北海道で出会い、兵庫・豊岡へ。UターンとIターンで始めたピーマン農家の生活

能勢さん夫妻
「移住」と聞くと、大きな決断のように感じるかもしれない。仕事や家族、住まい、人との関係。暮らす場所が変われば、日常も大きく変わる。しかし実際に移住した人たちの話を聞くと、その先には、環境の変化や戸惑いだけではない、新しい発見や自分らしく暮らせる時間があった。 兵庫県北部の豊岡市。海や山に囲まれたこのまちの但東(たんとう)エリアでピーマン農家を営む、能勢さん一家が豊岡市に移住した理由を聞いた。

夫婦で選んだ、豊岡という土地

能勢明宏さんは、豊岡市のお米農家の出身。20代の頃は、ホテルの和食調理で働いていた。

「京都で住んで働いていた中で、田舎のほうがお米がおいしいな、ということに気がついて。その頃から農業をやりたい気持ちが強まり、当時働いていた飲食店で農業部門への異動を希望しました」。

しばらくして、将来的に地元・豊岡で農家を始めることを見越し、北海道の大規模農家で働き始める。

「実家が農家だったこともあり、大体の作業やトラクターの扱いはわかっていましたが、もっと栽培管理や経営を学びたいと思うようになりました。実際、大規模農家で働くことで小規模農家にも活かせるような効率的な方法を学べましたし、有機農業に取り組んでいる農家だったので、持ち帰れることが多かったと思います」。

そこで旭川市出身の能勢理絵さんと出会い、数年後、二人は夫婦で豊岡に移住した。

「私は、北海道の旭川で生まれ育ち、農業に従事していたわけでもないので、豊岡に移住して農家をやるとは思ってもみませんでした」と妻の理絵さん。

「実際に豊岡に来てまず驚いたのは山の近さでした。瓦屋根の家並みも北海道では見かけないので、少しタイムスリップしたみたいだな、と思ったり。道はカーブが多く、コンビニも少ないなど発見はいろいろありましたが、自然のなかでゆったり子育てできる環境はいいなと感じました」

能勢さん夫妻が農作業する様子
左から、能勢 明宏さん、理絵さん。

農業スクールから始まった、二人三脚のピーマン農家

移住後、新規就農にあたっては豊岡市の支援制度を活用した。

「『農業スクール』という1年間の研修で、お米や野菜の栽培基礎を学びながら、自分に合う作物を少しずつ考えていきました。

そのなかで出会ったのが、地域の農家さんが育てたピーマン。ひと口食べた瞬間、肉厚でジューシーで、それでいて甘みがしっかりあって。他の産地のものとはまったく違うおいしさに驚きました。“おいしい野菜を作りたい”という思いがずっとあったので、このピーマンでやってみようと自然に決まりました。

とはいえ、すぐに形になるわけではなくて。地域の農業法人に相談したり、豊岡農業改良普及センターにアドバイスをもらったりしながら、一つずつ準備を積み重ねていきました。

そうした支えがあったからこそ、不安よりも“やってみよう”という気持ちの方が大きかったように思います」。

能勢さんのピーマンハウス
能勢さんのハウス。現在は二人三脚でピーマンを育て、手が足りないときにはアルバイトとして理絵さんのママ友に手を借りることも。

知らない人に頼らなくていい、豊岡の子育て支援

一方、旭川から豊岡へIターンしてきた理絵さんは、移住当初、豊岡に知り合いが一人もいない状態からのスタート。戸惑いや不安があったという。

「最初はお試しで2年間住める市営住宅に住んでいたので、その間に少しでも知り合いをつくろうと思って、住民のみなさんに声をかけていました(笑)。子育ても、自分の両親に頼れない分、市の支援やママ友とのつながりに助けられながらやってきましたね」。

理絵さんが特に「ありがたかった」と話すのは「豊岡市ファミリーサポートセンター」の仕組みだ。「子育てを応援してほしい人(おねがい会員)」と「応援したい人(まかせて会員)」を市がつなぐ制度で、送迎や一時預かりなどを地域で支え合う。

「近所の方がサポートしてくださるので、知らない人に頼む不安もなくて。移住して間もない頃は心細さもありましたが、こうした仕組みや人とのつながりに支えられて、少しずつ暮らしに慣れていきました」。

明宏さんも、こう続ける。

「こんな山奥ですけど、20分くらいで海にも行けるんです。夫婦でアジ釣りにハマったこともありました。遊ぶスポットも意外と多いですし、京都にもすぐ行ける距離感。とてもいい場所だと思います。妻にも支えてもらいながら、これからもおいしいピーマン作りを続けていきたいです」。

能勢さん夫妻

Profile

能勢明宏、理絵

豊岡市在住。夫・明宏さんは地元豊岡からのUターン、妻・理絵さんは北海道旭川市からのIターンで豊岡へ。市の農業スクールをきっかけにピーマン農家として就農し、現在はハウスで栽培しながら3人の子どもを育てる。

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