家が変わると、暮らしが変わる。
リノベーションした古民家、
実際に暮らし始めて感じること

家のリノベーションで何が変わる?

移住した伊豆下田で古民家を取得し、
リノベーションして暮らし始めた津留崎さん一家。
キッチンをつくり変えたことで起きた
意外な気持ちの変化や、薪ストーブのメリットなど
新しい暮らしの実感をリアルにお伝えします。

リノベーションした古民家での暮らし

分たちでリノベーションした下田の古民家に暮らし始めて
2か月近くが経ちました。
ただいま、古民家と一緒に取得した隣の家を、
母親のためにプチリフォーム中で、
自宅のリノベーションに引き続き作業をしてます。

古民家と一緒に取得した隣の家

1月末に母親が引っ越してきます。それまでに、キッチンや洗面などはかなり古かったので交換。床も一部分は張り替えました。

母親の引っ越しが終わったら、
自宅のリノベーションの残りもしなければなりません。
いつになったら落ち着くのか? 
先を考え出すと気分が滅入ってくるので、
そのときそのときにやるべきことに向き合いながら
ひとつひとつ片づけていこう! と、割り切って作業をしています。

庭の梅

庭の梅が咲き始めました。まだまだ寒い日が続きますが、春の足音をちらほらと感じます。

さてさて、そんな作業をしながらではありますが、
この古民家での暮らしも少しずつペースをつかんできました。

窓際の廊下で書き初め

書き初めをする娘と猫。年始はのんびりしました。

リノベーションでこうすればよかったなあ……とか、
ここはうまくいったなあ、と諸々見えてきたように思います。
そして、環境が変わって、
いままで苦痛だった家事がそうでなくなったり。
そんな変化もありました。

今回は、そんなこんなリノベーションした古民家に暮らし始めて
感じていることをお伝えしたいと思います。

庭になった金柑

庭の金柑が食べ頃です。作業の合間につまむ……最高のおやつです~。

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キッチンを日当たりのいい場所に

まず、このリノベーションで最も悩んだ「キッチン」についてです。
もともと、この古民家のキッチンは、
昔ながらの家がほとんどそうであるように、
最も奥まった、日当たりが悪い、景色も臨めない場所にありました。

今回のリノベーションでは、この家で最も日当たりも景色もいい、
もともとは広間、和室だった部屋をキッチンにつくりました。

下田の海

キッチンに立つと海が見えます。

キッチンを最も日当たりと景色のいい和室につくる……?
工事としても、床下を通る配管を大規模にやり変えなければならないし、
和室で畳の部屋なので床の仕上げも変えなければなりません。
キッチンを別の場所につくり変えるというのは、
なかなか大変な工事となります。

でも、妻は家で料理をしている時間を
とても大切にしたいと考えているし、僕にとっても
料理をしたりコーヒーを淹れたりする時間はとても大切です
(わが家では朝ごはんは僕が担当し、晩ごはんは妻の担当なのです)。

悩んだ末に、最も日当たり、景色のいい場所にキッチンを配置して、
その周辺にダイニングやリビングをつくる計画としました。
キッチンの形状としては、いわゆるアイランドキッチンに近いもの
(厳密にいうと片側が壁になっているので、
ペニンシュラキッチンといいます)。

新調したキッチン

天板はステンレスで、扉は木でつくったキッチン。

オープンキッチンなので常に片づけないといけないのか……。
その点が少なからず不安でした。
さてはて、その使い心地たるやどうなのか?

キッチンで料理のお手伝いをする娘さん

移住してきたときは4歳だった娘も10歳になりました。最近はよく手伝いをしてくれます。子どもの成長は早い!

暮らし始めての感想はというと、とても良い! です。
もちろん、いろいろ反省点はありますが(想定していたスペースに
冷蔵庫が入らなかったり……)、それを補うほどの良さを感じています。

その証拠といいますか、
「食器洗い」に対しての意識の変化がありました。

料理好きの多くの人がそうかもしれませんが、
僕と妻も、料理をするのは好きなのですが、食器洗いは苦手。
そして、これまでの家のキッチンは
一般的な壁に向かって設置してあるタイプだったので、
食器を洗う際には壁に向き合って洗わなければならなかった。

もともと好きではない食器洗いを壁に向かって作業をするということで、
どうしても避けてしまう……。
で、洗ってない食器がたまりがちでした。
そして、その状態にさらにストレスを感じるという、
まさに負のループ状態。

そんな状況だったので、前の家に暮らし始めて
しばらくしてから卓上式の食洗機を導入。
食器洗いのストレスから解放されて、いくらかホッとしていました.
その経験もあったので、今回も当たり前のように食洗機を導入。
ですが、暮らし始めてみると想定とは違う状態になったのです。

最も景色も日当たりもいい場所にキッチンを設置したからか、
苦痛と感じていた食器洗いが気持ちよくできているのです。
食べたらすぐに洗う、すぐに拭いてしまう。
これまでできなかったその一連の動作が、難なくできているのです。

キッチンから見える海

オープンキッチンなのでそのままにしていると気持ちよく暮らせない、
ということもあるのかもしれません。

そんなこんなで、せっかく導入した食器洗い乾燥機の
出番がないという、なんとももったいないことになってます
(2か月で1度しか動かしていません……)。
暮らす環境で家事に対する向き合い方が
こうも変わるのだと、自分でも驚いてしまいました。

キッチンとリビングスペース

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薪ストーブにしてよかった?

以前、設置工事が終了した時点で、
薪ストーブについて書きました
その記事でも触れましたが、本体はともかく
煙突部材でかなりの出費となることがわかり、
薪ストーブ自体を導入するかかなり悩みました。

でも、いまは導入して本当によかったと感じています。
もちろんデメリットもありますが、
それを打ち消すメリットがあると思えるからです。

メリットは「暖かさ」と思われるかもしれませんが、
実は前の家で大型の灯油ストーブを使っていたので、
正直、そこはあまりメリットに感じていません。

では、何がメリットか? というと
「楽しさ」が一番のメリットだと感じています。
火をつけるのも楽しいし、火を調整するのもまた楽しい。

楽しい? エアコンやファンヒーターであれば
ボタンを押して温度を設定すれば終わりです。
部屋を暖めるのに「楽しさ」が必要なのか? とも思えます。
でも薪ストーブは料理に使うのもまた楽しいですし、
何より火を囲むこと自体に魅力があるのです。

薪をくべる娘さん

火をつけるのにも、火力を調整するにしてもコツがいります。そして、火をつけてもなかなか暖まりません。何をするにも簡単にできるようになっていく時代ですが、こんな難しさや不便さもまた楽しいのです。

ストーブの前を陣取る猫

最近はキャンプでの焚き火がブームだとか。火を見るとなぜこんなに落ち着くのでしょうか? そして、矛盾しているようだけど、なぜだかワクワクもするのです。火とともに進化してきた「ヒト」という生き物が持っている記憶という説もよく聞きます(ヒトだけでなく猫も薪ストーブ大好き。暖かい場所を取り合ってます……)。

薪ストーブの前で読書

火を囲んで感じる一体感。同じく「記憶」がそうさせているのかもしれません。

もちろん、燃料代がかからない、という実質的なメリットもあります。
環境に与える負荷が少ないというのもすごいメリットなのでしょう。

でも、薪となる木を確保して、それを薪とするために
伐ったり割ったり、そして火起こし、火の調整、
薪ストーブまわりの掃除などにかかる時間と手間はかなりのものです。
はっきり言って想定以上でした……
(薪ストーブ導入をお考えの方、覚悟してください!)。

車に積んだ薪用の木材

知人が伐採した庭木をもらったり、廃材をもらったり。でも、こうした伐採した庭木も廃材も、ゴミで出せばお金も手間もかかるもの。それが燃料になるというのもなんだか楽しくもあります。

いくら燃料代がかからない、環境負荷が少ないとはいえ、
その楽しさがなければ、薪ストーブにしてよかった! 
と思えなかったかもしれません。

薪ストーブで料理中

薪ストーブ料理にも挑戦してます! とりあえずは天板で煮込み料理を。

土鍋をみんなで囲む

鍋もいいですね~。火を囲み、鍋をつつく。最高です。

天板でパスタを茹でる

この日はパスタ! 太陽熱温水器でお風呂の給湯もまかなっているので、ガス代がかなりお安くなりそうです。

完成したパスタ

薪ストーブの火でつくった料理を、薪ストーブにあたりながら……いただきます!

炉の中で焼かれるピザ

炉の中で焼くピザにも挑戦!

焼き上がりをチェック中

苦戦中の様子……。焼き加減が難しい! なかなかうまく焼けなかったけど苦労と工夫の甲斐あっておいしかった~。次はもっとうまく焼きたい!

このように、キッチンの食器洗いにしても部屋の暖房にしても、
ボタンひとつでできてしまう便利な時代であるのに、
より手間のかかるほうへ、という暮らし方になってきました。

[ff_assignvar name="nexttext" value="コロナで増えた時間で何をする?"]
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増えた可処分時間をどう使うか?

レコードジャケットとプレーヤー

この家に暮らし始めてからアナログレコードをよく聞いています。音源としてはネットでも聞けるし、ネットで聞くほうが圧倒的に便利なのですが……。80年前に建てられた家で、60年前の音楽のレコードを40年前のスピーカーで聞いていると、時代を超えるような不思議な感覚に包まれます。

でも、ただ手間をかけるのではなく、環境次第では
その手間を楽しめるのだ、と実感しております。
「そんな悠長なこと言ってられないよ」という方もいるかもしれません。
コロナ禍になり、通勤せずに自宅で仕事をする人が増えたり、
また、イベントや飲みに行くことができない状況が続いていることから、自由に使える時間、つまり「可処分時間」が増えたと言われています。

わが家の場合は、5年前に移住し、
それまでの東京で忙しく働くというライフスタイルからシフトした時点で
劇的に可処分時間が増えました(収入は激減しましたが……)。

増えた可処分時間で何をするか? 
スキルアップのために何か勉強する人もいるでしょう。
動画配信やゲームを楽しむ人もいるでしょう。
新たな副業を始める人もいるでしょう。

わが家は、移住してから米づくりを始めたり、
家族との時間を増やしたり。
増えた可処分時間をそう過ごしてきました。

そして、昨年は手に入れたこの古民家を
自らリノベーションすることにも多くの時間を費やしました。
正直、体力的には相当しんどかったし、持病の腰痛もきつかったし、
危険な作業もたくさんあった。
でも、やり終えたいま(正確に言うとまだ終わってはいませんが……)、
本当に挑戦してよかったと感じています。

環境によって暮らしが変わる。
暮らしが変わると気持ちが変わる。
いま、そんなことをあらためて実感しています。

リノベーションした古民家の外観

窓が多く、さらに昔ながらの薄いガラスなので、夜は家の中が冷えます。なので毎日、夕方になると雨戸を閉めるようになりました。朝、日が照り始めたら雨戸を開けるために家の外に出て、山と海の匂いのする空気を思いっきり吸い込む。ここでの暮らしは手間はかかる、けど、楽しい。

text & photograph

津留崎鎮生 Shizuo Tsurusaki
つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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