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稲毛〈CANDY〉
静かな住宅街に佇む、
老舗ジャズ・スポット

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.013

posted:2023.7.13   from:千葉県千葉市  genre:旅行

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
千葉県千葉市稲毛区。

驚きのサウンド・スケープを誇る音響と語りかけるような選曲

コロンボ(以下コロ): 駅近とはいえ、静かな住宅街にお店があって、
音漏れとかは大丈夫かなと、恐る恐る入ったら、
キース・ジャレットのピアノ、
「Answer Me My Love」(『MUNICH 2016』)で出迎えてくれた。

カルロス(以下カル): 外から見る限り、瀟洒な佇まいなんだけどね。
相当、防音しているのかな。

コロ: それが玄関のドアを開けてびっくり、
その中は分厚いコンクリートと大きなガラスのブロックの“確かな壁”で囲われてて、
見かけに違わず堅牢なつくりでびっくり。

カル: “不確かな壁”(村上春樹の新作)じゃないんだ(笑)。
外に音は一切漏れないわけなんだね。
ところで、ご主人はキース・ジャレットがお好きなの?

コロ: ご主人の林美葉子さんにとって、
キース・ジャレットは青春の1ページなんだってさ。
初来日の1974年以来、ライブには欠かさず行っているらしい。

カル: 1974年から! それは青春というよりも人生そのものだ。

コロ: だね。それと、お店の準備をするときは清楚な音楽がいいんだって。

カル: たしかに。開店前にフリージャズっていうのも、テンションが高過ぎる。

コロ: でも、最近のヘビーローテーションは、
先日亡くなったペーター・ブロッツマンだって。

カル: 怖いくらいのド・フリージャズだ。
ブロッツマンといえば、クリントン元アメリカ大統領が好きなサックス奏者だね。

コロ: 出た豆知識。
フリージャズって、年配の人より、若い子のほうが、よく反応するんだってさ。

カル: ヒップホップ世代の方が逆に耳馴染みがいいんだろうね。わかる気がする。

コロ: かけてくれたレコードはお客さんにもらったんだけど、
家で聴いていると暗くなるんで(笑)、お店で聴いているらしい。

カル: 音楽ってそうだよね。ひとりで聴いているときと、
誰かと聴いているときだと感じ方が違う。

コロ: そこがリスニング・バーのいいところ、やめられない理由のひとつでもある。

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空間の音もデザイン

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カル: 創業は1976年なんだってね。
いまの場所に移ってきて25年っていうから、老舗中の老舗。
老舗だけにオーディオもすごいって評判。

コロ: JBLの〈EVEREST〉にターンテーブルはドイツのEMT。
アンプはマーク・レビンソン。

カル: EMTのターンテーブルは憧れるな。
なんたってデザインがいかしている。
70年代のインダストリー・デザインって、たまらないよね。
こんな美しいターンテーブルが放送局には普通にあったなんて、夢のよう。

コロ: ダメ押しとばかりにCDプレイヤーは〈STUDER〉。
これまたスイスの名門、業務用案件。
林さんいわく、繊細で生々しい音で、すぐ壊れる(笑) だって。

カル: たしかに繊細だ。

コロ: 機材もすごいんだけど、
サウンドスケープ・デザインも日本音響エンジニアリングにお願いして、
きっちり手を施したそうで、音の抜け感をとことん追求したらしい。

カル: 小さく鳴らしても細部まで聴こえるんだってね。
音のコクが違うんだろうな。

コロ: もうひとつ秘密兵器があるんだ。
〈KLAUDiO〉の電動レコード洗浄機。
とはいえ、最近は飽きたらしく、あまり使ってないって(笑)。

カル: あの高価なマシーン! まだ見たことないです。すごいなー。
ところで〈CANDY〉のネーミングはリー・モーガンから?

コロ: そうみたい。軽快に弾けたいい演奏だよね。
ジャケットのアートワークも見事。
キャンディなどのお菓子をモチーフとした写真なんだけど、あえてモノクロで。

カル: 〈CANDY〉はマンハッタン・トランスファーもカバーしている。

コロ: そうそう。ヴォーカル・バージョンもかけてくれた。
林さんはせっせと楽しそうに、いろいろとかけてくれるんだ。

カル: 楽しそうにかけてくれるって、とっても大事。こちらもなごむし。
ほかには?

コロ: いまは夏が来たな! の1曲を探ってるんだって。それも暑っ苦しい夏。
ジョン・コルトレーンなら「Summer Time」じゃなくて「Aflo Blue」とか。
どうしても「Summer Time」なら、アルバート・アイラーだって。

カル: 鬼気迫るバイブのほうね。たしかに暑苦しいし、怖い。

コロ: 7月17日はコルトレーンの命日。夏が来たってことで、1日中かける予定。
命日に忠実で9月28日はマイルス・デイビス、11月25日はアルバート・アイラー。
こちらも1日中かけまくり追悼DAYだそうだよ。

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稲毛ローカルを大切に

Page 3

カル: おまけに毎月17日はCANDY的には「いいね稲毛!」の日で、
お客さんが持ち込んだレコードとCDをかけてくれるそうじゃない。

コロ: 歌謡曲と演歌以外だけど、レッド・ツェッペリンだろうがなんでもあり。

カル: かけるほうも大変だね。

コロ: A面の3曲目とか、B面の2曲目とか、細かくリクエストが来るんで、
かけるほうはクタクタだとぼやいていた。

カル: お客さんにやらせちゃえばいいじゃない?

コロ: 針とか機材も高価だから、そうもいかないんじゃない。
リスニング・バーはかけてあげてなんぼだし。

カル: ライブもあるんでしょ?

コロ: 8月は7本予定されているんだ。
お客さんとミュージシャンを入れて、20人くらいを目安にした、
インティメントな感じで。

カル: それ行きたいなー。で、最後はなにをかけてもらったの。

コロ: パット・メセニーの『TRAVELS』。

カル: いいねー、いかにも夏休みっぽい。遠くに行きたくなる。

information

map

JAZZ SPOT CANDY 

住所:千葉県千葉市稲毛区稲毛東3-10-12

電話:043-246-7726

営業時間:お店にお問い合わせください

定休日:不定休

Web:JAZZ SPOT CANDY

*予約もお受けいたします。

 

SOUND SYSTEM

Speaker:JBL EVEREST DD 66000

Turn Table:EMT 930st

Record Needle:EMT TSD SFL

Main Amplifer:Mark Levinson No536 x2

Pre Amplifer:Mark Levinson ML-7

CD Player:STUDER D730

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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