現代の家と昔の家は何が違う?
古民家をリノベーションしてわかった
昔ながらの家づくり

リノベーションをするなかで
気づいたこととは?

移住した下田で古民家を購入し、リノベーション中の津留崎さん。
これまでも建築関係の仕事に携わってきた津留崎さんですが、
自分の手でリノベーションするのは初めて。
実際にやってみると、これまでの知識や“あたり前”とは違う
昔ながらの家づくりが見えてきたようです。

古民家を自分たちでリノベーション!?

ちらの連載でも何度かお伝えしていますが
(僕が古民家購入の経緯を、妻が残置物の片づけについて書いてます)、5月に下田で古民家を購入しました。

いま、その古民家を自分たちの暮らしに合うように
リノベーションしています。

娘も木材の寸法を測り中

夏休みの中の娘もよく手伝ってくれています。夏休みのいい思い出になるかな?

自分たちでできる範囲でやりたい、ということで工事を始めました。
自分たちで……とはいっても、専門的な工事は
業者さんにお願いしていますし、友人たちの手も借りてもいます。

専門業者が床の土台づくり作業中

本当にありがとうございます!

そんな工事を始めて2か月近くが経ち、
いろいろと感じることもありました。
今回は、自宅古民家リノベーションの途中経過と、
これまで感じたことについて書きます。

庭に浴槽を置いて水風呂

海から山へと抜ける風の通り道なので比較的涼しい立地。なのですが、やっぱり暑い! ということで庭にタープを張り、そこ置いた浴槽で水風呂!

そもそも「自分たちで古民家をリノベーション? 
そんなコトできるの?」と、思われる方もいるかもしれません。
僕は移住前から、長い間、建築、特に住宅や
リノベーションに関わってきました。
なので、一般の方よりは自らの手でリノベーションをする知識や
ノウハウは持っているはずです。

でも、そんな業界にいたといっても、設計や施工管理という立場で、
現場で作業をする職人ではありませんでした。
実際に手を動かすということはほとんどなく、
技術という点では一般の方とそんなに変わらないのかもしれません
(家具をつくったり壁を塗ったりくらいはしてきましたが、
あくまでDIYレベルです)。
ましてや、古民家は仕事でもほとんど扱ったことがありません。

床材がすべて剥がされた床

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いまと昔の“あたり前”の違いとは?

作業を進めるなかでこの古民家を細かく見ていくと、
これまで得てきた知識、建築業界の「あたり前」を疑う場面に
多く出くわしました。いまの住宅のつくられ方と、
この古民家が建てられた時代のつくられ方は
想像以上に違っていたのです。

床下にしゃがんで作業中

この古民家が建てられたのはいまから80数年前、戦前の昭和初期。
すごく昔のことのようにも感じますが、自分の母親が生まれた時代、
と考えるとそこまで昔でもない気もしたり。
その長いような短いような年月の間に、
随分と家のつくり方というのは変わるもんだと実感しています。

そんな違いを知って、自分も少なからず
考え方を変えることになりました。
そうして考え方が変わるとともに、
当初とリノベーションの計画が変わってきてもいます。

畳を取った状態の床には杉の板が隙間だらけに敷かれている

こちらは、もともとは畳の広間だったのですが、
キッチンをここに移設しフローリングにするため、畳を取った状態です。
荒板とよばれる杉の板が隙間だらけで敷かれていました。
しかも、それぞれの幅が違う。
これまでリノベーションの仕事で畳をあげると、
ほとんどが隙間なく張られた合板でした。

なので最初、この「隙間だらけ」の荒板を見たときは
「なんて適当なんだ……」と少なからず驚いたのですが、
畳に溜まってしまう湿気を逃がす、
床下の湿気を床上に逃がす、という意味では、
この杉の荒板を「適当」な隙間を空けて張るのがいいのだ
という考えを知ったのです。
いまの、「隙間なく」の気密性重視の家づくりとは随分と違います。

床板が剥がされ床下が見えた状態

さらには、戦後からの法律で定められている
「鉄筋コンクリートの基礎」が立ち上がっていないということもあり、
床下はいまの住宅では考えられないほどに風の通りがよく、
そのおかげか床下にある構造材はとても状態がいいのです。

これまで、基礎に囲まれた築20年から50年くらいまでの
木造住宅の床下を何軒も見てきましたが、
こんなに床下の構造材の状態がいいというのはあまりなかったかも? 
というほどです(残念な状況のもたくさんありました……)。

もちろん耐震性のためには基礎は重要なのですが、
基礎をつくったために床下の構造材が傷んでしまっては
本末転倒な気もします。

その荒板の下地である「根太(ねだ)」は、
現代のように製材されておらず、上側だけを平らにした丸太です。
しかも、その丸太の太さもかなりマチマチ
(上の写真をよく見ていただければわかるかと)。
丸太の根太は、繊維を切っていないので強度があるそうなのです。

ただ、下地の間隔が空きすぎていてかなり「たわみ」があったので、
下地の補強をしました。
補強すると根太はたわまなくなったので、そのまま使用しています。

深夜も明かりを灯して作業

作業に夢中になっていると気づくと深夜……なんてことも。

補強工事を終えた床下

補強工事を終えた床下の様子。風通しがいいのがおわかりになるかと。昔の家は床下に動物が棲みつくことがあったというのも納得できるツウツウ具合……。一応、動物が入らないように周囲に網が張られています。

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その辺の材料でつくられた家?

そして、こちらは押入れの中段を撤去した際に見えてきた
壁の内部の様子です。

壁の内部の様子

漆喰の下地として藁を混ぜこんだ土壁が、
竹をわら縄で編んだ「木舞」に塗り込まれているのがよくわかります。

現代では壁にクロスを使用することが多いのですが、
実はクロス(布)とはいうもののほとんどがビニールクロスです
(ほんの一部、紙クロス・布クロスが使われています)。
このビニールクロスは安価で施工も早くて簡単、
施工当初の見た目はよいのですが、
経年劣化が激しいという難点があります。

そして、壁の内部に関しても、クロスに通気性がないので
あまり状態がよくないことが多いのです(服装で例えるなら、
ずっとビニール製の雨合羽を着ているようなもの。不快すぎますね……)。
クロスを剥がすとカビだらけ……なんて現場はよくありました。

でも、この古民家の漆喰とその中の土壁は
築年数を感じないほどにキレイです。
クロスと漆喰・土壁の違いは、素材に通気性があり呼吸すること。
あらためて、その重要性を感じました。

中段撤去中の様子

中段撤去中の様子。こちらも無垢の杉板、味がある! のでほかで再利用することに。

押入れの中段撤去が完了

撤去完了! ここがキッチンになる計画。冷蔵庫を設置します。

そして、この家に使われている材料が、
丸太に土や藁に竹、杉板という「その辺」で手に入る材料であることに、
あらためて気づきました。すべて、規格化・工業化され、
どこでも手に入る材料で建てるいまの家づくりとは随分違います。
もちろん、いまほど物流やが工業が発達していなかったのでしょうから、
あたり前と言えばあたり前なのかもしれません。

でも、驚いたことが、そんな「その辺」で手に入る材料の
状態のよさなのです。
先ほど説明したクロスもそうですが、
自分がこれまで使ってきたり見てきた規格化・工業化された材料は、
出来上がった当初は見栄えがよいものの、
残念ながら耐久性がないものも多くありました。

例えば、押入れの中段や畳の下地は、
いま一般的に使われるのは「合板」です。

その合板は無垢材と何が違うのか? というと、
無垢材は使用する寸法に加工した木材そのまま、
対して合板は、木を薄くスライスした板を
何層にも接着剤で貼り合わせてつくる板です。

合板は大根のかつらむきのように木材をスライスするので、
太くない木から幅の広い板がつくれます。
何層にもスライスした板を向きを変えて重ねてつくるので強度があり、
安価で、無垢材のように伸び縮みすることもなく扱いやすいので、
建築の現場では欠かせない材料です。

ここまではよいトコロなのですが、残念な点もあります。
接着剤で貼り合わせているので、木が本来持っている
通気性が失われてしまい、木が呼吸できなくなってしまうという点です。

そんなこともあり、湿気が溜まりやすい箇所に使われる合板は
傷みやすく、もちろん状況にもよりますが、
築20年ほどの物件でも畳下地や押入れの合板が湿気で傷んでしまい、
グニャグニャベコベコになっているのを何度も見てきました。

対してこの古民家で使われている無垢材は、
表面こそその年月は感じますし、
あまり厚さもないのでタワミはするのですが、
グニャグニャベコベコという傷んだ感じではないのです。

現に、この家で一部分おそらく40~50年ほど前に
増築・改装された箇所で使われている床の合板は、
グニャグニャベコベコ……。
でも、築80年以上の古い部分の無垢の床は状態がいいのです。

合板の床材を剥がす

増築部分の合板の床材は手伝いに来てくれた友人とともに剥がしました。古いほうが状態がいいという逆転現象?

[ff_assignvar name="nexttext" value="わが家が目指す家づくりは…"]
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違いは通気性と……風通し!

長くなってしまいましたが、ひと言でまとめると……
建物にとって使われる素材の通気性や、床下の風通しのよさって、
その寿命を長くするためには本当に大切なのね……
というコトになるかもしれません。

でも、現代の住宅のつくり方は耐震性、断熱重視なので、
どんどんゴツく気密性を高くすることが宿命のようになっています。
もちろん、耐震性も断熱も本当に大切なことです。
でも、こうした古民家が持っている素材の通気性や風通しのよさも、
もう少し見直すべき点があるのでは? とあらためて感じています。

また、丸太や土や藁や無垢の杉板などの「その辺の材料」は、
規格化された均一で、流通に乗りやすい工業製品ではないので、
現代の家づくりではなかなか扱いにくい。
実際に、無垢材を使ってそうした「不均一性」に
クレームが入ることがよくありました。

娘も床貼りをお手伝い

あたり前ですが、いまでは「家づくり」も大きな経済活動、
資本主義のシステムの中にあり、資本主義の発展とともに
家づくりに関わる職業もどんどん細分化されています。

施主がいて、施主と直接やり取りする営業や設計者がいて。
そして、建材や設備機器のメーカー、商社に現場監督に職人。
職人といっても、例えば大工だけでも
内装大工がいたりフローリングを張る専門の大工がいたりと、
どんどん細分化が進んでいます。

そして、そんな職業の細分化とともに、現代の家の造りと同じく
「風通し」が悪くなってしまっている気がするのです。
その象徴? に、何かトラブルが起きると、
どこに問題があったのか? なすりつけ合いのような状況になります
(何度も経験しました……)。

でも、この家が建てられた頃は、いまほどは
家づくりが大きな経済活動ではなかった。
地域の大工の棟梁が設計し、地域の材木屋で手に入る木材や、
その辺の土や藁を使って、地域の職人とともに建てていました。
そんな意味でも「風通し」のよい家づくりだったように感じます。

必ずしもこうした建て方が現代において正解というワケではないですが、
今回は施主も設計も施工も「自分たち」。
現代の大きな経済活動の中にある家づくりとはまったく別モノです。
流通に乗っていない不均一な素材だって、
自分たちが許せばOKということ。

その辺で拾ってきた石で床下を補強

その辺の材料がたくさん使われていることに刺激されて、床下の補強ではその辺で拾ってきた石を使いました! お客さんのための家づくりだとできないことですが、こんな家づくりも楽しいです。

左官工事中

塗ってあった砂壁が傷んでいたので、剥がして漆喰を塗る計画です。こうした左官工事(砂壁や漆喰などを塗る工事)は規格化しにくいからか、最近の家づくりではめっきり出番が少なくなりました。このリノベーションではこうした規格化されていない「不均一性」をも楽しみたいです。

ということで、ひと昔前の
「風通しのよかった頃の家づくり」を目指して、
この古民家をリノベーションしていこうと思っております。

とはいっても……どんな仕上がりになるのか? 
いつ仕上がるのか? まだまだ先が見えません。
とにかく、ひとつひとつ楽しみつつ
リノベーションに取り組んでいきたいです。

本畳を引き取りにきてくれた農家さん

使わなくなった畳はいま主流のスタイロ畳という芯材に発泡スチロールが入っている軽い畳でなく、芯材が稲わらでできた本畳。これもとても状態がいいので捨てるのももったいない……誰か使う人いませんか? とSNSで声をかけたら、お隣、南伊豆町の知人の農家さん(移住前に訪ねた記事)が引き取りに来てくれました。捨てればお金もかかるし、燃やすのにもエネルギーを使う。それがこうして誰かの役に立つってなんだかとてもすてきだなと。どのように使われるのか? 楽しみです~。

text & photograph

津留崎鎮生 Shizuo Tsurusaki
つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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