時代とともに「進化するローカル」。 変遷をたどって見えてきた アンテナショップの次なる役目とは?

東国原知事とケンミンSHOWで
「コンテンツ化」するローカルの魅力

2000年代に入ると、2007年に放送開始した『秘密のケンミンSHOW』や、
同年に初当選し宮崎県知事として
全国に「宮崎ブーム」を起こした東国原知事の登場によって、
ローカルの魅力は「コンテンツ」として多く人の目に止まった。

また、雑誌などでもアンテナショップの特集が組まれるなど、
アンテナショップにも追い風となるローカルブームが始まったのだ。

「地域ブランディング」としてのショップの誕生

それまで物販をメインとする店舗が多いなか、
レストラン型のアンテナショップの先駆けとしてオープンしたのが、
大分県のアンテナショップ〈坐来(ざらい)大分〉だ。

〈坐来 大分〉のメインダイニング。このほかにグループで利用できるプライベートルームが5部屋設けられている。

〈坐来 大分〉のメインダイニング。このほかにグループで利用できるプライベートルームが5部屋設けられている。

「〈坐来 大分〉さんは、首都圏での大分ブランドを確立していくことを命題に掲げ、
日本中の名店が集まる銀座で、スタイリッシュな内装と郷土料理を前面に押し出した
高級路線のレストランとして2006年にオープンしました
(2014年にリニューアル。2021年に現在の数寄屋橋に移転)」

〈坐来 大分〉の名は、『東京に居ながらにして、大分を感じてほしい」という思いが込められ、店内の内装からカトラリーにいたるまで、一歩店に入れば大分尽くしの空間が出迎えてくれる。

「アンテナショップで特産品やローカル食材を購入するのではなく、
都内で洗練された『大分時間』を過ごすことで、
大分県そのものの価値を高めるブランディング路線へと
アンテナショップが舵を切った一例といえます」

関連記事はこちら:
大分県の公式アンテナショップ〈坐来大分〉が、東京・数寄屋橋で新装開店

アンテナショップとは思えない装いの〈ふくい食の國291〉の地下1階スペース。伝統工芸品をディスプレイ。

アンテナショップとは思えない装いの〈ふくい食の國291〉の地下1階スペース。伝統工芸品をディスプレイ。

そのほかにも、2002年にオープンした〈ふくい南青山291〉は、
銀座ではなく、港区南青山の骨董通りに店舗を構え、
店内には越前漆器、越前和紙など福井県の伝統工芸品をディスプレイ。
店舗内の多目的スペースでは、「福井手打ちそば入門講座」を開催するなど、
モノを売るのではなく、体験を通して県のブランディングをする店舗が登場している。

同店はドロップインで利用できるワークスペースを備え、
福井と首都圏をつなげる交流拠点として2023年2月にリニューアルオープン。
同時に、2013年に銀座でオープンしていた〈食の國福井館〉は
〈ふくい食の國291〉として福井県の食を
メインに扱った店舗として住み分けて店舗展開し、
併設されたレストラン〈越前若狭 食と酒 福とほまれ〉では、
福井県の山・海・里の幸を満喫できる料理を提供している。

〈ふくい食の國291〉の紹介はこちら:福井県|ふくい食の國291@銀座

〈越前若狭 食と酒 福とほまれ〉は、県産材を用いた土壁や越前漆器など内装も福井県一色に統一されている。

〈越前若狭 食と酒 福とほまれ〉は、県産材を用いた土壁や越前漆器など内装も福井県一色に統一されている。

空間デザインで魅せるアンテナショップ

2010年代には、訪日観光客の増加(外国人へのビザ要件の緩和)や、
東京オリンピックの開催決定(2013年)によるインバンドの増加で
第2次アンテナショップブームが起こる。
また、政府が「地方創生」を推進していったのもこの時期だ。

「第2次アンテナショップブームでは、銀座・有楽町エリアから
新橋、日本橋へとアンテナショップの分布が広がりました。
店舗デザインや空間プロデュースにも力を入れ
一見してアンテナショップには見えない、セレクトショップのような店舗が登場します」

〈日本橋とやま館〉は富山の地酒が楽しめるバーラウンジや、観光交流サロン、イベントスペースなど多彩な機能を集約。

〈日本橋とやま館〉は富山の地酒が楽しめるバーラウンジや、観光交流サロン、イベントスペースなど多彩な機能を集約。

富山県のアンテナショップ〈日本橋とやま館〉がオープンしたのは2016年。
商業施設やホテル、オフィスなどを手がける乃村工藝社がプロデュースし、
店舗内にバーラウンジやコンシェルジュを擁した洗練された空間が広がっている。

富山のライフスタイルを体験・体感できるアンテナショップとして、
使用されているテーブルやイスの木材は、
乃村工藝社のデザイナーが実際に富山県の製材所を巡り、
スギやヒノキをはじめとする富山の県産材から選別して空間デザインが施されている。

徳島県の〈ターンテーブル〉は、2階から5階までがホステル。客室はシングルルームからドミトリールームまで3つのタイプの部屋を完備。

徳島県の〈ターンテーブル〉は、2階から5階までがホステル。客室はシングルルームからドミトリールームまで3つのタイプの部屋を完備。

また、徳島県の〈ターンテーブル〉は、
物販を行わず、宿泊施設とレストランのみの業態で
奥渋谷・神泉にアンテナショップをオープン(現在は定期的にマルシェを開催)。

手がけたのは、リフォーム会社の〈リノベる〉と〈東急電鉄〉で、
あえて徳島の看板は出さず、食事や宿泊の体験を通じて徳島県の魅力を発信している。
築21年の建物を1棟フルリノベーションし、ホステルやビストロを備えた
「オーベルジュ」(宿泊設備を備えたレストラン)として再生させたのだ。

〈ターンテーブル〉の紹介はこちら:徳島県|ターンテーブル@渋谷

〈ターンテーブル〉のレストラン。ディナーでは県産食材づくしのコース料理も提供している。

〈ターンテーブル〉のレストラン。ディナーでは県産食材づくしのコース料理も提供している。

「このように、店舗設計や空間プロデュースを専門的に行ってきた事業者が
アンテナショップのプロデュースを手がけているのも
昨今のアンテナショップの動向といえます。

これまでのように、ローカル商品の物販だけではなく、
さまざまなアプローチで訪れる人に『体験』として地域を知ってもらい、
より深いコミュニケーションツールとしてアンテナショップが機能しているのです」

writer profile

山田卓立 Takuryu Yamada
やまだ・たくりゅう●エディター/ライター。1986年生まれ、神奈川県鎌倉市出身。海よりも山派。旅雑誌、ネイチャーグラフ誌、メンズライフスタイルメディアを経て、フリーランスに。現在はキャンプ、登山、落語、塊根植物に夢中。

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