〈久原本家〉創業の地・久山町で 農業を通じて未来を耕す、 〈里山サポリ〉の循環の輪
久山だからできる循環型農業のかたち
城戸さんは何よりも価値観を重視する。それは野菜づくりにおいても同様だ。
実は就農当初から有機・無農薬栽培といった
オーガニックな野菜づくりに取り組んでいるが、
そのこと自体は大々的に謳ってきていない。

農作業の手を止めて、熱心に野菜づくりについて教えてくれる城戸さん。
「自分のなかの大前提として、先駆けの農家さんもほかにたくさんいらっしゃるので、
そこはアピールしなくてもいいかな、と。
それよりも、この久山でイタリア野菜に特化し、100種以上を育てているというほうが、
インパクトがあるし、オリジナリティを表現できるなと思ったんです」
もともと飲食業で働いてきた城戸さん曰く、
多彩なイタリア野菜があれば、
これまでつくりたくてもつくれれなかった料理ができるようになるのだという。

城戸さんのほか、野菜づくりに従事するスタッフはふたり。少数精鋭で近隣に点在する30か所もの畑を管理する。
「イタリア料理といっても、北と南でざっくり分けてもまったく異なります。
日本でもそうですよね。北海道と沖縄では食文化が全然違いますから。
ナポリ料理、ローマ料理というように、地方ごとに郷土料理が存在していて、
それを日本でつくろうとしたとき、
キーになるイタリア野菜がないから再現できない、というケースが実はとても多いんです。
だから、そういう料理人の思いに寄り添い、
ほかでは手に入らない野菜を育てたいと思ってきました。
そこに自分らしさ、僕だから提案できる価値観があると思っています」

城戸さんの根底にあるのは、先述のとおり新しい価値観の提案であり、
加えて言うと差別化だ。
野菜づくりにおいては、創業時から有機・無農薬栽培をベースに、
さらに付加価値が添えられないかと考え、その結果、”循環型農業”を目指すことにした。

茅乃舎のだしガラを配合した肥料を撒く城戸さん。
「どうすれば久山の地で循環のサイクルを生み出せるかと考えたとき、
真っ先に頭に浮かんだのが、ご近所の久原本家さんの存在でした。
食品廃棄物を分けていただき、だしガラを肥料に取り入れた野菜づくりが実現しました。
こうやって小さな農家に少量だけを分けるというのは、
逆に難しいお話だったと思うんです。感謝ばかりですね」

茅乃舎のだしを製造する際にでる削りカスの焼きアゴ、鰹節を混ぜた肥料。
ちなみに、城戸さんが育てたイタリア野菜は、
茅乃舎の料理にも使われることがあるという。
茅乃舎にとっても地元・久山の食材を紹介するいい機会になり、お客からの評判も上々だ。

〈御料理 茅乃舎〉で提供された里山サポリのイタリア野菜を使ったひと皿。サラダ野菜だけでも6種が盛りつけられていて見た目にも華やか。