清酒発祥の地で、角打ちからバーまで。日本酒ではしごする奈良ナイトの3ステップ
STEP1:酒屋の角打ちで、好みの奈良酒と巡り合う〈なら泉勇斎〉

まずはいろんな奈良の日本酒を飲んでみたい!
ならまちエリアにある〈なら泉勇斎(ならいずみゆうさい)〉は、酒屋が経営する角打ち。県内27蔵120銘柄以上の日本酒を、一杯200円から試飲することができる。もちろん気に入ったものがあればボトル購入もOKだ。

カウンターに立つのは、フレンドリーな店主の山中研太郎(やまなかけんたろう)さん。奈良の酒を知り尽くした彼のガイドにより、飲んでみたい銘柄がどんどん見つかる。
「奈良の日本酒は個性的。蔵ごとに全然味が違うんです。初めて奈良のお酒を飲む人には『みむろ杉』『風の森』『春鹿』あたりがおすすめですし、飲み慣れている方には菩提酛(ぼだいもと)とか、県外に出回らない小さな蔵のお酒も飲んでほしいねぇ」
菩提酛とは、清酒発祥の地といわれる奈良県の正暦寺で、室町時代に確立された日本最古の酒造りの手法のこと。奈良県ではいろいろな蔵がこの菩提酛を復刻させて日本酒を仕込んでいる。せっかくなので、新旧の奈良酒を飲み比べてみることにした。

モダン代表の「風の森 露葉風(つゆはかぜ)507」は、奈良県の酒米・露葉風で仕込んだ定番酒。微発泡で飲み口はすっきりしており、ほどよいフルーティーさと甘酸のバランスが絶妙でスルスル飲める。
一方のクラシック代表は「菩提もと仕込純米酒 つげのひむろ」。倉本酒造という小さな蔵で造られていて、県外には滅多に出回らない。菩提酛由来の酸味とお米の旨味が重なる味わいはふくよかで、余韻がとても綺麗だ。
山中さんの人柄とスタンディングの気軽さで、隣のお客さんとも会話が弾む。

奈良の日本酒に詳しくなったところで、日本酒と共に食事を楽しめるお店を探しに二軒目へ。
Information
奈良の日本酒のみ、27蔵120銘柄以上を取り揃える酒屋。立ち飲みのカウンターでは、すべてのお酒を有料試飲という形で味わうことができる。
住所:奈良県奈良市西寺林町22|地図
TEL:0742-26-6078
営:11:00〜20:00
休:木
Instagram:@nara.yu_sai
STEP2:奈良産食材づくしの“ピンチョス”と日本酒で乾杯〈奈良料理 mikado〉
夕飯は日本酒が飲めるピンチョスのお店〈奈良料理 mikado〉へ。ピンチョスとは具材を串に刺したスペインのおつまみのこと。〈mikado〉では奈良県産の食材を使ったピンチョスを“奈良料理”と名付けており、一晩でさまざまな奈良食材を味わえる。

「どのピンチョスにも何かしら奈良の食材が入っていますよ」と、店主の原田晃輔(はらだこうすけ)さん。一つひとつの食材を丁寧に説明してくれるので、全部食べてみたくなる。
まずはお酒から。日本酒は「みむろ杉 純米吟醸 山田錦」と「儀助(ぎすけ) 純米吟醸 無濾過生酒」を一合ずつオーダー。徳利とおちょこがかわいいと話していると、「赤膚焼(あかはだやき)」という奈良の焼き物だと教えてくれた。酒器まで奈良推しなのか。ちなみにドリンクもメイド・イン・奈良のものが多く、日本酒以外にも奈良醸造のクラフトビールやKIKKAジン、ノンアルでは久保本家の酒粕を使った「大人のカルピス」などがある。
日本酒をちびちびやっていると、“奈良料理”のピンチョスが到着。
古代の手作りチーズ・蘇(そ)と奈良銘菓の柿寿賀(かきすが)を合わせた「大和」や、大和ポークに奈良の伝統野菜・大和まなのふりかけをのせた「若草」、フォアグラのムースと奈良漬が絶妙に合う「奈良最中」など、未体験の奈良食材を一度に味わえて、食べるたびに楽しい。そしてどのピンチョスも、日本酒に合うのがまたいい。
もう一品、柑橘の原種と言われている大和橘(やまとたちばな)」をふんだんに使った麺もいただく。柿の葉茶入りの出汁に、皮を練り込んだつくね、麺にも果汁がたっぷり練り込まれ、凛とした酸味とスパイスを感じる強い香りが、旨味のある出汁とマッチしてとても美味だ。

「まだあまり知られていませんが、本当に香りが良い柑橘なんです。万葉集にも、当時の人が大和橘を香水代わりに着物の袖に入れていた、という話が出てくるんですよ」
なんと豊かな奈良食材。原田さんの話を聞いて、奈良の食文化への理解が深まった。ほろ酔いになる頃には、すっかりお腹が奈良で満たされていた。
夕食を堪能したところで、夜の奈良を締めくくる最後の1軒へ向かう。
Information
奈良県産の食材をピンチョスに仕上げて食べさせてくれる酒場。日本酒はもちろん、ビールやジン、ノンアルコールまで、ドリンクも奈良ブランドを取り揃える。
住所:奈良県奈良市今御門町27-1|地図
TEL:0742-81-4666
営:昼の部 12:00〜15:00、夜の部 18:00〜22:00、朝ご飯 7:30〜10:00(金・土のみ)
休:水・木
Instagram:@mikado_nara
STEP3:奈良はバーの聖地。日本酒カクテルで夜を締める〈Bar Savant〉
最後にもう1軒。奈良ナイトにバーは外せない。非日常な古都のムードとマッチするからなのか、奈良には世界トップレベルのバーが集まっていて、バー巡りを目的に旅行に来る人もいるほどの聖地と言われている。
この日訪れた〈Bar Savant(バー サヴァン)〉は築120年の古民家がお店になっている。看板はなく、扉は二重になっているから少し緊張するが、中へ入れば朗らかな店主の田中達(たなかたつし)さんが迎えてくれる。
オーセンティックバーでありながら妙にくつろいでしまうのは、重厚なカウンターやバックバーに並ぶウイスキーボトルの景色と、床の間や欄間、奥に見える坪庭など、純和風の民家のインテリアが混じり合っているからだろう。
目当ては「かぎろひ」という日本酒カクテル。さっそくオーダーすると、田中さんが美しい手つきでつくってくれる。倉本酒造の日本酒「KURAMOTO SE」に、大和茶の煎茶を入れてスワリング。「春鹿」で知られる酒蔵〈今西清兵衛商店(いまにしせいべいしょうてん)〉が手がける本みりんと、トニックウォーターを少し加えたら、カクテルグラスに注ぎ入れる。
翡翠色に輝く「かぎろひ」は、飲んだ瞬間に青々とした香りが舞い上がる。ライチやグレープフルーツのような繊細な日本酒の香りを、茶葉の風味がさりげなく引き立てて、とても美しい味がする。
「基本的にクラシックのカクテルをお出ししていますが、奈良には日本酒もありますし、イチゴや柿など果実もよく使います。秋になったら日本酒と柿のカクテルをぜひ味わいに来てください」

「実家はここから歩いてすぐなんです」という田中さん。生駒市にあるレジェンド的なバー〈Bar Charleston(バー チャールストン)〉で10年間修業し、地元で自分のバーを開いた。胸につけた鹿のバッジは、彼の奈良愛を物語っている。そんな田中さんに奈良ナイトの楽しみ方を教えてもらった。
「裏路地に行ってみてください。私が好きなのは、すぐ近くの南市町(みなみいちちょう)というエリア。町並みが古くて、〈一楽(いちらく)〉という地元で愛される居酒屋や、スナックもあって良い雰囲気です。それから当店もそうですが、奈良は昼からオープンしているバーが多いんですよ。観光を終えたらまずバーで食前酒を飲み、6時くらいから夕食を楽しんで、最後にまたバーで締めるのが、最高の奈良の夜コースですね」
おいしいお酒と心地いいおしゃべりに癒されて、旅の疲れはどこへやら。日本酒を求めて、教えてもらった裏路地を歩きながらもう一軒だけはしごしようかな。
Information
築120年の古民家を改装した趣のあるバー。奈良の日本酒や果物など、地場産の素材を使ったカクテルを味わって。
住所:奈良県奈良市椿井町30−3|地図
TEL:0742-23-8568
営:14:00〜23:00 (最終入店 22:00)
休:火・第4水曜日
Instagram:@bar_savant