奈良県に住んでいても世界とつながれる。どこでも働ける時代、住む場所にとらわれない

「移住」と聞くと、大きな決断のように感じるかもしれない。仕事や家族、住まい、人との関係。暮らす場所が変われば、日常も大きく変わる。しかし実際に移住した人たちの話を聞くと、その先には、環境の変化や戸惑いだけではない、新しい発見や自分らしく暮らせる時間があった。奈良に住む大好きな家族と暮らしたいと、2023年に東京から地元・奈良県宇陀(うだ)市へUターンした松浦香美(まつうらこのみ)さん。クラフトビールの醸造所〈奈良醸造株式会社〉で広報・営業として働きながら、副業でライターとして県外のクライアントとも仕事をする。場所に縛られずに働くというスタンスが、彼女の奈良での生活を豊かなものにしている。

住みたい場所で、キャリアを生かす道を見つけた

奈良県宇陀市の風景
奈良県宇陀市の風景。

松浦さんが暮らすのは奈良県宇陀市。「大和高原(やまとこうげん)」と呼ばれる奈良県北東部の高原地帯にある自然豊かな場所だ。家族が大好きで、地元を離れるつもりはなかったが、出版社で働きたいという夢のために思い切って上京。その後、祖父の体調変化を機にUターンを決めた際も、大好きな地元へ戻ることに迷いはなかったという。

「コロナ禍を経てリモートワークが許されるようになって、やりたいことをやるのに場所は関係ないと思えるようになりました。どこにいても外と繋がることができる。だからすんなり帰ってこられました」

奈良県宇陀市にUターンし〈奈良醸造株式会社〉で働く松浦香美さん
東京からUターンして〈奈良醸造〉で働く松浦香美さん。

地元に戻って入社した〈奈良醸造株式会社〉は、世界へ向けてものづくりをするクラフトビールのブルワリー。自分がかっこいいと思える企業が地元にあったことは、松浦さんにとって幸運なことだった。

「醸造長の浪岡安則(なみおかやすのり)さんは、世界大会で賞を取るほどのビールをつくる人。ビールを通じてまずは世界中の人に奈良を知ってもらうことで、奈良を盛り上げたいというのが彼の考えです。〈奈良醸造〉の鹿や大仏とは違う、新しい奈良の一面でありたいというブランドのスタンスもすごく好きですね」

醸造長の浪岡安則さん(右)と。

東京で得た経験と人脈が、いまの生活にも活きている

〈奈良醸造〉では営業と広報担当を兼務し、外の世界へ商品やブランドの魅力を発信する役目を担っている松浦さん。その仕事には、東京の出版社で培った経験が存分に活かされていると話す。

「商品のプロモーションを考えたり、社外の人とイベントを企画したり。自分が東京の出版社で働いた経験がなかったら、今やっている仕事はできなかったことだと思います」

〈奈良醸造〉のクラフトビール
〈奈良醸造〉のクラフトビールはコンセプトに合わせて表情を変えるデザインも楽しい。

〈奈良醸造〉では副業が認められているため、松浦さんは社員として働きながらもライターやSNS運用、PRなどの仕事も請け負っている。リモートで仕事ができる時代の恩恵をフルに活かして好きなことに邁進している。

「主なクライアントは東京など県外にいるので、仕事を通じて奈良以外の場所の方とやりとりできるのが楽しいです。〈奈良醸造〉の仕事でもイベントなどで出張に行くことも多いですし、奈良にいながら全国とつながれている気がします。ひと昔前のUターンは、地元の世界だけで生きていく覚悟が必要なものでしたが、今の時代はそんなことないのかなと思います」

愛知県蒲郡(がまごおり)市で開催される野外フェスティバル「森、道、市場」に出店。限定のコラボビールも販売した。

季節の移り変わりを肌で感じられる宇陀での生活

一度東京に出たことで、宇陀の暮らしの心地良さにも改めて気づいた。

「宇陀っていわゆる大自然があるわけではないんですが、自然の風景が当たり前に溶け込んでいるんです。出勤途中に田園を見ると、綺麗だな、空が広いなと思う。日常的に自然に触れていることで、なんだか本来の時間感覚を取り戻した気がするんですよね。東京にいる時は、気づいたら夜!という毎日で、季節感もあまりなかったんですけれど、今は田植えが始まっているのを見て初夏を感じたり、近所のおばちゃんが大きなタケノコをくれて春の訪れに気づいたり。季節の移り変わりを肌で感じていますね」

宇陀には移住者も多く、同世代のユニークな活動をする人たちとのつながりも増えている。

「実は奈良(特に宇陀市)は薬草や漢方の歴史が深い地域なので、漢方を使ったハーブティーをつくる方や、古民家を改修して一棟貸しの宿を運営している方などがいます。大阪などの都市部や県外からの移住者が多くて、仲間が増えるのは面白いですね」

東京の友人とは疎遠になるのかなと思いきや、むしろ移住後のほうが関係が深まっているかもしれない、と言う。

「『仕事で関西方面に行くからついでに会いに行くよ!』という感じで、東京の友人が奈良に来てくれることがよくあります。むしろ東京にいた時よりも会っているのでは?と思うほど。私もこちらに住むようになってから、大仏コース以外の奈良を案内できるようになりました。お互いの関係は深まって、奈良のことも知ってもらえて、移住してよかったなと思います」

Information

奈良県宇陀市にUターンし〈奈良醸造株式会社〉で働く松浦香美さん
松浦香美

まつうら・このみ/東京で出版社勤務を経て、2023年に地元の奈良県宇陀市へUターン。現在は〈奈良醸造株式会社〉の広報・営業として働きながら、副業で執筆やPRの仕事を行う。

Information

奈良醸造

奈良県奈良市のクラフトビール醸造所。醸造長・浪岡安則さんがつくりだす多彩なスタイルのビールは世界でも評価が高い。味わいの世界観に合わせて毎度変わるラベルデザインも魅力。
HP:https://narabrewing.com/
Instagram:@narabrewingco

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奈良県は、豊かな自然と日本始まりの歴史が息づく古都です。世界遺産の東大寺や春日大社をはじめ、歴史ある寺社仏閣が緑の中に佇み、奈良公園のエリアでは鹿たちが穏やかに暮らしています。吉野の桜や山々の彩りなど、四季折々の美しい風景も大きな魅力です。飛鳥から続く伝統や文化、神秘的な空気感が日々の暮らしに溶け込み、訪れる人に穏やかで特別な時間を届けてくれる地域です。

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