連載
posted:2016.6.4 from:静岡県下田市 genre:食・グルメ
sponsored by KIRIN
〈 この連載・企画は… 〉
その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?
writer profile
Chizuru Asahina
朝比奈千鶴
あさひな・ちづる●トラベルライター/編集者。富山県出身。エココミュニティや宗教施設、過疎地域などで国籍・文化を超えて人びとが集まって暮らすことに興味を持ち、人の住む標高で営まれる暮らしや心の在り方などに着目した旅行記事を書くことが多い。現在は、エコツーリズムや里山などの取材を中心に国内外のフィールドで活動中。
photographer profile
Yayoi Arimoto
在本彌生
ありもと・やよい●フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp
credit
Supported by KIRIN
47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
静岡でコロカルが向かったのは、下田〈ひもの万宝〉。
踊り子号の左側の座席を陣取り、やってきたのは伊豆半島の港町、下田。
なぜならば、伊豆大島あたりの海からやってくる金目鯛が最盛期を迎えているから。
金目鯛といえば、関東を代表する高級魚。
それを日本最大の水揚げ地で食べないでなんとする!
それも、全国の干物好きが足を運ぶという下田のひもの屋、〈ひもの万宝〉では
その場で選んだものを焼いて、食べることができるということを耳にし、
さっそく、電話をかけて問い合わせてみました。
「うちは、干物以外はなにもないから、飲み物やおにぎりは持参してくださいね」
買った干物を目の前の炭火で焼いてもらう料金は一律200円。
それ以外は一切チャージがつかないというのです。
お店に着き、まず目に飛び込んでくるのは、
木のテーブルの上に置かれた炉端焼きのコンロ。
そして、冷蔵ケースに入った干物たち。
お目当ての地魚、金目鯛の開きのつややかに美しいこと。
サンマ、アジ、真イカ、カマスなどなど心ときめく干物のオンパレード!
「あ~2週間前なら、伊勢海老の干物があったんだけどなあ」
ご主人の平井恭一さんは残念な顔をしましたが
いえいえ、いまが最盛期の金目鯛がありますから、問題はありません。
ぜひ、地金目鯛の開きをお願いします!
恭一さんは、伊豆半島の内陸の出身で、
幼い頃から毎日のように干物を食べていたそうです。
海と魚が大好きで「魚屋になりたい!」と海の近くに引っ越し、
昭和49年7月に魚と干物を販売する万宝商店をオープンしました。
「鮮魚を扱っていて、舟盛りを近くの宿に届けていたんだよ。
でも、干物のほうが売れるようになっちゃってさ」
そんな経緯もあり、平成8年からは干物専門店になりました。
恭一さんのつくる干物は、減塩干物として知られ、
全国各地からお客さんが万宝の干物の味を目指してやってきます。
店先で試食のために焼いていたのが人気となり、
炭火焼きでまるごと食べてもらういまのかたちになりました。
「凝り性だから、いつも味の研究をしていますよ」
と奥様の国子さんが隣から、ひとこと。
ふたりでつくりあげた独特の干物の味は、いかに?
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「いまの時期は産卵前だから身に脂をたっぷりと蓄えています。
うちの金目は地物の一本釣りのものしか仕入れないからね、きれいでしょう?」
恭一さんの手で何度もひっくり返されるピンク色がかった金目鯛。
炭火の遠赤外線効果のせいか、いつしか黄身がかった朱色へと変化していました。
ううむ、香ばしいにおいが店内に充満してきましたよ。
もう、待てません。まずは、持ち込んだビールで喉を潤します。
金目鯛の背中から、脂がじゅくじゅくと煮え立つたびに
まだかまだかと気になって、網の上を何度ものぞいてしまいました。
もうちょっと待ってね、と言いながらトングをコンロの上に乗せて
火を調節していく恭一さん。つきっきりで干物を焼いてくれます。
焼き代200円を高いととるか、安いととるか判断するのは、ぜひ食べたあとに。
さて、焼きあがりましたよ!
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さて、見目麗しき金目鯛の朱色の肌に箸を入れさせていただきます!
ごくりというつばの音が聞こえるかのような静寂のなか、
ささやかなパリッという音とともに皮の裂け目から出てきたのは
ふっくらとした白身とほのかな湯気。
箸にとれた肉厚の白身をそっと口に含み、目をとじて嚙みしめる……。
「あ、甘い!」
減塩干物とは聞いてはいましたが、最初のひと口が
しょっぱいのではなく甘いとは、驚いた。
すぐさまビールを口に含む。
そしてまた身を口に放り込む。無言のままその繰り返し。
炭火の熱はテーブルの上も金目鯛の白身にも
しっかりと伝わっているようでいっこうに冷める気配はありません。
冷たいビールがいっそうおいしく感じられます。
「酒好きはね、自分が好きな酒を飲むのが一番なんだよ。
だからうちによく来る人はたくさん持ってくるんだ。
たまに囲炉裏を囲んで見ず知らずの人と仲良く注ぎあったりしてね。
でも、週末には1時間待ちのときもあるから、あんまり長いと困っちゃうなあ」
自身もお酒が大好きだという恭一さんは、
自分も含め、お客さんの健康に配慮して研究に研究を重ね、
20年前にいまのしょっぱくない甘みのある干物の味を完成させました。
ひと口食べると「薄味かな?」と思いますが、
1匹食べ終わるときにはちょうどいい塩梅だったと気づくでしょう。
塩水の配合は企業秘密ですが、釣った魚を熟成させて、塩水に浸し、
冷風乾燥するだけというシンプルな工程も、
あらゆる角度から検証して、いまの技術でできる限り、
一番安心しておいしく食べられるものを探った結果なのだそうです。
は~お腹いっぱい、ごちそうさまと思ったら、国子さんが箸で身をかきだし、
食べ残した頭の部分や骨を持っていってしまいました。
いったい、何が始まるのでしょうか?
「はい、出汁が出ておいしいわよ」と出してくれたのは、
なんと、金目鯛のアラにお湯を注いだアラ汁!
「金目鯛はまるごと食べられる魚なんですよ」と
焦がさないように骨を焼く、国子さん。
パリパリの骨も尻尾は少しだけしょっぱくてビールのおつまみにぴったり。
これではまったく場を締める気配が感じられません。
お客さんが長居するのも納得です。
これだけ堪能して、1匹200円の焼き代は安いのではないでしょうか!?
干物の新しい世界を垣間見た経験でした。
「最近は交通の便がよくなったからか、いろんなところから人が来ますね。
干物を焼きながらお酒を飲んで出身地の話を聞くと、
みなさん、お国柄がでますねえ。それがおもしろいよ」
ちなみに、恭一さん自身は、最近は遠出するよりも
近くの浜を散歩したりするのが好きなのだそうです。
「私はお友だちと出かけますけどね」と国子さん。
ふたりのあとを継ぐ勇一さん家族も近所に住んでいて
とても和やかな、平井ファミリーです。
平井ファミリーの干物への愛情を感じながら、しみじみと和むひととき。
おいしい地金目鯛の干物を丸ごとその場で味わいに
ビールを持って遊びに出かけてみませんか?
※一番搾り 静岡づくりは、静岡の誇りを込めてつくった、静岡だけの味わいです。
問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く)
ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。
information
ひもの万宝
住所:静岡県下田市柿崎707-13
TEL:0558-22-8048
営業時間:9:30~18:00(お店での焼きの時間は11:00から15:00頃まで)
定休日:水曜日
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