〈久原本家〉創業の地・久山町で 農業を通じて未来を耕す、 〈里山サポリ〉の循環の輪
未来へ向けて事業を永続できるように
城戸さんは
「物事にはフェーズがあります。今はまだ、認知を広めている段階です。
次のフェーズでしっかり利益を出して、
事業を永続できるようにしていくのが自分の役割だと思っています。
目下、飲食分野については製造業へのシフトを視野に入れた準備を進めています」と
語気を強めた。

〈御料理 茅乃舎〉には福岡のみならず、全国からお客がやって来る。
城戸さんには久山に根づき、
全国区の人気を誇る〈御料理 茅乃舎〉という先駆者が身近にある。
「茅乃舎さんは飲食店としてどんどん店舗を増やすのではなく、
その自慢のだしを製造販売することで、一気に突き抜けていったと思うんです。
茅乃舎さんくらいの知名度、そしておいしさがあれば、
全国に店舗展開することは決して難しいことではないと思うんですよ。
でも、それをあえてせず、だしを販売するという方法を選ばれています」

茅乃舎のだしが生まれたきっかけになった名物料理「十穀鍋」。
こうした製造業を見越した動きのなかで、
今まさに城戸さんが着手しているのが“倉庫”づくりだ。
「自宅兼倉庫。そんな場所をつくります。
300坪の土地をこれから購入、2024年中に完成させる見通しです。
この倉庫は野菜の作業場・加工場、苗のストック場所などの役割を担えるようにして、
さらに敷地にはキッチンカーの保管場所を備え、
今まで離れ離れになっていたものを1か所に集中させることを考えています。
野菜の保存の過程まで倉庫で見学できるようにし、
ほかでは見られない風景をつくり出したいですね」

新しい倉庫では、キッチンカーで焼き上げるピッツァのほかに惣菜類も用意するという。野菜に囲まれて、野菜を食べる。まさにほかにないシチュエーションだ。
ルールは変わった。どんどん真似されたい。
自身を泳ぎをやめてしまうと死んでしまう“マグロ”だという城戸さん。
実際、次から次へと時代の先を見据えた手を打ち続ける行動を見ていると
心から「そうだな」と実感させられる。
「真似してほしいんですよね。僕のやっていることで取り入れられそうなら、
どんどんパクってほしい。真似されやすいかを念頭におきつつ、すべてを考えています」
あっけらかんと、そう話す城戸さん。。
真似されるという言葉だけを聞くと、ネガティブなイメージで捉えてしまう。
「誰かに真似されること。
それが今の時代におけるひとつの勝ちパターンになっています。
例えば、TikTok。いち早くおもしろい、ヤバいモノを見つけ出して、
それを模倣してやってみる、そして拡散する。
そうやって真似される人が今、注目を集めていますから」

日曜だけ営業する無人直売所〈里山マルシェ〉。
城戸さんが農業の次に手がけた野菜の無人直売がいい例だ。
「仮に久山町で野菜の直売所をつくって集客しようとするなら、
福岡一、ひいては九州一、センスがいい店にしないといけない。
建築にも手は抜かないとなったら莫大な初期投資が必要です。
だったら日本一、センスのいい無人販売所ならできるという発想に切り替えました。
これなら初期投資はグンと抑えられますし、なおかつ、真似してもらえると思ったんです」

キッキリッキーは朝しか営業しないため、11:30から営業する〈いすず庵〉とはバッティングしない。間借り営業ならぬ、“シェア開業”だ
朝食イタリアン〈キッキリッキー〉にしても、
単独で店舗を構えると初期投資を“丸かぶり”しなければならないが、
〈蕎麦処 鯨家 いすず庵〉とシェアすることで費用を半分に抑えた。
「もし果樹園の方だったら、お店を別業態の方とシェアして、
例えばフルーツパフェの店を始めたらいい。
そうやって応用、アレンジしながら、どんどん真似してもらえればうれしいですね」
ひと呼吸して、城戸さんはこう続けた。
「昔だったら誰にも真似できないことをやっていく、
というのが一種の勝ち方だったと思うんですよ。でも、今は違う。
誰にでも真似できるようなスタイルを提案できる人が生き残っていく。
本当に時代が変わり、ルールも変わったんだと感じています。
だからまずは僕らがその新しいルールにシフトし、
率先して行動を起こしていきたい」

野菜づくりは土づくりだという城戸さん。どんな仕事においても、通じるものがある。
そうあるために、城戸さんの決断は早い。行動も早い。
その分、人一倍失敗もしているという。だが、失敗の量こそが、城戸さんの強さだ。
「とにかくやってみて、ダメなら何がダメだったのか考える」
徹底したトライアンドエラーの繰り返しによって磨き抜かれた城戸さんの言葉は、強い。
ひとつひとつの言葉にパワーが備わっていると感じる。
城戸さんが話す言葉には、すでにやったことの結果か、
これから実行に移す決定事項しかない。揺るぎないものだけで構築されているのだ。
一見すると、いろんなことに手を出しているように見えるのに、
実は見えない一本の線によってしっかりと結ばれている。
その行動には無駄がない。
失敗は無駄ではないのか?
その問いは城戸さんにとって一番の愚問だ。

城戸さんは明日、何を見ているのか。これからも目が離せそうにない。
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里山サポリ
Instagram:@satoyama_sapori
キッキリッキー
住所:福岡県糟屋郡久山町猪野548-1
営業時間:7:00〜8:30、8:00〜9:30、9:00〜10:30の3部制
定休日:火曜、水曜、第2・第4月曜
Instagram:@chicchirichi_hisayama
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*価格はすべて税込です。

