連載
〈 この連載・企画は… 〉
ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。
writer profile
Akihiro Furuya
古谷昭弘
フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。
credit
photographer:深水敬介
illustrator:横山寛多
音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
宮城県仙台市。
カルロス(以下カル): レコードバーの選曲というと、
主人の嗜好がほぼほぼなんだけど、
ここ〈Bar Gimme Shelter(バー・ギミーシェルター)〉は
ミュージックセレクターが日替わりで、
じっくりお酒が飲めるDJバーって感じなんでしょう。
コロンボ(以下コロ): そうそう、
18人近くいるミュージック・セレクターが回すシステムなんだ。
カル: もちろんスタッフも回すんでしょう。
コロ: お店が温まった20:30〜23:30の時間帯を
ミュージックセレクターが受け持つんだよ。
セレクターには仙台を中心に活動するスカバンド〈ザ・ゴーストシンジケート〉の
セキ・ケンジロウさんがいたり、オーナーの大宮慎司さんがいたりと多士済々。
カル: 週末にやるにはそれなりの鍛錬が必要なのかな?
コロ: 平日にコツコツやって、感じをつかんで、
1~2年経ったら晴れて週末なんだってさ。
カル: オーナーの大宮さんも人気セレクターなんだってね。
コロ: セレクトのツボが老舗レコードバーではあまり聴かない感じで、
それが妙に新鮮なんだよ。
カル: ラウンジ系? それともスカし系?
コロ: 土曜日のプレイリストはこんな感じだったよ。
スタイル・カウンシルの「The Whole Point of No Return」から始まって、「Rollercoaster」Everything But The Girl →
「Rodeo Clowns」G.Love & Special Sauce →
「Echo」Tristan Prettyman →
「It’s Alright, It’s OK」Primal Screamという流れ。
カル: ギターのイントロが心地いい曲しばりかな(笑)。
こんな曲もあったよなー、って感じの趣味のいいセレクトだよね。
コロ: トーンは揃っているものの、年代もまちまち。
キラーチューンでもないけど、まったく耳なじみがない曲でもない。
やれそうでやれない、なかなかの塩梅なんだ。
カル: なるほど、オーナーの選曲が人気なわけだ。
スタカンといえば、ポール・ウェラー、来年、来日公演があって仙台にも行くね。
コロ: 「The Whole Point of No Return」はお店のブログにも、
「大宮さんが生きているうちにライブで聴きたい大好きな曲」って書いてあったけど、
そのオマージュだったのかもよ。
カル: やってくれるといいね。
コロ: 大宮さん、人気なんだけど、お客さんが盛り上がっていても、
時間がくるとやめちゃうのがたまにキズみたいだよ。
「こんなの社長だけですよ」ってスタッフに咎められるんだってさ(笑)。
カル: 淡白? それとも寸止めなのかな。
コロ: 僕らが行ったとき、
大宮さんは〈Ribbon in the sky(リボン・イン・ザ・スカイ)〉という
仙台にあるもう1軒の系列店で回していて、
そのときはシャーデーの「The Sweetest Taboo」とか、
ミスティ・オールドランドの「Got Me a Feeling」をかけていた。
これまた久しぶりに聴いて、かっこよかったなー。
カル: Ribbon in the skyはGimme Shelterとは
対を成すキャラクターのバーなんでしょう。
コロ: Gimme Shelterは仙台の歓楽街の国分町にある
オーセンティックなロックバー。
地下ガレージみたいなので屋号もローリング・ストーンズから拝借。
カル: Ribbon in the skyはスティービー・ワンダーの名バラードからってこと?
コロ: そのとおり。ここはビルの6階にあるので、
夜景も望めるロケーションで、すこぶる艶っぽい。
Gimme Shelterはロック、
Ribbon in the skyはブラックミュージックってことでもないんだけど、
ちょっとは意識しているそうだよ。
カル: 空間構成もそれなりにこだわりがあるんでしょう。
コロ: Gimme Shelterは文字通り、
シェルターに20名は座れる長いカウンターに、
ソファを置いたり、アンディ・ウォーホルのリトグラフがあったりと、
ガレージのアトリエを思わせる妖しい感じ。
一方、Ribbon in the skyはギャラリー風というか、
マイアミのデザインホテルのイメージなんだって。
カル: スピーカーもGimme Shelterは〈ALTEC〉で、
Ribbon in the skyは〈JBL〉というのも、なんともイカしたすみ分けだよね。
どちらもマッキン(マッキントッシュ)のブルーパネルが効いているけど。
コロ: 実はRibbon in the skyのスピーカー、
本当は〈TANNOY〉の「GRF」なんだけど、現在修理中なんだそうだ。
カル: 修理中とはいえ、ちゃんとすみ分けてる、さすが!
コロ: 同じエリアにキャラクターが違った店があるっていうのは、いいもんだよ。
連れや気分によって変えられる。
カル: それにしても、このお店はレコードバーには珍しく、
閉鎖的なところがないみたい。4人くらいで来ても肩身が狭くなさそうだね。
コロ: 静かに飲んでいればノープレッシャーなはずだよ。
カル: 仙台で3軒目っていうのはあるのかな?
コロ: 3軒目は沖縄あたりで考えているんだってさ。
カル: 店名は「Loveland, Island」かな?
コロ: もうちょっと練らない?
information
Bar Gimme Shelter
住所:宮城県仙台市青葉区一番町4-4-1 村上ビルB1
tel:022-797-5234
営業時間:18:00〜2:00
定休日:日曜
【SOUND SYSTEM】
Speaker:ALTEC 828C
Turn Table:DENON DP-500M
Power Amplifer:McIntosh MC2105
Pre Amplifer:McIntosh C28
Mixer:ALLEN & HEATH Xone:43
旅人
コロンボ
音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。
旅人
カルロス
現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。
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