奈良県に住んでいても世界とつながれる。どこでも働ける時代、住む場所にとらわれない
住みたい場所で、キャリアを生かす道を見つけた

松浦さんが暮らすのは奈良県宇陀市。「大和高原(やまとこうげん)」と呼ばれる奈良県北東部の高原地帯にある自然豊かな場所だ。家族が大好きで、地元を離れるつもりはなかったが、出版社で働きたいという夢のために思い切って上京。その後、祖父の体調変化を機にUターンを決めた際も、大好きな地元へ戻ることに迷いはなかったという。
「コロナ禍を経てリモートワークが許されるようになって、やりたいことをやるのに場所は関係ないと思えるようになりました。どこにいても外と繋がることができる。だからすんなり帰ってこられました」

地元に戻って入社した〈奈良醸造株式会社〉は、世界へ向けてものづくりをするクラフトビールのブルワリー。自分がかっこいいと思える企業が地元にあったことは、松浦さんにとって幸運なことだった。
「醸造長の浪岡安則(なみおかやすのり)さんは、世界大会で賞を取るほどのビールをつくる人。ビールを通じてまずは世界中の人に奈良を知ってもらうことで、奈良を盛り上げたいというのが彼の考えです。〈奈良醸造〉の鹿や大仏とは違う、新しい奈良の一面でありたいというブランドのスタンスもすごく好きですね」

東京で得た経験と人脈が、いまの生活にも活きている
〈奈良醸造〉では営業と広報担当を兼務し、外の世界へ商品やブランドの魅力を発信する役目を担っている松浦さん。その仕事には、東京の出版社で培った経験が存分に活かされていると話す。
「商品のプロモーションを考えたり、社外の人とイベントを企画したり。自分が東京の出版社で働いた経験がなかったら、今やっている仕事はできなかったことだと思います」

〈奈良醸造〉では副業が認められているため、松浦さんは社員として働きながらもライターやSNS運用、PRなどの仕事も請け負っている。リモートで仕事ができる時代の恩恵をフルに活かして好きなことに邁進している。
「主なクライアントは東京など県外にいるので、仕事を通じて奈良以外の場所の方とやりとりできるのが楽しいです。〈奈良醸造〉の仕事でもイベントなどで出張に行くことも多いですし、奈良にいながら全国とつながれている気がします。ひと昔前のUターンは、地元の世界だけで生きていく覚悟が必要なものでしたが、今の時代はそんなことないのかなと思います」

季節の移り変わりを肌で感じられる宇陀での生活
一度東京に出たことで、宇陀の暮らしの心地良さにも改めて気づいた。
「宇陀っていわゆる大自然があるわけではないんですが、自然の風景が当たり前に溶け込んでいるんです。出勤途中に田園を見ると、綺麗だな、空が広いなと思う。日常的に自然に触れていることで、なんだか本来の時間感覚を取り戻した気がするんですよね。東京にいる時は、気づいたら夜!という毎日で、季節感もあまりなかったんですけれど、今は田植えが始まっているのを見て初夏を感じたり、近所のおばちゃんが大きなタケノコをくれて春の訪れに気づいたり。季節の移り変わりを肌で感じていますね」
宇陀には移住者も多く、同世代のユニークな活動をする人たちとのつながりも増えている。
「実は奈良(特に宇陀市)は薬草や漢方の歴史が深い地域なので、漢方を使ったハーブティーをつくる方や、古民家を改修して一棟貸しの宿を運営している方などがいます。大阪などの都市部や県外からの移住者が多くて、仲間が増えるのは面白いですね」
東京の友人とは疎遠になるのかなと思いきや、むしろ移住後のほうが関係が深まっているかもしれない、と言う。
「『仕事で関西方面に行くからついでに会いに行くよ!』という感じで、東京の友人が奈良に来てくれることがよくあります。むしろ東京にいた時よりも会っているのでは?と思うほど。私もこちらに住むようになってから、大仏コース以外の奈良を案内できるようになりました。お互いの関係は深まって、奈良のことも知ってもらえて、移住してよかったなと思います」
Information
まつうら・このみ/東京で出版社勤務を経て、2023年に地元の奈良県宇陀市へUターン。現在は〈奈良醸造株式会社〉の広報・営業として働きながら、副業で執筆やPRの仕事を行う。
Information
奈良県奈良市のクラフトビール醸造所。醸造長・浪岡安則さんがつくりだす多彩なスタイルのビールは世界でも評価が高い。味わいの世界観に合わせて毎度変わるラベルデザインも魅力。
HP:https://narabrewing.com/
Instagram:@narabrewingco