農業改革を提案するドコモ女子
〈アグリガール〉に聞く!
“ローカル”で働くということ

〈地方創生ワカモノ会合in新潟〉で講演をした
〈NTTドコモ〉の大山りかさんが立ち上げた〈アグリガール〉プロジェクト。
「ローカルで見つける、これからの仕事。」連載のvol.001で行われた
座談会に参加してくれた大山さんは、その概要を紹介してくれた。
そこで実際の現場のひとつである新潟のアグリガールの仕事を取材した。

モバイル牛温恵をきっかけとした畜産農家とのコミュニケーション

〈NTTドコモ〉といえば、ケータイなどの通信サービスを提供する大企業、
そんなイメージが先行する人がほとんどだろう。
実際はそれだけでなく、その通信インフラや技術を生かし、
さまざまな分野の課題解決に寄与する取り組みを行う会社でもある。

なかでも、農業従事者の減少や高齢化など、日本の農業が抱える課題を
ICTソリューションや、ドコモのノウハウを用いて
解決に導くプロジェクトチーム〈アグリガール〉が、年々注目を集めている。

ドコモの女性社員によって形成されるアグリガールは、現在全国に150人以上。
農家、JA、自治体と連携しながら、農業生産者のサポートと、農業の活性化を目指している。

今回紹介する、ドコモCS新潟支店に勤務する市橋 咲さんも
アグリガールのひとりだ。

幼い頃から環境問題や社会課題に強い関心を持っていた市橋 咲さん。ケータイの販売だけでなく、農業をはじめとした新しい事業にチャレンジできるアグリガールの存在を知り、ドコモに入社。東京生まれの埼玉育ちだが、自ら新潟勤務を希望したという。

幼い頃から環境問題や社会課題に強い関心を持っていた市橋 咲さん。ケータイの販売だけでなく、農業をはじめとした新しい事業にチャレンジできるアグリガールの存在を知り、ドコモに入社。東京生まれの埼玉育ちだが、自ら新潟勤務を希望したという。

田・畑・畜産、さらには水産分野まで、
アグリガールが提案するソリューションはさまざまだが、
そのなかのひとつに、牛の分娩監視システム〈モバイル牛温恵(ぎゅうおんけい)〉がある。
これは、牛の分娩の24時間前、破水時、SOS時などを正確に検知し、
農家にメールで通知してくれるというもの。

新潟県村上市の畜産農家〈santaふぁーむ〉は、
市橋さんらの提案により、2019年にモバイル牛温恵を導入したばかり。

モバイル牛温恵は大分県のベンチャー企業〈リモート〉が開発したシステム。ドコモは通信面と販売面でサポートしている。熱意ある会社の優れた技術と、ドコモの地盤であるスマホやタブレットを連携させ、それぞれの強みを生かした。アグリガールは、タッグを組む企業の発掘から農家への提案まで、あらゆる分野に関わっている。

モバイル牛温恵は大分県のベンチャー企業〈リモート〉が開発したシステム。ドコモは通信面と販売面でサポートしている。熱意ある会社の優れた技術と、ドコモの地盤であるスマホやタブレットを連携させ、それぞれの強みを生かした。アグリガールは、タッグを組む企業の発掘から農家への提案まで、あらゆる分野に関わっている。

新事業によって、仕事の負担が大きくなった頃、
村上地域振興局からモバイル牛温恵とアグリガールを紹介された。

「1週間以内には産むだろうという牛を、ずっと気にかけて過ごしたり、
24時間態勢で牛につき添ったりしていると、どうしても体に負担がかかるんです。
1~2頭ならまだしも、頭数が多いほど大変で。
でもモバイル牛温恵があれば、分娩の24時間前や、破水時に知らせてくれるので、
精神的にかなり楽になりましたね。今では完全に頼りきっています」(三田さん)

三田さんは、モバイル牛温恵の導入に満足そうだ。

santaふぁーむの3代目・三田美明さん。2代目が育てた村上牛を扱う〈鉄板ステーキ三田〉を新潟市内で営んでいたが、多忙を極め、家族との時間が持てなくなったことをきっかけに家業継承を決意。4年前に村上市に戻ってきた。

santaふぁーむの3代目・三田美明さん。2代目が育てた村上牛を扱う〈鉄板ステーキ三田〉を新潟市内で営んでいたが、多忙を極め、家族との時間が持てなくなったことをきっかけに家業継承を決意。4年前に村上市に戻ってきた。

これまで、さまざまな地域から仔牛を買い、肥育してきたsantaふぁーむだが、
繁殖に力を入れることで、村上生まれ、村上育ちの、
純粋な村上牛を生産することを目指している。

農家が新しい取り組みを始めれば、なにかと困難や問題に直面する。
そんなとき、アグリガールが解決に導いてくれるのだ。

彼女たちの提案は、農家の省力化と、生産性の向上に大きく貢献するだけでなく、
仕事へのやりがいをも向上させ、
さらにその先の、新たな事業拡大を目指す農家の手助けにもつながっていく。

2019年、santaふぁーむでは30頭近くの仔牛が無事に産まれた。

2019年、santaふぁーむでは30頭近くの仔牛が無事に産まれた。

とはいえ、経験や勘に頼る農業を行ってきた高齢の農家にも、
最新機器の導入は受け入れられるのだろうか?

「本体を電源に差し込んで、通知先のメールアドレスを登録するだけと、
年配の方にも扱いやすい、簡単な仕組みなんです。
デモの環境も整っているので、トライアルを受け入れてもらえば、
必ずといっていいほど、いい反応が返ってきます。
長年、感覚でやってこられた農家の方こそ、
『そろそろじゃないかと思っていたら、やっぱり通知が来たんだよ~』って、
自身の感覚が間違っていなかったことをうれしそうに語る方もいます(笑)」

新潟支社のアグリガールのみなさん、三田さん、村上地域振興局のみなさんと。左から3人目が市橋さん。

新潟支社のアグリガールのみなさん、三田さん、村上地域振興局のみなさんと。左から3人目が市橋さん。

これらのソリューションは、なにも高齢者だけに対応したものではない。
世代交代にさしかかった今、
後継ぎで戻ってきた子どもに、農業のイロハを教える親も多い。
そんななかで、長年培ってきた経験や知識を継承することの難しさも
農家の悩みのひとつだという。
そんなとき、これらの機器を頼りながら、
後継者の不安を和らげつつ、経験不足を補うことができる。

「働き方改革」が叫ばれる昨今、
彼女たちの提案するソリューションは、農家の「働き方改革」にも大きく貢献しているのだ。

一人称で向き合える! ローカルだからできること

大都市に本社を持つ企業に入社して、
地方へ配属となったとき、それを“格差”と感じる人がいるかもしれない。
だが、「地方こそおもしろい仕事ができる」と市橋さんは言う。

「地域の方とこれだけ近しいかたちで仕事ができることに魅力を感じています。
もし東京の本社にいて、巨大企業の担当だったとしたら、
案件の一部にしか関われないことも多いでしょうし、
担当者とここまで密なコミュニケーションはとれていなかったかもしれません。
でもここなら、課題や現状をひとつひとつ確認しながら、
お客さまと一緒に考えて、悩んで……ということが重要になってきます。
だからこそ一人称で向き合え、案件のすべてに関われるんです」

農業のプロではないアグリガールだからこそ、
俯瞰で、農家とともに課題に向き合い、解決の道を探り、提案ができる。
問題が解決されたとき、それを喜ぶ農家を最前線で感じられることも、
この上ない喜びだという。

「そもそも農家さんを取り巻く環境って、すごくアットホームなんです。
その一員にまぜてもらっているのがうれしいですね」

新潟支社のアグリガールたちは、ことあるごとに農家を訪ね、牛舎の様子を見、農家の話に耳を傾ける。「肩肘張らずにお話できるのがうれしくて。農家さんに通うことで、私たち自身が癒されています(笑)」

新潟支社のアグリガールたちは、ことあるごとに農家を訪ね、牛舎の様子を見、農家の話に耳を傾ける。「肩肘張らずにお話できるのがうれしくて。農家さんに通うことで、私たち自身が癒されています(笑)」

農業だけでなく、観光や製造業の営業も担当する市橋さんは、
農業×観光、農業×製造業など、
あらゆる分野をマッチングさせた新しい事業提案も行っている。

「やろうと思えば、なんでもできる。それがアグリガールの強みですね。
お客さまや社会の課題を、ドコモや他社のソリューションを交えて
解決する仕事がやりたかった。まさに今、それができています。
担当している分野が観光・農業・製造業ということもあり、
新潟を元気にする、盛り上げることに直結する分野なので、やりがいがあります」

非公式の組織にもかかわらず、国を動かすアグリガール

2014年、たった2名からスタートしたアグリガールは、
“非公式”の社内組織にもかかわらず、今や全国に150名以上。

ドコモほどの大企業となれば、
ルールや規則、マニュアルがしっかりと定められていそうなものだが、
非公式ゆえに、彼女たちの活動内容はおおむね自由で、メンバーになるのも自己申告制。
アグリガールの仕事として義務づけられているものはなく、
業務上で農業に関わる人、個人的に農業に携わりたい人など、
ドコモのスタッフなら誰でもなれるのだ。

ちなみにアグリガールは“会員番号制”となっていて、
これは80年代に一世を風靡したアイドルグループ〈おニャン子クラブ〉にならったもの。
農家の大部分はおニャン子クラブをテレビで観ていた世代で、
「きみは何番?」と、話が盛り上がることもしばしば。
名刺を渡した瞬間に「アグリガールって何?」と興味を持たれることも多く、
メンバーになったことで得るメリットも大きいという。

会員番号制というのがユニーク! 左からNo.151 の増田智子さん、No.088の市橋さん、No.116 の阿部莉緒さん。

会員番号制というのがユニーク! 左からNo.151 の増田智子さん、No.088の市橋さん、No.116 の阿部莉緒さん。

アグリガールが発足して約5年。
短い月日のなかで、彼女たちの活動は社内外でみるみる話題になり、
そのユニークな取り組みは書籍化され、
総務省からのオファーで、国を巻き込んだプロジェクトにも発展。
2019年には、アグリガールが一堂に会す、初めての全国大会が開かれた。
非公式で始まったアグリガールの活動が、全社的に認められたのだ。

「どちらかというと、遊び心でゆる~く立ち上がった活動なので、
周りからは『何をやっているんだ?』くらいに思われていたはずなんです(笑)。
でも、吉澤和弘社長(NTTドコモ代表取締役)にも認知され、
全国大会まで開かれるほどになるとは……立ち上げた本人たちも驚いていました」

彼女たちが抱く地域への思いが、農家に伝わり、社会に広まり、結実した証だ。
市橋さんに限らず、全国のアグリガールたちの熱量は相当に高い。

地方のいち営業担当でも、新ビジネスは立ち上げられる

通信インフラを基盤とするドコモは、
さまざまな企業のサービスやネットワークに、幅広く関わりを持てるという強みがある。
また、全国に支社を持つことで得られる情報の集積も、強みのひとつ。
成功事例をほかの地域に横展開することも容易なことだ。

「課題は山積みなのに、解決方法がわからない。
そんな問題を抱えた地域こそ、ドコモが持つ強みをうまく使ってほしいんです。
とはいえ、私たちができるのは、あくまで“お手伝い”であって、
“主役”はやっぱりここに暮らす住民のみなさん。
でも、主役がどうしようもなくなっているときに
『こんな解決策がありますよ』っていうヒントを提示することはできますし、
そこから地域がもっとよくなっていけばいいなと思っています」(市橋さん)

ドコモが所有するソリューションをもって、地域住民とコミュニケーションをはかり、課題解決を“デザイン”する。名刺にある「IoTデザインガール」とは、そういうことだ。

ドコモに入社し、アグリガールとして活動を始めて約3年。
市橋さんは、既存のサービスを売るだけに留まらず、
農家の課題を解決できる“新たなビジネス”を企画し、
新潟から発信するという目標を掲げ、歩みを進めている。

「地方のいち営業担当でも、必要なものを自分で探し、他社と手を組んで、
新しいモノづくりをすることができるんです。
私は『会社のなかで、どんどん新しい分野に取り組んでいってほしい』
というドコモのメッセージに惹かれ、新領域に取り組みたくて入社しました。
私自身、この場所でやりたかったことができていると実感していますし、
それはローカルという場所だからこそ。
新潟での勤務が叶って、本当によかったと思っています」

そう語る市橋さんの顔は、晴れやかで、楽しそうだ。

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NTTドコモ アグリガール

writer profile

林貴代子 Kiyoko Hayashi
はやし・きよこ●宮崎県出身。旅・食・酒の分野を得意とするライター・イラストレーター。IT旅行会社でwebディレクターを担当後、フリーランスに転身。お酒好きが高じて、唎酒師の資格を取得。最近は野草・薬草にも興味あり。

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