無農薬での米づくり、
雑草取りはこんなに大変!
効率のいいやり方は……?

自分でやってみて、あらためてわかったこと

津留崎さん一家が移住して始めた米づくりも4年目。
無農薬栽培なので、なんといっても雑草取りが大変。
これまで夫に頼っていたこの作業を、
今年は妻の徹花さんがメインですることに。
除草剤を使おうかと思うこともあったものの
苦労して草取りをするなかで感じたこととは。

米づくりと家のリフォームが同時期に、
さてどうする?

る日、隣町の歯医者に出かけると、
入り口で知人女性に偶然出会いました。
私の顔を見た彼女の第一声が、
「なんか……疲れてない? 大丈夫?」と。

その時期ちょっとしたトラブルがあったのと、
やらなきゃならないことが重なって少々しんどい状況でありました。
その諸々のうちのひとつが、田んぼの草取り。

わが家は米づくり4年目になります。
これまで手植え、手刈り、天日干し、さらに無農薬でやってきました
(大型台風上陸のため機械で刈って乾燥した年もありますが)。
ところが、今年は例年どおりにいかない事情があったのです。

南伊豆の田んぼ

以前この連載でもお伝えしたのですが、
わが家は下田に古民家を購入しました。
夫はもともと建築業界で長く仕事をしてきたので、
設計から発注、解体や大工仕事まで自分でやろうと決めました。

けれど、家のリノベーションと米づくりの時期が重なるのは明白。
「米づくりを今年は断念しようか……」と呟く夫に
「そんな人だと思わなかった!」と喝を入れる娘。
それほど、娘にとって米づくりは大事な行事になっていたのです。

津留崎家の稲刈りの様子

娘さんも稲刈りをお手伝い

娘の言葉に奮い立った夫、米づくりはやろう! と決意。
けれど、一番手間隙のかかる草取りの作業をどうしようか。
農薬を使わないと田んぼに雑草が生えます。
雑草が生えると稲に栄養がいかなくなったり、
害虫のすみかとなり病気が発生したりするので
除去する必要があるのです。

その草取り作業はこれまで、夫がほとんどひとりで
やってくれていました(ときどき私と娘、友人が手伝う程度で)。
けれど、夫が仕事と家のリノベと並行してやるのは無理があります。
ならば私ひとりでできるか? というと、
体力的にそれも厳しいだろうと……。

そこで今年は除草剤を使おうという方向に向いたのですが、
なんだか心の奥がモヤモヤする。
使用するにしても少量だし、体に影響するとも思っていないのですが、
これまで無農薬でやってきたのになんだかもったいなくて
決心できずにいたのです。

床下の補強工事

もともと大広間だった部屋を改装している夫、まずは床下の補強工事から。こんなことまで夫ができるなんて、妻はいままで知りませんでした。

朝露のついた青々とした稲

[ff_assignvar name="nexttext" value="稲とそっくりの雑草が……"]
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友人たちの助けを借りて、作業開始

そんなある日、友人が
「米づくりのこと知りたいから、なんでも手伝うよ」
と声をかけてくれました。
私ひとりでは無理だけれど、彼女の手を借りたら
無農薬でもできるのかもしれない……?

夫にそのことを相談してみると、
「やってみたら、がんばればできると思うよ」と。
友人にもわが家の事情を話し、日々の作業を一緒にやってもらえないか
相談すると、快く引き受けてくれました。

田植え作業

ということで、今年も例年通りの無農薬栽培での米づくりがスタート。
ところが、これがなかなかに厳しい道のりだったのです。
もちろん草取りが大変なのもわかっていたし、
自分たちの食べるお米なのだから
シノゴの言わずに向き合うのが当たり前。
なのですが、雑草の猛威は私の想像をはるかに超えていたのです。

田植え後の稲

田植え後の稲、風を受けそよそよと。

無事に田植えを終え、
「すくすく育ってくれよ~」と願いながら日々見守ります。
1週間2週間と経過するうちに稲もどんどん伸びていき、
と同時にやってきました雑草天国。

まず目立ち始めたのは小さなヒエです。
ここには稲を植えてないだろう、という場所から
チョンチョン稲によく似たヒエが生え始め、手で抜いていきます。
と同時に、畔に生えている水草のようなものが
どんどん田んぼに侵食していく。それを根っこから抜いていきます。

畔にはえた水草を抜く

畔にはえている水草を抜いている友人。根っこがかなり強く、そうとう力を入れないと抜けない。ひとりじゃできなかった……本当にありがとう。

田んぼの中のヒエを抜く

ヒエ

稲によくにたヒエ。はじめはなかなか見分けがつかないのですが、目がなれてくるとわかるように。

と、ここまではわりとスムーズだったのですが、
そのタイミングで目立ち始めたのがコナギです。

最初は小くてさほど気にしていなかったのですが、
日を追うごとに大きく育ち、密度がどんどん濃くなっていく。
「これは……まずい……」と、
想像以上のコナギ天国(地獄か?)に焦る……。

コナギがこのまま猛威を振るうと栄養を取られてしまう。
病気にかかるリスクも増えるし、
根っこが弱ったら台風に耐えられないかもしれない……
とネガティブな想像が脳裏に浮かぶのです。

ヒエ取りは友人とふたりでやっていたのですが、
それでは間に合わないということで、
別の友人たちにも声をかけて手伝ってもらうことにしました。

複数人でヒエを抜く

[ff_assignvar name="nexttext" value="“中干し”しながら除草はうまくいく…?"]
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想像をはるかに超えた雑草との戦い

その頃コナギが目立っていたのは、田んぼのおよそ半分くらいの範囲。
友人たちのおかげでおおよそ除去され、
あとは私だけでもなんとかなりそう! とひと安心。

したのも束の間、「あれ? ここには生えてなかったよね……?」
という場所にもしだいに現れ始め、一面がコナギで覆われていく……。
そうか……タイミングに差があっただけで、
最終的には田んぼ全体に生えるということだったのか……
という状況にまた焦るのです。

コナギ

稲の根元にみっちり生えているのがコナギ。

焦るのには理由があり、中干しをする時期が迫ってきたからなのです。
中干しというのは田んぼの水を抜いて表面を乾かす作業なのですが、
それによって溜まっているメタンガスを排除して土に酸素を取り入れ、
稲の根っこをよりしっかり張らせます。
もうその時期がやってくるというのに、
コナギと決着がつかないどころか、どんどん増えていくー!

夫と相談し、ひとまず中干しをスタートさせて
同時に除草を続けてみようということになりました。

中干し中の田んぼ

中干しをしている田んぼ。こうしてしだいにヒビが割れてきます。乾燥しすぎると根っこが切れてしまうそうで、様子を見ながら慎重に行う必要があります。

再び、複数の友人たちの手を借りて作業をしました。
ところがです、かたくなり始めた田んぼでは
足がハマって抜けないうえに、コナギを根っこから抜こうとすると
土ごとついてきてしまい、かなりの難儀。

それでも友人たちががんばってくれたおかげで
かなりはかどったのですが、まだまだ残っているコナギを抜くには
この田んぼの状態では厳しい。
そして、コナギと共に土が持っていかれることによって
稲の根っこが弱ってしまいそうで不安、というのもあります。

たまたまその日、隣の田んぼの方
(いつもいろいろ教えていただいています)を見かけたので
相談してみると、水が入っていない状態で草取りはやはり厳しいと。
一度水を戻して草取りをやって、
それからまた中干しをすればいいとのアドバイス。

「昔は除草剤なんてものなかったから、君たちみたいに
田んぼに入ってみんなで草取りしたもんだよ~」と。
昔を思い出しているような柔らかい表情を浮かべて
「がんばって」とエールを送ってくれました。

みっしり生えたコナギ

中干し中の田んぼ、中央にみっしり見えるのがコナギ。

[ff_assignvar name="nexttext" value="便利な草取り道具登場!"]
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新たな道具と、田んぼのチカラ

翌日から再び水を戻しコナギと向き合います。
中腰の姿勢で作業を続けると、
翌日から筋肉痛と腰痛で体がしんどくなる。
何かいい道具がないものか? と、近所のホームセンターを物色。

そこで購入した道具を試しに使ってみると、
体がラクなうえに作業がはかどる!
手で取るよりも大雑把にはなりますが、
広範囲をスピーディーにやるにはもってこい。

道具を使ってコナギを一掃

遠いところまで手がのびるのと、何しろ中腰にならなくてすむので体への負担が少ない。

水草とれ太ビッグ

ネットで購入した〈水草とれ太ビッグ〉(左)と、近所のコメリで購入した道具(右・名称不明)。右のほうが先端が小さいので土に深く入り込み、根っこから抜くには重宝しました。

日本野鳥の会・バードウォッチング長靴とスゲ傘

こちらの長靴(日本野鳥の会・バードウォッチング長靴)とスゲ傘もとても重宝します。長靴は抜群のホールド感があり、泥の中でも脱げにくい、大のおすすめ。スゲ傘は帽子よりも涼しくむれないのでとても快適です。

道具を使って抜いたコナギを1か所にまとめておき、
溜まったら田んぼの外に運び出します。
そのまま田んぼに置いておくと、
腐敗して周辺の稲が明らかに弱っていくのです。

さらに、根っこから抜いたのにまた土に着地して生え始める、
なんと生命力の強い……。

この作業、もともと農作業している女性なら
なんてことないのかもしれないのですが、
私にはなかなかしんどい(しんどいとばかり言っている軟弱さ……)。
根っこに水分を含んだコナギは重く、一度に運べる量も限られるので
畔と田んぼを何度も往復する必要があります。

そこで友人たちと思いついたのはバケツリレー。
これはナイスアイデア! という感じだったのですが、
ひとりで作業しているときはリレーできないわけで。
ソリのようなもので運ぶとか何か方法がないかと考えたのですが、
そうしているうちにどんどんコナギの範囲が広がっていく~。

抜いたコナギを運ぶ

バケツいっぱいのコナギを運んでいる友人。これが重くてきついー!

鍋に入れたコナギ

「こんなにたくさん生えてるなら、食べられたらいいのにね」という私の言葉に、夫「食べられるらしいよ」。ということで食べてみましたコナギ。さっと茹でて氷水で冷やし、水気を絞っておひたしにしてみました。

コナギのおひたし

お味は……「ただの草」という感じでクセがないのですが、コナギと日々向き合いすぎていて、口に含むと田んぼの土を食べているような感覚になってしまう。「食べるものに困ったら食べられる、ってことがわかってよかったね」と夫。たしかに。

男性の友人が手伝いにきてくれたとき、
女性陣が抜いたコナギを彼がカゴいっぱいに入れて
畔へと運び出してくれました。そのときの作業のスムーズだったこと。

つまり、ここにおいては男性の力を借りるのが一番の近道かもしれない。
そこでリノベ中の夫にSOS。
朝、私がコナギを抜いて山にしておく、
それを夕方、夫が運び出すという方法を数日間試してみました。

これがかなり効率がよく、最後にもう一度だけ作業して
コナギとの戦いを終わりにしようというところまで行き着きました。

山から差し込む朝日

早朝田んぼにいくとこんな景色が。清々しい~。

おにぎり

田んぼについたらまずは腹ごしらえ。この田んぼでとれたお米で握ったおにぎり。

背負子でコナギを搬

夕方、背負子でコナギを搬出する夫。友人が「男って田んぼの力って書くでしょ、男の人とは力が違うんだから」と。それぞれの性質を生かすことで暮らしはスムーズになるのかもしれない。

田んぼに置いた背負子

日がくれた田んぼ

コナギ決戦最後の日。この日も友人たちが日が暮れるまで作業を手伝ってくれました。男性の筋力もさることながら、女性の根気、粘り強さの美しさというのか、感動。

[ff_assignvar name="nexttext" value="雑草との戦いで感じたこと"]
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無農薬栽培だからこそ得られたもの

草取り作業をしていると、近隣の田んぼの方が
「がんばってるね~」と声をかけてくれたり、
「農薬使えばいいのに~」というアドバイスも。

「目をつぶるとコナギが見える……」
というくらい追い詰められていた時期は、
「あぁ、農薬使ったらどんなにラクなんだろうか……」
と妄想した瞬間もありました。

けれど、やっぱり無農薬でやってよかったと心底感じています
(まだこれから先は長いですが)。
それによって得られたものがたくさんあったのです。

稲穂

そもそも夫に任せきりだったことを自分が体験してみて、
その苦労を初めて知りました(気づくの遅い愚妻でございます)。
夫に対して尊敬の念と感謝の気持ちがわいています。
見ているだけではモノゴトはわからない、
自分の体を動かして汗水流さないと理解できないんだな~と、
あらためて感じています。

測溝を掘る

中干しする際、測溝を掘る夫。こういうのも女性にはやはりきついので(私が軟弱なだけか?)夫にSOS。

夫婦二人で作業中

この日は夕方にふたりで作業。娘が写真を撮影してくれました。

さらに、昔は機械もなくてもっと大変だったはずで。
地域の人たちと助け合いながら自分たちが食べるお米を
つくっていたのか~、なんてイメージがわくのです。
私たちが友人たちの手を借りてみんなでお米をつくっていることは、
その昔に通じる部分があります。

「自分たちの食べるお米なんだから、
自分たちでなんとかすればいいのに」と思う方もいると思いますが、
こうして友人たちに甘えながら楽しい時間を共有できることは、
かけがえのないものです。

田んぼだからお互いの悩みを話せたり
(私がみんなに相談しているばかりですが)、
あの環境で同じ作業をしているからこそ得られる安心感があったり
(本当にありがとう! 私ができることは手伝います!)。

お手伝い中の友人

コナギに圧制され不安になっている私に、友人が「楽しもう」とやさしく声をかけてくれる。田んぼ作業を通じて、友人から本当にたくさんのことを学ばせてもらっています。

お茶休憩

毎回、こんな風に作業の合間にみんなでお茶をするのが楽しい。

おやつのところてんとクッキー

この日は友人が持参してくれたところてん(友人の友だちがつくった自家製だそう。下田では突き出すよりも角切りにすることが多いようです)と、私が焼いた米糠クッキーをお茶のおともに。

これから先、ヒエとの決戦が再び始まります。
友人たちの手を借りながら、田んぼの力=男の力を頼りながら、
柔軟に米づくりを楽しめたらと思います。

苦労したぶん、収穫したお米はさぞかしおいしいでしょう。
みんなで食べられるその日を楽しみに。

土鍋で炊いたご飯

今年も無事に収穫できますように。

すくすく育つ稲

text & photograph

津留崎徹花 Tetsuka Tsurusaki
つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。移住先を探した末、伊豆下田で家族3人で暮らし始める。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。

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