ユネスコ認定世界ジオパークの
伊豆半島。地元住人が教える
下田の「ジオサイト巡り」
身近に「地球」を感じる暮らし
2018年に、日本では9つ目となる
ユネスコ世界ジオパークに認定された伊豆半島。
下田に移住した津留崎さんは、身近な暮らしのなかで
地球のダイナミックさが感じられるといいます。
今回は観光スポットとしても人気を集める伊豆のジオサイトを、
地元目線でご紹介します。
いま、下田の「ジオサイト巡り」が熱い!?
改元に伴い大型連休の方も多かった今年のゴールデンウィーク、
みなさんどのように過ごしましたか?
僕は下田に移住してから取り組んでいる仕事のひとつが
「養蜂」ということもあり、あまり普段と変わらずに暮らしていました。
あたり前な話ですが、蜂や自然には休日も元号も関係ありません。
蜂は季節とともにその生態を大きく変えます。
春から夏へと向かうこの季節は彼らが最も増える季節です。
多い日だと1日に2000個の卵を産むという女王蜂。
どんどん増える蜂たちが快適に暮らせる環境づくりに忙しくしています。

そして、わが家が移住した伊豆下田は主要産業が観光ということもあり、
連休は休んだり遊んだりというより、まち全体が
「お客様をお迎えする」モードになっている感じです。

わが家にも義姉家族が遊びに来て賑やかなゴールデンウィークとなりました。
下田の観光というと、ビーチリゾートという面が大きいので本番は夏です。
でも、黒船来航の地、開国の舞台になったまちということで
数々の史跡や古いまち並みもあり、そして温泉もあります。
ということで、夏以外でも連休などは観光客で賑わいます。
さらには、昨年、伊豆半島が
「ユネスコ世界ジオパーク」となったことを受けて、
いつになく下田の「ジオサイト巡り」が盛り上がっているとのこと。

火山やプレート移動、そして波がつくった神秘的な空間の「龍宮窟」は下田のみならず伊豆半島でも最も人気のジオサイトです。
下田で暮らしているとすぐ近くにそんなジオサイトがあります。
暮らしのなかにジオサイト、という感じです。
最近、首都圏で多く流れているという伊豆半島を紹介したJRのCMで、
伊豆を旅する大物女優さんがこう言ってました。
「私はいま、日本ではなく地球を旅しています」
下田に住んでいると、その真似をして
「僕はいま、日本ではなく地球に暮らしています」
なんて言っちゃいたくなる。そんな感じです。
今回はそんなジオパーク伊豆半島、下田で暮らすこと、
身近にあるジオサイトについて紹介したいと思います。

龍宮窟の隣には波と海流、風がつくった天然のサンドスキーを楽しめる「田牛サンドスキー場」があります。
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暮らしのそばに、ジオサイト
まずは、そもそもジオパークって?
ジオサイトって何? というお話から。
地球(ジオ)の成り立ちにとって重要かつ地質学的に価値があり、
保護や教育などの目的で管理されているエリアを「ジオパーク」といい、
ユネスコが認定するものが「ユネスコ世界ジオパーク」。
またその特徴がよく出ている場所を「ジオサイト」というようです。
では、伊豆半島のどこに地質学的な特徴があるのか?
こちらのサイトに載っている図を見ると一目瞭然なのですが、
伊豆半島は日本列島で唯一、
「フィリピン海プレート」に乗っている地域なのです。
はるか昔、南洋にあった海底火山によってできた島が
プレートの移動によって日本列島につながり、
伊豆半島になったといいます(フィリピン海プレートは
いまでも年間4~5センチメートルの速さで
北西方向に移動しているそうです)。
ということで、遠く南からやってきた火山の島、伊豆半島は
日本列島のほかの地域とは違う独特の地形が目白押し。
そんな地形が、ここでの暮らしでは、
びっくりするくらい身近にあるのです。
まずはわが家のすぐ近くのジオサイト、「柿崎弁天島」です。

下田湾を臨む柿崎弁天島。この時期は伊豆特産の天草(テングサ:寒天、ところてんの原料)が港に所狭しと干してあります。
島とはいっても地続きのこの島では、
斜めに走る地層に大地の動きを感じることができます。
また、幕末に吉田松陰がペリーの乗る黒船に乗り込もうと企てて
失敗した場所という、歴史的にも重要なスポットでもあります。

波や風が地層を侵食してこのような造形になるそうです。
実は、いまは小学生になった娘が移住当初に通っていた保育園の
バスの集合場所が、この弁天島の近くでした。
地元の方にとっては当たり前のジオサイトや
歴史スポットがバスの集合場所というのが
なんだか不思議な感覚だったことをよく覚えています。

このゴールデンウィークにはジオサイト巡り、歴史スポット巡りの方や釣り人で賑わっていました。
次は、先述したJRのCMに登場して以来、
観光客が増加中という「恵比須島」をご紹介します。


軽石や火山灰が織りなす美しい地層、荒々しい水底土石流など、
太古の海底火山の名残が感じられます。
わが家から徒歩圏内ではありませんが、車で10分ほど。
実は娘がこの近くで習い事をしているので、
待っている間にこちらを散策することも。
観光客が増えたといっても僕が行くのは平日の夕方なので人はまばら。
誰もいないということもよくあります。

長い時間をかけて地球がつくった美しい景色の中、誰もいない。鳥しかいない。そんな時間がふと持てる暮らしが、長く東京で暮らしてきた僕には新鮮です。

友人が下田に来てくれたときに遊びに行く定番コース。子どもたちは磯遊びに夢中になります。
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まだある、「地球」を感じるスポット
また、特に紹介されていなくても、
ジオを感じる地形に出会うことはよくあります。
例えばこちら。

こちらは僕が仕事をしている〈高橋養蜂〉の農園です。
画面中央の岩をご覧ください。尋常でない迫力なのです。
見る角度によってはモアイ像っぽく見えることもあったりで、
なんとも不思議なパワーを感じます。

こちらは自宅近くの外浦海岸。
まるで南国というような白い砂浜も
伊豆半島がはるか南からやってきたことを考えると
なんだか納得してしまいます。
また、一見ジオとは関係ないように見える下田の市街地、
古い建物の残るまち並み「ペリーロード」周辺も
実はジオサイトでもあるのです。

こちらのまち並みを彩る建物の外壁には多くの石が使われています。
この石は火山から流れ出した溶岩や噴出した火山灰からできた
「伊豆石」といい、加工性、耐火性に優れていて、
古くから伊豆各地のまち並みをつくってきた建材でした。
また、江戸時代初期、江戸城築城の際には江戸まで船で大量に運ばれて、
石垣の多くを伊豆石でつくったというほど
重宝された建材だったそうです。

恵比須島の浅瀬には石を切り出した跡も見られます。人力で石を切り出して運び出し江戸まで船で運んでいったのか……。地球もすごいけど人間もすごいなあ……って関心してしまいます。
また、今回、伊豆半島の成り立ちについて調べていくうちに
知ったことがあります。
みなさんにもおなじみの日本を代表するふたつのものが、
このプレートの動きと大きな関係があるそうなのです。
話は少しそれますが紹介します。

ひとつ目は伊豆半島の付け根にある日本を代表する山、富士山。
伊豆衝突によって地盤が隆起し、丹沢山地などの山々ができ、
その後、たび重なる火山活動により
美しい富士山ができたといわれています。
この雄大な富士も、伊豆半島と日本列島の衝突の賜物といえます。
プレートの動きや火山というと災害と結びつく避けたいイメージですが、
その火山の恩恵が日本の景色をつくっている面があるということを
感じさせてくれます(景色とは違いますが、
温泉に恵まれているというのも要するに火山活動が活発だから。
日本と火山は切っても切れないのか……)。
もうひとつ。こちらは少し意外です。
もともと本州に分布した桜と伊豆の固有種の桜が、
衝突によって地続きとなり交配、そして誕生したのが、
いまや日本中で愛される桜、ソメイヨシノなのです!
……いや、そうらしいのです!(これは一説で、ほかにも諸説あり。
でも、なんかワクワクしてしまいます)

4月にはわが家の田んぼの周りにも桜が咲いていました。2年目の田んぼもそろそろ始まります!
東京で暮らしていたときは暮らしのなかで
「地球」を感じることはあまりありませんでした。
地球より「目の前の仕事の締め切り」といった
短いスパンのことにばかり一喜一憂していました。
そして、ゴールデンウィークのような連休となると
地方を旅しては自然に触れて、
「大きな時間の流れ」を感じて癒やされていたように思います。
下田で暮らし始めてからは、地球を感じることが身近になって、
感じる時間のスパンが長くなった気がします。

ゴールデンウィークで下田に遊びに来た姪と娘とともに朝の散歩で外浦海岸へ。東京っ子の姪は波を不思議に感じるようです。あたり前に思ってしまうものをちゃんと不思議と思える心って大事だなと感じさせてくれました。
伊豆半島ジオパークでの「地球」を感じる暮らし、なかなかよいですよ。