【無料オンラインセミナー】中川政七商店と読み解く、産地発ビジネスの“売れ続ける仕組み”とは?
「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、300年の歴史を持ちながら常に革新を続ける〈中川政七商店〉。同社が主催する「地産地匠アワード」でグランプリを受賞したデザイナー・菅野大門さんをゲストに迎えた「コロカルアカデミーVol.12」が、4月7日に開催されました。
今回は初の「90分拡大版」。単なる成功事例の紹介にとどまらず、ビジネスとして「売れ続ける仕組み」をどう実装するのか、その核心に迫る熱いトークが展開されました。
見逃した方、もう一度じっくり学びたい方のために、アーカイブ動画を配信中です!
中川政七商店が実践する「ブランド戦略」の核心

第1部では、〈中川政七商店〉で地産地匠アワードを担当する野村隆文さんが登壇。同社が実践するSPA(製造小売業)事業と産地支援事業の両輪モデルについて語りました。
「自分たちの商売だけがうまくいったとしても、産地やメーカーさんが続けられなくなっていくと、自分たちの売るものがなくなる。ブランド自体も立ち行かなくなってしまいます」
野村さんは、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンが、CSV的な目的ではなく、自社のブランドの独自性や差別化に直結していると説明。さらに、ブランドづくりは「総力戦」であると強調しました。
「ロゴを変えたりパッケージを作ったりといったことだけではなく、本当に一挙一投足で、全体が総力戦である。商品が表現していることと接客で言ってることが乖離してしまわないように、できるだけ整合性と一貫性が取れるように考えています」
工場から実況中継!「大門箸」誕生の裏側
第2部では、「地産地匠アワード2025」グランプリ受賞デザイナーの菅野大門さんが、なんと奈良県の箸工場から実況中継で登場!

菅野さんが手がけた「大門箸」は、吉野ヒノキの端材を活用し、持ちやすさと美しさを両立させた極細の箸。しかし、その開発のきっかけは、単なるデザインの追求ではありませんでした。
「来月にも倒産しかねない、瀬戸際にある地方の家族経営の工場に入りました。まずは何より利益を生み、会社を存続させなければなりません。しかし、そのためにはまず『まともに働ける環境』が必要です。そこで、トイレの改装やWi-Fiの整備、伝票のDX化といった現場の基盤づくりから手をつけました。そうした業務効率化や環境改善という一連の立て直し作業(ワークフロー)の中から、結果として生まれたプロダクトの一つが『大門箸』なのです」
さらに、パッケージデザインについても、単に「洗練されたたデザイン」を目指すのではなく、店頭での機能性を重視したと語ります。
「デザイナーがつくったシュッとしたデザインが僕はあまり好きじゃなくて。やっぱり社会や、店頭できちんと機能するもの。黙ってても売れていくものっていうのが一番理想だなって思ってデザインしました」
「売れ続ける」ではなく「売り続ける」仕組み

セッションの終盤、野村さんは「売れ続ける仕組み」について、次のように語りました。
「売れ続けるというより、やっぱ『売り続ける』ことがすごい大事で。いかに健やかに長く売り続けられるように設計をするか。他方で、たくさん売れたことに対して対応できる、作る方の「持続可能性」もすごく大事です」
「ブランドの作り方」から「具体的な販路開拓の実践」まで、90分間ノンストップで語られた熱いセッション。記事では紹介しきれなかった「売り続ける仕組み」の全貌や、実際の箸工場の製造風景は、ぜひアーカイブ動画でご覧ください!
アーカイブ動画の視聴はこちらから!
参加者の声
- 「売れ続ける」ではなく「売り続ける」という視点がとても印象的で、なるほどと感じました。また、地方においてデザイン業としてどのように立ち回るかについても、多くの学びがありました。
- ビジョンコンセプトバリューのつながりが勉強になりました。企業の社会的意義を整理するためにビジョンは必要だが、それだけを押し出した場合、商品を購入する生活者との乖離が生まれてしまうと実感しました。商品と生活者を結びつけるためには、コンセプトそしてバリューに落とし込むことが重要だと学びました。
- 地方で手工芸を営む会社におりますが、経営は厳しく、来年にはどうなるかわからないという状況です。地産地匠アワードのパートで、実際に現地で働くデザイナーの方のお話を伺うことができ、少し希望が持てました。
登壇者プロフィール
野村 隆文(のむら・たかふみ)さん

〈中川政七商店〉社長室・コーポレートブランディング担当。1993年兵庫県生まれ、福島県在住。大学卒業後、コピーライターとして広告制作に従事。2021年より〈中川政七商店〉に所属し、MD計画や商品開発・コーポレートブランディングを担当しながら、コンサルタントとして全国のものづくり企業の経営とデザインを支援。2023年からは「地産地匠アワード」を立ち上げ、事務局として受賞者の伴走支援を行っている。
菅野 大門(かんの・だいもん)

雑貨メーカー〈A4/エーヨン〉主宰。1983年福島県生まれ。農家と古物商の祖父を持ち、米作り・物作り・古物売買に親しみながら育つ。発明と実用を両立させ、これまでにない雑貨の開発・デザイン・販売、そして“売れ続ける仕組みづくり”に取り組む。主な代表作に、シヤチハタ「faces stamp」、「活字ブックマーカー」、「tumi-isi」、「大門箸」など。受賞歴にグッドデザイン賞、グッド・トイ賞などがある。
HP:https://www.designofficea4.com/
杉江 宣洋(すぎえ・のぶひろ )

〈コロカル〉編集長。マガジンハウス入社後、『anan』『BRUTUS』などの副編集長を経て、2022年『Hanako』編集長就任。2025年より現職。