大切な本『寂しい生活』との
出会いと気づき。自分の暮らしを
見つめ直すきっかけは、
冷蔵庫にあった!
家計を見直して、津留崎家に起きた変化とは?
伊豆下田に移住したカメラマンの津留崎徹花さん。
『クリアファイル家計簿』という本を参考に
家計を見直したところ、津留崎家に多大な変化が……!
同時に、ある1冊の本と出会い、感銘を受けます。
暮らしを見つめ直すことで、自分を見つめ直すことになったようです。
1日の食費を2000円以内に!
前回、私が書いた
「カメラマンときどきパン屋という暮らし方」という記事。
多くの方に読んでいただきありがとうございました、最高にうれしいです。
パン屋については今後のやり方をあれやこれやと模索中です。
「てつパン食堂」を時々開催しながら、
月に何度か通信販売という方向を今後考えています。

「通販待ってます!」という声をいただくたびに、
早くスタートしなきゃ……とも思うのですが、
焦ると自分を追い込んでしまいそうで。
ここは機が熟すのを待ちながら、ゆっくり準備していこうと思います。
今後の動きはまたこの連載でお知らせいたします。

最近、我が家の暮らしが少しずつ変わり始めました。
きっかけは友人が貸してくれた『クリアファイル家計簿』という本でした。
その本には、1日の食費・日用品の買い物を
2000円に収めるという方法が書かれています。
我が家の家計が少なからず気がかりだった私はその本に飛びつき、
翌日から実行開始。当初は家計を見直したいという目的でした。
もちろんその効果もあったのですが、
ほかにも我が家に多大なる変化をもたらしてくれたのです。
それは何かといえば、冷蔵庫。
買いすぎがなくなったおかげで、以前はパンパンで
開けるとちょっと嫌な気持ちすらしていた冷蔵庫が、
見違えるほどすっきりしたのです。
私にとって、それは涙が出るほどうれしい出来事でした。
というのも、長い間ずっと悩んでいたのです。
ついつい無計画に買ってしまう食材が、
いつも冷蔵庫の片隅で置き去りにされている。
それを目撃するたびに「あ~、食べ物を無駄にして……、
本当にダメな自分……」と、ため息をついていました。

2000円を意識して買い物をすると、「家にあれがあったからこれは買わなくていいな」とか、「2000円を超えてしまうから、これは明日にしよう」と考えるようになります。この方法でいままでの買いすぎがピタッとおさまりました。
買い置きが減ったことにともない、料理も徐々にシンプルになりました。
使う野菜は3、4種類。
ご飯を炊いて味噌汁をつくって、朝は漬物と海苔、納豆。
夜はおかずを1品足すという具合です。
もちろんパンとスープのときもあるし、
凝ったものをつくってイベント的に楽しむこともあります。
けれど、おおよその食事が簡素になったことで、
メニューに悩むこともないし、調理時間も格段に減りました。
その分余裕ができて、食材に対して丁寧になったかもしれません。
例えば、前は急いでザクザク切っていた白菜の葉っぱを、
一枚一枚はがすようになったり。
段々小さくなっていく白菜を妙にかわいいと思ったり
(夫もかわいいと思っていたらしい……)。
その感じがなかなかよいのです。

直売所で旬の野菜を買うようにしています。何しろ安いし季節のものはおいしい。レモンは夫が働いている〈高橋養蜂〉で収穫してきてくれました。
いまでこそそんなことを言っていますが、
ちょっと前までは余るほどの料理をつくっていましたし、
残り物と残り野菜とで冷蔵庫は常にパンパンの状態でした。
いま思えば、食事の支度がおっくうなこともたびたびありました。
つまりそれは私にとって過剰だったのですね。
ぐるっと一周して、ようやく落ち着く場所に戻ってきたような感覚です。

[ff_assignvar name="nexttext" value="“アフロ稲垣さん”の本に感動!"]
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冷蔵庫につまったものとは?
自宅にひとりでいるときの昼食は、もっと簡単に済ませてしまいます。
私は玄米が好きですが家族は白米派。
自分ひとりのために毎日玄米を炊くのはガス代がもったいないし、
白米と両方を毎日炊くのもなかなかしんどい。
ということで、私が食べる玄米は3日分をいっぺんに炊いてしまいます。
炊きたてはそのまま食べて、翌日以降の固くなったご飯は
朝残った味噌汁に入れて雑炊に。

「なんとわびしい……」と思われるかもしれませんが、
七味や山椒、ごま油なんかを垂らして食べたらこれが実においしいのです。
考えなくったって自然と手が動くくらいに単純な調理、時間もたったの5分。
「簡素なこの感じ……、なんて気持ちがいいんだ~!」と、
ある日台所で雑炊をぐるぐるかき混ぜているとき、
ふと頭に浮かんだのが“アフロ稲垣さん”のこと。
ご存知の方も多いかと思いますが、元朝日新聞記者で、
洗濯機も冷蔵庫なども持たないミニマムライフを
実践している稲垣えみ子さんです。
「玄米を3日分炊いて(夏場は1~2日)
翌日からチャーハンや雑炊にして食べている」
という彼女にまつわる記事が、頭の片隅に残っていたのです。

我が家の思いつき、冷やご飯を温めるこの方法、これがなかなかいいんです。味噌汁をつくっている土鍋の上に冷やご飯を入れたざるを乗せて蒸す。電子レンジで温めるより格段においしくてエネルギーの節約にもなる、一石二鳥です。
稲垣さんのことを思い出していた数日後のこと。
編集者から「テツカさんにぴったりの撮影があるんです」
と連絡がありました。
内容を聞くと、なんと稲垣さんの撮影だというのです。
念ずれば叶うのですね~。
ぜひ! と前のめりで受けさせていただきました。
撮影の前に稲垣さんの著書『寂しい生活』を拝読していると、
いや、もう目から鱗のオンパレードで感動しっぱなしです。

稲垣さんが電化製品を見直し始めたのは、福島の原発事故後の節電がきっかけでした。その後、会社を退職するにまでに展開していくのですが、そんな一見シリアスな内容がユーモアたっぷりで書かれているのでつい読みながら笑ってしまいます。ぜひ皆さんにも読んでほしい。
稲垣さんは、電化製品に囲まれた便利すぎる暮らしを見直し、
掃除機を捨てほうきと雑巾にスイッチ。
洗濯機もなくすべて手洗い。そして冷蔵庫も使わない。
冷蔵庫の中には、買いたいという欲と、
食べたいという欲がパンパンに詰まっている。
人の欲はとどまることを知らず、
その食べ物の多くは実際には食べられることはない。
もはやそれは食べ物ではない「何か」なのだ。
(『寂しい生活』より)
激しく納得……。私が不愉快に感じていたのは、
冷蔵庫の中に残された食べ物そのものではなく、
そこに投影された自分の過剰すぎる欲だったのです。
それは食べ物に限らず、モノすべてに通じること。

私が大学を卒業して社会人になった頃は、
バブル崩壊後とはいえまだまだ景気がよい時代でした。
ブランドモノも、雑貨もキッチンツールも、
欲しいものを次から次へと買い込みました。
20代30代は欲に流され消費しまくり、
使わないモノに囲まれて暮らしていたのです。
40代になってからは、そうした欲はだいぶ落ち着きました。
もちろんまったくないわけではないですよ、
「かわいいな~」って買いたくなることも普通にありますあります。
けれど、欲に流されるまま消費するのではなく、
自分でうまくコントロールできるようになりました。
自分のお気に入りの服があれば毎日同じでもよくて、
あれこれ毎日違う服で着飾らなくても満足できるようになりました。
この抜けて緩んでいく感じ、歳をとるって心地よいものです。
ただ、それでもなお、私が抑えきれずにいたのが、
食材を買い込みたいという欲。下田は新鮮な野菜や魚の宝庫。
直売所に行っては、あれもこれもと買い込みたくなっていまうのです。
そんな買いたいという欲も、クリアファイルをきっかけに整ってきました。
これは私にとって大きな一歩です。

[ff_assignvar name="nexttext" value="移住1年での変化"]
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自分の欲とうまくつき合う
ところで、先日娘を連れて東京に行ったとき、
ある自分の変化に気づきました。
それは、ショーウィンドウがとても輝いて見えるということ……。
いままでそれが日常だったので、
特に自分が激しく反応することもなかったのです。
けれど、最近はなんだか自分の欲がうずく。
「たった1年離れたくらいで?」と思われそうですが、
いや、自分でもびっくりするくらいに人って環境に慣れるんですね。
そんなときも「おー、ふつふつと湧いてきてるね~」と
自分の欲を客観的に観察してみます。
そうして、ほどほどに楽しむようにしています。

数年前から、毎年続けている家族での味噌づくり。今年は娘の友だちと一緒に、自宅近くの海水でつくられた「外浦の塩」と西伊豆で仕込まれた麹を使いました。都会での経験と地元下田での経験と、両方ができるいまのバランスは娘にとってよいのかもしれません。


クリアファイルが冷蔵庫につながり、
そのタイミングで稲垣さんの本との出会い。
まさか冷蔵庫がきっかけで、暮らしとか生き方とか自分の欲とか、
そういったものを見直すことになるとは思ってもみませんでした。

稲垣さんに影響されて始めた干し野菜。甘みが増しておいしくなるのもさることながら、調理時間も短縮できます。
最後にもうひとつ「稲垣語録」を。
「我々が本当に恐れるべきなのは、収入が減ることよりも何よりも、
自分自身の欲そのものである」
これから先、自分は何を手放していけるのか。
手放すことでいままで気づかなかったものが見えてくる。
それがとても楽しみです。