プラントハンター・西畠清順の旅コラム
「フェニックス・ロベレニーと
最高の波が待つ八丈島へ、再び」

浮かんでいるだけでリアルな自然を感じることができる格別な海

そんなこともあって、
何年かは「八丈島はおれがわざわざ行くところではないな」と距離を置いていたのだが、
近年、また行くようになったきっかけがふたつあった。
まずひとつ目がコロナで東京都が島から芝浦港への船の輸送費に
補助金を出すようになったこと。
これで格段に経費が落ちることになったのだ
(そのおかげコロナ禍になってから4トン車にして20〜30台分の植物を輸送したが、
確かに輸送費がかからなかった)。

大量の赤ドラセナ。

大量の赤ドラセナ。

もうひとつのきっかけがサーフィンだ。
八丈島は知る人ぞ知るサーフィンのスポットで、
普通、日本各地のローカルポイントはどこであっても
「サーファーのしきたり」なるものがあって、
普通はローカルのサーファーが優先になるわけだが、八丈島のそれはさらに厳しく、
ローカルサーファーしか海に入らせてもらえない。

ただ、実はその奥に通称「タコス」と呼ばれるビジターも
「入らせてもらえる」ポイントがあると聞いた。
そんな話を聞いたからには行かないわけがない。
それは島の南東に位置する洞輪沢(ぼらわざわ)という
小さな小さな漁港の脇道の奥に位置し、100メートルほどの切り立った断崖絶壁の下、
波で大破した凸凹の道なき道をボード片手に足を切らないように
20分ほど歩いてようやく辿りつけるポイントだ。

道中は長年の藻が付着していて、「たけし城か!」とツッコミたくなるほど滑りやすく、
転けると尖った石やフジツボで流血は免れない。
また、ようやく辿りついた孤独なビーチからも、波が割れるポイントまで、
ひたすら20分パドリング。
ここまで来る人を選ぶポイントは日本でもなかなかないと思うが、
入ると、必ず心から満足させてくれる波に出合えること、
そしてその海原に浮かんでいるだけで人工の海水浴場では味わえない
ガチリアルな自然を感じることができる格別な場所なのだ。

八丈島の波に乗る。

ある日、いつものように仲間たちとサーフィンしていると、
そのうちのひとりのリーシュが切れて、
サーフボードが流されてしまうという事件が起きた。
ボードは瞬く間に切り立った岩場まで流され、
本人は夢中でボードを追いかけ岩場に近づく。
大きな波がガンガン入ってくるなか、
その力で岩場に生身の人間がたたきつけられると思うと、背筋が凍る。

なんとしても早く助けなければ! と、
アドレナリン全開で助けに行ったときはまさに無我の境地だったが、
なんとか無事救い出せた10分後には、
もう次の波に夢中で、楽しいあまりそのことを忘れていた。

自然とは、慄く(おののく)ような怖さと、雄大なやさしさ、
その両面が同居する不思議な存在だ。
そういえば20代の頃、仕事で無茶をして山で二度ほど死にかけたことを思い出せば
その恐怖と感覚が今でも昨日のことのように残っているし、
数か月前に同じ場所でサーファーが死んだというニュースを聞いたときもなおさらだ。

でも、だからこそリアルな自然と重なる時間は神聖でやめられない。
草木を扱うこの仕事も、波を読み波に乗るライフスタイルも。

一番生きていることを実感できるからだ。

そんな八丈島での自然体験を重ねていると、
いつのまにか、この素朴な島に魅力されてしまう。
気がつけば仲間と一緒にサーフィンスポットへの道中に見つけた絶景の物件を取得し、
最高のリゾートホテルにするべくプロジェクトが進んでいる。
最高の自然に、最高の宿、そして最高のフェニックス・ロベレニー。
これらが揃う八丈島は今後も都内からアクセスできる最高のリトリート先になるはずだ。

きっと植木の買いつけ金額の高い安い云々の話なんかちっぽけに聞こえる。はずだ。

profile

Seijun Nishihata 
西畠清順

そら植物園株式会社代表取締役。21歳より日本各地・世界各国を旅してさまざまな植物を収集し、依頼に応じて植物を届けるプラントハンターとしての活動をスタート。日本はもとより海外の植物園、政府機関、企業、貴族や王族などに届けている。2012年、“ひとの心に植物を植える”活動・〈そら植物園〉を設立。植物に関するイベントや緑化事業など、国内外のプロジェクトを次々と成功させ、日本の植物界の革命児として反響を呼んでいる。著書に『教えてくれたのは、植物でした』(徳間書店)、『そらみみ植物園』(東京書籍)など。

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西畠清順 Seijun Nishihata

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