連載
posted:2014.6.17 from:東京都渋谷区 genre:ものづくり
sponsored by 貝印
〈 この連載・企画は… 〉
プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。
editor profile
Tomohiro Okusa
大草朋宏
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。
photographer
Suzu(Fresco)
スズ
フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/
セレクトショップ・ユナイテッドアローズから2014 S/Sのニューブランドとして
デビューした「TEGE(テゲ)UNITED ARROWS」。
これは国連機関International Trading Centerのフラッグシッププログラムである
エシカル・ファッション・イニシアティブ(Ethical Fashion Initiative、以下EFI)と
組んでスタートしたブランドである。
EFIは、アフリカ各国やハイチ、パレスチナなどの女性の手仕事にフォーカスし、
世界のトップファッションデザイナーとともにものづくりを行うプロジェクト。
フェアトレードではなく、女性の雇用を創出し、
社会進出などをうながす“エンパワーメント”が目的である。
これまで世界では、ヴィヴィアン・ウエストウッドやステラ・マッカートニー、
ステラ・ジャンなどのブランドがこのプログラムを利用し、
アフリカでものづくりを行ってきた。
そして日本で初めてビジネスパートナーとなったのが、ユナイテッドアローズだ。
「もともとバティック柄やビーズなど、
アフリカのカルチャーやクラフトが好きでした」と語る
ユナイテッドアローズ上級顧問の栗野宏文さんのもとに、
2013年3月、このプログラムを考えたEFI代表のシモーネ・チプリアーニさんが訪れた。
すぐに意気投合した。
これまでも途上国などでものづくりをしようというチャリティはたくさんあった。
しかしシモーネさんが栗野さんに語った言葉は
「かわいそうだからものを買うというのはかえって失礼だ。
それではせっかく買っても使わない。
それよりも本当に素敵なものをつくって、
買うひとも、つくるひともハッピーにしたい」というものだった。
「これはユナイテッドアローズのポリシーと同じでした。
ぼくはこの会社をつくったひとりなので、ピタッときました」と栗野さんは言う。
まさに“Not Charity. Just Work”というEFIのコンセプトに共感したということだ。
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栗野さんはまずケニアとブルキナファソにリサーチに出かけた。
ケニアはものづくりのハブになっており、
コミュニティ内でものづくりを完結させることができる。
キャンバスのクラッチバッグ、カゴバッグ、ビーズアクセサリーをつくることにした。Made in Kenyaだ。
マサイチェックなどのアフリカン柄をふんだんに使用した、
“アフリカらしい”商品といえよう。
実際クラッチバッグはもっとシンプルなものを想定していたが、
「現地でマサイチェックを見てしまったら、使いたくなった」という。
さらに洋服をつくるためにブルキナファソに注目した。
綿花の栽培が盛んで、織物で有名な国だ。
コミュニティごとに特徴のある柄の生地を織っている。
オーガニックコットンもあり、手染めもできる。
ここで生地を生産し、日本で縫製することにした。こちらはジャケット&パンツ。
一見するとアフリカ的な部分は感じられないかもしれないが、
それこそビジネスとして回すために必要なこと。
日本でニーズがある商品でないと意味がない。
「アフリカ版のハリスツイード
(スコットランドのハリス島で、今でも手織りで織られている)みたいなもの。
それと同様に人力の織機で織っています。
そもそも電気がありませんから、
日が昇ると仕事を始めて、日が暮れるとともに仕事を終えていました」
デザイン面では、職人が持っている持ちネタを活かしつつ、
いくつかのオーダーをして発展させた。
「もう少しレジメンタル感を出すために白を入れて欲しいとか、
幅を変えてほしいというリクエストはしました。
このジャケットとパンツ(写真下)は、もっと派手な色のジャガード織りでしたが、
組織だけ活かしてぼくたち好みの色にしてもらいました。
カラーチップなども持っていって、サンプルを依頼しています」
生地メーカーのひとつとして、まったく問題なく扱えてしまうわけだ。
それがたまたまブルキナファソだったに過ぎない。
「ぼくたちが日本やイタリアの生地メーカーとやりとりしていることと、
ほとんど同じようなことができます」
しかし日本やイタリアのメーカーとはまた違う風合いの生地があがってくる。
「できた生地を見て、UAのデザイナーたちも盛り上がるわけです(笑)。
“こんな風合いの、こんな色はなかなかないね”と。
それは初めてハリスツイードを手にしたときの感動と同じようなものでしょう」
困っているひとを助けようという“チャリティ”の気持ちでは、この品質は生まれてこない。
お互いがお互いをリスペクトし、特徴を活かして、きちんと“ワーク”すること。
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長く続くサステナブルな関係性を目指す。
エシカルファッションとうたっているが、
ユナイテッドアローズにとって中心は、ものづくり。
まずはユーザーにとって楽しいもの、素敵なものが手に入る。
それが結果的に、誰かの役に立っているのが理想だ。
「社会的に、生産性の追求に無理が生じてきました。
これからはクリエイティビティやクラフツマンシップが
すごく重要になってくると思います」と栗野さんは
現在のファッション業界やものづくりを懸念する。
いくらエシカルだったりオーガニックだとしても、流行と利潤ばかり追求し、
すぐに捨ててしまうような商品では意味がない。
極端にいえば“美しいゴミ”をつくってもしょうがない。
ユナイテッドアローズは1990年に1号店をつくったときから、
秋田の曲げわっぱや開化堂の茶筒を取り扱ってきた。
それはもちろんハリスツイードやクロケット&ジョーンズの靴などと同じ目線だ。
「長く使えるいいものは、ぼくたちにとって基本理念です」
そのなかにTEGE UNITED ARROWSが新たに加わった。
“ものづくりとは何か?” もう一度見つめ直すことができるブランドが誕生した。
後編:日本のファッションブランドが仕掛ける、サステナブルなビジネスとは?「TEGE UNITED ARROWS」後編 はこちら
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TEGE UNITED ARROWS
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