学童保育がない…?
移住先での子育てで直面した、
悩ましい問題

子どもが少ない地域での子育ては大変?

伊豆下田に移住して約半年が経った津留崎さん一家。
娘さんは来春から小学生ですが、そこで新たな問題が。
移住しやすいことも大事だけど
移住したあとの暮らしやすさも重要。
今回は、移住の際にちょっと見落としがちなポイントについて。

娘の小学校入学前のタイミングで移住

回、妻が「移住のリアル」として、
この半年の娘の様子について書きました。
お伝えしたように、移住当初は少なからず不安定だった娘も、
いまではこちらに暮らし始めてからできた友人家族の支えのおかげもあり、
下田暮らしを楽しんでいます。

ありがたいことに友人家族とは、娘同士、妻同士、夫同士、
それぞれが気が合い家族ぐるみで仲良くさせてもらっています。
ふたりのお兄ちゃんも娘をかわいがってくれて、
兄弟のいない娘にとっては頼れる兄貴たちができたようでうれしそうです。

先日は東京で一緒に暮らしていた義姉家族と
その友だち家族が遊びに来ました。

小さな美女たちに囲まれて至福の足湯。姪とその友だちは東京っ子。娘は元東京っ子、いま下田っ子。下田の友だちは生粋の下田っ子。初めて会う子どもたちがあっという間に打ち解けて、あっという間に喧嘩して、あっという間に仲直りして。振り回される僕……。

帰ったあとにまた寂しくなって、
それがきっかけで不安定になってしまうのでは? 
と心配になりましたが(三重で3か月暮らしたときにはそれがきっかけで
一度、移住を考え直したという経緯があります。→vol.10)、
姪たちを駅で見送ったあとに下田の友だちと楽しそうに遊んでいるのを見て
「あ、娘は下田っ子になったんだ」と確信しました。

歩いて行けるくらいの近所に同い年で気が合う友だちがいる。子どもの少ない地方への移住では確率的にはかなり少ないと思います。下調べのしようもありませんし……。でもいたのです! 幸運としか言いようがありません。

子どもは大人よりも感覚的に物事を判断します。
移住先を気に入るか否かというのは、移住してみないとわかりません。
わが家の移住にとって、大きなハードルが
クリアできたと思えるほどの出来事でした。
本当にほっとしています。

そんな娘、来春にはめでたく小学生になります。
親バカの僕は、娘がランドセルを背負って登校する姿を妄想するだけで
にやにやしたり泣けてきたり、おかしなことになっています。

姪とランドセルを見に行きました。ひとつ屋根の下で育ったふたりが別のまちの別々の小学校に行く、その決断が正しいのか? 随分と悩みました。でも、答えの出ない問いに悩み行動しないより、行動してだめならそのときまた考えよう、そう思い移住を決断しました。

娘が入学する予定の小学校は全校で100人程度、
1学年1クラスで1クラス20人にも満たない小さな学校です。
もちろん環境は大きく変わるのですが、
クラスの人数もいまの保育園と同じくらい、
その中には園で同じクラスだった子もいます。
まったく未知の環境というわけではありません。

先日行われた園の運動会。東京では園庭が狭かったので近くの小学校の校庭を間借りしてましたが、こちらでは広い園庭で開催。こんなのびのびとした雰囲気がよかったのか、こういったことも下田を気に入る大きな要因のひとつになったようです。夕食のときは今日の園での出来事をうれしそうに話しています。

SNSの普及にともない、子どもたちの人間関係も
いままで以上複雑になってきているようです。
そんな状況のなか、娘の性格を考えると、1学年何クラスもあるような
大規模な学校でやっていくというのがイメージしにくく、
人数の少ない学校で学ばせたいと思っていました。
(もちろん大規模な学校が合うタイプの子もいると思います)

かといって、1学年数人というような小さすぎる規模の学校も寂しそうです。
全校100人ほどの学校は、娘にとってちょうどよい規模ではと
勝手に感じています。

また、小学校にあがってからの転校は負担が大きいと考えていたこともあり、
小学校にあがる前の、このタイミングで移住を決断しました。

そうして移住して半年が過ぎ、お伝えした通り、
いまでは娘の気持ちも安定してきたのです。

学校の規模の面でも移住のタイミングの面でもうまくいったといえます。
いろいろとあったけど、なかなかうまくいっているのでは、わが家の移住……
なんて思いながら、下田市の小学校、教育関連の情報を
集めていたそのとき、悩ましい問題に直面してしまいました。
なかなか一筋縄ではいかないものです……。

[ff_assignvar name="nexttext" value="新たな悩ましい問題とは…?"]
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学校が終わったらどうする?

その問題とは、入学予定の小学校やその近辺には、
学童保育が実施されていないということです。

学童保育をご存知ない方のために補足すると、
日中、保護者が仕事で家にいない家庭の小学生に対して提供される
生活の場、その保育事業のことです。
自治体の運営で小学校や児童館などの
既存を施設を利用して行われていることが多く、
保育園に通っていた子どもの大部分が利用します。

そんな学童保育がないということは、
小学校が終わる昼過ぎには娘は帰宅するということになります。

そもそもは、家族と過ごす時間を大切にしたいと移住することを決めました。
こちらに住むようになってから、保育園の帰りのバスの時間16時に、
妻か僕が都合をつけて娘を迎えに行っています。
朝食、夕食を家族3人揃って食べるようにもなりました。
それは、東京にいるときにはできなかったことです
(保育園なのに帰りのバスが16時って早すぎない? 
と当初はびっくりしましたが……)。

けれど、小学校が終わるのは昼過ぎ。いまよりももっと早くなります。
さらには1か月以上もある夏休みもあります。

わが家の食卓。朝は僕が、夜は妻がつくります。

どちらかが仕事をしないで娘と過ごせばよいだけの話かもしれません。
でも、移住して間もない、働き方も手探り状態のわが家においては、
僕だけの収入で、もしくは妻だけの収入で暮らすというのも厳しいです。

例えば収入を担うほうが、東京で会社員として働いていたときのように
労働時間を増やせば可能なのかもしれませんが、
それこそ移住をした意味がないように思います
(ふたりとも仕事人間というわけではないのですが、
仕事にそれなりにやりがいを感じているので、
続けたいという思いもあります)。

最初から学童保育がある地域で家を探せばこんな問題はなかったのでしょう。
浅はかといえばそれまでですが、
家から小学校の距離や立地などは重視していましたが、
その点は確認していませんでした(言い訳をするわけではありませんが、
なかなか確認しない点のような気がします)。

では、この地域の共働きの家庭はどうしているのか?
下田出身の夫婦の場合、すぐ近くに親がいることが多く、
そちらに預けていることが一般的なようです。
なるほど……。では、我々のような移住者はどうすれば……?

下田市も多くの地方の自治体と同じように人口減少が問題になっています。
今年の4月には市内全域が過疎地域に指定されました。
少子高齢化に加え、進学・就職による若年層の流出が原因のようです。

そんななか、人口減少に歯止めをかけるには
移住者を増やすことが必須と感じます。
そして親が近くにいない移住者、子育て世帯には
学童保育があるかないかは切実な問題です。

具体的に下田市としてはその辺をどう考えているのか? 
今後、学童保育が実施される可能性はあるのか?
学童保育を担当する部署「下田市教育委員会」に出向き話を聞きました。

現状、下田市には7つの小学校があり、
そのうちの2校で学童保育を実施しているそうです。
実施していない地域の保護者から学童保育の要望はあるそうですが、
現状は予算がなく実施できないとのこと。
そして、いまのところ学童保育施設を増やす計画もないと。

ただし、実施していない学校の児童も、
2校の学童保育を利用することができるとの説明がありました。
その場合には、放課後に、通っている学校から学童保育の学校に送り、
学童保育の終了する17時半にまた迎えに行かなければいけません。
学童保育は終了時間が遅くなるため、
終了時には必ず保護者の迎えが必要なのです。

仕事をしながらその動きをとるのは現実的ではないでしょう
(実際このように学童保育を利用している世帯はいないらしいです)。

ただ、学童保育を実施していない学校の児童が、
夏休み・冬休みの長期休暇だけ学童保育を利用しているケースは
多いようです。休みでない期間は通っている学校だけで済ませ、
長期休暇期間は朝から夕方まで学童保育に預ける。
確かにこちらのほうが現実的な気がします。

ただし、学童保育を実施している学校は
家からは歩いて行ける距離ではないので、車で送り迎えが必要です。
当面はわが家もこのやり方でいくしかないのでしょう。

いまは保育園の終わる夕方に、どちらかが家に戻れるように
調整しながら仕事をやりくりしています。
来春からは小学校の終わる昼過ぎにどちらかが家にいるように、
働き方を少し変える必要がありそうです。

働く時間を変える。
家でできる仕事をつくる……。

民泊やゲストハウスであれば家で仕事ができるわけか……。
ほかに家でできる仕事はなんだろうか? 
店舗を借りて店を始めたらそこで娘が過ごせばよい? 
仕事についての妄想がまた始まっています。

「お宿を家族でやるの楽しそう!」と娘。「お宿の名前は『笑顔』に決めた!」と。すっかりその気の娘。

[ff_assignvar name="nexttext" value="移住者の声を届ける機会が…!"]
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下田市の移住の取り組みについて考える

このように学童保育がないのであれば、
ないなりに暮らしを考えていくしかないのでしょう。

ただ、移住者をより増やしていかなければならない自治体
下田市としては、このままではいいけない気がします。

市としても、今年の4月に過疎地域に指定されたことを受けて、
移住者受け入れのために力を入れ始めたそうです。
移住促進PRの資料をつくったり、いままで整備されていなかった
空き家バンクなどの仕組みも準備しているとの話も聞きました。

もちろん、移住希望者にとっては
そのような仕組みが整備されているというのは魅力的で、
移住のしやすさにつながっていくのかとは思います。
それは移住先を検討していたとき、僕も実感として感じていました。
移住に関して問い合わせをした自治体の中でも、
下田市は特に取り組みが遅れていたので、
その動きが始まったことは喜ばしいことです。

でも、移住のしやすさも大切ですが、
移住してからの暮らしやすさがあってこその移住促進だと思います。

前述しましたが、子育て中の親にとっては
学童保育があるかないかは切実な問題です。
教育委員会の担当の方としても、予算がつかなければ
これ以上やりようがないという現実があるので、
その担当者に学童保育を整備してくれと訴えても何も変わらないのでしょう。

では予算をつかさどる立場の人にこの現実を知ってもらいたい、
そんな思いがふつふつと湧いてきました。
といっても、どうしたらよいのだろうか?

考えを巡らせていたそのとき、回ってきた回覧板に、
これは! というイベントのチラシが入っていました。

その名も「市長と語る会」。

昔ながらの回覧板。このアナログ感、いいですよね。

市長、副市長をはじめ、市役所の各部門の責任者と市民が、
市が抱える問題についての意見を交換できる場とのことです。
まさに、予算をつかさどる人たちが一堂に会する場といえます。

下田市の各地で開催するそうで、わが家が暮らす地区では
11月末に予定されています。参加希望の市民のことを考えてか、
開催時間も平日19時からと参加しやすく、全10回も開催するようです。

このような機会をつくってくれる
市民に寄り添った役所であることに感謝するとともに、
寄り添った役所であればこそ、声をちゃんと聞いて
対応してくれるのではないか? という期待に胸を膨らませて
「移住者のリアル」を訴えてみようかと思っています。

教育委員会の担当の方とはすっかり顔なじみになりました
(うるさいのが移住してきたと思っているかもしれません……)。
ほかの部署の方にも何人か顔なじみの方ができました。

規模の違いもあり、東京の役所とは全然雰囲気が違います。顔が見えている感じがします。

何年も住んでいた杉並区の役所には、
誰ひとり知っている人はいませんでした。
小規模な自治体ならではの、役所と市民の近さといます。

一移住者の声にも耳を傾けてくれるのでは、とも感じています。
だからこそ僕のような一移住者が
まち全体のことを考えてしまうのかもしれません。

静岡でもっとも人口の少ない市である下田市。ちなみにいままで住んでいた杉並区荻窪と同じくらいの人口です。東京、人多すぎ……。人も機能も、もっとばらけていい気がします。

学童保育を通じてあらためて考えた「まち」のこと。
11月末に参加する予定の「市長と語る会」でどんなやり取りになったか、
機会があればご報告したいと思います。

さてさて、一移住者の声はどこまで届くのか。

10月は天気に恵まれなく家で過ごすことが多かった。お絵かきが大好きな娘と一緒に絵を描く休日。どこかに遊びに行かなくても、何かを買わなくても、充分に楽しく満たされる。

text & photograph

津留崎鎮生 Shizuo Tsurusaki
つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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