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writer profile
Mao Yoshida
吉田真緒
よしだ・まお●東京都出身。育ったのは自然豊かな奥多摩町。編集制作会社勤務を経て2012年に独立。まちづくりやコミュニティ、ライフスタイルをメインテーマに、取材・執筆をしている。転勤族の夫の都合で2020年に南仏へ移住、2022年に青森県へ移住。次はどこに住むのかわからぬ旅がらす。
青森県八戸市の中心街に古本屋〈ジェロニモ〉がオープンしました。
八戸市は2014年から「本のまち八戸」をスローガンに、
公共施設として〈八戸ブックセンター〉を運営するなど、
市民が暮らしのなかで本に触れる機会を増やしてきました。
本を扱う〈ジェロニモ〉は、八戸市らしい店といえるでしょう。
ジェロニモというのは、実在したネイティブアメリカンの戦士の呼び名です。
彼はアメリカ大陸に進出する白人に抵抗し、最後まで勇敢に戦ったことで知られています。
全国の本屋の数は、ここ20年間で20880店舗から10918店舗と
およそ半数に減っています(出版科学研究所調べ)。
そうしたなか、古本とはいえあえて本屋を始めるには、ジェロニモのような勇気が必要。
そう感じた店主の本村春介さんが、自らを鼓舞する意味もこめて店名にしたといいます。
「たくさんの人に来てほしいから」と、本のジャンルは幅広く揃えており、
カウンターでドリンクも提供しています。うれしいことにお酒も飲めます。
ドリンク片手に店内をブラブラし、椅子に座って試し読みもできるため、
居心地よくて長居してしまいそう。
立地は、八戸市の中心街の真ん中にあるビルの3階です。
「いい場所にあるでしょ。1本隣の道は飲み屋街だし、横丁も近い。
だから、0次会にも使ってほしいですね。『飲み会までまだ時間あるな』ってときに、
ここで1杯飲んだり本を読んだりして、時間をつぶすとちょうどいいと思います」
〈ジェロニモ〉の営業時間は13:00から19:00と、店が閉まる頃には
飲み会もスタートするタイミング。待ち合わせ場所にもぴったりです。
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ジェロニモには、2018年にオープンした〈アンドブックス〉という姉妹店があります。
それまで八戸市でサラリーマンをしていた本村さんが、
脱サラをしてまちの一角で始めたブックバーです。
〈アンドブックス〉の営業時間は19:00過ぎから0:00まで。
店内の本は売り物ですが、自由に手にとってよく、
1日の終わりにゆっくりと読書ができる隠れ家的な空間です。
お酒は、50種類近くの銘柄を揃えるスコッチウィスキーが自慢。
ウィスキーに詳しくなくても、カウンターに立つ本村さんのオススメから、
お気に入りを見つけるお客さんも多いとか。
〈アンドブックス〉のお客さんは、男女問わず一人で来店することがほとんどですが、
みんな本という共通の興味があるため、店で知り合って友達になることもよくあるそう。
「近しい感覚を持っている人が集まるから、仲よくなりやすいんです。
私も気が合いそうな人には水を向けるようにしています」と本村さん。
〈ジェロニモ〉の最初のお客さんは、アンドブックスの常連さんだったといいます。
また、〈ジェロニモ〉ドリンクメニューは、
種類は減るものの〈アンドブックス〉と同じものを提供しており、
〈アンドブックス〉で人気の高いスコッチウィスキーの銘柄も揃えています。
本村さんが〈アンドブックス〉を始めた理由は、「本も、お酒も好きだったから」。
オープン当初は本の販売はしておらず、自分が持っているものを並べていただけでしたが、
買い足したり、お客さんから引き取ったりするうちに量が増え、
数年後には「ブックバー」から「ブックセラーバー」と名乗るようになったそう。
「本」の「村」という苗字の通り(?)、それからも本村さんのもとには本が集まり続け、
とある決定的な出来事によって、〈ジェロニモ〉の開店に至ったといいます。
「以前『遊歩堂』という古本屋がまちの中心部にあって、よく行っていたんですが、
何年か前に店主が亡くなって、閉店してしまいました。残された蔵書がすごい量で、
しばらくして関係者から引き取ってほしいと連絡があったんです。
うれしい話なので、段ボールに入れてもらってきたんですが、置き場所がない。
それで、これは古本屋をやろう、こんなに本があるんだからやろう、と決めました」
本村さんは八戸市のことを、冗談半分で「カルチャーが死んだまち」と話します。
「八戸には市営の美術館や本屋はあるけれど、
じつは民間の古本屋やレコード屋、古着屋、純喫茶などのカルチャー系の店が、
ほとんどないんです。去年も、八戸唯一の映画館が閉館してしまいました。
そういう意味でも、私がここに古本屋をつくった。後は誰かやってくれ(笑)。
カルチャーがないまちは、住んでいておもしろくないからね」
本や映画、音楽、漫画・・・どれもネットで楽しめる時代ですが、
実店舗に足を運ぶことで、ネット検索では得られない出会いがあり、
誰かとカルチャーを分かち合う体験ができるもの。
そうしたことの積み重ねが、暮らしを豊かにしていくはずです。
これから〈ジェロニモ〉で、どんな出会いや体験が繰り広げられるのか楽しみです。
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