キーワードは「火袋」と「通り土間」。 築120年の京町家の建築様式が よみがえる住宅リノベーション
キッチンを備える「通り土間」
続いて、通り土間。
通り土間とは、玄関から土足のまま入ることができる廊下状の土間のこと。
京都の町家の多くは奥に深いつくりで、玄関を入ると真っ直ぐ奥まで空間が続き、
そこにだいたいキッチンがあります。
今回の物件では、これまでの度重なる改修によって、通り土間の場所に床が張ってあり、
システムキッチンがしつらえてありました。ところが、かつては土間が奥まで続き、
そこにカマドや井戸があり、カマドの煙を出すために吹き抜けていて(火袋)、
屋根の一部に煙出しの窓がついていたのです。
通り土間も、現代風に解釈しながら復活させることにしました。

既存図面。1階の玄関から厨房にかけてが通り土間。
“機能のボリューム”を点在させる
「通り土間」によって家の表から裏を一直線に通る動線ができ、
「火袋」によって光や音、匂いなどが上下階でゆるやかに共有されます。
さらに、空間のなかにキッチンや子ども室、書斎スペースなどをつくり、
それらを機能ごとに独立したまとまりとして“機能のボリューム”と考えます。
たとえば、こちらはキッチンのボリューム。
完全な個室とはせず、一部がくり抜かれた白いキューブにキッチンを収めました。

リビングにあるキッチンのボリューム。
こうしたボリュームの残余部分が、家族のスペースとなります。
大きさも高さも異なるボリューム群、そして火袋や通り土間、既存の柱梁や壁面、
床のつくりだす隙間や抜けを生かして、家全体をゆるやかにつなげていくことを目指しました。

完成後の断面図。大空間に“機能のボリューム”が点在しています。

改修後の図面。町家の構成を意識しながら、新しい住まいへとリノベーションした。
看板町家のファサードについて考える
この建築はファサードが改修された、いわゆる「看板町家」です。
(看板町家については多田正治アトリエvol.7でも紹介しています)
ご両親へのインタビューとこの近辺に残る古い町家から、
この建築がかつてどんな姿をしていたか想像できます。
こちらが工事前の写真です。

上の方の奥の壁も同じタイル。ちなみにお隣も同じタイルが使われています。
タイルが張られていますが、よく見ると上階のタイルと下階のタイルが異なります。
上のタイルは古い時代のもので、下のタイルは比較的新しいものです。
今回は、古い部分を尊重して、新しい部分にのみ手を入れることにしました。
屋根を葺き替える
既存の屋根には青い「釉薬瓦(ゆうやくがわら)」が用いられていましたが、
痛んでいたのでほぼ全面を葺き替えることに。
町の通りから見えるところはそのまま釉薬瓦に、
それ以降の見えないところはすべて金属屋根に葺き替えました。
重い瓦屋根を軽い金属屋根にすることで、耐震性能のアップも期待できます。

葺き替え途中。瓦と土を撤去していくと空が見えてしまいました。

葺き替え途中。この木の軸組は、建築のための下地ではなくて天井の工事をするための足場。大きな町家で屋根が非常に高く、専用の足場を組む必要があったのです。
大きな町家で、奥に深く大きな敷地ゆえの問題などもありながら、
なんとか工事を完了することができました。
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