海も山もすぐそこに。シンガーソングライター・眞名子 新の音楽を彩る神戸の風景
“神戸のあらた”から眞名子 新へ
ー最近、地元に帰ることはありますか?
「ライブのときに帰るくらいですね。移動などで慌ただしくて実家にも寄れないので、母にはライブに来てもらって。軽く目配せくらいはします(笑)」
ー地元でライブするのはどんな気分ですか?
「すごくうれしいです。2026年6月も僕が人生で初めてライブをした〈VARIT.〉でワンマンをやりました。大学の4年間はここで毎月のようにライブさせてもらってて。オーナーの南出渉さんは自分の親みたいな存在なので、会うと気恥ずかしい気持ちになりますね」

ー当時のアーティスト名は、“神戸のあらた”だったんですよね?
「そうです(笑)。インパクトがあるし、“神戸の”って付けたら地元の方が応援してくれるんじゃないかと、兄と相談して決めました。結構気に入ってたんですが、上京を機に本名に戻しちゃいました」
海と山に囲まれて育った
ー神戸が恋しくなることってありますか?
「僕はいまも多摩川とか、外に行って曲作りをすることが多いんですけれど、自然が恋しいのかなって思います。大学まで過ごしたのが木幡駅というローカル線の小さな駅で、すごく田舎だったんです。明石川が流れていて、山や田んぼ、ちっちゃい生き物がいっぱいいたり。神戸の街も山と海が近いので、歩いて行けるのがすごい好きでした。そんな場所で育ったので、自然の中にいるのが落ち着くんだと思います」
ー地元での思い出のエピソードはありますか?
「高校生の時、毎日チャリで森を抜けて、20分かけて駅まで通ってたんです。結構アップダウンが多い道だったんですが、電動自転車なのに『筋トレや!』と思ってわざと電源を切って走ったりしていました。サッカー部だったんで(笑)。チャリを漕いでいる途中は歌ったり、歯笛を吹きまくったりしていましたね」

感性の根源にある地元の記憶
ー楽曲はお兄さんと共同制作なんですよね。
「音楽を始めて数曲作ったところで、作詞に苦戦する時期が続いてて。たまたま兄に相談したら、メロディにバチッと当たる歌詞を書いてくれたので『え、すご』ってなって(笑)。それからずっと一緒に作っています。兄も自分と同じ地元の風景や思い出を共有しているから、呼吸が合うんだろうなと思います」
ーアルバム『野原では海の話を』収録曲「出自」は、まさに木幡駅に帰って感じたことをもとに制作されたというエピソードがありますよね。
「自分のルーツを見て曲を作りたいなと思って、原点に立ち返ったというか。久しぶりに木幡駅に降り立った時は懐かしい気持ちになったし、ここで育っていくなかで見た風景や、聞いていた自然の音が、いま自分たちが『いいな』と思うものの根源にあるんだろうなって感じて、大事にしたいと思いました」
ー6月17日にリリースされたアルバム「良くなった動物」は、どんな雰囲気ですか?
「石崎元弥さんという方にパーカッションやバンジョー、マンドリンでバンドに入っていただいて、自分が表現したかったカントリー的なサウンドに仕上がりました。優しさや温かみをより強く感じていただけると思います。タイトル通り、演奏も歌詞も音も“良くなった”アルバムです」

ー最後に、眞名子さんにとって“地元”とは?
「誰でもあるものだけど、自分にしかないもの、ですかね。もちろん神戸出身の人は世の中にたくさんいるけれど、それぞれ見ていた景色、過ごした時間、思い出は違う。だから同じ土地でも、一人ひとり違う“地元”というのがあるんだと思います」
Information
まなこ・あらた/シンガーソングライター。1997年神戸生まれ、神戸育ち。2016年から「神戸のあらた」として活動を開始。ルーツであるフォークやカントリーをベースに、ギターと声というシンプルなスタイルでのフォーキーな楽曲が魅力。2026年6月17日に新アルバム「良くなった動物」をリリース。
Instagram:@manakoarata