〉から足を伸ばして。 ウポポイで出会った思い出。 時間を超えるもの

アイヌの長老が語りかけてくる

藤戸竹喜作のエカシ像。タイトルは「イランカラㇷ゚テ像」。周りを取り囲むイクパスイは、現代の名工たちによるもの。

藤戸竹喜作のエカシ像。タイトルは「イランカラㇷ゚テ像」(プは、下付き小文字)。周りを取り囲むイクパスイは、現代の名工たちによるもの。

阿寒湖畔に暮らしていたアイヌの木彫り作家・藤戸竹喜さんの元に通っていたのは、およそ10年近く前だった。季節ごとに阿寒へ向かい、問わず語りに話を聞き、木彫り熊を自然の中に持ち出して撮影させてもらった。『熊を彫る人』という本にまとめてからしばらくして、藤戸さんは亡くなってしまった。そのために私にとってアイヌの「何か」を見ることは、藤戸さんとのやり取りを思い出す時間になる。だから、「ウポポイ」内にある「国立アイヌ民族博物館」に足を踏み入れ、本来は札幌駅にあるはずのアイヌのエカシ(長老)像を見て、まるでバッタリと藤戸さんと再会したような気持ちになった。

藤戸さん作の熊の面。圧倒的な躍動感。

藤戸さん作の熊の面。圧倒的な躍動感。

写真等をもとに復元したアイヌの儀礼に使う道具。技術を復活させ、次世代へと繋ぐ役割も担っている。

写真等をもとに復元したアイヌの儀礼に使う道具。技術を復活させ、次世代へと繋ぐ役割も担っている。

生きているよう、という言葉では、その魅力がきちんと捉えられていない。彫刻なのだから、動かない。けれど、時間を超えて対話ができる。それは私が藤戸さんと面識があったからだけではないはずだ。博物館の中には、そうやって時間を超えて、観る者の芯のあたりを揺さぶる「何か」に満ちている。それは、離れた民族間にも共通の伝統が見られることでもわかる。展示にあった木の表皮を薄く削ってそのまま垂らす技法「削りかけ」は、アイヌの祭具ではイナウと呼ばれるが、東アジアの広い地域で同じものが見られるという。

上は、樺太アイヌのニポポ。下は、ウイルタの木偶。

上は、樺太アイヌのニポポ。下は、ウイルタの木偶。

ウポポイ内「国立民族共生公園」にあるチセ(家)の中には、宝物として集められた漆器類やイナウなどが飾られている一角がある。

ウポポイ内「国立民族共生公園」にあるチセ(家)の中には、宝物として集められた漆器類やイナウなどが飾られている一角がある。

次世代へ「感覚」を伝える。それがアーティストの役割か

樺太アイヌとウイルタの二つの頭を持つ「木偶」も並べて展示されていた。どちらの「木偶」も首には、「削りかけ」を巻いている。この類似性は、民族や文化を越える嗜好や感覚があることを示している。感覚に訴える「何か」に形を与え、次の世代へと伝えていくのが、アーティストの役割なのかもしれない。藤戸さんは自分のことをアーティストではなく「ただの熊彫り」と言っていたが、本来はそこに違いはない。ミュージシャンのOKIさんは、樺太アイヌの楽器・トンコリを現代に復活させ、エフェクターやアンプと繋げてエレキ・トンコリを作ってしまった。その佇まいには、まさしく現代が映し出されていて、歪さも美しさも兼ね備えていた。

OKIさんのエレキ・トンコリ。実際にステージで使われている。

OKIさんのエレキ・トンコリ。実際にステージで使われている。

アイヌの世界観を紹介する展示の中に、輪廻転生の死生観を示すパネルがあった。白老のアヨロ海岸に「アフンルパㇻ」(ラは、下付き小文字)と呼ばれる「あの世の入り口」があるという。ウポポイから車を30分ほど走らせて、探しに行った。登別漁港の脇から砂利地道に入り、クライミングのためのチョーク跡が残る岩沿いを歩いていくと、水平に岩が切れ、洞窟になっている。その向こうにあの世があるとは思えなかったが、アイヌの人々が「入り口」と呼んだ理由はわかる気がした。草に埋もれそうになっていたが、暗く人を寄せ付けない雰囲気に、ふと見入ってしまう。伝承や博物館に残っている「何か」の強さの根源には、おそらくはこの洞窟のような自然がある。藤戸さんも、動物と人間を区別なく見ているような人だった。手からカラスに餌をあげて会話していた姿を思い出した。

この洞窟は、「あの世の入り口」だろうか。海沿いに突然現れる岩群は、確かにとても不思議な光景だった。

この洞窟は、「あの世の入り口」だろうか。海沿いに突然現れる岩群は、確かにとても不思議な光景だった。

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界 ポロトmap

界 ポロト

住所:北海道白老郡白老町若草町1-1018-94

TEL:050-3134-8092(界予約センター)

Web:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/

屋久島── 生命と宇宙に埋もれる島

山への誘い

鹿児島空港からプロペラ機に乗って約40分、眼下に広がる海と空の境目に、雲に包まれた神秘的な島影が見えてくる。その姿はまるで雲が結界のように島を包み込み、ひとつの独立した世界を形成しているかのようだった。

空港に降り立った瞬間、身体中にまとわりつく湿度と、深く吸い込んだ空気の濃さに「生命の密度」を感じた。屋久島に根ざすものたちの存在感が、五感すべてに訴えてくる。

海岸からすぐそびえ立つ山々は幾重にも連なり、島全体が山で構成されている。そこに寄り添うように点在する集落は、まるで「人が自然に許されて暮らさせていただいている」と感じさせるような謙虚さをもって見える。

島に着いてすぐ、僕は山へ向かうことにした。この場所と真正面から向き合うには、外から来たばかりの自分自身の感覚では遠すぎる。まずはこの島の「核」とも言える山に身を置くことで、その距離を縮めたいと思った。

眼下に広がる海

古来より続く「岳参り」の信仰

山に入る前に、〈牛床詣所(うしどこもいしょ)〉に立ち寄った。ここは屋久島における山岳信仰の聖地のひとつで、登山者や地元の人々が山へ入る前に祈りを捧げる場所だ。

屋久島には約500年前から各集落に伝わる山岳信仰で「岳参り(たけまいり)」という風習がある。島の人々が奥岳や前岳の山頂にある石の祠まで登って参拝し集落の安全や豊漁豊作や家内安全を祈願する。厳しい自然に対する畏敬の念と、豊かな恵みをもたらす自然に対する感謝や敬意が屋久島の自然観の根底にある。

〈牛床詣所〉は、かつて修験者や参拝者が身を清め、心身を整えてから山へ入る「入口の神域」としての役割を果たしていた場所であり、女人禁制のため岳参りに参加できない婦人や子供ははるか山奥の御岳を拝んだ場所である。今でも登山の安全を祈願する人が多く、屋久島の岳参り文化を今に伝える貴重な場となっている。

森の中へ──巨木と苔の世界

参拝を済ませ、行動食を購入してから車で標高約1,300メートルの淀川登山口へ向かった。海抜0メートルからわずか60分ほどで到着する標高差は、島全体が急峻な地形であることを物語る。道路の両脇には、隙間なく樹々がひしめき合っていた。これから登る山の中には樹齢1,000年を超える樹々がいくつもあると考えると、自然の力にただただ圧倒される。登山口に着くと、麓との気温差に驚かされる。標高100メートルで約0.6℃気温が下がるため、1,300メートルでは約8℃近くも涼しくなる。

登山道に一歩足を踏み入れると、そこはまるで別世界。苔むす岩と巨木がひしめく壮大なスケールの森が広がっていた。多くの登山者は有名な縄文杉を目指すが、この森には名前も付けられていない巨木たちが無数に存在し、それぞれが一種の神聖さを放っている。

登山口からすぐのところに、淀川大杉と呼ばれる巨木がある。太さから推定される樹齢は1,000年以上。4年前の台風で先端が折れたが、その倒木も大地に横たわり、土へと還ろうとしていた。その迫力は目を見張るものがあった。

幾重にも重なる植生から見える屋久島独特の林相。

幾重にも重なる植生から見える屋久島独特の林相。

淀川大杉

淀川大杉

淀川大杉と折れた先端部。千年の樹は千年かけて土に還ると言われている。

淀川大杉と折れた先端部。千年の樹は千年かけて土に還ると言われている。

屋久島の杉は、年間降水量が日本一とも言われる多雨環境の中でゆっくりと成長する。そのため年輪が緻密で耐腐性が高く、樹齢1,000年を超える屋久杉へと育つ。このように生育する杉は屋久島しかない。また、幹や根、倒木の上に厚く生えた苔は、保水性と栄養供給の役割を果たし、種子の発芽や他の植物との共生を助けている。まさに、樹と苔が共に生きる「生命共同体」と言える。

さまざまな樹との出会いを楽しみながら歩き始めて約40分、世界自然遺産区域に入り、淀川小屋に到着。ここで一泊し、山の中で夜を過ごすことにした。

淀川小屋。装備さえあれば誰でも無料で宿泊できる避難小屋。

淀川小屋。装備さえあれば誰でも無料で宿泊できる避難小屋。

星と花に包まれて──宮之浦岳を目指して

翌朝はゆっくりと目覚め、宮之浦岳を目指して出発した。今回の目的は、満天の星空の下、山頂に立つこと。そして、ちょうど5月下旬から6月上旬にかけて咲く「ヤクシマシャクナゲ」に出会うことだ。

ヤクシマシャクナゲは屋久島の固有種で、標高1,000メートル以上の高地に咲く高山植物。年に2,3週間ほどしか咲かないその貴重な光景に期待が膨らむ。

澄んだ淀川を渡り、急勾配な道を登っていくと、シャクナゲの花が少しずつ姿を現し始めた。勾配を登り切ると「花之江河(はなのえごう)」という湿原に出る。ここは珍しい高山植物やミズゴケなどが自生する、屋久島屈指の幻想的なスポットだ。目の前には黒味岳が聳え立ち、その先に九州最高峰の宮之浦岳、続いて永田岳が連なる。ここからは森の世界から一変し、まさに「洋上のアルプス」を歩く壮大な縦走路が始まる。

夕暮れどき、黒味岳の頂に着いた。ちょうど空は赤く染まり、シャクナゲの花々がその光を浴びていた。宮之浦岳と永田岳を目の前に望みながら、日は静かに西の空へと沈んでいく。岩肌の上に立つ自分自身をふと客観的に見つめたとき、まるで異星に立っているかのような感覚に包まれた。

やがて夜が訪れ、空には月と星が静かに現れた。薄明かりのなか、月に照らされたシャクナゲは白く光を放ち、幻想的な光景が森の斜面を覆っていた。

その花々に導かれるように、花崗岩の群れの間を縫って、僕は宮之浦岳の頂へと進んだ。見渡す限り、僕以外に人影はなく、ただ星と風と岩と花に囲まれた静寂の中に、ひとり佇んでいた。この孤独感と、目の前に広がる異次元のような幻想の狭間に身を置きながら、夜の山を歩むという行為に、風も天候も味方してくれていることに、心から感謝せずにはいられなかった。

夜間の登山は視界が限られ、道を見失う危険性も高くなる。屋久島の山域でも、年間を通じて遭難事故が発生しているのが現実だ。今回の行程は天候や装備を慎重に整えた上での判断だったが、改めて感じたのは、やはり安全が確保されてこそ、こうした自然の深い美しさに真正面から向き合えるということだった。

──この特別な時間を与えられたこと。それはまるで、宇宙を探索する船に乗っているかのような、静かで荘厳な旅路だった。

垂直分布と世界自然遺産

屋久島は、このように標高により世界がまるで違う。海抜0メートルから山頂の約1,936メートルまでに、亜熱帯から冷温帯までの植生が見られる日本唯一の場所である。この「垂直分布」が生み出す多様な生態系と自然美。これが屋久島が世界自然遺産として認定された最大の理由である。

島の記憶と未来──遺産としての森へ

しかしこの壮大で豊かな森も、かつては大規模な伐採の対象だった。

江戸時代、屋久杉は建材として珍重され、幕府への年貢の一環として切り出されていた。明治以降は国家事業として開発が進み、山深くまでトロッコ道が敷かれ、数百人が森の中で生活していた。

昭和に入ると林道の整備と共に伐採は加速するが、それに反対する島民の声が徐々に高まり、自然保護の機運が生まれる。やがて伐採は止まり、1993年には屋久島の約20%が世界自然遺産に登録された。

この保護活動に尽力したひとりが詩人・山尾三省氏である。彼は白川山という森の中に書斎を構え、縄文杉を「聖老人」と呼び、アニミズムを提唱し自然と人との共生を詩に託して発信し続けた。

今、その志は彼の呼び掛けに賛同して移住し、活動を続けてきた山尾三省記念会の手塚賢至・田津子夫妻に受け継がれている。

「この森に触れた人は、この壮大な自然と人がどう関わってきたかを肌で感じることができます。世界自然遺産に登録された場所以外は開発して良いということではなく、未来に向けて大切にしていかなければならない。島を訪れる皆様がそのように感じて貰えることを島民としては意識していかなければなりません」と語ってくれた。

山尾三省記念会会長の手塚賢至・田津子夫妻

山尾三省記念会会長の手塚賢至・田津子夫妻

距離が近づくということ

下山後、歩き疲れた身体を温泉で癒し、島を一周して大川の滝や永田浜を訪れた。滝の轟音と野生動物たちの姿は、屋久島の生命の躍動そのものだった。浜ではウミガメが産卵のために上陸した跡が残っていた。

そして夜、宮之浦の居酒屋で一杯飲みながら、ふと気づいた。この島との距離が確実に近づいていることを。僕たちは自然の一部であり共に在るということ。もしかしたら、この感覚こそが、島が与えてくれた人として残すべき遺産なのかもしれない。

グランプリはどこだ? 食でめぐる農泊体験 『滞在プランコンテスト』結果発表

コンテストで見えた、日本の旅のかたち

〈JTB〉が2025年6〜7月に実施した「地域の滞在プランコンテスト」の結果が、9月1日の表彰式で発表された。対象は、農林水産省が選定した「農泊インバウンド受入促進重点地域」の40ヵ所。食関連消費の拡大をテーマに滞在プランを募集し、グランプリ1地域・優秀賞2地域・企業賞5地域が選出された。受賞地域には、プランのPR・伴走支援や協賛企業によるブラッシュアップ支援も提供される。

グランプリに輝いた笛吹市「富士山を越えてめぐる農の恵み」

グランプリを獲得したのは、山梨県・笛吹市農泊観光ツーリズム推進協議会のプラン「富士山を越えてめぐる農の恵み〜世界農業遺産の地で味わう、人と自然の共生の知恵〜」。山梨と静岡をまたぐ農業体験を基盤に、自然や歴史、文化を物語として伝える構成と、少人数・通年の受け入れや流通の多様化といった仕組みが評価対象となった。

各地で描かれる「食と暮らし」の物語

優秀賞には、石川県白山市の白峰林泊協議会による「自然の聖地『白山』いのちの水を巡る旅」と、三重県大紀町地域活性化協議会の「熊野古道伊勢路〜巡礼・食旅〜」が選ばれた。いずれも地域の資源を活かし、食や文化を深く体験できるプランである。

企業賞には、沖縄県おおぎみツーリズム地域協議会、京都府南丹市美山エコツーリズム推進協議会、香川県てしま農泊推進協議会、愛知県田原市農泊推進協議会、新潟県寺泊広域まちづくり協議会の5地域が選出された。

多様な地域が独自の食文化や暮らしを提案し、農泊の未来に新たな広がりを見せている。地域の挑戦を後押しするこのコンテストは、旅を通じて人と土地をつなぎ直し、その魅力を次の世代へと伝えていくための場となっている。

優秀賞

企業賞

企業賞:沖縄県大宜味村「よんな~沖縄・アグリ&アドベンチャートラベル in 大宜味

企業賞:沖縄県大宜味村「よんな~沖縄・アグリ&アドベンチャートラベル in 大宜味
長寿の里・大宜味村で、自然とともに生きる人々の食や文化を体験する農泊の旅。

企業賞:京都府南丹市美山町「米がつなぐ暮らし〜美山から伏見、米文化をめぐる旅」

企業賞:京都府南丹市美山町「米がつなぐ暮らし〜美山から伏見、米文化をめぐる旅」
かやぶきの里に息づく循環型の暮らしから、日本人の米文化を考える旅。

企業賞:香川県豊島(土庄町)「瀬戸内・豊島『水がつなぐ島の物語』

企業賞:香川県豊島(土庄町)「瀬戸内・豊島『水がつなぐ島の物語』」
瀬戸内の小島で、再生された自然と人の営みをたどり、水がつなぐ暮らしを体感する。

企業賞:愛知県田原市「Salt Voyage 海が結ぶ塩の道」

企業賞:愛知県田原市「Salt Voyage 海が結ぶ塩の道」
渥美半島を巡り、海と結びついた塩づくりの文化と味を体感する旅。

企業賞:新潟県長岡市寺泊「『旨味』と『技』を識る、職魂に触れる寺泊ガストロノミープラン」

企業賞:新潟県長岡市寺泊「『旨味』と『技』を識る、職魂に触れる寺泊ガストロノミープラン」
寺泊の海の幸と漁師や料理人、燕三条の職人技が紡ぐ“旨味の物語”をめぐる旅。

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地域の滞在プランコンテスト2025

●グランプリ:笛吹市農泊観光ツーリズム推進協議会(山梨県)
●優秀賞:白峰林泊協議会(石川県)/大紀町地域活性化協議会(三重県)
●企業賞:おおぎみツーリズム地域協議会(沖縄県)/南丹市美山エコツーリズム推進協議会(京都府)/てしま農泊推進協議会(香川県)/田原市農泊推進協議会(愛知県)/寺泊広域まちづくり協議会(新潟県)

主催:株式会社JTB

協力:農林水産省

日本の工芸を世界へ! 〈中川政七商店〉、ロンドンで初の ポップアップストアを1年間開催

日本の工芸の地を広げる一歩

創業1716年、奈良の老舗〈中川政七商店〉が、日本の工芸文化を世界に届ける新たな挑戦として、イギリス・ロンドンのショーディッチにて初のポップアップストアを、2025年9月9日から1年間にわたり開催する。併せてロンドンデザインウィークにも参加予定で、茶道や金継ぎ、かや織などをテーマにした体験型企画も展開。

約500種類の工芸品と限定アイテムがずらり

店舗では衣食住や食品にわたる約500種類の工芸品を販売。とりわけ、ロンドン限定デザイン「花ふきん フラワーマーケット」と「かや織ふきん フラワーマーケット」が注目のアイテムだ。前者はループ付きで掛けて使える大判ふきん(30cm×40cm、£19)、後者は生地を重ねたタイプで(30cm×40cm、£12)使うほど柔らかさが増す仕様である。

“買う・体験する・学ぶ”をひとつに

物販に加えて、茶道や金継ぎ、伝統技術を体験できるワークショップも多数開催予定。さらに、£60以上購入するとオリジナルトートバッグがプレゼントされるなど、体験型のショップとして工芸を“触れて、知って、育む”場づくりが進められている。

ポップアップを通じて中川政七商店は日本文化の魅力を世界へ発信し、ロンドンという都市で「工芸と出会う場」を創出しようとしている。

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中川政七商店 オリジナルトートバッグmap

中川政七商店 ポップアップストア(ロンドン)

会期:2025年9月9日(火)〜 2026年9月8日(火)予定

会場:18 Calvert Avenue, Shoreditch, London, E2 7JP

営業時間:火〜土 11:00〜19:00(日・月定休)

販売商品:約500種類(生活雑貨、食品、限定アイテム)

限定商品:
●花ふきん フラワーマーケット(£19)
●かや織ふきん フラワーマーケット(£12)

特典:£60以上購入でオリジナルトートバッグをプレゼント

全国の16エリアで、 ガイドブックに載っていない旅に出会う。 都市型ホテルブランド 〈OMO〉だけの街ナカ体験

OMOって知っていますか? 街をまるごと味わう旅へ

〈OMO(おも)〉は星野リゾートが全国の16のエリアで展開する、“ただ泊まるだけで終わらない”都市型ホテルブランドである。コンセプトは「テンションあがる『街ナカ』ホテル」。観光地のホテルとは異なり、街の魅力を余すことなく楽しめるように工夫が凝らされている。

また、〈OMO〉の後ろにつく数字(3・5・7)は、提供するサービスの幅を示す。最もサービス数が多い〈OMO7〉はレストランなどを備え記念日利用にもおすすめなフルサービス型、数字が小さいほどシンプルな仕様になるが、すべての施設で地元らしさを体感できるアクティビティが用意されている。

都市型ホテルブランド〈OMO〉の地図のイラスト

都市型ホテルブランド〈OMO〉の地図のイラスト

旅を「学び」に変える

さらにOMOの特徴的な取り組みとして、街のスーパーや市場を舞台にしたツアープログラムが挙げられる。案内役は街を知り尽くした「OMOレンジャー」。地元民目線でスーパーや市場を案内し、ガイドブックでは出会えない“暮らしの一部”を共有してくれる。

たとえば高知ではスーパーを巡り、鍋焼きラーメンや元祖ケンピなどの食文化を学ぶことができる。旭川でも地元スーパーを訪ね、日常に根ざした食材や文化を紹介。さらに那覇の第一牧志公設市場、函館のはこだて自由市場、小樽の小樽三角市場といった市場を舞台にしたプログラムも各地で実施されている。高知の日曜市や大阪・新世界を巡るツアーなど、まちの営みに直結した体験も豊富だ。観光だけではわからない土地の息遣いに触れることで、旅がより立体的に広がる。

旅の新しい愉しみを見つけたい方は、OMOの街ナカ滞在をぜひチェックして。

スーパーマーケットツアー

市場ツアー

カフェ〈Autumn〉オーナー、 林 翔さん推薦! 地元・福井の カルチャースポット3選

日本やグローバルで活躍するナビゲーターにご登場いただき、地元や別荘などの拠点がある土地のおすすめスポットを紹介してもらう本企画。

今回は、東京・世田谷のカフェ〈Autumn〉のオーナー林 翔さんが登場。
林さんの地元である福井県のカルチャースポットを教えていただきました。

父のお店〈ウッドウッドコーヒーローストサービス〉

私の父が経営しているコーヒー店で、焙煎した豆売りをメインにやっているお店。キャンプや山登りの時に、「その場でコーヒーを飲もう」というコンセプトで、グッズにも力を入れています。

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ウッドウッドコーヒーローストサービス

住所:福井県福井市成和1-2231 WWビル 1F

Instagram:@woodwood_coffee_shop

センスが光るセレクトショップ〈タルクライン〉

感度の高い地元の先輩から教えてもらったセレクトショップ。東京にはない良さが詰まっていて、空間も最高なので、みんなにもぜひ行って欲しいスポットです。

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タルクライン

住所:福井県福井市月見2-1-24

Instagram:@talklein.jp

子供から大人まで学んで遊べる〈福井県立恐竜博物館〉

学びながら遊んで楽しめる〈福井県立恐竜博物館〉。ティラノサウルスの大腿骨に触れるイベントがあって、実際に触ってみると、ものすごい熱風が吹いたような強いエネルギーを感じました。

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福井県立恐竜博物館

住所:福井県勝山市村岡町寺尾51-11

動画はこちらから!

profile

Sho Hayashi 
林 翔

福井県出身。東京・世田谷区の桜新町駅から徒歩10分強、上町駅からは15分ほどにあるカフェ〈Autumn〉のオーナー。お店の由来は秋にオープンしたことから。

越前漆器も、眼鏡も! 工芸のまち、越前鯖江に観光案内所 「Craft Invitation」がオープン

2025年7月14日、福井県鯖江市河和田に観光案内所「Craft Invitation(クラフト インビテーション)」がオープンした。一般社団法人SOEが運営するこの拠点は、越前漆器や和紙、打刃物、眼鏡など多彩な地場産業が集まる産地の“窓口”となる施設だ。
館内には漆器の木地を使ったランプシェードや、老舗工房による漆塗りのカウンターなど、職人の技を生かした意匠が随所にちりばめられている。産地を熟知したスタッフが工房やショップ、飲食店まで案内してくれるほか、事前予約制のツアーやワークショップも受付中だ。

ものづくりを体感するイベント「RENEW」

また、福井の産地を代表するイベント「RENEW」も見逃せない。2015年にスタートしたこの体感型マーケットは、普段は立ち入れない工房を一斉に開放し、見学やワークショップを通して職人と直接交流が可能。今年は2025年10月10日(金)〜12日(日)に開催予定。全国から約120社が集結し、オープンファクトリーが集う「KOGEI COMMONS」やトークイベント、ローカルフードの提供も予定されている。作り手と出会い、その想いに触れることで、ものづくりの背景まで味わうことができるだろう。

和紙文化を宿泊で体感する「SUKU」

さらに2025年11月には、越前市に和紙文化を体感できる工芸宿「SUKU(すく)」が誕生。約1500年の歴史を持つ和紙の産地の真ん中に建つ宿で、客室の照明やインテリア、食事の演出に至るまで和紙を取り入れた空間設計が特徴だ。宿のスタッフはコンシェルジュとして工房見学や体験を案内し、和綴じ製本やアートパネルづくりなど、滞在中に多彩なプログラムを楽しむことができる。素泊まりは1名20,000円〜を予定しており、越前和紙の文化を日常に取り入れる、新たな旅の拠点となりそうだ。

客室イメージ

客室イメージ

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観光案内所「Craft Invitation」

所在地:福井県鯖江市片山町7-10-4

電話番号:0778-78-9967

営業時間:10:00〜17:00

営業日:月〜金曜日(定休日:土日祝)

HP:https://craftinvitation.jp/

Instagram:@craftinvitation_fukui

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RENEW/2025

開催日:2025年10月10日(金)〜12日(日)

会場:福井県鯖江市・越前市・越前町全域

公式サイト:https://renew-fukui.com/

Instagram:@renew_fukui

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工芸宿「SUKU」

所在地:福井県越前市岩本町13-4-1

アクセス:北陸新幹線 越前たけふ駅より車で約10分

開業予定:2025年11月

宿泊料金:1泊1名 20,000円(税込)〜予定

Instagram:@suku.hotel

〈界 加賀〉 文化の集積としての、温泉旅館

工芸の歴史が層のように折り重なっている

加賀百万石という言葉の意味が、今もこれほど生きているとは思わなかった。「石」とは江戸時代の米の生産量を指すが、つまりは豊かさの指標。百万石の富は、さまざまな文化として継承されていることが、〈界 加賀〉に足を踏み入れた瞬間から体感できる。

文政年間(1818〜1830年)に建てられた伝統建築をそのままフロントとして使っている。

文政年間(1818〜1830年)に建てられた伝統建築をそのままフロントとして使っている。

江戸後期の文政年間に建てられた建築の重厚さは、時間を経なければ決して生まれ得ないもの。太い大黒柱と大きな丸太の梁を、釘などを使わずに組み合わせた「枠の内」という伝統工法は、200年もの間、建物を支え続けてきた。国の有形文化財に登録された建築が、フロントやバーとして、今も使われている贅沢に身を浸していく。

かつては「白銀屋」という名の旅館だった。その歴史を受け継いでいる。

かつては「白銀屋」という名の旅館だった。その歴史を受け継いでいる。

〈界 加賀〉は400年余り続いた前身の旅館「白銀屋」の財産を引き継ぎながら、新しく生まれ変わったという。館内には、「白銀屋」の時代に宿泊し、交流があった北大路魯山人の器や書が飾られている。同じように現代作家の作品もまた随所に飾られ、実際に使われている。例えば大浴場には九谷焼の陶工たちが、四季をテーマにデザインしたアートパネルが掲げられている。赤一色で細描を施す「赤絵」や藍色の濃淡で表現する「藍九谷」など、多様な技法が壁を彩る。露天風呂との境にある窓ガラスには、金粉と銀箔によって加賀から見上げる白山山地が描かれていた。

加賀獅子舞に見る、余興の素晴らしさ

〈界 加賀〉に滞在していると、温泉旅館は、文化を引き継ぎ、醸成していく場なのだと実感できる。その思いを特に強くしたのは、夕食後に観た「加賀獅子舞」のためだろう。〈界〉には「ご当地楽」という、その土地の伝統文化を楽しむための催しがあるが、〈界 加賀〉では、祝い事の奉納として舞われる加賀獅子舞を披露しているという。先ほどまで案内をしてくれていたスタッフが踊ると言う。 所詮、素人の踊りだろうと高を括っていたが、その印象は大きく覆された。

迫力の加賀獅子舞。スタッフが、伝統文化の担い手となっている。

迫力の加賀獅子舞。スタッフが、伝統文化の担い手となっている。

木製の獅子頭が歯を合わせる度に大きな音が鳴り響く。真剣さに引き込まれてしまう。オリジナルの振り付けとなっているものの、この文化を引き継いでいく意志のようなものが強く感じられる。年に数回しか行われない“本物の”加賀獅子舞は、なかなか見ることができないが、〈界 加賀〉ならば、毎日、見ることができる。その手軽さこそが、温泉旅館の魅力であり、〈界〉が目指している文化の入り口としての役割なのだろう。加賀獅子頭を制作している工房は、石川県内にひとつしか残っていないという。

温泉旅館は、文化の集積。そう思っているから、さまざまな工夫を凝らして、客をもてなす。出立前には、フロントと同じく国の有形文化財として登録された茶室「思惟庵」で、一服立てていただいた。かつて魯山人も、同じ光に包まれたのだろうか? と考えながら、少し居住まいを正して、抹茶を点てるスタッフのお手前に見入る。加賀獅子舞と同じように、スタッフが学び、文化の伝道師となっているという。

〈界 加賀〉の外へ出て、いい時間だったと建築を振り返った。加賀百万石の贅沢は、次の世代にもこうして渡されようとしている。

〈界 加賀〉宿泊券が当たるプレゼントキャンペーンを実施

〈界 加賀〉の宿泊券が当たるプレゼントキャンペーンを実施中。

colocal公式Instagramアカウント(@colocal_jp)と界公式Instagramアカウント(@hoshinoresorts.kai )をフォロー&キャンペーン投稿に「いいね」した方から抽選で1名様に宿泊券をプレゼント。
※コメントにてキラキラの絵文字を送っていただくと当選確率がUPします。

応募期間は2025/08/25〜2025/09/09まで。
詳しくはcolocalのInstagramをご確認ください。
@colocal_jp

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【賞品】星野リゾートの温泉旅館〈界 加賀〉
抽選で1名様に宿泊券が当たります。
・2名1室(1泊2食付き)
・部屋タイプ:星野リゾート指定

【宿泊期間】2025年10月1日~2026年3月31日 ※除外日あり
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界 加賀map

KAI Kaga 
界 加賀

住所:石川県加賀市山代温泉18-47

TEL:050-3134-8092(界予約センター)

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikaga/

〈界 加賀〉から足を伸ばして。 我谷盆の故郷を訪ねて ダム沿いのトレイルを歩く

ノミの跡が美しく、素朴な盆

木端葺き(こばぶき)に用いる栗の端材を使い、雪に閉ざされる農閑期に、自分たちが使うための盆として作り始めた。江戸後期から明治時代にかけて盛んに彫られ、物々交換や温泉街で売られたこともあったという。我谷村(わがたにむら)で作られていたから、我谷盆(わがたぼん)。ノミの跡がそのまま残された繊細と無骨の同居するさまに、不思議な魅力の宿った盆はしかし、時代が進むにつれ、木端葺きが瓦葺きへと変わり、次第に彫られなくなっていく。消えつつあった伝統は、1959年の県営我谷ダムの建設によって完全に絶えることになった。我谷村はダムに沈み、我谷盆は「幻の盆」となった。

人間国宝でもある木漆工芸家・黒田辰秋によって我谷盆は「発見」され、その後に幾人かの作家の手によって復興されている。現在もその系譜は繋げられているが、私はむしろ失われてしまったものを見たかった。山中温泉の賑わいから分け入った山深い谷間で、今も人を惹きつける盆が生まれた。ただ使うだけならば、揃えられたノミ跡も必要ない。その盆の美しさは、里山の豊かさから来るような気がしていた。

虫がいて、渓流があり、人の営みは続いていく

ダム湖にかかった長い吊橋を渡り、湖畔のトレイルを上流へと歩く。今でも山菜狩りのために歩く人がいるのかもしれない。ほとんど倒木もない。足元には蕗の葉が繁り、春には蕗の薹がたくさん採れるだろう。しばらく歩くとダム湖へと流れ込んでいる渓流があった。重なった丸石を辿って水辺に降りて振り返ると、先ほど立っていたのは、苔むした橋の上だとわかった。この橋は、果たしてダムができる以前からあったろうか? あるいはダムの整備のために作られたものかもしれない。渓流はダム以前からあったはずで、積み重ねられた丸石は、水辺に降りるために人が積んだもののように感じられる。渓流沿いには草を倒した踏み跡が少しあり、今でも釣り人が沢を登っているはずだった。

帰り道、道端に目を凝らしながら歩いていると、緑色に輝くゾウムシを見つけて写真を撮った。虫好きの友人に画像を送ると、リンゴヒゲボソゾウムシだとすぐに返信が来た。彼と地元の山を散策するうちに、自然の中へ入ると虫を探す癖がついてしまった。虫は、その土地の豊かさを表すバロメーターのようなもの。虫がいると不思議と安心する。

山中温泉にある「芭蕉の館」で我谷盆を見せてもらうため、我谷ダムから車を走らせていると、遠くからでもわかる、巨大な杉があった。菅原神社の境内にあるその大木は、栢野大杉と呼ばれ、なんと樹齢2300年を超えるという。根を守るためのボードウォークの上から、そっと巨木に触れながら頭を垂れる。ダムよりも、そして我谷村よりも、はるか昔から土地に根ざした杉の大木の表面は、うねるような筋が均等に並んで、はるか上部まで続いていた。

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界 加賀map

KAI Kaga 
界 加賀

住所:石川県加賀市山代温泉18-47

TEL:050-3134-8092(界予約センター)

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaikaga/

こっすい、おそがい、どえりゃあー! 吉本芸人・ありんくりんが挑戦する、 名古屋の方言

SNSでの総再生160万回以上!(2025年8月時点)コロカルの人気動画企画、ありんくりんの方言講座。
今回は、コロカル編集長からの挑戦状が届きました。名古屋の方言クイズ、イントネーション講座、早口言葉にチャレンジしてみてくださいね!

名古屋の方言クイズ

・ずる(運ぶ)
・おたからさん(お利口さん)
・ケッタ(自転車)
・まわし(準備)


名古屋のイントネーション講座

・どえりゃあ(ものすごい)
・こっすい(ずるい)
・おうちゃく(雑)
・おそがい(こわい)
・だだくさ(無駄)


名古屋の早口言葉

今度ん時はときんときんのえんぴつ持ってかんとかん。
てかちゃんと削っとかんとかんって言っとかんとかん
(今度えんぴつを持っていかないと。
というかちゃんと削っておかないとだめでしょ)

profile

ありんくりん

沖縄県出身、2014年に、ひがりゅうたとクリスで結成。コンビ名は方言で「あれもこれも」。『お笑いバイアスロン2018』(琉球朝日放送)優勝。『新春!Oh笑い O-1グランプリ』(沖縄テレビ)2019年、2020年、2022年優勝。現在冠ラジオ『ありんくりんのヨーガクナイト』(RBC琉球放送)、「友近ありんくりんのい~あんべぇ」(沖縄テレビ)に出演中。

Instagram

ひがりゅうた:https://www.instagram.com/arinkrin.higa710/?hl=ja

クリス:https://www.instagram.com/chris_arinkrin/

YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-JBOEI9NRCis8p_han0xww

開業から1周年。 〈Restaurant SAI 燊〉が体現する、ローカルガストロノミー

山梨県・西湖に位置する〈Restaurant SAI 燊〉が、2025年6月、開業から1周年を迎えた。
〈Restaurant SAI 燊〉は、「奥・山梨料理」を料理コンセプトに、「生きとし生けるものをすべていただく」という発想のガストロノミー。1周年を迎えるこれまでと、これからの挑戦について、Head Chefの豊島雅也さんに話を伺った。

とにかく誠実に向き合う。ローカルに受け入れられるために大切にしたこと

〈Restaurant SAI 燊〉がある山梨県・西湖は、穏やかな湖面が美しく、緑豊かな青木ヶ原樹海に囲まれた、神秘的な雰囲気を持つ自然が魅力的な場所。世界文化遺産に登録される「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」を構成する要素のひとつでもある。

レストランをプロデュースするのは、2021年に本社を山梨県の西湖に移転した総合エンターテイメント企業のアミューズ。地域資産を活用したイベントの開催やアウトドア・コンテンツ事業などを進めていく中で、富士河口湖町でレストラン〈TOYOSHIMA〉を営むオーナーシェフ・豊島さんと出会い、タッグを組むこととなった。

シェフの豊島雅也さん

コロナ禍が終わってから、「そもそも人は何のために食べるのか?」という本質を改めて考えるようになった豊島さんは、見た目だけでなく、何を口に入れるかが大切だという想いをもち、3年ほど前からレストランの開業準備を始めてきた。

開業までに一番時間をかけたのは、ローカルに住む人たちと誠実に向き合うこと。プライベートの時間も使いながら、一緒に山に入ったり釣りをしたり、時には家で作ったものや実家で採れたものをお裾分けすることも。こうしたお金ではない物々交換での交流が、ローカルで受け入れられるには必要なこと。利益のためだけに西湖に来ているわけではないことを理解してもらえたことで、様々な人や食材を紹介してくれるようになった。

こうした交流の中で知った食材や西湖エリアの文化を昇華させる豊島さんの料理、これこそが「ローカル・ガストロミー」を意味するところなのだ。

シェフ自ら仕入れるこだわりの食材と、しっかり伝えたい旬のこと

「木・火・土・金・水」をデザインコンセプトとした店内に足を踏み入れると、大きな木のテーブルと、焚き火台が出迎えてくれる。〈Restaurant SAI 燊〉では、お客さん全員でテーブルを囲み、一斉に食事をスタート。シェフが薪火・炭火を操りながら調理している様子を間近で眺め、食材やメニューの解説を聞きながら、その日だけの料理を楽しむ。

シェフの豊島雅也さん

料理に使用するのは鹿肉や熊肉などのジビエ、キノコ、山菜、高原野菜、ハーブ、ヒメマスやクニマスなどの淡水魚。西湖エリアだからこそ手に入るものばかりで、狩猟免許を持つシェフ自ら、山に入り食材を獲りに行くこともある。その日のお客様や気候に合わせて調理方法や味付けも変えるため、仕込みはしないという。

西湖では、山菜などの春の食材が長く流通し、夏野菜はぎゅっと旬が短い。秋の食材の代表であるきのこは、都内よりも1ヶ月ほど早く旬を迎える。都内から想像する食材の旬とは異なるため、西湖ならではの食材の旬をきちんと伝えることも大切にしている。

ドリンクは、西湖付近の冷たい湧水から始まる。アルコールペアリングの「氵酉」(しゅ)は、ソムリエが足を運びセレクトした、県産のワインを中心に。飲んでいる本人しかわからないような平等な空間を作りたいとの想いで用意された、ノンアルコールペアリングの「氵山」(さん)はお酒が苦手な人やドライバーも大満足のラインナップ。

西湖にしかない魅力を伝えるために、ローカルを噛み砕く

〈Restaurant SAI 燊〉がオープンするタイミングで、豊島さんは河口湖エリアから西湖へとベースを移した。そのため、初めは知らない郷土料理や食材が多かったという。

「地元の郷土料理は、このエリアで代々受け継がれ、大切にされてきたもの。そういうものを食べさせていただく機会があるので、僕ら料理人のフィルターを通して、フレンチや和食の技術を使って表現できたら、このエリアのローカルフードが、県外や世界でもっと注目されるんじゃないかなと常に考えています」

1周年を迎え、現在は自分たちが試したいことができる場所として、ジビエ食肉加工処理施設を準備中。またジビエの裾野を広げていくために、学校給食でのジビエ料理の監修や、子供達への講義も行ってきた。

シェフの豊島雅也さん

「地域の子ども達が大人になって県外に出た時に『給食に鹿が出ていたんだよ』と言えるような流れを作りたいです。せっかくこの地域にはたくさん鹿がいるんだから、ジビエに対して興味を持ってもらいたいし、良さを知らないのはもったいないですよね。将来山梨県のスーパーに当たり前にジビエが並んでいる光景ができたら嬉しいです。レストランとしては、この地域の魅力をしっかり伝えていく1年にしなければなと思っています」

〈Restaurant SAI 燊〉は、ローカルガストロノミーとしての存在感はもちろん、山梨の食材の素晴らしさを発信する存在となるだろう。今後の広がりにはこれからも目が離せない。

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Restaurant SAI 燊

住所:山梨県南都留郡富士河口湖町西湖208-1

Web:https://restaurant-sai.com/

Instagram:@restaurant_sai_lake_saiko

写真家・長野陽一さん推薦! 近所にあってよかった、と思える 鎌倉のおすすめスポット4選

日本やグローバルで活躍するナビゲーターにご登場いただき、地元や別荘などの拠点がある土地のおすすめスポットを紹介してもらう本企画。

今回は、写真家の長野陽一さんが登場。
鎌倉に住んで20年の長野さんに、近所にあってよかった、と思える鎌倉のお気に入りスポットを教えていただきました。

食卓を豊かにしてくれる〈サカナヤマルカマ〉

一昨年できた今泉台にある鮮魚店。鹿児島県の阿久根と小田原漁港から仕入れた丸魚が豊富です。軽トラで移動販売もやってて鎌倉市民の話題のお店。〈マルカマ〉のおかげで我が家の食卓が豊かになりました。

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サカナヤマルカマ

住所:神奈川県鎌倉市今泉台4-12-1

Instagram:@sakanaya.marukama

我が家のコーヒーは〈カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ〉で

鎌倉の人気店、〈カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ〉。10年以上、我が家のコーヒー豆はここの中深煎りと決めています。季節のパフェも名物。昨年30周年を迎え、記念に出版された書籍でも撮影を担当させていただきました。

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カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ

住所:神奈川県鎌倉市小町2-1-5 櫻井ビル 1階

Instagram:@cvdimanche

〈バードマウンテン〉の洋服は欠かせない

鎌倉御成通りの近くにある洋服店。かれこれ5年以上お世話になっていて、夏にこれがないともはや生きていけないかも?と思っている薄手のパンツや気の利いたシャツ、〈VANS〉のスニーカーなど、気が付けば、代表・鳥山さんが選んだ服ばかり着ています。僕が学生の頃に撮ったモノクロの作品を飾ってくれています。

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バードマウンテン

住所:神奈川県鎌倉市御成町5-3 蔵屋敷ビル 1F

Instagram:@birdmountain_official

街中にある紫陽花

東京と行き来をしていると、鎌倉は山と海が近いので季節の移り変わりがわかりやすい、と感じます。紫陽花の季節はなにより北鎌倉が映えるので、住民はきっと誇らしく思っているはず。毎年、自宅の庭の植えた覚えのない額紫陽花が咲くと写真を撮ってしまいます。

動画はこちらから!

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Yoichi Nagano 
長野陽一

写真家。新刊『長野陽一の美味しいポートレイト』HeHeより発売中。これまでの写真集に『BREATHLESS』FOIL刊、『島々』リトル・モア刊、『シマノホホエミ』FOIL刊など。

地元の家族や友人の喜ぶ顔が見たい! 〈グランスタ東京〉で選ぶ、 東京駅限定“推し土産”ベスト10

旅の始まりや帰省の玄関口としてにぎわう東京駅。そのエキナカ商業施設〈グランスタ東京〉で、駅で働く614人のスタッフが選んだ“リアルにおすすめしたい”東京駅限定スイーツランキングが発表された。対象は、グランスタ東京で年間を通して販売されている限定商品。普段からお客さんの反応を見ているキャストたちが「自分で買うならこれ! 」と本音で選んだ10商品は、味の良さはもちろん、パッケージの可愛さや話題性なども折り紙付き。帰省や夏の小旅行、ちょっとした贈りものにもぴったりなラインナップとなっている。

見事1位に輝いたのは……?

東京駅で働く人が本音で選んだ「自分で買いたい」スイーツ、栄えある1位は、〈Brick bake bakers by Pâtisserie ease〉の「クラフトフィナンシェ(プレーン)」。東京駅の赤レンガを模した見た目も印象的だが、何より魅力なのは店内のオーブンで焼き上げることによる香ばしい香りと焼きたての味わい。ショップ近くを通るたびにその香りに吸い寄せられて買ってしまう、というスタッフの声も多数。外はカリッと香ばしく、中はしっとりとした食感が楽しめる。

クラフトフィナンシェ(プレーン)/Brick bake bakers by Pâtisserie ease

1位:クラフトフィナンシェ(プレーン)/Brick bake bakers by Pâtisserie ease
B1F改札内 銀の鈴エリア。1個 300円。

2位〈Mr. CHEESECAKE〉の「Mr. CHEESECAKE Petit Tokyo Assortment」は、限定のフレーバーやパッケージが魅力のアソートセット。持ち歩きやすく、ご褒美スイーツとしても高評価。ほかにも〈喫茶店に恋して。〉の「クレームブリュレタルト」、〈カヌレリテ〉の「GRANSTA Box」など、手のひらサイズでちょっとずつ楽しめるスイーツも上位に名を連ねた。味わいだけでなく、デザイン性やシェアのしやすさなど、ビジュアルと実用性のバランスも選定の決め手となった。

Mr. CHEESECAKE Petit Tokyo Assortment/Mr. CHEESECAKE

2位:Mr. CHEESECAKE Petit Tokyo Assortment/Mr. CHEESECAKE
B1F改札内 銀の鈴エリア。3個入 2,727円。

クレームブリュレタルト/喫茶店に恋して。

3位:クレームブリュレタルト/喫茶店に恋して。
B1F改札内 銀の鈴エリア。4個入 950円。

サンドクッキー ヘーゼルナッツと木苺/COCORIS

4位:サンドクッキー ヘーゼルナッツと木苺/COCORIS
1F改札内 中央通路エリア。6個入 1,560円。

GRANSTA Box/カヌレリテ

5位:GRANSTA Box/カヌレリテ
B1F改札内 銀の鈴エリア。2個入 1,280円。

甘くない派にも嬉しい、和テイストのチップスが登場

甘いお菓子ばかりではないのも、今回のランキングの特徴。6位の「じゃがボルダチップス 鰹と昆布のうまみだし味」は、東京ばな奈とCalbeeの異色コラボによる新感覚のスナックがランクイン。和風だしの豊かな風味と厚切りならではの歯ごたえが特徴で、甘いお菓子が苦手な人への手土産にも適している。また、粉が手につきにくい製法を採用しており、外出時でも扱いやすい点も魅力のひとつである。

Calbee+×東京ばな奈 じゃがボルダチップス 鰹と昆布のうまみだし味/じゃがボルダ

6位:Calbee+×東京ばな奈 じゃがボルダチップス 鰹と昆布のうまみだし味/じゃがボルダ
1F改札内 吹き抜けエリア。4袋入 1,047円。

ランキングに名を連ねたのはいずれも、東京駅だけで出会える限定スイーツばかり。帰省や旅行の際の手土産にはもちろん、自分へのちょっとしたご褒美にもぴったりだ。移動の前に立ち寄って、お気に入りの一品を探してみてほしい。

おいしい「選ばれし逸品」を手に取ってみてはいかがだろうか。

7位〜10位も発表!

ガレット ショコラ エピス/ピエール マルコリーニ

7位:ガレット ショコラ エピス/ピエール マルコリーニ
B1F改札内 銀の鈴エリア。8個入 3,888円。

メープルクッキー詰合せ缶/ザ・メープルマニア

8位:メープルクッキー詰合せ缶/ザ・メープルマニア
1F改札内 吹き抜けエリア。2種各8枚入 2,500円。

キャラメルバターサンドイッチ/(NO) RAISIN SANDWICH

9位:キャラメルバターサンドイッチ/(NO) RAISIN SANDWICH
1F改札内 吹き抜けエリア。4個入 1,580円。

東京鈴もなか/香炉庵 KOURO-AN

10位:東京鈴もなか/香炉庵 KOURO-AN
B1F改札内 銀の鈴エリア。1袋2玉入 320円

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場所:JR東京駅構内「グランスタ東京」

公式サイト:https://www.gransta.jp/mall/gransta_tokyo/

〈界 遠州〉から足を伸ばして。 ナウマンゾウに導かれて、 太古の風景を探す

かつてナウマンゾウが歩いた水辺

どうしてナウマンゾウに惹かれるのだろう。恐竜ほど遠い過去とは感じないからかもしれない。牙を生やした象が、わたしたちが見慣れた風景を闊歩する姿を想像するだけで胸が躍る。大きい動物に対する畏怖は、どこか失われた世界に対する憐憫につながっているからかもしれない。映画『もののけ姫』で、巨大な猪の乙事主(おっことぬし)は「わしの一族を見ろ。みんな小さく馬鹿になりつつある」と言う。動物園で見るアジアゾウよりもひと回り小さなナウマンゾウは、乙事主たちが生きていた時代の動物のような気がしてしまう。

ナウマンゾウと聞けば1960年代に大規模な発掘作業が行われた長野県の野尻湖が頭に浮かぶが、それよりも早い1921年、浜名湖沿岸の工事現場から、牙や臼歯、下顎骨の化石が発見されている。地質学者で古生物学者でもある槇山次郎は、その化石を東京帝国大学地質学の初代教授だったハインリッヒ・エドムント・ナウマンにちなんで、「Elephas namadicus naumanni」と名づけ、和名ではナウマンゾウと呼ばれるようになったという。浜松博物館には、ナウマンゾウの骨格標本が展示されていた。

浜松博物館の入り口に展示されている、ナウマンゾウの骨格標本。化石ではない。

浜松博物館の入り口に展示されている、ナウマンゾウの骨格標本。化石ではない。

正直に言ってどの展示も渋く、骨格標本にも迫力は感じられない。けれど、すぐ隣に展示されていた人骨に見入ってしまった。ナウマンゾウの時代に生きた、身長1.4mほどの女性と推定される旧石器時代の化石。浜北人と名づけられている。反対側の壁には、縄文時代後期の屈葬人骨が実際に発掘されたそのままの形で展示されていた。どちらの人骨も、死にまつわる恐ろしさのようなものは既に消えて、物質に回帰している。それでも静かな存在感を放っているのは、土地と人間の関わり方のようなものを問いかけているからか。

発掘された状態で展示されている、屈葬人骨。こちらは本物。

発掘された状態で展示されている、屈葬人骨。こちらは本物。

どれだけ食べたら貝塚ができるのか。わたしたちと変わらない食生活

浜松博物館は、蜆塚(しじみづか)遺跡に隣接している。その名の通り、縄文後期から晩期にかけて、縄文人たちが暮らし、蜆のほか、蛤、アサリなどが貝塚となって残された遺跡。貝塚の断面がそのまま見られるのだが、先に見ていた写真家の平野太呂は「しかしまあ、よく食べたね」と笑っていた。一体、何年かけて食べた貝殻なのだろう。積み重なって分厚い層になっている。貝類だけでなく、陸からは猪や日本鹿、雉、海からは黒鯛のほか外洋性の鰹や鮪、さらに淡水魚の鯉や鮒と、実にバラエティ豊かな食生活を送っていたらしい。ほとんどわたしたちが食べているものと変わらない。再現された藁葺き屋根の住居に入ってみると、天井からわずかに光が差し込み、不思議なほど気分が落ち着いてしまう。この薄暗さによる安堵感は、もっと古い洞窟に生きていた時代の記憶のせいかしら。

縄文人が暮らしていたことは、その土地の豊かさの証明という言説を読んだことがある。食糧が豊富で、周囲から少し小高くなって安全が確保しやすい場所。蜆塚遺跡はまさしくそういう土地だった。当時の自然環境が残されている場所を探して、縄文人が蜆を拾った佐鳴湖の畔を歩く。浜名湖と同じように入江が砂丘によって閉ざされ、汽水湖となっている。そのために多様な魚介類が生息していた。今でも湖には葦が生え、遠景の山々には広葉樹の森がある。コンクリートで固められていない湖には、生き物の棲み家がたくさんある。流れ込む小さな川も、護岸がなされていない。その川原沿いに生い茂った草がところどころ、通路のように刈られていた。土手から覗いてみれば、釣り台に座って魚を狙う釣り師がコンパクトなスペースに収まっていた。生き物がいるところに、人間がいる。いつの時代も変わらない。

背の高い草むらから、ナウマンゾウがぬっと現れる姿を想像する。のんびり釣りに興じている余裕なんてないのだろうか。いや、生き物がいる水辺は、とても穏やかな空気に満ちていたはずだ。

佐鳴湖は、かつて入江であり、汽水湖を経て、現在は淡水湖になった。

佐鳴湖は、かつて入江であり、汽水湖を経て、現在は淡水湖になった。

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KAI Enshu
界 遠州

住所:静岡県浜松市中央区舘山寺町399-1

TEL:050-3134-8092(界予約センター)

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaienshu/

〈界 遠州〉 旅を埋め尽くす、煎茶の記憶

エントランスで、茶の深みにはまる

滞在中に、一体、何杯の煎茶をいただいたことだろう。星野リゾートの温泉旅館〈界〉ブランドでは、それぞれの土地を凝縮した趣向が凝らされているが、〈界 遠州〉ほど、ひとつの特産品に特化した宿は珍しいかもしれない。

まず「美楽茶ラウンジ」と名づけられた茶畑を望むロビー階ではティースタンドが迎えてくれる。複数の冷茶が逆さまのボトルに入り、まるでバーのような雰囲気で、いつでも気軽にカップ・オブ・ティー。「ティーセラー」には12種の煎茶と1種の黒豆茶がラインアップされ、自分好みのお茶を選ぶことができる。「香り」、「甘み」、「旨み」、「苦み」という茶の四つの要素を数値化し、生産地やどのように育ったのか記された「ティーカード」がついている。煎茶のテロワールは、驚くほど多彩だ。その場でお茶を淹れることも、部屋に茶葉を持っていくこともできる。

ただし、浜名湖を望むそれぞれの部屋には、あらかじめ3種のオリジナルブレンドが、茶菓子と一緒に用意されている。鉄瓶で湯を沸かし、朝、昼、夜とシチュエーションに合わせてブレンドされた煎茶を飲む。それだけでも、気持ちが緩んでいくのがわかる。

湯船に立ち上るのもまた、煎茶の香り

ひと心地着いて、さて温泉と浴場に行けば、桶型のヒバの湯船には、実際に飲むこともできるというお茶の入った「お茶玉」が浮かんでいる。ナトリウム・カルシウム–塩化物強塩泉の効能は、切り傷、やけどなど。その温泉にお茶の成分までプラスされた「お茶玉美肌入浴」で、体の外からもお茶づくし。

「白焼き鰻の柑香和え」にはじまった夕食でも、それぞれのメニューにペアリングした煎茶を選ぶことができる。例えば、遠州の知られざる名物である「ふぐの唐揚げ」には、爽やかな香りと甘みを感じる煎茶を合わせ、続く「うなすき」へと舌と気持ちを整えてくれる。

食後には「美楽茶ラウンジ」で「おちゃけ」と名づけた、ジンと煎茶を合わせたカクテルまで楽しめる。

お茶のカクテル、その名も「おちゃけ」。

お茶のカクテル、その名も「おちゃけ」。

そして翌朝には、新芽が出始めた茶畑を眺めながら、茶摘みの動きを模した体操で体を目覚めさせ、あさごはんと一緒に、暑さ寒さ、湿気の有無、その日の天候に合わせて選んでもらった煎茶をいただく。日本茶アドバイザーの資格を持つスタッフは、まさしく伝道師だった。

せっかく始まった煎茶との付き合いを滞在中だけで終わらせてしまうのはもったいない。土産に茶葉を持ち帰り、旅の疲れを癒すべく煎茶を淹れたら、たちまち浜名湖の凪いだ湖面が目に浮かぶ。煎茶のほろ苦さは頭と体にしっかり残っていて、旅の余韻はしばらく続いた。

〈界 遠州〉宿泊券が当たるプレゼントキャンペーンを実施

〈界 遠州〉の宿泊券が当たるプレゼントキャンペーンを実施中。

colocal公式Instagramアカウント(@colocal_jp)と界公式Instagramアカウント(@hoshinoresorts.kai )をフォロー&キャンペーン投稿に「いいね」した方から抽選で1名様に宿泊券をプレゼント。
※コメントにてお茶の絵文字を送っていただくと当選確率がUPします。

応募期間は2025/07/24〜2025/08/08まで。
詳しくはcolocalのInstagramをご確認ください。
@colocal_jp

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【賞品】星野リゾートの温泉旅館〈界 遠州〉
抽選で1名様に宿泊券が当たります。
・2名1室(1泊2食付き)
・部屋タイプ:星野リゾート指定

【宿泊期間】2025年9月1日~2026年2月28日 ※除外日あり
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KAI Enshu 
界 遠州

住所:静岡県浜松市中央区舘山寺町399-1

TEL:050-3134-8092(界予約センター)

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaienshu/