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posted:2015.5.15 from:全国 genre:食・グルメ
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
2014年夏にヨーロッパの放送局「ARTE」で放送され、
フランス・ドイツで反響を呼んだ映画「千年の一滴 だし しょうゆ」。
これは、ドキュメンタリー映像作家の柴田昌平さんが
NHKスペシャル「和食」(2013)をベースに、
フランス人プロデューサーをはじめとする
海外スタッフと共につくり上げた映画。
この映像がいま、各地で深い感動を呼んでいます。
第1章のテーマは、和食の「うまみ」をひき出す「だし」。
漁師さんや農家、禅寺、料亭、科学者を追い、
「だし」をめぐる自然と人のいとなみ、そして日本人の知恵を描きます。
第2章のテーマは「しょうゆ」。
しょうゆや酒、味噌の醗酵に重要な役割を果たしている
カビ「アスペルギルス・オリゼ」にフォーカスをあて、
ミクロの世界から、製造工程、歴史まで、
おどろきの世界を見せてくれます。
日本には、千年ほど前から「アスペルギルス・オリゼ」を
培養し、カビの種をつくる種麹屋(たねこうじや)という商売があったそう。
この映画には江戸時代からオリゼをあつかう
種麹屋「菱六」の主人、助野彰彦さんも登場します。
いってみれば種麹屋は“世界最古のバイオビジネス”。
日本食の歴史ってすごい!
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監督は、NHKスペシャル「クニ子おばばと不思議の森」などで
多数の賞を受賞しているドキュメンタリー映像作家、柴田昌平さん。
柴田さんは「クニ子おばばと不思議の森」の撮影がきっかけで
宮崎県の焼畑農家を訪れ、生態系の循環の主役である
きのこに魅せられているうちに
「だし」というテーマと出会ったそう。
「自然と向き合う叡智が結集したともいえる食を、
私たちはどれだけ知っているだろうか。
どれだけ大切にしているだろうか。
“だし”や“しょうゆ”などを製造する
小さな工房の灯火がつぎつぎと消えている今、
この映画を通して、千年にわたって凝縮されてきた
叡智の一滴を味わい、再確認していただけたら」と監督は語ります。
本編には、焼畑農家の椎葉クニ子さんをはじめ、
鹿児島県「今給黎鰹節店」のかつお節作り職人、今給黎秀作さん、
京都「澤井醤油本店」5代目、澤井久晃さん、
京都にある料亭「祇園 川上」の主人、加藤宏幸さんなど、
日本人の知恵を受け継ぐ、すばらしい技術を持った人がたくさん登場します。
ところがこの映画に登場する職人さんや工房はいま、
食をとりまく環境の変化にともない、
昔ながらの方法で製造を続けることが困難になってきているそう。
そんな時だからこそ、貴重な日本の食について、もっと知ってみたい。
「千年の一滴 だし しょうゆ」は、全国の映画館などで上映中。
上映予定はこちらから。
また、上映を希望する団体や一般の方が主催者となり、
この映画の上映会を開くことができます。
くわしくは、柴田監督が代表をつとめるプロダクション・エイシアまで。
「千年の一滴 だし しょうゆ」は昨年、
キネマ旬報ベスト・テンの2位(文化映画部門)に入り、ATP賞 総務大臣賞を受賞。
今年に入ってからは第6回 辻静雄食文化賞に選ばれました。
今後はイタリア、ポーランド、スロベニア、タイでの放送も決まっているそうです。
ご興味のある方はぜひチェックを!
映画「千年の一滴 だし しょうゆ」(2014年 日本・フランス)
制作・著作 : プロダクション・エイシア、NHK、Point du Jour、ARTE France
出演:加藤宏幸、藤本ユリ、三浦利勝、今給黎秀作、坪川民主、椎葉クニ子、伏木亨
澤井久晃、大野考俊、助野彰彦、福知太郎、北本勝ひこ
語り:木村多江(「だし」)奥貫 薫 (「しょうゆ」)
監督:柴田昌平
撮影:春日井康夫
助監督:松井 至
音楽:Dan Parry
プロデューサー:大兼久由美、牧野望、伊藤純、Luc Martin-Gousset、Catherine Alvaresse
助成:フランス映画・映像センター(CNC)
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