コシノヒロコが愛する、“ほんまもん”の味。兵庫県芦屋市〈神嵜屋宗兵衛商店〉の昆布と鰹田麩

〈神嵜屋宗兵衛商店〉の昆布と鰹田麩
ファッションデザイナーのコシノヒロコさんには、芦屋で過ごすたびに立ち寄るお気に入りの店がある。そのひとつが〈八代目神嵜屋宗兵衛商店〉だ。江戸時代から続く関西の昆布文化を今に伝える店を訪ね、八代目・尾嵜宗兵衛さんとともに、その味わいと芦屋との関わりを聞いた。

江戸時代から守る技法と、原材料のこだわり

芦屋市と有馬温泉を結ぶ有料道路「芦有(ろゆう)ドライブウェイ」。その玄関口、通称「芦屋ゲート」の料金所すぐ横に、2023年、〈神嵜屋宗兵衛商店〉はオープンした。

神嵜屋宗兵衛商店

その源流は、遡ること江戸時代。北海道と大阪を結ぶ北前船によって良質な昆布が運ばれるようになると、関西では独自の昆布文化が花開いた。うどんやおでんなどの出汁文化はもちろん、塩昆布や佃煮といった加工品も広く親しまれ、日々の食卓や贈答文化を支えてきた。

初代・神嵜屋宗兵衛が大阪で創業したのも、そんな昆布商が盛んだった時代。以来、代々受け継がれてきた製法と味を守りながら、昆布や鰹節を使った加工品づくりを続けている。現在はその伝統を芦屋で受け継いでいるのが、八代目・尾嵜宗兵衛さんだ。

「江戸時代に、すでに味は確立されてるんですよ。だから、伝統を守って添加物は使わず、厳選した素材で作っています。

昆布や削り節に含まれる旨味成分を引き出す超軟水に、調味料は本醸造醤油と本みりん、甘味は北海道産のてんさい糖。清酒は灘・白鷹の純米酒を使っています」と尾嵜さん。

関西、昆布、と言えばやはり出汁が連想されるが、大阪商人の知恵と加工技術は昆布の加工品をも普及させ、古くから関西の食卓を支えてきたのだ。

コシノヒロコが「ほっこり」する昆布と鰹田麩

この店の味がお気に入りだと話すのが、大阪・岸和田出身で、芦屋にギャラリーとアトリエを持つ、ファッションデザイナーのコシノヒロコさん。

コシノヒロコ、八代目尾嵜宗兵衛
左から、コシノヒロコさん、八代目尾嵜宗兵衛さん。

「神嵜屋さんの鰹田麩とお昆布は、芦屋の家にも東京の家にも常備しているんです。甘さが軽くて、温かいご飯にかけて食べるととってもおいしい、安心する味。関西弁で言えば『ほっこり』やね。お醤油とみりんとお砂糖の味付けに子どもの頃から慣れ親しんできたからっていうのもあるんかな」。

八代目尾嵜宗兵衛さんも「お客さまにはよく『優しい味やね』と言っていただきます」と微笑む。

コシノヒロコ
コシノさんと八代目の付き合いは長く、神嵜屋宗兵衛商店の本店にはコシノさんが開店祝いに贈った絵が飾られている。

そんな昆布を始めとする海産物の加工品は、贈り物文化のなかでも発展してきた。神嵜屋宗兵衛商店の味もまた、手土産や贈り物として親しまれている。長唄三味線の名手でもあるコシノさんは、楽屋見舞いのお返しに選ぶこともあるそうだ。

「おたふくのパッケージがかわいくて、贈り物にもいいでしょう」とコシノさん。

「おたふく」のパッケージや「笹に小判」の瓶ラベルなど、縁起ものづくしのデザインは、コシノさんの友人でもある三木健デザイン事務所によるもの。モチーフは、八代目が蔵の整理をしていたときに見つけた神嵜屋の家宝がもとになっている。

神嵜屋宗兵衛商店の商品
鰹田麩と華こんぶのセットが人気。

これぞ、コシノさんがおすすめする芦屋のとっておき。

「大量生産しないと商売になりにくい今時ですけど、こだわって作られた本物を食べたいという人は多いと思うんですよ。そういうニーズのためにも、江戸時代から続く本物の味を受け継ぐ神嵜屋さんにはぜひ続けていただきたいですね」。

Information

神嵜屋宗兵衛商店
神嵜屋宗兵衛商店

大阪の老舗昆布店「神宗(かんそう)」の創業家の流れを汲む八代目店主・尾嵜宗兵衛氏が、2023年4月に芦屋で開業。名物の「鰹田麩」をはじめ、厳選された昆布と海産物を取り扱う。

住所:兵庫県芦屋市奥池南町1-35|地図
営:10:00〜16:00
休:不定休
TEL:0797-26-7580

※店舗は有料道路内にあります。お車で料金所を通行される場合は、別途通行料がかかります。徒歩の場合は、料金所横からそのままお越しいただけます。

Profile

コシノヒロコ
コシノヒロコ

1937年、大阪府岸和田生まれ。ブランド〈HIROKO KOSHINO〉や数多くのファッションアイテムを手がける一方、アーティストとしての絵画制作活動にも情熱を傾け、2013年には自身の作品発表の場として「KHギャラリー芦屋」をオープン。

今年2026年5月26日からは、半世紀以上のキャリアと多岐にわたる創作活動を同時代的な視点から捉え直す展覧会『(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO』が開催中。コシノが名誉館長となり伝統芸能からサブカルチャーまで、日本の文化を幅広く紹介するYouTubeチャンネル「日本のカルチャーMUSEUM」もスタート。

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