子どもたちの「こんなかばんがあったらいいな」を叶える。「豊岡鞄®」が挑む、夢のかばんプロジェクト
合格率約5割。厳格な審査が支える高品質なかばん
日本一のかばんの生産地、兵庫県豊岡市。生産量・出荷額・従業員数のすべてで国内トップを誇るこの街から生まれた地域ブランドが「豊岡鞄®」だ。
このブランドがうまれた背景には、約1200年にわたるものづくりの歴史がある。ルーツは奈良時代の蓋付きの箱や籠「柳行李(やなぎごうり)」。柳の枝を編んでつくる収納具は、軽くて丈夫で、湿気にも強い。その実用性の高さから全国へと広まり、豊岡にものづくりの基盤を築いていった。
時代が進み、戦後になると豊岡のかばん産業は市外の有名ブランドから製造を請け負うOEM生産を中心に発展する。全国のブランドを支える産地として成長する一方で、その技術力の高さとは裏腹に、「豊岡」という名前そのものは表に出る機会が少なかった。確かな技術を持ちながらも、その価値が産地としての認知や評価に十分結びついていなかったのだ。
この状況を変えるために生まれたのが、2006年に地域団体商標として認定された「豊岡鞄®」である。
豊岡市で作られたかばんのすべてが「豊岡鞄®」を名乗れるわけではない。兵庫県鞄工業組合が定める厳しい基準を満たした企業が製造し、さらに審査会で合格した製品だけがその名を冠することが許される。

2ヶ月に1回開かれる審査会の合格率は約5割。「素材」や「縫製」「仕様」「接着」など7項目の基準に照らし合わせながら、新作が「豊岡鞄®」の名にふさわしいかを厳しくチェックする。この厳しい審査が「豊岡鞄®」の質を担保しているのだ。
現在、認定企業は全部で20社以上。そのうちの1社で帆布バッグブランド「直帆布」を手がけた〈株式会社ナオト〉の宮下さんによると、「各社はライバルでありながら、豊岡鞄®という地域ブランドを守る仲間」なのだ。

子どもの“こんなかばんがほしい”を、職人の手で形に
こうして厳しい品質基準のもとでブランド価値を守り続けてきた「豊岡鞄®」。一方で、どれほど優れた技術も受け継がれなければ未来には残らない。今、豊岡のものづくりに必要だったのは、品質を守るだけでなく、次の世代がその魅力に出会うきっかけをつくることだった。
その挑戦として始まったのが、2024年にスタートした「豊岡鞄®とつくる 夢のかばんProject」である。

「こんなかばんがあったらいいな」
子どもたちが自由な発想で描いた“夢のかばん”を、豊岡鞄®の職人たちが本気で形にするこのプロジェクト。全国から寄せられたデザイン案のなかから選ばれたアイデアが、実際のかばんとして生み出される。
常識にとらわれない子どもたちのアイデアに、職人たちはどう向き合うのか。そこには、普段のかばんづくりでは出会わない難しさと、ものづくりの原点に立ち返るような発見があったという。
昨年、「アオスジアゲハのかばん」の製作を担当したのは、〈株式会社足立〉の西垣祐香さんだ。

「『左右の羽をパタパタと閉じられるようにしたい』『羽の形は上下の境目が分かるようにしたい』『模様の色は少しずつ変化させたい』と、具体的な希望がありました。考えが形になるのをすごく楽しみにしてくれていると感じたので、いかに本物の蝶のようにできるかにこだわりました」
製作過程で西垣さんは、デザイン考案者である8歳のしおりさんとのすり合わせを大切にしたという。
「蝶の形をそのままかばんにすると物の出し入れがしにくくなるため、かばんの構造や使いやすさのために必要なポイントを説明して、納得してもらいながら進めました。ショルダーの部分は幼虫をイメージしてデザインしたと教えてくれたので、かわいらしさもありながら幼虫らしくなるように、紐を編んで作りました」

生き物の繊細な造形を再現する職人がいる一方で、食べ物の質感というまったく異なる難題に挑んだ職人もいる。
「豊岡鞄®」認定企業〈株式会社由利〉の由利歌奈子さんは昨年、パンそっくりな「夢のかばん」を製作した。

「デザイン画を見た瞬間に、形にするためのアイデアがいくつも浮かび、この案を担当したいと思いました。特に難しかったのは、パンの質感や丸みをかばんに落とし込むこと。お皿を使って型を作り、濡らした革を引っ張りながら貼り付けて乾燥させる。この工程を何度も繰り返し、試行錯誤を重ねながらパンらしい理想のフォルムを追求しました」
由利歌奈子さんは入社1年目からこのプロジェクトに参加し、今年で3度目の挑戦となる。
「若手が挑戦することで、かばんづくりの技術のみならず『どうしたら喜んでもらえるか』に向き合えるのがこのプロジェクトのいいところ。お子さんから率直なリアクションをもらえるからこそ、私たち職人も、ものづくりの奥深さに触れる機会になると思っています」
子どもたちが応募用紙いっぱいに描いた「夢のかばん」のイラストと、そんな夢のアイデアを形にする「豊岡鞄®」の職人たちの思い、そして完成したユニークなかばんからは豊岡がさらなる発展を遂げる未来が感じられる。
まちを輝かせるのは、いつだって人の思いなのだろう。毎日手にするかばんがどんなものだったら嬉しいか。使う人が欲しいものをどうやって生み出すか。「夢のかばんProject」を通してそんな原点に立ち返りながらものづくりを続ける「豊岡鞄®」の取り組みに、今後も注目したい。
Information
2024年にスタートし、今年で3回目を迎える「豊岡鞄®とつくる 夢のかばんProject」。今年も子どもたちが描いた「夢のかばん」が、豊岡鞄®の職人たちの手によって形になる。
応募期間:2026年7月15日(水)まで
応募対象:18歳以下(保護者による代理投稿可。当選時に年齢確認あり)
※応募方法や応募規約などの詳細は公式サイトを確認。
Information
商品は、豊岡市のカバンストリートにあるセレクトショップ「Toyooka KABAN Artisan Avenue」のほか、KITTE丸の内店、KITTE大阪店、伊丹空港ゲート店、全国の取扱店舗で購入可能である。国内有数の鞄産地として培われてきた技術と品質を、実際に手に取って確かめることができる。