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連載

西粟倉村・木工房ようび
Part2 : 百年の森から生まれた、檜の家具。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.032

posted:2013.12.24  from:岡山県英田郡西粟倉村  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
伊勢谷友介さんがパーソナリティをつとめ、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。
http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ●フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

檜(ひのき)の家具をつくる

「檜ってほぼ日本にしかはえていないんです」

と「木工房ようび」代表の大島 正幸さん。
檜の家具をつくるために西粟倉村に5年前にやってきた。

檜は日本の鹿児島から福島の間で生育する針葉樹。
海外では台湾にもあるが、日本とは種類が違う。

世界最古の木造建物である法隆寺は檜。
建材として最高品質のものとされる。
しかし意外にも檜の家具はほとんど存在しないのだという。

「家具は接合部に強度をもたせなければならないので、
家具と建物は似て否なるものなんです。
建物は自身の重みで建物を支えている。
素材は同じだが、つくり方はまったく違う」

インテリア家具の技術をそのまま檜にあてはめても強度が保てない。
素材と技術がミスマッチしている。

「ならば、檜の材を徹底的に研究し、
檜の家具を製品化したい」
と、大島さんは考えた。

西粟倉村・百年の森林構想。西粟倉村で50年育った木を、50年先の未来へつなぐ。

「森に惚れた」それが起業の理由。

西粟倉村に来る前は、岐阜県の家具会社にいた。
しかし檜の家具をつくりたいというと、ダメだといわれた。
独立して檜の家具をつくるというと、
70人いた社員のほとんどが無理だと反対した。

それでも大島さんは家具会社を辞めた。
社長に理由を聞かれ、こう答えたという

「この森が好きになってしまったんです」

50年かけて、50年先の森をつくるという
西粟倉村・百年の森林構想」に出会い、
そのプロジェクトの可能性に自分の未来をかけようと考えたという。

「いい家具をつくって、ふりむいたらいい風景がある。
そんな環境で仕事をしたい」

西粟倉村・森の学校のカフェにも木工房ようびの家具が置かれている。

2009年の1月、飛騨高山の家具会社を辞め、西粟倉村に単身やってきた。
西粟倉村の50年かけて育てた森を、50年後につなぐというプロジェクト。
そのための家具をつくるのが自分の仕事だと考えた。

「日本の歴史において、檜がこんなに生えてるのって歴史上初めて。
50年前に日本中に数多くの檜と杉が植えられたんです。
当時はこの村でも立派な檜を2本切ると家が建つといわれた。
だから貯金のようなものだったんです。
子どもの世代に財産として残す木を植えた」

しかし皆が植えたら価格は下がる。
ピークは昭和55年。
そこから価格は下がりはじめる。
誰も使わなくなって、山には荒れた森が残る。
手入れがされなくなったのが現状。

「だから自分がやらなければ、誰もやらないんじゃないか、と」

現金30万だけもって、西粟倉村に転入した。

「当時つきあっていた彼女に、いっしょに来てくれと告白したら
最初、保留といわれたんです。なんやねん(笑)」

しかし2年後、彼女も村にやってきて、結婚した。
いまは木工房ようびを夫婦で経営している。

細身でスタイリッシュな北欧家具のラインを日本固有の檜で実現。同じサイズのナラの椅子と比べると明らかに檜のほうが軽く、やさしい風合い。

前人未到。檜の家具づくりの挑戦。

実積がない。ノウハウがない。技術の蓄積がない。
今までどおりのつくりかたで、
とりあえずつくってみた。

「でも、壊れるんです」

海外では主にナラの木を使っている。素材の硬度が違う。
廃工場を借り、寝泊まりしながら、檜の家具づくりを始めた。
「木組みを考え、何度も試作を繰り返したんです。
強度実験のためにアスファルトの上に椅子を投げたり、蹴ったりしていたら
新しく村に来た若者に頭がおかしいのではと通報されたこともある(笑)」

いままで通りやっていてもだめなので、
日本の伝統の木組みにデンマーク、ドイツ、オランダ、
アメリカ、イギリスの先端技術をミックス。
さらに設計やデザインの段階から強度をあげていく。

椅子は加重が一か所ではなく、もたれたり、
よりかかったり、さまざまな角度で加重がかかっている。
接合強度が弱いと壊れてしまう。

加重が点ではなく、面に分散されるように設計を繰り返した。
またそれぞれの木組みのサイズ、角度を変えている。
一本の木であっても固さは場所によって違う。
力がかかる角度によっても、強度は変ってくる。

試行錯誤の結果、1年半かけて檜の家具が完成する。

木工房ようび代表、大島正幸さん。海外でも評価が高い。

「図面とつくり方と職人の育成の三位一体でできたんです。
同じ椅子をコンピュータ制御でつくったら、
たぶんできた椅子の30%ぐらいは壊れます。
ひとつひとつの木を見ながら職人が仕上げるからできるんです」
檜の家具は、海外の家具工場で生産するのは無理。
几帳面な日本人にしか、つくれないと思いますね」

檜の家具づくりをしているところは、日本に数か所はある。
しかしスタイリッシュな細身の椅子をつくっているのはここだけだ。
日本の同業者でも、同じことができるひとは少ないという。

「はじめてこの工房で職人になったひとは、
職人とはこんなものだと思ってくれるけど、
どこかで家具をつくったことがあるひとは、
この工房ではもたないかもしれません。
それだけ過酷なんです」

木目のピッチで木の柔らかさを確認し、一か所ずつ職人が木目の広さを確認して、木組みの穴の大きさを調整している。

めぐる時間を意識するということ。

大島さんのこだわりは強度やデザインだけではない。
使ったあと再び森に戻ることができる家具。

「素材は極力天然素材を使っているんです。
木と紙。そのまま土に返る。
塗料も食べても大丈夫な安全なものを開発しました」

シートの編み込みもすべて工房での手作業。
何十年使ったあとでもほどいて編み直せば新しいものになる。
木組みは時間とともに固くなり、壊れにくくなる。

「50年後は自分が死んだとしても、
弟子がいて、技術が残っていれば編み直せる。
西粟倉村、百年の森構想はそういう出口をつくること。
森を使う技術とノウハウを残すことなんです」

きれいな森があっても、その森の材を使える技術を残さなければまた荒れる。
檜を使った商品とそれをつくれる技術者を育てたい。

「50年後も技術とノウハウがあれば、この村は戦っていける。
それがうちの工房のミッションです」

この編みもすべて工房での手作業。

完全オーダー制が成せること。

木工房ようびの家具は完全オーダー制。
シートの編み方ひとつでも注文主によって変える。
男性が編むと強いものになる。
女性が編むと柔らかいものになる。
年齢や性別、用途、お客さんにあわせて、編み手も変える。

「女性と高齢者に軽い檜は喜ばれます」

オーダーを受けてから、納品まで最短で3か月。
長い場合は1年以上かけて制作する。
それぞれの商品は一点一点、担当の職人が、
制作から梱包、発送まで行う。

西粟倉は寒くて雪が降るので木の年輪がしまっている。それを丁寧に育ててきたひとがいる。発注を受けるとこの材のひとつひとつの癖や水分量を見極め、反りなど将来の変化を見越したうえで、デザインに落とし込む。

手作りオーダーメイドの家具はそれなりに高い。
しかし同レベルの北欧家具より少し安い価格帯を設定した。
関税分、安くできる。
しかも西粟倉では木材の移動費もかからない。
その分デザインにこだわるとか、ワンランク良い布を使うなどするため、
ユーザビリティが高くなる。

しかも日本の森の再生に貢献できる。
あとはデザインでの勝負である。

デザインの向上をはかるために
木工房ようびでは、社員全員で
北欧の家具メーカーでの研修を実施している。

「デンマークにいって、椅子のスケッチをし続けたり、
10日間、デザイン的なノウハウを徹底的に叩き込みました」

単なるスケッチに留まらず、家具を採寸し、
図面をおこし、検証し、デザインを理論化する。

社内には家具に関する内外の本が300冊ほどある。
社員は自由に閲覧し、デザインセンスを向上させる。

ほか3か月に1回くらいは建物などの研修旅行も実施している。
来年はカナダでの研修を予定しているという。

木工房ようびの作品は、海外のデザイン誌でも取り上げられるなど
世界的にも注目されている。

箸置きを削る。木工房ようびで一番小さい商品。布のようなサンドペーパーで面取りをしている。すべて手作業。商品のどこを触ってもやさしい。

樹木の種類別の箸置き。

答えは自分のなかに。

「最初は答えがあるわけじゃない。
不安と孤独があった。でも自分は家具しかつくれない。
これをやるしかない。やると決めたら、やる。
これで生きると決めたらから」

「なんでこれまで檜の家具がなかったのか。
それは自分がつくってなかったからだ。
絶対にできるはずだ。
そう思い込むようにしたんです。
檜だったら2メートルあれば家具がつくれる」

日本の森が荒れているのも自分のせいだ。
自分がやりはじめれば、日本の森の再生のきっかけがつくれる。
大島さんはそう考えた。

「森は味方でも敵でもない。ひとが勝手に木を植えたりしてるだけ。
でも50年前にいた人が、森を荒そうと思って植えたわけじゃない。
未来へ財産を残そうと木を植えたんですね。
未来の僕らにエールを送ったんだと思うんです。
その想いを受け止めて、前に進まなければと思っちゃったんですね」

さらに自分たちの子どもの世代にそれを渡したい。
そう語る、大島さんの決意は固い。

石と木を組み合わせたペーパーウエイト。

害獣として駆除された鹿革を使ったスツール。

information

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木工房ようび

住所:岡山県英田郡西粟倉村坂根43
TEL:0868-75-3223
http://youbi.me/

木工房ようびが総合プロデュースした【4 lines villa(フォーラインズビィラ)】が2013年12月24日オープン。
http://4lines.info/

information

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西粟倉・森の学校

住所:岡山県英田郡西粟倉村影石895
http://www.morinogakko.jp/

ニシアワー
http://www.nishihour.jp/