『つくる暮らし』を求めて 下田へ移住し8年。 事業を始めて大きく変わった暮らし

オープニングパーティーの様子

photo:上田 和弥

暮らしを中心にした8年間から
次のステージへ

2月になると、咲き始める伊豆半島の早咲きの河津桜。
それを見ると移住当時のことを思い出すという津留崎鎮生さん。
4月になると下田に移住して丸8年。
今回は、下田に移住した理由から振り返ってくれました。

つくる暮らしを目指し、古民家のDIYによるリノベーションや
薪ストーブの導入、そして田んぼでの米づくりなど、
充実した暮らしを送っています。

一方で仕事は、暮らしの充実を目指して
バランスを保っていましたが、
昨年の7月からは大きく転換。

「暮らし中心」から「仕事中心」へ、
ライフスタイルが変化していく渦中の心境を語ってくれました。

下田に移住をしたわけ

が家が暮らす伊豆半島の南部では2月になると
早咲きの河津桜が咲きはじめ、
ひと足早く訪れる春を楽しむ観光の方で賑わいます。
今年は例年になく咲きはじめるのが遅く、
この原稿を書いている2月末、やっと見頃になってきました。
3月中頃までは楽しめそうです。
是非、春を感じに伊豆にいらしてください。

そんな河津桜の時期になると思い出すのが、
移住先探しの旅で伊豆を訪れたときのことです。
2016年の夏、東京から移住することを決めて、
家族3人で『移住先探しの旅』に出ました。
移住先探し…?というのも、妻も私も東京生まれ東京育ちで、
移住したい! 東京ではできない『つくる暮らし』をしたい!
と決意したものの、移住先にアテがなかったのです。
(この連載もその移住先探しに出る旅からはじまりました。
随分と長く書かせてもらっています)

そして紆余曲折あり、2017年のちょうどこの時期に伊豆の南部、
下田市、南伊豆町や河津町をウロウロしていました。
そのときに南伊豆町の河津桜の名所、青野川沿いで見た桜が
とても印象的で、よく覚えています。

菜の花がたくさん咲く中で遊ぶ津留崎の娘さん

移住先探しの旅で南伊豆を訪れた2016年2月1日。当時4歳の娘と妻と3人で車中泊で各地を回っていました。いい思い出です。

1月末から2月にかけて伊豆をまわっていたのですが、
すでに菜の花や河津桜が咲きはじめていて、
とても暖かくて穏やかで。
そして、出会う人がみなさん親切で面倒見がよく。

なんて過ごしやすいトコだろう! となったらば、
下田市内に家族で暮らすのにちょうどよい庭のある
大きな家をお借りすることができて、
下田での暮らしがはじまったのでした。

それが2017年4月なので、もうすぐ丸8年。
小学校入学前だった娘も今では中学生です。
本当に時の経つのが早くて驚いてしまいます。

荷物をたくさん積んだ車が下田の新居に到着

2017年4月、移住探しの旅では車中泊をしていた車で引っ越し!

下田に移住してからは、田んぼを借りて米づくりをはじめたり、
使われていなかった古民家を手に入れて
DIYでリノベーション、再生させたり、
また、念願の薪ストーブや太陽熱温水器を導入しました。
移住する目的として掲げていた『つくる暮らし』、
あらためて考えてみると
とても順調に成し遂げていったように感じます。
これも移住してから出会ったみなさまが
よくしてくださったおかげです。

子どもたちも参加した田植えの様子

移住した翌年から米づくりをはじめました。

古民家の床を大規模リノベーション中

手に入れた古民家をDIYでリノベーション。こうした工事の経験はなかったので何をするにも手探りで大変でしたが、やってよかった! と思っています。できるかな? と不安に思っている方、意外とできるもんです! なので、是非トライしてみてください。

[ff_assignvar name="nexttext" value="ワーケーション施設の運営企業が
まさかの撤退"]
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私生活と仕事のバランス

私生活の面ではそのように充実して過ごしていたのですが、
『仕事』の面ではなかなかコレだ!
という何かをつかめずにはいました。
基本的には、『暮らし』を充実させることをメインに考えていて、
あまりハードに仕事をしないコトを念頭においていたので、
致し方なかった面もあります。

この連載でも都度書いてきていますが、
移住後についた仕事としては……
看板屋、工務店、養蜂場のスタッフ、
行政の情報発信SNS運営やライター・カメラマン、
ワーケーション施設の拠点マネージャー。
雇用形態としてはどこも『正社員』にはならずに、
バイトや業務委託でした。
米づくりや自宅のDIY、家族との時間、
出張に出かけることもあるフォトグラファーの妻との
家事育児の分担を最優先に考えて仕事の量を調整していたので、
そのような働き方となっていたのです。

自分としても、こうした『つかめない状況』のなか、
この先もこのままいくのか? と、
考えないこともなかったのですが、
無理やり何かをはじめるのではなく、
時期が来ればきっと自然と何かを『つかめる』のではないか?
漠然とそう感じて日々を過ごしていました。

そして、やってきたのが拠点マネージャーをしていた
ワーケーション施設の運営企業の突然の撤退という事態です。
一昨年の年末に突然閉鎖が決まり、
12月末閉鎖、1月末で企業は撤退していきました。

空き物件となった元ワーケーション施設

空き物件となってしまった施設。

この仕事は、地方創生に取り組む東京の上場企業から
業務委託で請け負っていたので、
こんなにもあっさりと契約解除なんてコトがあるとは
思っていなく、唖然としてしまいました。
でも、唖然としていたのは自分だけではなく、
その施設を利用していた人たちもです。

施設の滞在をキッカケとして
住民票を下田に移してきた人もいれば、
起業して施設に会社を登記していた人もいました。
また、自分が拠点マネージャーとして力をいれていたのが
滞在者と地域の人との交流です。

施設に滞在する人が、より地域との関係性を深めるには
『交流』が欠かせない、
そして地域の人もあらためて『交流』によって
ヨソの人が見た地域の魅力を知ることができる。
人口減少に悩まされるこの地域にとっても、
こうした交流の場の必要性を感じて、
やりがいを持って取り組んでいたのですが、
こうした結果になってしまい、
どうにもやりきれない思いでいっぱいで……。

また、施設の滞在者とつながりを持った地域の人も
この撤退劇には驚いていて、
交流を仕掛けた立場としても申し訳ない思いもありました。

ワーケーション施設の屋外スペースにイベント参加者がたくさん集まっている

ワーケーション施設でのイベント時の様子。さまざまな仕掛けをして、滞在者と地域の方との交流の場をつくってきました。

[ff_assignvar name="nexttext" value="コワーキング、
コリビングなどの複合施設とは?"]
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地域の交流拠点を再生!

そんなこんなの諸々の状況から、企業が撤退した後、
空き物件になってしまったこの建物を
あらたな『交流拠点』として再生させることを決意しました。

決意した、といっても
もともとは地方創生に取り組む東京の上場企業が運営していた、
4階建てで部屋数が30以上もある、
資本力のある企業が
ここで事業をつづけても利益が出ないと撤退を決めた物件です。

地方のイチ個人(法人を立ち上げましたが、
ひとり会社……個人みたいなものです)が、
運営に挑むのですから生半可な気持ちではできません。
ここを運営するには、
これまでの「暮らし中心」のライフスタイルから、
「仕事中心」のライフスタイルに
変わっていくことが想像されました。

とても悩ましかったのですが、実はちょうど娘が中学生になる、
これまでとは家族の時間の過ごし方が
かなり変わってくるタイミングだったこともあって
決断したともいえます。
(中学生になると学校から帰宅する時間が
18時とかになるのですよね。小学校とは随分違います)
家族の時間がより必要な娘の幼少期にこの話があがったら、
この決断をしなかったかもしれません。

そんなこんなの状況から、「何かをつかむ時期が来た」のだ!
と感じて挑戦を決意したのです。

さて、そうした決意を持ってはじめた複合施設〈風まち下田〉。
7月に開業してあっという間に半年が経ちました。
昨年の4月に法人を立ち上げて、5月に物件を借りはじめたので、
もうすぐで法人立ち上げからは1年が経つことになります。

想定通り……いや、想定以上に
『仕事中心』のライフスタイルになってしまい、
これまで家事、子育てを折半していた妻には随分と
負担、迷惑をかけました。
また、一昨年までは米づくりにも
かなり時間を割いていたのですが、
昨年に関してははじめたばかりの施設の運営に
時間を費やさざるをえなかったので、
どうにも手をかけることができず。
友人知人に例年以上に手伝ってもらって、
なんとか収穫にありつけた状況です。

大勢の参加者が横一列に並んで田植えを始めようとしている

昨年の田植えの様子。先に紹介した初年度の田植えと比べると参加している子どもたちの身長が違いすぎてびっくりします。

あらためて事業を説明すると、
コリビング(共用リビング、
ワークスペースやキッチンのあるゲストハウス・シェアハウス)、
コワーキングスペース、
カフェ(希望者に貸すこともできるシェアカフェとしても運営)、
イベントスペースといった用途をもつ複合施設です。

地域内外の下田に関わる人が集う、
「交流」「挑戦」「共創」の場をモットーに、
さまざまな用途があることでさまざまな人がこの場を使う。
そして、さまざまな人が集っていることが
『場の魅力』になったら、
そんな場があることがこの地域の魅力になったら。
そのような思いを持って運営しています。

施設内の大きなテーブルを囲んだ餅つきイベントの様子

今年のはじめに餅つきイベントをしたときの様子。

日々、ゲストハウスのチェックインやチェックアウトの
対応をしたり、イベントの企画・運営をしたり、
お客さんにドリンクをつくったり、
ナンヤカンヤとほぼ毎日、忙しくこの場にいます。

海沿いに立つ大きなビルが〈風まち下田〉

ゲストハウスとシェアハウス。何が違うの? とよく聞かれます。部屋や使える設備は同じですが、ゲストハウスは宿泊利用、シェアハウスは利用者と3か月更新の不動産契約を交わしています。

[ff_assignvar name="nexttext" value="メディアに取り上げられた
ニュースとは?"]
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地域の関わりが濃くなった
〈風まち下田〉

風まちの利用者は20代から40代がメインで、
主にリモートワークで仕事をする職種の人です。
50代の自分は年齢的にはひと回りもふた回りも上で、
そうした若い世代に囲まれて、日々を過ごしています。
この原稿を書いている2月半ばの時点で、
2週間以上の長期滞在の利用者が15人。
ありがたいことに、とても賑やかになってきました。

大きなテーブルを囲んで食事をする施設利用者

最近の夜はこんな様子です。みんなでごはんをつくってみんなで食べる。ココで知り合った人ばかりですが、すっかり打ち解けています。

さらには、東京の企業が運営していた
ワーケーション施設だったときと比べると、
圧倒的に『地域との関わり』が濃くなっています。
イベントでは、地域の事業者が集まるワークショップや
こどもの服やおもちゃのフリーマーケット、
地元の高校生が食堂を運営したこともありました。

〈風まち下田〉運営内容の説明会の様子

地域の事業者に、風まちの運営について説明させてもらいました。

そうしたイベントは、地域のケーブルテレビやWebメディア、
ローカル新聞に取り上げられることも多く、
まちで買い物をしていると「テレビでみましたよ!」と
声をかけられることもあります。

静岡県内で放送されたニュースで取り上げていただきました。

伊豆下田経済新聞の記事はこちら。

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こうしてメディアに取り上げられるような施設を
運営することになるとは……
「つくる暮らし」を目指して下田に移住してきた当初には
想像もできなかった状況です。
事業をやるのだ! と掲げて移住してきたわけではありません。
米や家を「つくる暮らし」をしたい、
家族との時間を大切に過ごしたい。

そんなコトを考えながら暮らしていて、
そのときそのときの状況で自分なりに考えて選択をしてきて
辿りついたのが〈風まち下田〉を立ち上げることでした。
何かをつかんだのか? はまだまだわかりませんが、
とにかくやりがいを持って楽しく取り組んでいます。
(忙しすぎて頭がパンク気味ですが……)

寿司職人の衣装に身を包んだ津留崎さん

下田発の新たな取り組みで全国的にも注目を集める『副業寿司職人』としても近々デビュー予定です!

2016年の夏の終わり、
移住先探しの旅をはじめるときにこの連載がはじまりました。
今年の夏で丸9年になります。
つい先日、旅をしていたような気もするのですが、
信じられません。
当初、連載のタイトルを決めるにあたっては、
どこに移住するのかも、
果たして本当に移住するのかもわからない状況で、
悩んだ末に『暮らしを考える旅』と決めました。
今のこの流れを鑑みると、
われながらとてもよいタイトルだったと感じます。

オープニングパーティでの乾杯の様子

昨年の7月に事業を開始していたのですが、まだまだ準備中の箇所が多い部分オープンという感じだったので、少し落ち着いてからの9月末にあらためてオープニングパーティを開催しました。たくさんの方に来ていただきとてもうれしかったです。

この先、この事業がどうなるのか?
そして、わが家の暮らしがどうなるのか?
まったくわかりませんが、とにかく考えながらぶつかりながら、
「暮らし」をつくっていこうと思います。

自宅のソファで寝落ちした津留崎さん。隣では猫のコロンさんも寝ている

風まちにいるときはそれなりに気をはっていて(そりゃそうですね)、自宅での晩酌タイムが気を抜きまくる時間です。その結果? この通り晩酌途中で撃沈することもしばしば。一緒に寝ている猫のコロンさんは今年で18歳。人間でいうと89歳らしいですが、まだまだ元気! さてさて、わが家の暮らしは? 事業は? どうなるのでしょうか? これからもどうぞよろしくお願いいたします!

information

「風まち下田」外観map

風まち下田

住所:静岡県下田市武ガ浜3-3

メール:[hidefeed_link]kazemachishimoda@gmail.com[/hidefeed_link]

Instagram:[hidefeed_link]@kazemachi_shimoda[/hidefeed_link]

※予約・問い合わせはメール、Instagram DMにて

文 津留崎鎮生

text & photograph

津留崎鎮生 Shizuo Tsurusaki
つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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