5組のアーティストが
北海道・白老の地と出合った。
『ルーツ&アーツしらおい2023』

土地がきっかけで生まれた作品

作品を生み出す契機となった出会いは、人だけに限らない。
白老を最初に訪ねたとき、濃霧のなかで出合った
海に強い印象を受けたという野生の学舎の新井さん。
「海と人とが最初に向かい合ったとき、どんな感覚が沸き起こったのだろうか」と考え、
それを知る手がかりとして、海岸線で拾った流木にノミで彫跡をつけていった。
新井さんも今回が2度目の参加となり、その眼差しはすでに来年を見つめている。

「来年は、流木を塔のように立ててみたい。
すぐに完成させるのではなく四季を越えていくことで、
人間がコントロールできない大きな循環に目を向けたいと考えています」(新井さん)

制作する場所を探していたとき海に向かう細い道を見つけた。その道は地域の住民がつけたもので「かつて道だったので元通りにしたかった」と彼は語ったという。その話に新井さんは興味を抱いたことも、この場所を選んだ理由のひとつとなった。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

制作する場所を探していたとき海に向かう細い道を見つけた。その道は地域の住民がつけたもので「かつて道だったので元通りにしたかった」と彼は語ったという。その話に新井さんは興味を抱いたことも、この場所を選んだ理由のひとつとなった。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

海岸線で見つけた流木をノミで螺旋状に彫っていった。雨の日も風の日も、ここにテントを張って制作を続けた。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

海岸線で見つけた流木をノミで螺旋状に彫っていった。雨の日も風の日も、ここにテントを張って制作を続けた。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

今回、初参加となったナタリー・ツゥーさんは、オスロと東京を拠点に
幅広い分野で活躍するアーティストであり研究者でもある。
以前から独自に白老を訪ね、その土地に根づく記憶を調査していたという。
そして出合ったのは、虎杖浜にある観音寺。
ここはカフェやマルシェ、トークなども開催し、
お寺と人々がつながるための取り組みを普段から実施している場所で、
ツゥーさんと住職とが対話を重ねたことから、作品発表の場となったそうだ。

虎杖浜にある青峯山観音寺。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

虎杖浜にある青峯山観音寺。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

本堂の一角で展開された『音のない水たちのささやき』。かつての水流がかたちを変えてしまったアヨロ川に着目し、その川の音とガラスのオブジェや塩、小魚などを共振させて生まれた音とが響き合うインスタレーションをつくり出した。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

本堂の一角で展開された『音のない水たちのささやき』。かつての水流がかたちを変えてしまったアヨロ川に着目し、その川の音とガラスのオブジェや塩、小魚などを共振させて生まれた音とが響き合うインスタレーションをつくり出した。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

「今回芸術祭に参加したのは、地元在住や関わって2年目のアーティスト、
ツゥーさんのように以前から白老に訪れて調査をしていたアーティストなどです。
顔見知りとなっていたのでスタッフや地域の人々が
リラックスしたムードで受け入れられました。
昨年までは、現代アートは理解が難しいのではないかという、
受け入れ側に緊張感がありましたし、短期間で展覧会をつくらなければならない
という焦りもあったように思います」(坂口さん)

旧社台小学校で来場者を迎え入れるスタッフたち。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

旧社台小学校で来場者を迎え入れるスタッフたち。(写真提供:Tsubasa Fujikura)

writer profile

來嶋路子 Michiko Kurushima
くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長など歴任。2011年に東日本大震災をきっかけに暮らしの拠点を北海道へ移しリモートワークを行う。2015年に独立。〈森の出版社ミチクル〉を立ち上げローカルな本づくりを模索中。岩見沢市の美流渡とその周辺地区の地域活動〈みる・とーぶプロジェクト〉の代表も務める。
https://www.instagram.com/michikokurushima/
https://www.facebook.com/michikuru

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