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創業51年目の
仙台のスーパー老舗ロックカフェ
〈Peter Pan〉

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.016

posted:2023.10.20   from:宮城県仙台市  genre:旅行 / エンタメ・お楽しみ

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
宮城県仙台市。

51年の歴史。お客さんと敵対した関係から寄り添う関係へ

コロンボ(以下コロ): レコードバーのご主人って、
お客さんの音楽の嗜好を探り出すのがうまいよね。

カルロス(以下カル): 初めて飲みに行った店でも、連れとの会話から推理して、
さり気なく好きな曲をかけたりしてくれると、驚く。

コロ: ここ〈Peter Pan〉の店主の長崎英樹さんに、それについて尋ねたら、
40%はドンピシャで、15%はハズレ、残りは当たらずしも遠からずだってさ。

カル: やっぱ会話からなの?

コロ: もちろんそれもあるけど、身なりと髪の長さもポイントらしい。
ボクがうかがったとき、試しにボクの場合は誰が好きそうですか? と聞いてみたら、
これが気持ち悪いくらいドンピシャなの。

カル: まさに創業51年の所業。どんな推理だったの?

コロ: 靴をチェックするのを忘れちゃったからと、「うーん」と考えていたんで、
「白いアディダスのスーパースターです」と教えたところ……。

カル: まさかニール・ヤングと?

コロ: そうなのよ、そのまさか。熟考の末、タンテに置いたのが『ハーヴェスト』。

カル: まさにドンピシャだ。

コロ: 悔しいから、いちばん好きなアルバムは『ZUMA』だって悪態ついたら、
それもかけてくれた。

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唯一買わなかったビートルズのアルバムとは?

Page 2

カル: やさしい♡。老舗ロックバーだから、お客さんに寄せたりしないのかと思ったよ。

コロ: 昔はお客さんと好みが敵対していたらしいよ。
ロックバーのくせにレッド・ツェッペリンとかのハードロックが全然ダメだったらしくて。

カル: それはまずいね。ビートルズなんかはどうなの。

コロ: ジョンが冴えないって理由で、
『アビイ・ロード』だけは買わなかったらしい(笑)。影がないとダメなんだって。
ビートルズのメンバー、ひとりひとりには興味がないなんだって、
なのでポールのライブも見る気がしないそう。

カル: かなり偏っているけど、どの辺がストライクゾーンなのかな。

コロ: リトル・フィートは当時、ビートルズを超えると信じていたらしい。
あとはジョニー・ミッチェルとかジェイムス・テイラーとか。
ジェイムス・テイラーでいちばん聴いたのは
『スウィート・ベイビー・ジェイムス』だって。

カル: 『ワン・マン・ドッグ』とか『マッド・スライド・スリム』じゃないんだね。

コロ: ジェイムス・テイラーは本来、いたってまじめでシリアスで凝り性。
このアルバムはスケジュール的に凝るひまがなかったみたいで、
彼にしては雑になってしまったのが、逆に良かったそうだ。

カル: ジェイムス・テイラーってちゃんとし過ぎてたんだ。
たしかにニール・ヤングとは違う気がするよね。
でも、さすがに今はお客さんとは敵対してないんでしょう。

コロ: 媚びるくらいにお客さんに寄せていて、
お客さんの様子を見ながらかけているそうだ。

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「教授」が大絶賛したユニットとは?

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カル: そうそう、その昔は「デモテープ・デイ」っていうのが名物だったんでしょう。
アマチュアバンドが宅録したカセットテープを聴いて、優勝者を決めるイベント。

コロ: 何回目からの優勝者に〈センチメント〉というユニットがいたんだって。
デペッシュ・モードもみたいなサウンドで、結局、リリースできず仕舞いだったんだけど、
そのユニットを坂本龍一さんが、大絶賛してくれたんだって。
彼らの良さをわかってくれた業界人は教授ひとりだったそうだよ。

カル: そんな伝説のイベントがあったりするんで、
いまでもオープンリールのテープデッキがあるんだ。

コロ: それはまた別みたい。
昔は、関係者にサンプル盤がプレスされる前に、オープンリールで聴かせたんだって。
それはそれはいい音だったようだよ。

カル: オープンリールって聴いたことないかも。
カセットすらギリギリなんで。オーディオはどんな感じなの?

コロ: 店主いわく、機械はまったくわからないから、
オーディオに詳しいお客さんに「直してみます?」って任せちゃうんだって。
そうすると、よろこんでやってくれるみたい。

カル: 他力本願(笑)。お客さんがつくってくれたカスタムのJBLは
とってもクリアな音なんだってね。

カル: 見事なくらい忠実だった。地震で3回落ちても無事だったんだってさ。

カル: 店内も震災を経ているのに、昔のままを留めているよね。
パリの古い、プチホテルに迷いこんだみたいな感じがする。

コロ: 長崎さんの旅の記憶がそのままお店になったみたいで、
これまた味が出ているんだよ。

カル: ミシンのフタがテーブルになっていたり、
主人の好きなものしかない空間って最高だよね。

コロ: いい空間って、大体そういうことだよね。
好きなものといえば、姓名判断の腕前もすごくて、
ボクが名刺を出したとき、じーっと長い間、見ていたから、
前にどこかで会っているのかなって思ったら。
字画を数えていたんだと、あとで気がついたの。

カル: まじで? ロックと姓名判断(笑)。どんな性格だって?

コロ: それは内緒。

information

map

ROCK CAFE Peter Pan 

住所:宮城県仙台市青葉区国分町2-6-1

TEL:022-264-1742

営業時間:15:00〜24:00

定休日:月曜

Web:ROCK CAFE Peter Pan

 

SOUND SYSTEM

Speaker:JBL (custom mage)

Turn Table:TRIO KP-7600、Victor TT-81

Power Amplifer:Victor M-2020

Pre Amplifer:Accuphase C-11

Open Reel Deck:TEAC A-7010

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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