丁寧な暮らしとは? 移住とは? 娘とふたりで過ごした 三重の仮住まいで考えたこと。
いよいよ仮住まいでの
暮らしがスタート!?
いくつかの旅を経て、何かと縁を感じる三重県津市美杉町への
移住を考えるようになった津留崎さん一家。
仮住まいの物件も見つかり、いよいよ物件の確認に向かいます。
ただし、今度は父と娘の初めてのふたり旅。
最初はわくわく、テンションも上がっていたのですが……?
いよいよ仮住まい物件の確認へ!
いよいよ、三重県津市美杉町の仮住まい物件の確認、
家主さんとの顔合わせです。
その物件は3か月住んでみて気に入ったら長く住むもよし、
3か月の間にほかにいい物件が見つかればそこに移るもよしという、
移住先探しをしているわが家にとっては願ってもない条件で
貸していただけることになっています。
そして、さあ、物件確認と家主さんとの顔合わせに行くぞ!
と先方との予定を調整し終えたところで、
妻に外せない用事ができてしまいました。
物件の確認に行くのに家族揃って行けなきゃ
しょうがないかと延期することも考えたのですが、
先方の都合を再調整してもらうのも気が引けますし、物件の確認を済ませて、
早く仮住まいをスタートさせたいという思いもあります。
ということで今回は僕と娘のふたりで行くことになりました。
初めての娘とのふたり旅です。
とんとんと話が進めば、その後、少しの期間、
その物件でふたりで暮らし始めてみようとも考えています。
娘を東京に残していくという話もあったのですが
「パパと離れたくない!」と言い出して……。
親バカ発言をお許しいただきたいのですが相当なパパっ子なんです。
(その「うちの娘はパパっ子だからふたりでも大丈夫」という
思い上がりから、後ほどかわいそうな思いをさせてしまうのですが……)

妻が握ってくれたおにぎりをサービスエリアで食べる。あ~、父ちゃん幸せ。最近、カメラを向けるとなぜかこの表情……。
そんなふたり旅、約束の日の前日に美杉の友人宅に到着。
(その際に起きた移住前の洗礼ともいえるような出来事については前回参照)
そして、約束の日、友人宅から仮住まい物件に向かいます。
美杉はとても広く、友人宅のある美杉町八知から
物件のある美杉町太郎生(たろお)までは車で30分ほどかかるのです。
八知が美杉の中心に位置するのに対して太郎生は奈良寄りにあり、
八知から行くには一度奈良県御杖(みつえ)村を通過します。

その奈良県を通過する際に〈道の駅 御杖〉があります。温泉施設と地域の農産物や加工品を扱っている売店もある大きな道の駅です。近くに温泉があるというのは魅力的!
御杖村にある〈道の駅 御杖〉から伊賀方面に車を走らせること5分、
再び三重県に入ります。そこが美杉町太郎生です。

太郎生に向かう国道からの景色。これから始まる暮らしを思いわくわくしてしまいます。
ほかの美杉の地域が雲出川という伊勢湾に注ぐ川の流域にあるのに対し、
太郎生だけは大阪湾に注ぐ淀川水系の名張川の水域にあります。
大阪湾に注ぐということが関係あるのか、太郎生は津市の市街地や
美杉のほかの地域より関西の言葉に近い気がします。
あらためて、言葉や文化が川とともに形成されていったんだということに
気づかされます。
そんな太郎生を走る国道から脇の急な坂道を入り、登り続けること3分。
その坂が行きつくところにその物件はありました。

真ん中の大きな屋根の古民家と右側の離れを使っていいとのこと。どちらも問題なく、特に離れは築年数も浅いこともあり状態もよく、大きさも家族3人で住むにはちょうどいいです。後述しますが左に見えるのがお隣の家。後ろのほうで古民家と一部くっついています。

物件前からの眺め。登るだけあり眺めは格別です。
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物件のメリット、デメリットは……?
物件の状況は想像以上によかったです。
特に、連載3回目の移住地に求める条件で書いたように、
米と野菜を自給したい、水は沢の水か井戸の水を
と考えている自分にとっては理想的ともいえる環境です。

物件に隣接している休耕田。ここも使っていいとのこと。田んぼに引かれている水はここだけにしか来ていないという。田んぼ事情をあまり知らない僕にとってはピンと来ないのですが、無農薬で米をつくっている方に話すと、かなりうらやましい状況とのことです。

田んぼの水路の上流の様子。後ろに見えるタンクは物件に引かれている沢の水のタンク。常に満たされていて途切れることはまずないと。家主さんが水質検査を行っていて飲めるほどの水とのこと。
そして、いずれはエネルギーの自給もできたらと考えています。
熱源としての薪も手に入りやすいし、日当たりもいいので
太陽光パネルの設置もしやすい。その点でも申し分ないのです。
金額的にも、もしも長く借りるとするなら、買うとするなら、
という話を家主さんとさせていただいたのですが現実的な金額でした。
賃貸でもいいと言っていただいているのはとてもありがたいです。

物件の上方には昔、茶畑だったという休耕地があります。非常に日当たりがいい。たわわに実る柿の木も。何も手をかけていないらしいのですがとってもおいしい!

茶畑だった休耕地のさらに上には植林があり、間伐された材が転がっています。この転がっている材は自由に使っていいよと。薪ストーブにすれば燃料代かからない? でも東京育ちの僕にはどうすればいいのかさっぱりわかりません……。これからこれから。
ただし、すべてが満点というわけではありません。
(そんな物件はないと思いますが……)
もっとも気になる点としては、立地条件です。
美杉という広いまちの中心から遠く離れた
太郎生という地域にあるその物件は、娘の保育園や
小、中学校への通園、通学を考えるとかなり難があります。
現在、美杉には保育園、小学校、中学校がそれぞれひとつずつしかなく、
保育園と中学校は沓沢家の住む八知にあり、
小学校はまた別の奥津という地域にあるのです。
とても歩いて行ける距離ではないので、
市がスクールバスを出してくれているようなのですが、
そのスクールバスのバス停までも車で送り迎えをしなければなりません。
そしてスクールバスのバス停からも30分以上はかかるというのです。
また、寒さに弱いわが家としては条件のひとつに温暖なところと
挙げていましたが、この地域は温暖な三重にあって積雪の多い地域です。
特にその物件は太郎生の中心地より標高でも50メート以上も
標高が上がっているので、その不安はさらに募ります。
寒さに弱い、雪に不慣れなわが家がそんな土地で生活できるのでしょうか……。
太郎生に住む方々にお話しをうかがうと、
ここの冬は厳しいよ~、四駆、スタッドレスタイヤは必須だよ~と。
幸か不幸かこれから3か月といえば最も寒い時期。
太郎生の寒さが、雪がどんなものかを体験するにはもってこいかもしれません。

スクールバスのバス停まで歩いて行ってみました。時間に余裕があれば歩けなくはないのですが、毎日のこととなると厳しい距離かなと。スクールバスのバス停まで車で送り迎えか……。そしてこのなかなかの斜面。雪、積もったら滑りそう。確かに四駆、スタッドレス必須ですね……。
そして、隣の住居との距離も気になるところです。
近隣とはある程度離れている立地を希望していますが、
こちらの物件は隣の住居と一部接しているくらいの位置関係。
ただ、その隣の方ともご挨拶させていただいたのですが、
とても親切な方でした。田舎暮らし初心者のわが家にとっては、
近くに何かと相談できる方がいると心強い気もします。
でも、将来的には移住先で民宿かゲストハウスをやりたいとも
漠然と思っています。それを考えると、隣と接しているような
つくりは難しいのかもしれません。
そんな気になる点はいくつかはありますが、とりあえずの仮住まいです。
実際に暮らしてみてどう感じるかを試せるというのは本当にありがたいです。
そして、すぐに快適に暮らせるように家具や食器、寝具を置いていくので
自由に使ってくださいとのこと。なんとありがたい話なのでしょうか……。

離れのキッチン、日当たり最高! 家具、家電に食器、調理器具も揃っているのです。仮住まいのためにどこまで荷物を持っていこうかと悩んでいたので本当にありがたいです。
無事に物件確認、家主さんとの顔合わせを済ませ、鍵を受け取りました。
そして、いよいよ娘とふたりの仮住まいでの暮らしが始まりました。
といっても、それから1週間ほどで東京で用事があるので
帰らなければなりません。
1週間程度、娘とふたりで暮らしてみようという感じです。

初めて泊まり、迎えた朝の山並み。この景色を見て「もののけ姫の森だ!」とふたりで盛り上がったのですが、それもつかの間でした……。
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環境の急激な変化に娘は?
仮住まいではありますが、とうとう始まる移住生活、田舎暮らし。
目指す暮らしに一歩近づいたと僕のテンションは上がりまくってました。
ところが、いざ仮住まいで暮らし始めると、僕とは反対に
娘のテンションはどんどん下がっていきました。
僕が娘と向き合っている時はまだ問題なかったのですが、
人に会ったり作業しているとすっかりテンションが下がり、
ストレスを感じるようになっています。
しまいには「山に住みたくない、東京に戻りたい」と言い出す始末でした。

古民家はふたりで過ごすには大きく寒すぎるので離れに泊まりました。慣れないキッチンでおにぎりを握る娘。こうしている時は楽しそうにするのですが……。
娘にとって、初めての田舎暮らしで
両親が揃っていないのは厳しかったようです。
住む家が変わり、それも東京から田舎という環境の変化、
さらに両親が揃っていないというこの状況、
娘にとっては過酷だったのでしょう。
そして、東京の家が3世帯同居のわが家の場合、
同世代のいとこたちやおじ、おば、おばあちゃんがひとつ屋根の下にいます。
東京の家が賑やかな分、余計に寂しいのでしょう。
このまま無理して暮らし始めると娘にとって良くない、
そんな風に感じるくらいでした。
パパっこなうちの娘は僕と一緒なら大丈夫という甘い読みがあり、
娘がそこで暮らし始めてどう感じるかを深く考えずにいたのかもしれません。
おっちょこちょいな僕ですので失敗ばかりですが、
今回は本当に自分の浅はかさを悔やみました。
そもそもは家族で丁寧に暮らしたい、
そんな思いで移住することを決めたわが家です。
それなのに条件のいい仮住まい物件が出てきたことで
舞い上がってしまいました。そこで早く暮らし始めたいと焦っていました。
娘の発言でそんなことに気づくという本当に情けない親です……。

丁寧に暮らすってどういうことだろうと、このふたり旅であらためて考えました。娘も考えているのかな……。
結果としては仮住まいでほんの数日間を過ごし、
妻のいる東京に戻ることにしました。
時には撤退する勇気も必要です!
とにかく、娘の気持ちが移住に向くように落ち着いて態勢を整えよう。
一番大切なことは何なのか? あらためて自分に問い直し、考え直しました。

富士のすそ野を行ったり来たりしてます……。高速代もばかにならないので一般道で帰ることに。運転中は娘と歌を歌ったり、クイズやしりとりを。ちなみに一般道だと9時間。休み休み行くと1日かかる感じです。高速でがつがつ移動しているともちろん速いけれど娘は退屈そう。移動も楽しめばいいのかなと。

普段は家で食事をつくることが多く、たまの外食のときも、チェーン店は好かん! というこだわりでファミリーレストランやファストフードに連れて行くことは滅多にありません。でもたまは解禁! お子様ランチがうれしいようでテンション上がってます。親の考えを押しつけすぎるのもよくないな、と反省。メリハリメリハリ……。でもパパのつくるハンバーガーのほうがおいしいねと言っていたのでそこはほっとした……。
始まったような、始まっていないような、仮住まいでの田舎暮らし。
家族で丁寧に暮らすってなかなか難しいです。
わが家の移住、この先、どうなるのでしょうか……。