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連載

「食べ物と暮らす場所」をつくる
KYOCA FOOD LABO
「株式会社ウエダ本社」前編

貝印 × colocal
これからの「つくる」
vol.003

posted:2014.5.6  from:京都府京都市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。

伊勢谷友介さんがパーソナリティを、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。
http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

京都の新しい魅力、「市場」が注目されている。

京都のまちが生まれ変わろうとしている。
京都駅から北西の方角、梅小路公園、丹波口駅の周辺、下京区西部エリア。
このエリアは古くは平安京の入り口、朱雀大路と重なり、
忠臣蔵や新撰組など、歴史の舞台にも何度も登場した京都島原の遊郭跡の博物館があり、
暮らしが息づく商店街、社寺,大学,文化・観光施設など、
魅力あるさまざまな施設等が集積する地域である。
2年前に京都水族館ができ、2年後には鉄道博物館ができる予定もある。
新しい京都の観光スポットとして今後、注目されているエリアだ。

そんななかでも注目されているのは京都中央卸売市場第一市場。
全国からの食材が集まり、京都の食を支える「市場」である。
鮮魚・塩干・青果、京野菜を中心に小売業者や料亭の求めに応じ多種多様な食材が集まる。
東京において築地が日本を訪れた外国人にも注目される観光スポットであるように、
京都の「市場」も「食」を体験するワンダースポットに変わろうとしている。

京都青果合同の京果会館が複合型商業施設「KYOCA」へと変わる。

食べ物と暮らす場所 KYOCA。

その中心となるのが2014年7月にオープン予定のKYOCAだ。
京都中央卸売市場に隣接した京果会館がリノベーションされ、
食とデザインのラボラトリーとして生まれ変わろうとしている。

今回、新しい「京都」を「つくる人」として、
KYOCAの企画・運営をする株式会社ウエダ本社の岡村充泰社長にお話を伺った。
岡村社長は京都スタンダードを探求する「京都流議定書」のキーパーソン。
どんな「場」を目指しているのだろうか。

「“食とデザイン”をテーマに集い、学び、暮らせる場所をめざしています。
もともとKYOCAは、京都中央卸売市場第一市場に集まるすべての野菜・果物を扱う、
京都青果合同が持っていた古いビルのリノベーションから話がスタートしました。
通常、建築という意味でのリノベーションは
設計事務所と建築業者がいればできるのですが、
そうではなくて、いろんなひとが集まるとか、いろんなひとをつなぐ、
そういうことで価値を生み出していきたいという思いがあるんです」

京都で「事務機のウエダ」として知られる事務機器のディーラー、株式会社ウエダ本社の岡村充泰社長。京都スタンダードを探求する「京都流議定書」のキーパーソンである。

KYOCAには「食」に関する複合的な出会いの場を演出する仕掛けがある。
1Fには市場から届く新鮮な食材のレストラン、
2Fにはこだわりの専門店、3Fは、食や地域に関する学びの場として、
ワークショップやイベントで人が集い、出会いを紡いでいく場、情報発信をする場となる。
住居スペースでもある4~5Fでは食に関心のある人が
事務所や住まいにすることもできる。

「世界でもこういう『食』の複合スペースは例がないんじゃないかと思います。
そして、ビルができたあと、いろんなひとが出入りすることによって
ビルの価値が高まる、そんな仕掛けをしていきたい」

今から30、40年前、ニューヨークのSOHOにアーティストなどが住み始め、
そこからまちが変わった。
下町はトレンドスポットとなり、その流れはマンハッタンからブルックリンにまで至ったという。

「そんな流れをKYOCAから生み出したい」と岡村さんは語る。

赤い伏見唐辛子。

万願寺唐辛子。

中央卸売市場の新鮮な食材。

ウエダ本社の岡村社長に案内いただき、
中央卸売市場のタケノコのせりを見学させていただいた。
「場内」といわれる、業者のせりの現場だ。
ここには地元の旬の野菜をはじめ全国から集荷した青果物が集まる。
朝早くから、全国から集まった青果物と京都近郷のいわゆる「京野菜」などのせりが、
それぞれ別のせり場でおこなわれる。
いまの時期は朝堀りの「京タケノコ」のせりが熱い。

「朝堀りのタケノコは4月10日ころから1か月間のみ」
と、京都青果合同の京野菜マイスターの猪阪久夫さん。

「京タケノコ」は色白で非常にやわらかい。
刺身としてわさび醤油 で、若竹煮、てんぷら、木の芽和え、たけのこご飯など。
色が白いものが「白子」といって高い値がつき、
京都の料亭の懐石料理の最高の食材となる。

「土の質によっても品質は変わるのです。
粘土質、赤土、砂地でタケノコはそれぞれ変わってきます。
白子は100本ほど掘って、1本、2本しかでません。柔らかくて、好まれます。
胴の太ったもの、皮をむいたときに実がコロっとしてるものがいいですね。
通常のものが一箱2千円くらいだとすると、2万円を超えるものもあります」

この日は京都の近郷、物集女町、大原野、乙訓郡などからタケノコがきていた。

「タケノコの季節が終わると、春はこれからエンドウ豆、
山椒の実など旬の野菜が次々と顔を出し、
その後に、なすびやキュウリ、トマトなどが出てきます。
なすびやキュウリは1年中出回っていますが、
近郷のものは6月から8月にかけてが旬ですね」

「京野菜はもともと、それぞれの農家さんが個別に種をもっていました。
明治時代以前からあったものです。
それを「京野菜」ということで26年前にブランド化したわけです。
たとえば京市内でしかつくられてなかった水菜を丹波でつくったり、
安定的に供給するために、ハウスを建て産地づくりをしたんです」

せり人は大勢の買い手の指のサインを見定めて、一番高い値段を示した人を指名して物品を販売する。

せりの時、買い手が購入したい品物の値段を指で示す「手やり」。

九条葱は南区九条周辺でつくられていたため、この名前がついている。

旬のタケノコは大きさや質によって箱がわけられている。

せり落とされた「京タケノコ」は色白でやわらかい。

京都青果合同の調査室室長、湊二郎さん(左)と京野菜マイスターの猪阪久夫さん(右)。

京都の食文化の魅力。

京都の食文化の魅力について、再び岡村さんに伺った。

「京都の公立の小学校は恵まれていて、家庭科の実習などに、
名だたる料亭の料理人が料理を教えにいったりしているんですよ。
そういう文化が京都にはあります。
それは和食の味を子どものころからしっかり教えていくという、食育なんです」

昨年「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。
「和食」は伝統的な社会慣習として世代を越えて受け継がれていると評価されたのだ。
しかし「和食」の文化はこのままでは失われてしまう危険性があると岡村さんは語る。

「アメリカ人は歳をとっても和食にならないでしょ。
いま危機感があるのは、日本の子どもが、子どものころから
インスタント食品やジャンクフードばかり食べていて、
歳をとってから和食に戻れないということです」

日本人は30、40才と歳を重ねていくと、和食を好むようになる。
これは子どものころから「和食」で育った経験から来るのだという。
子どものころの経験があった上で、
歳をとるとそれが「おふくろの味」として蘇るのだそうだ。

「京都の食文化の凄みは、
たとえば老舗料亭『菊乃井』さんが
だし巻きのつくりかたを家庭科の実習で小学生に教えるというようなことを、
やってしまえる懐の深さがあることです」

そういう調理実習と呼応するような、文化を学ぶ座学の場所として、
KYOCAが機能することも考えたいという。

KYOCAの住居スペース。開放的な空間に大きなキッチンスペースが展開。食を仕事にするひとの居住空間。

店舗スペース。京都中央卸売市場に集まる野菜・果物を扱うテナントを募集している。

リノベーションされたKYOCA。「食べ物と暮らす場所」をコンセプトに、キッチンスペースを中心にした開放的な空間。

KYOCAから見えてくる「食」の未来ヴィジョン。

さらに岡村さんにKYOCAを通じて見えてくる
「食」の未来ヴィジョンをお聞きしてみた。

「日本の農産物の輸出額は4600億円くらい。
それに対してイタリアでも3兆円、ベトナムでも1兆円。
まだまだポテンシャルがあると思っています」

TPPを恐怖しているよりも、魅力ある競争力のある野菜をつくっていくことこそ大切なのだ。
そして日本の地域に対してもひとつのイメージがあるという。

「ここには全国からの野菜が集まります。そこにひとが集まる仕組みをつくりたい。
行政の方にも来ていただき、自分の地域の産品の発信基地にしていきたいと思っています。
この場所がコミュニティデザインの発信地になれる可能性があると考えています」

東京を経由するのではなく、地域のひとが地域の可能性をここで学び、
野菜を通じた地域おこしの学びのネットワークを構想しているという。

「野菜だけでなく、食に敏感な方が集まり、
地域の産品を使った地域おこしの学びの場になればいいと思っています。
地域未来大学をここでも開催していきたいと思っています。
東京では社会課題解決のためのプロジェクト、“issue+design”を開催しているのですが、
京都ではここから発信していきたいと考えています」
 
食を通じて、文化を学び、魅力をつくり、ひとが繋がる。
「食べ物と暮らす場所」をつくる。
そんな「これから」をつくるのが岡村さんの未来ヴィジョンなのだ。

次回は株式会社ウエダ本社がこれまで手がけたプロジェクトのお話、
「京都流議定書」のお話を伺います。

後編:【「京都流スタンダード」をつくる。「株式会社ウエダ本社」後編】はこちら

Information

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KYOCA

住所:京都府京都市下京区朱雀正会町1–1

TEL:075-257-1020

http://kyoca.jp/

株式会社ウエダ本社

http://www.ueda-h.co.jp/

京果 京都青果合同株式会社

http://www.kyoka.co.jp/

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