南伊豆へ移住先探しの旅。
自然農園〈日本晴〉を営む夫妻、
気になる物件との出会い

新たな移住先探しの旅へ出発!

いとこたちと離れて暮らすのが辛そうな娘のことを考え
週末は東京に帰れるところに移住しようと考えた津留崎さん夫妻。
条件をあらためて見直し、次の旅の目的地に選んだのは伊豆南東部。
お試し住宅や、都会から移住した農家などをめぐることに。
今回もまた新しい出会いがあったようです。

伊豆にもこんな農村風景が! まずは下田へ

伊豆への移住先探しの旅が始まりました。
今回は南伊豆(南伊豆町、下田市、河津町、東伊豆町)をめぐります。

約束の時間に下田駅で不動産業者と落ち合い、
ネットで見て気になっていた物件に向かいます。

下田から北へ、修善寺方面へ向かう国道をしばらく進み、
脇道を入っていきました。道はどんどんと細くなり、
ぎりぎり車1台が通れるような道を進むこと5分。

そこは僕らがいままでいだいていた下田のイメージとは随分と違う
山深い雰囲気の集落。川沿いに広がる田んぼや畑はとても美しく、
まさに昔ながらの日本の農村風景です。

下田近辺でも一歩入ればこんな雰囲気があるんだとわくわくしてしまいます。
妻の親戚の家が下田にあり、そこによく行っていたことから
伊豆や下田に対して「温泉」「別荘地」「リゾート」
というイメージが大きすぎたことに反省してしまいます。

(僕らはこんな雰囲気がツボなのです。先入観ってよくないですね)

そして、敷地内で畑ができる、沢の水を引いている、家の広さもまずまず
という、条件だけ見ると自分たちの理想に近いという物件ですが、
実際に見てみるとかなり日当たりが悪く、そのうえ、川沿いのせいもあり
じめっとしていて、自分たちとしては住む気にはなれませんでした。
業者さんがホームページで載せている写真、
なかなかよく撮ったなあと感心してしまうくらいです……。

この細い道を登ったところにその家はありました。周辺の雰囲気はかなりいいのですが、家が山の影になってしまっていて冬はほとんど日が当たらないのです。

相場より安いのには訳があるようです。
修繕が必要で安くなっている分には、自分で直せばよいので
ありがたいくらいですが、こういった環境に関することは、
いかんともしがたいところです。やはり物件は見てみないとわからない、
そんなあたり前のことも再確認しました。

物件を見終わり細い道から国道に出ると、いかにも地元の人という感じの
おじさんふたりがなにやら楽し気に立ち話をしていました。
これはなにか情報がもらえそうだと、所さんのダーツの旅ばりに突撃!

本当に楽しい方たちで随分と話し込んでしまい、
物件の紹介をしていただいたり、この辺に移住するなら
わさびの苗を育てたら小遣い稼げるよ~、という
地元の人ならではのアドバイスをいただいたりしました。

移住した先では、ひとつの仕事の収入だけに頼るのではなく、
小さい収入源をいくつも持つような働き方をイメージしています。
(電気を使わない非電化製品の発明家、藤村靖之さんの
『月3万円ビジネス』という本にこの考え方が詳しく書いてあるので、
興味がありましたらぜひ)

そして、その小さい収入源は、移住した土地、家から発想して
つくっていこうと考えています。
そのひとつとしてわさびの苗。地の利も生かしているし、おもしろそうです。

物件は残念でしたが、伊豆の旅、悪くない出だしです。

その翌日に案内をお願いしている、下田のお隣、
河津町の空き家バンクの物件に期待しつつ、物件めぐりを終えました。
その日の宿泊はその河津町の移住お試し住宅〈なごみの里かわづ〉

実は、この移住先探しの旅を始めてからさんざんお試し住宅のことを
調べてはきたのですが、車中泊、知人や知り合った方の家、
農家民宿ばかりに泊まっていて、実際に利用するのは初めてなのです。

(ありがたいことに、事情を知って泊めてくれた方もいらっしゃいました。
映画『ペイフォワード』のようにこの恩をほかの人につなげていきたいです)

河津町ではこのお試し住宅をNPO法人
〈伊豆の田舎暮らし夢支援センター〉が管理していて、
翌日の空き家バンクの物件の案内もそのNPOにしていただく予定です。

下田から河津へは海沿いか山を抜けるふたつのルートがあり、
朝は海沿いを走ったので、山を抜けるルートで向かいます。
河津の中心地からもほど近い場所に移住お試し住宅はありました。

キッチンがあって風呂があって布団があってというのは車中泊が多いわが家にはありがたいです。

河津のスーパーで近隣で水揚げされたという鯛を調達。もちろん東京で買うより安いです。塩焼きにしただけでしたが最高でした。後日、娘に伊豆で何が一番おいしかった? と尋ねたところ「焼いた魚!」と。シンプル伊豆ベスト……。

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南伊豆までいくと、やや遠い?

翌日、NPOの方と空き家バンクの賃貸物件を見に行きます。
それぞれ魅力的な物件ではあるのですが、借りる決心をするまでには至らず。

空き家物件の家主さんのミカン畑を案内していただきました。好きなだけ採っていいよとのありがたいお言葉。訪ねてきた人に畑の野菜や果物を渡せるような暮らしにあこがれます。写真には写ってませんがこの畑からは海が見えるのです。しかもその海が本当にきれいなのです。

こちらのNPOでは、とにかく移住者は
賃貸から始めたほうがよいだろうという考えを持っていて、
空き家を見つけては移住者のために貸すことができないか? 
と呼び掛けているとのこと。なんとも頼もしい存在です。

といってもその声かけもまだまだ始めたばかりだということで、
これからもっと物件がでてきますよとのこと。
これからに期待してしまいます。

NPOの井田さんに移住成功の秘訣をご教示いただきました。「夫婦それぞれで移住に対する条件を10個ずつ書き出してみて、その中で譲れること、絶対譲れないことを考えて話し合うとよいですよ」と。その夜にさっそくやってみました。お互いわかっているつもりでわかっていないことがあると気づかされました。

次はお試し住宅にはタイミングが合わず泊まれなかった、
南伊豆町の役場に行きます。

南伊豆町は短期(1か月未満)、中期(1か月から1年)、
長期(1年から5年)のお試し住宅を持っていて、
とても移住者受け入れに積極的です。

http://www.town.minamiizu.shizuoka.jp/docs/2016022600010/

3つあるうちの1軒はこの4月から借りられるようで、
写真を見せてもらうと僕ら好みの古民家です。
案内していただけるとのことでしたのでお願いしました。

これは……いい!

ここを拠点に暮らし始め、周辺の物件を探す。イメージがわきます。

ただひとつ問題が……。

南伊豆町は電車が通っておらず、下田寄りにあるまちの中心地からでも
下田駅まで車で20分かかります。
その分東京からも遠いということになります。
東京からの時間を車と電車で整理すると(杉並の自宅までの目安です)、

●河津(駅) 車…2時間40分 電車…3時間~

●下田(駅) 車…3時間 電車…3時間20分~

●南伊豆(町役場) 車…3時間20分 電車+バス…4時間30分~

という感じです。

(電車、バスは乗り継ぎのタイミング次第でもっとかかることも)

娘のこともあり、暮らし始める当初は週に一度は東京に戻るつもりです。
妻が仕事で東京に行く際にも時間の読める電車がよさそうです。
それを考えると下田までか……?

ただ、南伊豆町は電車が通っていない分、まち全体がのんびりとしていて、
僕が目指す「農的暮らし」のイメージには
下田市、河津町より合っているようにも思えます。

そして、南伊豆町には、農業を営む移住したご夫婦がいらっしゃることを
妻の友人がネットでみつけて教えてくれていました。
そのご夫婦も移住先をいろいろと検討した末に南伊豆に決めたようでした。

ぜひ会いたい。Facebookを通じて連絡をとり訪ねてみました。

[ff_assignvar name="nexttext" value="移住して自然農園を営む夫妻"]
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遠いけど、魅力的な南伊豆!

南伊豆の役所から20分程度西に進むと彼ら、
欠掛隆太(かんかけりゅうた)さん夫妻のご自宅、農園があります。

向かう道中の景色。時が止まったような農村の風景。ツボです。

表札、郵便受けと積んである薪がその暮らしぶりを語っているように感じます。

欠掛さんは僕らと同じく都会育ちで会社員だったそうです。
彼らは僕が目指すような「自給的な農」ではなく
「なりわいとしての農」を実践しています。

徳島の自然農の農園で修業をして、この南伊豆に2015年に移住。
傷みの激しかった古民家を自分たちで改修して、
その後、自然農園〈日本晴〉をスタートさせました。
僕らより年下なのですが、しっかりとしていて感心しきりです。

http://bhagavad.meter.jp/blog/

欠掛さんは田舎暮らしや農で起業することについてブログで綴っています。
会社員だった都会育ちの人間が、田舎でこんな風に暮らしていけるんだ
ということを発信していきたいと語っていたのが印象的でした。

ネットでの野菜販売もあります。
無農薬・無肥料の旬の野菜は生命力が強いようです。
ブログもとてもおもしろいです。

この空間も自分たちでかなり手を入れたそうです。建築の知識や経験があったわけではなかったらしいのですが試行錯誤の末、ここまでつくりあげたと。薪ストーブの薪も山から切り出して持ってきている。そしてネットで情報発信やの野菜の販売。まさに「現代の百姓」です。

「この辺でなら賃貸が出たら3万円台でありますよ、
畑も借りてください! って頼まれるくらいですし」と欠掛さん。
ますます南伊豆、魅力的です。悩ましい……。

といっても、前回の三重でのこともあります。
娘が馴染める土地かというとこで冷静に判断していきたいです。

南伊豆町の道の駅〈下賀茂温泉 湯の花〉。ここまで賑わっている道の駅も珍しいというくらいに賑わっていました。港もある南伊豆町ですので海産物もおいてありました。妻は買い物に夢中になりすぎてなかなか帰って来ないというよくあるパターンに。安くて新鮮、種類豊富。これは夢中になります。

その後、何日かかけて、ネットで見て気になっていた
不動産業者の東伊豆町や下田市の物件を何軒かまわったのですが、
ピンとくる物件はありませんでした。
やはり、ネットに出るような不動産業者の物件は
どうにもときめかないのです。

南伊豆町のお試し住宅に4月から入り、
そこを拠点に物件探しを進めるのがよいのか?

(河津町は短期間のみですし、東伊豆町はしばらく埋まっているのです)
もしくはほかの地域も見てみるか。悩みどころです……。

こうして伊豆南部(東伊豆町、河津町、下田市、南伊豆町)をまわり、
それぞれの雰囲気もつかめてきました。
伊豆の中でももっと東京に近い場所はありますが、
南部ならではの「暖かさ」や「海のきれいさ」は
東京から離れるだけの価値はあるように感じます。

少し落ち着いて、今後の方向性を、三重の仮住まいを片づけながら
考えようかということになりました。

物件めぐりばかりしていても娘は飽きてしまうので、ちょくちょく遊びを挟んでます。1月の終わりだったのですが河津桜が咲き始めていました。本当に暖かい。

[ff_assignvar name="nexttext" value="旅の最後に急展開…!?"]
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再び下田で、ネットに載らない物件が!

ということで、いったん伊豆の移住先探しの旅を終えることに。
さあ三重に行くぞ、という日のことです。

下田駅近くの国道沿いに、まだ訪ねていない不動産屋さんが
あることに気づきました。
この旅で下田近辺のなるべく多くの不動産屋さんに顔を出して、
希望に合うような物件が出てきたら連絡をもらうように
お願いしていましたが、そのお店はもれていたようなのです。

いかにも駅前の地域密着の不動産屋さんという佇まいに、
ネットに出ないような情報を持っているかもと
淡い期待を抱きつつ訪ねてみました。
ひと通り自分たちのイメージを伝えると、
対応してくれた男性の奥にいた社長とおぼしきご年配の方が、
「あそこの農家の家いいんじゃないか? 畑もできるし」と。

なになに!?

なんでも、ひと部屋は荷物で埋まっているというイレギュラーな状況なので
いわゆる不動産業者の情報には載せにくいらしいのです。
イレギュラー物件大歓迎、まさに地域密着のネットに載らない物件! 
きたきた~という感じです。

家賃は少し予算をオーバーしてますが、
とりあえず外観だけでも見てましょうということになり
社長の車で案内していただきました。
(社長さん、行動も運転もスピーディーでびっくりしました……)

車を走らせること5分。

青い屋根と木製建具が印象的な少し不思議な雰囲気の大きな家です。
古民家というよりは昭和の香りが漂っています。
敷地内に、大きくはないですが畑ができるスペースがあり、
前面道路も広く、敷地に車3台は停められそうです。

立地としては下田駅まで2キロ少し。自転車で行ける距離です。
駅前にはスーパーや電気屋、ホームセンター、本屋など
ひと通り揃っています。
地方に住むとどこに行くにも車になりがちですが、
このあたりは夏の観光シーズンの渋滞がとにかくひどいとのことなので、
駅まで自転車で行けるというのはなかなかよさそうです。

さらには子どもがある程度の年齢になったときのことを考えると、
歩ける距離に駅があるというのよいのかと。小学校も徒歩圏内にあります。
下田に9つあるという海水浴場のひとつ、外浦海岸までは1キロ弱で、
歩いても行ける距離。というように立地条件としてはかなりよいのです。

海に歩いて行ける……。特にそんな条件を考えてはいなかったのですが現実的になってくるとわくわくしてしまいす。それにしても下田は海がきれい。これは感覚的な話だけではなく環境省の調査の結果としても出ています。

少し残念な点が周辺環境です。
下田駅から近いということもあり、郊外の住宅地という雰囲気なのです。
目の前には食品関係の工場があり車の出入りが多そうだなとか、
近くに鉄工所らしき工場もあったりで騒音がありそうとか、
不安な要素がないわけではありません。

この旅で最初に訪れた下田の奥まった集落や、
南伊豆町の欠掛さん宅周辺のように、
自分たちがわくわくするような田園風景ではないのですが、
東京への行き来や娘の通学のことを考えると
その風景を求めるのはなかなか厳しそうです。

でも、この連載で繰り返しこの言葉を使っていますが
「大事なのは自分たちがどう生きたいのか、何を大事にしたいのか」です。

外観だけ見ただけですが娘の印象は悪くはなさそうです。
なにより海で遊ぶのが好きですので、ここでの生活を楽しめる気がします。
夏に観光客でにぎわう海岸や港からも近く、
何らかの収入源を確保するにも適してもいます。

三重での経験からすると、いったんはこうした便利な場所に
住んでみるのがよいのかもしれません。

社長に内見のお願いして、家主さんに連絡をとっていただきました。
残っている荷物のこともあり、社長と家主さんが
立ち会っての内見という話になったのですが、
なかなか予定が合わず調整の結果、1か月近く先に。

うーん、早く内見したい……。でも仕方ありません。

この間に熱くなった頭を整理しよう。
そして、この間にお世話になった三重の方々に
感謝の気持ちを伝える時間をしっかりと持とう。
ちょうどよいのかもしれません。
そう、これは物件の内見までおとなしくしてなさいという
天の声なのだと思い込んでみることにしました。

その物件に期待しつつ、いったん伊豆を離れ、三重に向かいます。
三重から東京に戻る際には仮住まいを引き上げる予定です。
引き上げたら、これまでのように
三重に頻繁に行くことはなくなるのでしょう。
それを考えるだけで寂しくなってしまいます。

娘に、三重は雪降ってるかも? と教えると、
雪遊びが楽しみなのかうれしそうです。
物件のある美杉町太郎生(たろお)は標高が高く、かなりの雪が降るのです。

旅は続きます。

春を感じる伊豆からまだまだ冬の三重、美杉へと向かいます。

写真・文 津留崎鎮生

text & photograph

津留崎 鎮生 Shizuo Tsurusaki
つるさき・しずお●1974年 東京生まれ東京育ち。大学で建築を学び、卒業後は、建築家の事務所勤務、自営業でのカフェバー経営、リフォーム会社など職を転々とする。地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。5年半ほど勤めたリノベーション会社を2016年6月末に退職し、新天地への移住に向けて本格的に動き出す。趣味は妄想。特技は妄想。s.tsurusaki@gmail.com

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