京都の伝統工芸や伝統芸能に光を当て、新たな動きを起こしている〈GO ON(ゴオン)〉。
まずは〈Japan Handmade〉というプロジェクトを起こし、
西陣織の〈細尾〉、竹工芸の〈公長齋小菅〉、木工芸の〈中川木工芸〉、
茶筒の〈開化堂〉、金網工芸の〈金網つじ〉、茶陶の〈朝日焼〉の、
若手後継者たちで海外向けに商品開発し、成功を収めた。
それでもプロデューサーの各務(かがみ)亮さんは、まだまだ先を見据える。
「確かな手応えは感じていますが、それで50年後、100年後、
京都に伝統工芸がきちんと残るのに十分かといえば、そうとも言えません。
そこで〈Beyond KYOTO〉というサービスも開始しました。
さきほどの6社は、毎年のようにミラノに行ったり、パリに行っています。
しかし、行くよりも来てもらったほうが、
もっと踏み込んだ京都や、いろいろな京都に巻き込めるのではないかと思ったんです」
簡単に言うと、観光コンシェルジュ。
京都には約3,600社の工芸会社があるというが、「見学できる工房が少ない」というのだ。
Beyond KYOTOでは、
GO ONメンバー自らの工房を見てもらうことはもちろん、
京都で活動している人たちだからこそできるおもてなしで迎える。
「工房などを見てもらいながら、文化的背景もお伝えしたいと思っています。
たとえば西陣織も、お茶やお花、そしてお寺などの文化と連携して案内すれば、
西陣織がどう使われ、育まれたのかなど、より深い魅力を感じていただけると思います」
これまで海外の文化人やセレブリティなども訪れているという。
彼らに工房を案内すると「道具の使い方が美しい」など、
自分たちでは気がつかないような視点も教えてくれて勉強になることもある。
しかしもっとも重要なのは、やはり人間関係だ。
「彼らにとって、京都人とつながりができることが一番ではないかと思います。
京都で何百年と築かれてきた伝統文化の後継者たちと、友だちになれるんですから」
そこで得たものや築いた関係性は、“京都を越えて”いく。
これは京都を踏み台にしているということではなく、
革新こそが伝統を守るとGO ONは信じているのだ。こうして京都の文化が拡張していく。

GO ONのほか、京都でさまざまな仕掛けを試みる各務 亮さん。
GO ONでは、さまざまな取り組みをしながら、
伝統をどう未来へつなげるかということに挑戦している。
その思いを理解してもらって、同じ未来を見据える仲間を増やすことが、
これからのGO ONのミッションといえる。
そこで〈Beyond KYOTO〉体験版として、
各務さんに京都の若手の仲間たちを紹介してもらった。
より大きな枠組みでとらえたイベントが〈太秦江戸酒場〉。
太秦映画村のセットで時代劇のなかに迷い込み、京都の伝統工芸・芸能を体感できる催し。
昨年秋に3回目が開催された。
〈いづう〉や〈中村楼〉といった老舗食事処のほか、
京都の24の酒蔵の日本酒が楽しめたり、
東映の役者が営む浪人BAR、新選組BAR、丁半BARなどもある。
もちろん伝統工芸の職人たちが教えてくれるワークショップや展示も。
京都のさまざまな伝統文化を、
タイムスリップして楽しめるエンターテイメントパークとなっている。

時代劇が、目の前で、ライヴで行われる。写真提供:太秦江戸酒場
〈太秦江戸酒場〉内では、
〈京・焼・今・展2015〉と〈RIMPA400 Project〉の展示も行われた。
このふたつも、各務さんがプロデュースを手がけた。
〈京・焼・今・展2015〉は、毎年異なるテーマで、京焼の“いま”を伝えていくものだ。
昨年のテーマは“琳派”。ユニークなのはその会場で、〈建仁寺山内 両足院〉で行われた。
6人の作家が両足院のひと部屋ずつを使って、
自らの世界をつくっていくインスタレーションだ。
副住職の伊藤東凌さんもキュレーターのひとりとして名を連ねている。
「かつてお寺も一緒に“その当時の現代アート”に取り組んできたら、
それがいま、伝統と呼ばれるものになっているのです。当時は挑戦だったわけです。
千利休にしても、世阿弥にしても、アバンギャルドですよね。
きっと批判も大きかったことでしょう。
いまというものの捉え方によって、表現方法や伝え方は変わっていかないといけませんね。
昔からの伝統行事をそのまま引き継ぐだけではなく、
いまから新しい行事が生まれていって、
それが未来には伝統になっているとすごくすてきなことだと思います」と言う伊藤東凌さん。
“いまは”伝統であっても、“かつては”伝統ではない。
だから結局、いまを一生懸命やる以外にない。
「これは目新しいことではありません。
本来、お寺は、学校や美術館のような、学びの場としても機能していたのです。
いまそれらはほかで満たされているので、
それならばお寺ならではの学び方もできるのではないかと考えています。
それは、はっきりとした答えを出すことではなく、“良質な問い”を出し続けること。
京焼とは何か? 琳派とは何か? 答えは出ないわけです。
ただし、そこに問いがあることによって、自分たちの才能がぶつかり、発揮できる。
お寺はその受け皿としてもあるべきです」(伊藤東凌さん)

〈両足院〉副住職の伊藤東凌さん。

凛とした空気のなかで、坐禅体験も行っている。