連載
posted:2023.11.30 from:富山県魚津市 genre:旅行 / 食・グルメ / 買い物・お取り寄せ
PR 富山県
〈 この連載・企画は… 〉
日本のローカルにはおいしいものがたくさん。
地元で愛されるお店から、お取り寄せできる食材まで、その味わい方はいろいろ。
心をこめてつくる生産者や料理する人、それらを届ける人など全国のローカルフードのストーリーをお届けします。
writer profile
Ai Hanazawa
花沢亜衣
はなざわ・あい●編集者/ライター/コンテンツディレクター。2023年に独立し、WEB、雑誌を中心に食、ライフスタイルに関するコンテンツの制作に携わる。三度の飯より食べることが好き。明るいうちのアペロがあればしあわせ。
Instagram:@aipon79
photographer profile
Hiromi Kurokawa
黒川ひろみ
くろかわ・ひろみ●フォトグラファー。札幌出身。ライフスタイルを中心に、雑誌やwebなどで活動中。自然と調和した人の暮らしや文化に興味があり、自身で撮影の旅に出かける。旅先でおいしい地酒をいただくことが好き。
https://hiromikurokawa.com
どこか懐かしく、愛らしいデザインのクッキー缶。
蓋を開けた瞬間にチーズの香りがふわりと漂い、
きれいに整列したクッキーがぴっちりと埋め尽くす。
この見た目も中身も、心ときめくクッキー缶〈Cheesy Poche(チージィーポッシュ)〉は、
2021年秋に誕生して以来、オンラインやイベントで販売すれば、
すぐさま完売してしまうほど、たちまち人気となった。
そんなかわいさと、おいしさを兼ね備えた話題のクッキー缶が、
実は富山県東部に位置する自然豊かな海沿いのまち・魚津で
つくられていることは意外と知られていない。
人と人、人とお菓子、お菓子と生産者といった、
さまざまなかたちの結びつきを大切にする
富山の洋菓子専門工房〈ZAXFOX〉のオーナー・芦崎貴さんが、
クリエイティブユニット〈KIGI〉と出会い、
お菓子研究家の福田里香さんをレシピ監修に迎えて、約1年半かけて、完成したという。
(写真左から)〈チージィーポッシュ〉のクリエイティブディレクションとロゴタイプを担当するKIGI・植原亮輔さんと、アートディレクションとイラストレーションを担当する渡邉良重さん、レシピ監修を手がける福田里香さん。
今年の秋で丸2周年を迎えた〈チージィーポッシュ〉は、
どのようにして生まれたのか。
クッキー缶の誕生からこれまでの歩みを知る、KIGIの植原さんと渡邉さん、
福田さんに誕生秘話やその思いを聞いた。
「ZAXFOXの芦崎さんからお菓子のリニューアルを相談したいという
電話をもらったのが最初のきっかけです。
良重さんと一緒に魚津を訪問し、工場をいくつか見せてもらったのですが、
工場設備もしっかりしていて、真摯なお菓子づくりをしているなって。
そこで、芦崎さんの熱い思いをお聞きし、おもしろいことできそうだなと思ったんです。
もともとは別のお菓子のリニューアルの相談でしたが、
新しいお菓子も一緒につくれたらいいなと。
実はもうそのときには福田さんにお声がけできないだろうかと、
頭のなかで浮かんでいたんです」(植原亮輔さん)
「福田さんには、以前『OFS.TOKYO(オーエフエスドットトーキョー)』で、
ワークショップをやってもらったり、かき氷をつくってもらったことがあるのですが、
福田さんの生み出すお菓子はどれもおしゃれで、本当においしくて。
ずっとご一緒したいと思っていたんです」(渡邉良重さん)
KIGIの植原さん、渡邉さんがパッケージデザインを手がけることになり、
おふたりの声がけによって、福田さんも製作チームに加わることに。
「最初はまさか『KIGIさんと組めるなんて!』と、びっくり。
なかなかない機会だなと思って、『ぜひ!』とお受けしました。
ZAXFOXさんのお菓子を送ってもらって自分なりに分析したり、
芦崎さんの思いを聞いたりしているうちに、
これまでにないものを届けたいという気持ちが大きくなっていきましたね」(福田里香さん)
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相思相愛の関係からはじまったコラボレーション。
もともとは既存商品のリテイクがきっかけだったが、
実際に富山へ赴き、新たなお菓子づくりがはじまった。
ZAXFOXの強みを突き詰める方向で、まず注目したのが“チーズ菓子”だった。
「ZAXFOXが展開する『サクラスイーツ』の看板商品といえば、チーズケーキ。
だったら、その技術や強みを活かしたお菓子づくりをしようと。
チーズって、普段甘いものをあまり食べない人でも食べやすいし、
コーヒーや紅茶だけでなく、ワインとか、お酒にも合う。
幅広く楽しんでいただけるのもいいなと思ったんです」(植原亮輔さん)
こうして誕生したのが、厳選された素材とシンプルな製法で
チーズの旨みをぎゅっと詰め込んだクッキー缶〈チージィーポッシュ〉だ。
思わず、声に出してつぶやきたくなるかわいい響きのネーミングは、
植原さんが「Cheesy(チージィー)」を、
福田さんがフランス語で“絞り出しクッキー”を意味する
「Poche(ポッシュ)」の2つの言葉を組み合わせて名付けられたそう。
黄色の缶に入ったメレンゲ入りのオリジナル〈チージィーポッシュ〉は、秋から初夏(10月〜5月頃)の販売。空色の缶に入ったカントゥッチーニ入りの〈チージィーポッシュ ソライロカン〉は、梅雨入りから晩夏(6月〜9月頃)の販売。
羊のミルクを原料とした“イタリア最古のチーズ”といわれている
「ペコリーノ・ロマーノDOP」(地域や伝統に根ざした品質のすぐれた製品が対象となる
ヨーロッパの品質認証マーク付きのチーズ)を使用し、
「Poche(ポッシュ)」の名前のとおり、絞り出しにも大きなこだわりが。
「クッキー缶をいろいろとリサーチしてみたのですが、
味や焼き方の異なるクッキーを複数種類詰め合わせたアソートが多いんですよね。
いろいろな種類が入っているけど、味と香りの強いチーズは入ってないことがほとんど。
そこで、チーズクッキーを主役にすれば、
今までにないものになるんじゃないかなって。焼き加減にもこだわって、
引き出されるチーズの風味を楽しんでもらえたらなと」(福田里香さん)
黄色缶のふたを開けると、繊細なラインの入ったクッキーがきれいに整列しており、
中央にはその隙間を埋め尽くす小さくてかわいらしいメレンゲが。
レモン風味なので、チーズのじゃまをせず、お口直しにも。
クッキーの焼き具合によって引き出される、それぞれの味わいを楽しめる。
缶のなかでクッキーが崩れないよう仕切るための紙カップのデザインにもこだわった。
デザインと“おいしい”が融合した、ひと缶になっているのだ。
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シンプルな製法ながらも、こだわりはたくさん。
〈チージィーポッシュ〉のクッキーには、同じ絞り出しでも、
3段重ねと2段重ねがあり、それぞれ引き出される風味や歯ごたえが異なる。
そのおいしさの秘密には、
実はクッキー缶のデザインにも大きく関わっているのだとか。
「缶を穴あきチーズに見立てて、
花のなかにネズミが隠れているような遊び心を加えて、
わくわくした気持ちやときめきをデザインでも表現しています。
缶のなかにクッキーをうまくおさめるために……と、
福田さんがいろいろと考えてくださいました。
最初どうしても高さが入らなかったということで、3段重ねと、
2段重ねに絞った生地のクッキーを組み合わせることにしたんです」(渡邉良重さん)
「クッキー缶におさめることを最優先するのであれば、
『缶のサイズを大きくしてください』という考えもあるかもしれないですが、
こうしてKIGIさんとタッグを組む以上、大きさも重要なデザイン要素。
なんとかこのサイズにおさめたいと思って。
その結果、お菓子の仕上がりとしても、いい方向にいったなと思います。
クッキー缶の魅力って、アイドルと通ずるものがあるんです。
〈チージィーポッシュ〉はグループ名で、パッケージはステージ、包装紙は衣装。
KIGIさんがつくり上げるステージに、どんなクッキーがあったら、
ワクワクしたり、ときめくのかなって」(福田さん)
3段重ねに絞った生地は生のペコリーノの風味を大切にしたやさしい焼き加減、2段重ねの生地は芯までじっくり焼き上げ、焦げたチーズの旨みを存分に楽しめるよう工夫されている。
「チーズはそのままで食べるのと、
焦げたあとでは味わいも違って、どっちもおいしい。
同じ生地でも、焼き加減が違う2つのクッキーの食べ比べできるのはおもしろいなって。
KIGIさんと今までにないものをつくりたいという思いから、
意外なアプローチで実現できました」(福田里香さん)
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当初はオンラインショップでの販売とイベントでの限定販売のみだったが、
2023年5月には、魚津のZAXFOXの工房の一角で直接購入できる
〈Cheesy Sweets Counter(チージィースイーツカウンター)〉をオープン。
富山観光の目的地として足を運ぶ人も増えつつある。
「これまで〈チージィーポッシュ〉の直営店はなく、
ECをのぞくと商業施設やセレクトショップなどでのイベント販売が中心だったんです。
コロナ渦に訪問したときに、
工房脇を一部開放して直接売っていて、その雰囲気がとてもよかったので、
本格的に販売コーナーをつくったらどうだろうという話になったんです」(植原亮輔さん)
「いつかお店をつくりたい」と相談を受けたときに、福田さんが色鉛筆で描いたイメージイラスト。もともとあった扉を改装して小さなカウンター式のショップに。(イラスト提供:福田里香)
「チーズの穴みたいに、小さな窓のあるカウンターがかわいいですよね。
クッキー缶だけでなく、店舗限定のカップサイズの「ミニョン」も販売しています。
オンライン販売からスタートしたこともあり、
富山県内以外にも、東京などでの注目度が高いお菓子でしたが、
2周年のこのタイミングで店舗販売をスタートすることができたので、
これから少しずつ富山の人たちにも知ってもらえるとうれしいです」(渡邉良重さん)
カウンター限定で販売されている「ミニョン」は、チージィーポッシュ、コゲ、レア、レモンメレンゲの全4種類。
さらに今年の秋で2周年を迎えた〈チージィーポッシュ〉から
新たなクッキー缶「コゲカン」が誕生。
香ばしい焦茶色のクッキーが引き立つ、華やかなピンク色のデザインに。
実際に試食しているときKIGIのスタッフの方から、
焦げたチーズの旨みを感じるコゲ味が人気だったことで商品化につながったのだそう。
今後は3つのクッキー缶が季節やイベントごとに登場していく予定だ。
黄色の缶にメレンゲ入りの〈チージィーポッシュ〉、空色の缶にカントゥッチーニ(アーモンド風味のビスコッティ)入りの缶に〈チージィーポッシュ ソライロカン〉、そして今回新たに仲間入りしたピンク色の缶〈チージィーポッシュコゲカン〉(各3650円)。
KIGIと福田さんのクリエイティビティ、そしてZAXFOXの技術と思いから生まれ、
ますます広がりを見せている、魚津生まれのクッキー缶。
誕生から2周年を迎えたいま、製作に携わる3人にその思いを教えてもらった。
「実は〈チージィーポッシュ〉は一つの商品の名前。
〈Cheesy Sweets(チージィースイーツ)〉という
シリーズの一部でもあるんです。こうしてさらに広がって、
富山県内はもちろん、全国でも定着していくことでもっと新しいこともできるはず。
今年で2周年を迎えて、
さらに周りをザワつかせていきたいですよね(笑)」(植原亮輔さん)
「食べ終わったあとも取っておいて、小物入れとか日常でも使ってもらいながら、
誰かの記憶に残るお土産として親しんでいただけたらうれしいです。
オリジナルの黄色缶、夏季限定のソライロカン、新しく登場するコゲカン。
3色のパッケージも含めて楽しんでもらえたら」(渡邉さん)
「レシピをつくるなかで、新しいことに挑戦しようと、
やる気や思いをもったZAXFOXのスタッフのみなさんが、
実際にそれを実現してくださって。たくさん試行錯誤しながら、
素材や製法にこだわりながら、チーズ菓子のおいしさを突き詰めた、
今までにないクッキー缶。直接お客さんにお渡しできる場もできたので、
“富山の洋菓子のお土産”と聞いたときに、〈チージィーポッシュ〉が頭のなかに
パッと思い浮かぶような存在になれたらいいですね」(福田里香さん)
こだわりのクッキーとときめきが、たっぷり詰まっている〈チージィーポッシュ〉。
「いつか、お菓子の力で国境を越えて
人と人が結びつくようなブランドをつくりたい」という
富山にある洋菓子専門工房・ZAXFOXのオーナーの思いと、
クリエイションの力で踏み出した、さらなる一歩。
誕生から丸2年、魚津で直接購入できるカウンターが生まれ、
富山を代表する新名物として、
多くの人に親しまれる存在になる日もそう遠くはなさそうだ。
information
Cheesy Sweets Counter(チージィースイーツカウンター)
address:富山県魚津市吉島63-1
営業時間:月〜金曜10:00〜17:00、土曜9:30〜17:00
定休日:日曜・毎月第2水曜
※チージィースイーツカウンターでは、お一人さま10缶まで購入可能。商品は数量限定のため、営業時間中でも予定数に達し次第、販売終了となります。
Web:公式サイト
Instagram:@cheesy_poche
information
doors TOYAMA
※富山県情報が掲載されている『doors TOYAMA』では、〈チージィーポッシュ〉を展開する魚津の洋菓子専門工房〈ZAXFOX〉オーナー・芦崎貴さんのインタビューを掲載中。こちらもご覧ください。
Web:doors TOYAMA
profile
KIGI
キギ●植原亮輔と渡邉良重により2012年に設立されたクリエイティブユニット。ZAXFOXの〈チージィーポッシュ〉のクリエイティブディレクションを務める。企業やブランドのアートディレクションのほか、自在な発想と表現力でジャンルを横断しながら活動する。東京・池尻でギャラリー&ショップ「OFS.TOKYO」を運営、2022年、アイウェア「TWO FACE」を含む新たなプロダクトレーベル「ASSEMBLEDISASSEMBLE」をスタート。
Web:KIGI
profile
福田里香
ふくだ・りか●菓子研究家。果物の老舗・新宿高野に勤務後独立。雑誌や書籍に寄せるレシピ考案のほか、〈チージィーポッシュ〉のレシピディレクションを務める。著作に『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『民芸お菓子』(Discover Japan)など著書多数。 料理本のほか、映画や漫画などの中で取り上げられる「フード表現」の法則や意味を紐解いた『ゴロツキはいつも食卓を襲う』(太田出版)も話題に。
Instagram:@riccafukuda
*価格はすべて税込です。
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