連載
posted:2024.8.20 from:東京都中央区 genre:食・グルメ / 活性化と創生 / 買い物・お取り寄せ
〈 この連載・企画は… 〉
特集「アンテナショップ、進化論。」では、
時代とともに変貌を遂げるアンテナショップの最前線をお届けします。
そこには「洗練されたローカル」を体現しているアンテナショップが数多くあります。
そんなアンテナショップのいまを特集します。
writer profile
Takuryu Yamada
山田卓立
やまだ・たくりゅう●エディター/ライター。1986年生まれ、神奈川県鎌倉市出身。海よりも山派。旅雑誌、ネイチャーグラフ誌、メンズライフスタイルメディアを経て、フリーランスに。現在はキャンプ、登山、落語、塊根植物に夢中。
2023〜24年にかけてアンテナショップは注目の年を迎えている。
ニューオープンやリニューアルを果たした店舗が次々と登場し、
ローカルの魅力を打ち出した多彩なコンテンツが盛りだくさんだ。
行ったことない地域でも、縁もゆかりもない県でも、
そこを訪れればきっと何か新しい発見があるはず。
今回は、そんなニューオープン・リニューアルしたアンテナショップと、
独自の進化を遂げた“特化型”アンテナショップを取り上げた。
4. 大分県|坐来大分@有楽町
まずは2023年、2024年にニューオープン・リニューアルした
アンテナショップのなかから注目の店舗をピックアップ。
新規オープンのショップでは、陳列されている商品だけでなく、
県産材を使っていたり、伝統技術で手がけた什器を設置していたり、
意匠を凝らした内装も見どころのひとつだ。
また、お酒の試飲コーナーやギャラリースペース、レストランを併設する店舗など、
ローカルを「体験」できるからくりが盛り込まれているので、
そんなところに注目しながらアンテナショップめぐりを楽しんでほしい。
2024年8月8日、銀座5丁目のすずらん通りにグランドオープンしたのが
〈銀座・新潟情報館 THE NIIGATA〉。
9階建てのビルのうち、地下1階と地上1〜3階と8階の全5フロアからなり、
店内で握った魚沼産コシヒカリのおにぎりを提供する〈THE ONIGIRI・Ya〉や、
30種類以上の日本酒を試飲できる(1500円で5杯)
〈新潟清酒・THE SAKE Stand〉を展開している。
8階には、ものづくりのまち・新潟県燕三条を本拠地とするイタリア料理店
〈Tsubamesanjo Bit〉が〈THE NIIGATA Bit GINZA〉として出店している。
米どころ・新潟なのにイタリアン?
と思うかもしれないが、お米はしっかりと新潟産を使用。
イタリアンのコースのなかで際立つ新潟米を楽しめるでしょう。
そして、食材だけではなく、お酒やカトラリー、うつわにいたるまで
新潟の商品で統一するというこだわりも。
ここまで「新潟一色」に統一された空間は、現地でも体験できない、
〈THE NIIGATA〉だからこそ実現できた空間なのかもしれない。
関連記事:〈THE NIIGATA〉がグランドオープン!進化した新潟の玄関口が銀座にやってきた(新潟のつかいかた)
information
【銀座・新潟情報館 THE NIIGATA】
住所:東京都中央区銀座5-6-7 SANWAすずらんBldg. B1〜3階・8階
TEL:
ショップ 03-6280-6551
にいがた暮らし・しごと支援センター 03-6281-9256
営業時間:
ショップ 10:30〜19:30 ※新潟清酒・THE SAKE Standは12:00~19:00
にいがた暮らし・しごと支援センター 10:30〜18:30
定休日:
ショップ 年始
にいがた暮らし・しごと支援センター 火曜・祝日、年末年始
WEB:THE NIIGATA
Instagram:@the_niigata
information
【THE NIIGATA Bit GINZA】
TEL:03-6228-5636
営業時間:ランチ11:30〜14:00(L.O.13:30) ※土・日曜、祝日は〜15:00(L.O.14:30)
ディナー18:00〜22:00(L.O.21:00)
定休日:月曜、不定休
座席数:46
Instagram:@bit_ginza
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2024年3月に銀座から八重洲に移転オープンしたのが、
石川県のアンテナショップ〈八重洲いしかわテラス〉。
店内に入るとまず出迎えてくれるのが、和傘をモチーフにした天井の装飾。
石川県の伝統工芸のひとつである〈金沢和傘〉が表現され、
内装は県産のスギや珪藻土で設えるなど、
店内には石川らしさが散りばめられている。
また、全国屈指のアイスの消費量を誇る石川県自慢のご当地アイスや、
伝統工芸品である九谷焼なども多数取りそろえ、
石川県外では〈八重洲いしかわテラス〉でしか買えない商品も。
石川・加賀藩では茶道・和菓子文化が盛んだったことから店内に〈茶バル〉を設置。
加賀棒茶や金沢を代表する和菓子のひとつ〈じろ飴〉を練りこんだソフトクリームのほか、
季節に合わせた日本酒の飲み比べセットも提供している。
〈八重洲いしかわテラス〉を訪れるたびに、
〈茶バル〉で季節ごとに入荷されるメニューを味わって四季の移ろいを感じる、
そんな楽しみ方もできそうだ。
イベントスペースでは、石川県が14年の歳月を費やして育成した、
オリジナル品種のブドウ〈ルビーロマン〉などの県のブランド食材の試食会や、
能楽講座などの文化発信イベントも開催されているので、
東京に居ながらにして石川県を体験できる。
そして、いよいよ石川県を訪れようと思ったら、観光コンシェルジュの出番。
案内カウンターには石川県を知りつくした旅の専門家が常駐しているので、
自分好みの旅にアレンジしてくれるだろう。
information
【八重洲いしかわテラス】
住所:東京都中央区八重洲2-1-8 八重洲Kビル1階
TEL:
ショップ 03-6225-2177
観光コンシェルジュ 070-4417-0686
営業時間:
ショップ 10:30~20:00
観光コンシェルジュ 10:30〜19:30
WEB:八重洲いしかわテラス
Instagram:@ishikawa_antenna
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新しいアンテナショップが誕生しているのは、東京だけではない。
東京では銀座、有楽町エリアから新橋、日本橋あたりまで
「アンテナショップ密集地帯」が広がっているが、
近年、大阪にも多くのアンテナショップが進出している。
なかでも2024年7月31日に開業した〈KITTE大阪〉には、
富山・石川・福井情報発信拠点〈HOKURIKU+〉のほかに
沖縄県、広島県、宮崎県など複数のアンテナショップがオープンし、
大阪の「アンテナショップ密集地帯」として注目を集めている。
〈HOKURIKU+〉の強みは、北陸3県の魅力を一度に味わえること。
似た文化圏でありながら少しずつ異なる、その違いを楽しもう。
例えば、ご当地寿司なら
富山県のます寿し、石川県の笹寿司、福井県の焼き鯖寿司と、
特設コーナーが設けられている。
ほかにも、日本屈指の酒どころ・北陸3県の名酒が楽しめる〈HOKURIKU+BAR〉は、
北陸の日本酒を取りそろえ、1杯300円から各酒蔵の日本酒を飲み比べできる。
information
【富山・石川・福井情報発信拠点「HOKURIKU+」】
住所:大阪府大阪市北区梅田3-2-2 KITTE大阪2階
TEL:06-6690-8813
営業時間:11:00〜20:00 ※スタンディングバーは11:00〜20:00 (L.O.19:30)
定休日:不定休(年末年始を除く)
WEB:HOKURIKU+
Instagram:@hokuriku_plus
Page 4
ここから紹介するのは、独自の進化を遂げた“特化型”アンテナショップ。
物販や観光案内にとどまらず、
各自治体が工夫を凝らした業態の店舗を展開している。
これらは一見アンテナショップには見えないかもしれないが、
お店を出るときにはきっとその県のファンになっているはず!
レストラン、ギャラリー、ワインショップと、
バラエティあふれるアンテナショップを見ていこう。
2006年にオープンした〈坐来大分〉はレストラン型店舗の先駆け的存在だ
(2014年にリニューアル。2021年に現在の数寄屋橋に移転)。
アンテナショップの役割が特産品の販売や観光案内が主体だった当時、
レストランを中心に据えた業態は、
その後のアンテナショップの変遷に大きな影響を与えた。
レストランに特化した理由は、大分県の食の多様性を体感してもらい、
東京に居ながらにして大分にいるような時間を提供するためだ。
洗練された空間を生み出しているのは、
大分特産の孟宗竹のファサードや、臼杵石、日田杉のパネルなど大分の県産材。
小鹿田(おんた)焼や臼杵焼のうつわが並べられ、
大分の多彩な料理が盛りつけられる。
メニューは関あじや関さば、臼杵ふぐなど大分県の特産品で構成され、
“語り部”と呼ばれるスタッフが料理をサーブするだけでなく、
食材、文化、風土について大いに語る。
東京・有楽町で体験する非日常の空間は、実際に“大分を訪れた記憶”として残るに違いない。
information
【坐来大分】
住所:東京都千代田区有楽町2-2-3 ヒューリックスクエア東京3階
TEL:03-6264-6650
営業時間:
ランチ 11:30~14:00(L.O.13:30)
ディナー 17:00~22:00(L.O.21:30)
ギャラリー(物販)11:30~22:00
定休日:土・日曜・祝日、年末年始、お盆
WEB:坐来大分
Instagram:@zaraioita
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レストランとホステル、マルシェの複合施設を展開するのが
徳島県のアンテナショップ〈ターンテーブル〉だ。
渋谷区神泉の「奥渋谷」に店を構え、
あえて大々的に徳島県の看板は掲げていない。
宿泊施設は2階から5階まで、
シングルルーム、ツインルーム、ドミトリールームを完備し、
徳島県産木材や、阿波の名産品・阿波藍をモチーフにしたスタイリッシュな内装が
それとなく徳島県の雰囲気を醸し出している。
ランチタイムは、徳島県の特産品〈阿波尾鶏(あわおどり)〉や、
県産の鮮魚を使った海鮮丼などをメインに、
県直送の新鮮野菜を使用したサラダビュッフェを提供。
平日の昼時は近隣オフィスのランチ需要に応え、多くの利用者で賑わっている。
一方、夜になると渋谷中心部にはない閑静な雰囲気に包まれる「奥渋谷」。
駅周辺の喧騒を離れ、徳島県の食と文化にゆっくりと触れ合える静かな時間を過ごせそうだ。
information
【ターンテーブル】
住所:東京都渋谷区神泉町10-3
TEL:
レストラン 03-3461-7722
ホステル 03-3461-7733
営業時間:
レストラン ランチ 11:30~15:00(L.O.14:30)、ディナー 18:00~23:00(L.O.22:30)
ホステル チェックイン 15:00~22:00、チェックアウト ~10:00
マルシェ 11:30~19:30
定休日:
レストラン 日曜・祝日
ホステル なし
マルシェ 不定休
WEB:ターンテーブル
Instagram:@turntable_tokushima
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福井県のアンテナショップ〈ふくい食の國291〉の地下1階には、
越前漆器や越前焼き、越前和紙など
福井県自慢の7つの伝統工芸品がディスプレイされている。
伝統工芸品をスタイリッシュにアレンジした商品が
セレクトショップのように陳列され、都内随一のラインナップを誇る。
伝統工芸だけでなく、1階フロアでは食品や地酒、加工品をメインに取り扱っており、
内装は蔵の中がモチーフだ。正面左側が土の蔵、右側が石の蔵をイメージして設計され、
福井市足羽(あすわ)山の笏谷(しゃくだに)石、越前瓦など
県産材がふんだんに使われている。
そのほかにも飲食スペース〈越前若狭 食と酒 福とほまれ〉が併設され、
越前グルメも味わうことができる。
蔵をイメージした土壁の店内では、福井の地酒をはじめ、越前おろしそばや
日本海の海の幸が、越前漆器や越前焼で提供されている。
福井の蔵のなかで、福井の食を福井のうつわで味わう、
そんな福井づくしの体験が都内でできるアンテナショップだ。
information
【ふくい食の國291】
住所:東京都中央区銀座1-5-8 Ginza Willow Avenue BLDG 1階・地下1階
TEL:03-5159-4291
営業時間:
ショップ 10:30〜19:00
イートイン 平日11:00〜15:00(L.O.14:30)、17:00-21:00 (L.O.20:00)土日祝 11:00〜20:00(L.O.19:00)
定休日:不定休(年末年始を除く)
WEB:ふくい食の國 291
Instagram:@fukui_antennashop291
Page 7
ワイン県・山梨が手がけるアンテナショップ〈Cave de ワイン県やまなし〉は、
その名の通り、ワインに特化した店舗。
その数、約300種(日本酒なども含む)。店内にはワインがずらりと並ぶ。
2020年に2人目のワイン県副知事に就任した田崎真也さんが監修、運営を行う
ショップ&レストランだ(ちなみに1人目は林真理子さん)。
店舗にはソムリエの資格をもつスタッフが常駐しているので、
好みを伝えれば、数あるワインのなかからピッタリの1本を紹介してくれるはず。
併設するレストランのコンセプトもおもしろい。
山梨県の姉妹都市である中国の四川省と、
ブルゴーニュ地域が含まれるソーヌ・エ・ロワール県の伝統料理を、
山梨県の食材を使って表現している。
メニューに並ぶのは、花椒など中華スパイスで味つけした一品や、
ほうとうを使ったカルボナーラなど、個性豊かなメニューが食欲をそそる。
また、物販スペースでは、ワインだけでなく日本酒や地ビール、
ほうとう、吉田のうどん、桔梗信玄餅など山梨グルメを取りそろえている。
information
【Cave de ワイン県やまなし】
住所:東京都中央区日本橋2-3-4 日本橋プラザビル1F
TEL:
ショップ 03-3241-3776
レストラン 03-3527-9185
営業時間:
ショップ 平日11:00~20:00 土日祝11:00~17:00
レストラン 平日17:00~22:30(最終入店 21:00)
定休日:
ショップ 年中無休(年末年始除く)
レストラン 土日祝、年末年始
WEB:Cave de ワイン県やまなし
Instagram:@cavedewineken
今回、取り上げたアンテナショップはほんの一部。
銀座には長野県が2024年秋にリニューアルオープンするなど、
まだまだ新店オープンの動向も見逃せない。
また、宮崎県は香港でアンテナショップをオープンするなど、新しい動きも見られたり、
都道府県ではなく、市町村単位でもアンテナショップが開店しており、
今後も思いがけない“特化型”アンテナショップの誕生にも期待できそうだ。
東京で体験できるローカル「アンテナショップ」は、日々進化している。
そして、現地を訪れなくてもきっと何か新しい出合いをもたらしてくれるはず。
長期休暇を取らなくても、身近で体験できる東京のローカルに会いに行こう。
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