かつて海だった場所を、車で走る。能登・国道249号の絶景

能登・国道249号線の絶景
現在能登半島の日本海側の海岸線では、世界でも珍しい自然現象によるダイナミックな光景が広がっている。能登半島地震により海底が隆起、新しい陸が誕生したのだ。風景の変化はもちろんのこと、県の面積も拡大。大地震が多い日本でもあまり観測されたことのない、海底隆起について、国土地理院の宗包(むねかね)地殻変動研究室長に話を聞いた。

海底隆起は4メートル。大迫力のパノラマを車で走行

能登半島の日本海沿いを走る国道249号。Googleマップを見ながら車を走らせると時折、海の上を走行していることがある。もちろん海を走っているわけではない。現在の国道249号は、旧道の補修工事が続く一方、能登半島地震で隆起した新しい陸地に新道が開通しており、車はそこを走っている。

「能登半島地震では、海底が4メートル隆起しました。新しい陸地が生まれたわけですが、これだけの規模で新しい陸地が生まれたのは初めての出来事です」

日本はもちろんのこと、世界でも大規模な地震は起きているが、今回のような海底隆起による陸地の誕生は珍しい。

「能登半島沿岸は、比較的浅い海が続いていたこと、断層が半島の陸地に近い位置だったことから、地震が起きたことで海底が隆起して海面に出てきました。一般的に離水(りすい)と呼ばれる現象です。海底から離れ陸に上がる。つまり水から離れるという意味です。

隆起した部分が積み上がっていくと崖になり、崖には離水層を確認することができます。そして、たびたび隆起することで階段のように隆起が積み重なる海岸段丘と呼ばれる崖が出来上がります。能登半島の断崖絶壁も海岸段丘によるものです。太古の昔にもたびたび同じエリアで離水が起きるほどの規模で地震が繰り返されていたと考えられます」

石川県の面積が拡大。海底隆起は日本の歴史にも記録されている

新道を走行していると、突如現れる断崖絶壁。もともとは海に迫り出していて見えなかった部分を道路上から見上げることができる。聳え立つ崖はどことなく白い。

「海底では岩に生物が付着していて、陸に上がったことで死滅しその残骸が白化します。白いことは、そこが昔海底だったというマーカーになるという研究論文も発表されています」

能登・国道249号線の絶景

国土地理院の公表値では、能登半島地震後の地図更新の結果、石川県の面積が約4.7km²増加した。能登半島地震による海岸隆起が面積増加の要因の一つと考えられている。大昔に同じような現象は起きているのだろうか。

「1923年の関東大震災の後に三浦半島あたりで陸が生まれたという記録や、同じ関東地震で江戸時代に起きた元禄地震では、房総半島付近で6メートルの隆起があったという記録も残っています。また、松尾芭蕉が『奥の細道』で風光明媚な入り江として描いた象潟(きさかた)も、その後の1804年の地震で隆起し、陸地へと姿を変えました。長い歴史の中では、こうしたことは起きたことがある現象です」

海底隆起が生んだ道は2029年春までの期間限定

地震により地盤が隆起する時、そのスピードはどのぐらいなのだろうか。

「国土地理院では連続的に地面の高さをモニタリングできるGNSSというシステムを各地に配置しているのですが、それによると、数十秒のうちに4メートル、ダダダっと隆起したようです」

観測以来初めての現象を前に、地理のプロフェッショナルでも、その現象には驚きを隠せなかったそう。

「隆起を目の当たりにするというのは、正直、大きな驚きでした。貴重な自然現象でもあり、世界中でその場を実際に訪れ見ることができるのも稀です」

その場を車で走ると、自然の壮大さと底知れぬ力を体感できるはずだ。しかし、この光景を見られるのは今のうちかもしれない。国道249号の迂回路は、土砂崩れで通行できなくなったトンネルを避けるため、隆起した海岸線の上に整備された復興ルート。国土交通省は2029年春までの本復旧を目指しており、その後この道を走れるかどうかは未定となっている。

能登・国道249号線の絶景

Information

国道249号(隆起海岸の迂回路区間)


区間:石川県輪島市〜珠洲市(日本海沿岸)
※2029年春までの期間限定ルート(本復旧後の通行可否は未定)

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石川県は、日本海に面し、加賀百万石の歴史と文化、そして豊かな里山里海の風景が息づく土地です。海と山に育まれた自然の中に、城下町や温泉地、伝統工芸の産地など、多彩な景色が広がっています。古くから北前船の寄港地として人や文化が行き交い、多様な交流の中で独自の文化を育んできました。加賀と能登、それぞれ異なる風土と歴史が重なり合い、土地ごとに個性豊かな魅力が息づいています。

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