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能登〈湯宿 さか本〉を
撮影した写真集、
新しい出版レーベル〈すなば〉から発売

コロカルニュース

posted:2022.4.28  from:石川県珠洲市  genre:旅行 / アート・デザイン・建築

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

写真集〈湯宿さか本〉撮影:中島光行

トークショー撮影:山科貴広

宿に惚れ込んだ3人が、私的な目線で向き合う

能登の〈湯宿さか本〉を1冊に収めた写真集。
“宿の写真集”と聞いて、想像するものとは少し違うものかもしれません。
そこに写っているのは、使い古されたスポンジ、使い込まれたカゴ、
よく磨かれた黒漆の廊下、そして湯の水面に映るさまざまな情景。

宿の部屋や施設をわかりやすく紹介するような写真は載っていません。
『その時間の差し出し方』という作品名の通り、ページをめくっていくと、
作家たちが宿で感じた時間の流れを追体験できるかのよう。

写真集内のカット。

写真集内のカット。

この写真集は宿とその主人に惚れ込んだ3人が、
私的な目線で向き合ったルポルタージュともいえます。
3人とは写真家の中島光行さん、グラフィックデザイナーの鈴木孝尚さん、
ブックディレクター・編集者の幅允孝さん。
それぞれの頭文字をとって〈すなば〉という出版レーベルを立ち上げ、
その第1弾として自費出版で発売されます。

写真集内のカット。

写真集内のカット。

〈湯宿さか本〉は、1日3組限定の小さな宿。
部屋にはテレビも電話もトイレもなく、冷房もありません。
洗面所は吹きさらしで、冬は薪ストーブと囲炉裏のみ。携帯電話もほとんど通じない。
「好き嫌いを問う宿」といいます。
主人である坂本新一郎さんの美意識が隅々まで行き届いているのです。

幅さんは「独自に流れる時間をたゆたう」と書いています。
さらに、さか本で過ごすと「普段の回転数を脳と体が忘れる」とも。
3人が過ごしたゆったりと、そして力強い時間の流れを写真集から感じられます。

写真集内のカット。

写真集内のカット。

鰤大根でも1冊

驚くことに、この写真集は2冊組みです。
もう1冊は圧巻の『鰤大根的宇宙』。
〈湯宿さか本〉で11月中旬から大晦日の間のみ提供される、鰤大根。

当初は2冊に分ける予定ではなかったようですが、
撮影を進めるうちに、鰤大根だけで1冊をつくることに。
それだけのパワーを持ったさか本の鰤大根は、大根が主役といいます。
大根の上に鰤が乗せられた表紙の写真には、
確かに宇宙空間に鰤が浮いているかのようです。

『鰤大根的宇宙』の表紙。

『鰤大根的宇宙』の表紙。

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坂本さんの野望とは?

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写真展が全国を巡回

写真集内から選ばれたプリントを展示する写真展が全国を巡回予定です。
今年1年をかけて、東京から京都、沖縄まで。

写真展では、具体的なものよりも抽象的な写真を中心に展示されています。
その多くは周辺の自然や温泉の水面の様子。水面に映る木々や反射する光、
お湯からの透過光など、中島さんがここで心を奪われたことがわかります。

金沢で行われたトークショー。写真家の中島光行さん(右)とグラフィックデザイナーの鈴木孝尚(左)。

金沢で行われたトークショー。写真家の中島光行さん(右)とグラフィックデザイナーの鈴木孝尚(左)。

先だって行われた金沢のギャラリー&バー〈ソシ sosi:〉で開催された写真展では、
〈すなば〉の3人のトークショーも開催されました。
写真集を制作しようと思ったきっかけや、
撮影時にさか本で感じたことなどを話してくれました。

〈湯宿さか本〉の主人、坂本新一郎さんも特別に登壇。

〈湯宿さか本〉の主人、坂本新一郎さんも特別に登壇。

金沢でのトークショーにはスペシャルゲストとして
〈湯宿さか本〉の坂本新一郎さんが駆けつけてくれました。
いきなり使い込まれたスポンジの写真が掲載されて驚いたといいますが、
中島さんや幅さんは「掃除が行き届いている宿の象徴である」と応えます。

編集と執筆を担当したブックディレクター・編集者の幅允孝さん。

編集と執筆を担当したブックディレクター・編集者の幅允孝さん。

坂本新一郎さんは建築にも精通していて、
スイスの建築家、Peter Zumthor(ピーター・ズントー)が好きだといいます。
実はその気持ちを汲んだ制作側の愛のある“遊び”が写真集に込められていて、
トークショーでは「写真集をPeter Zumthorに送ろう」という話に。
しかし坂本さんは「いや、直接渡しに行きたい」と。
それを聞いた3人は「同行させてください」と、
早くも次の写真集のネタ(?)ができたようでした。

写真集は600部限定。
早めに手に入れて、お近くで写真展が開催される際には、
〈湯宿さか本〉の魅力の一端を感じてみてください。
そして何より、写真集や写真展で興味を持ったのならば、
是非、能登まで足を運んでみてください。

information

map

『その時間の差し出し方1ー湯宿さか本』

写真:中島光行

文章:幅允孝

装丁:鈴木孝尚

出版:すなば

上製本2冊+ケース入り A4判変形/108ページ/32ページ

Limited edition of 600 copies

価格:11000円(税込)

販売店:Community Store TO SEE

住所:京都府京都市中京区衣棚通竹屋町上ル玉植町244

Web:Community Store TO SEE

※写真展期間中の各会場でも販売

Mail:info@t-o-s-e-e.jp

写真展:

4月29日〜5月10日 三重 SEEDSBED GALLERY(カルティベイト内)

5月14日〜6月12日 愛知 holk store

6月24〜26日 広島 SASIMONOKAGUTAKAHASHI

7月21日〜8月7日 東京 BOOK&SONS

9月(日程未定) 沖縄 LIQUID

10月(日程未定) 岡山 御茶屋跡

11月(日程未定) 京都 Community Store TO SEE

Web:sunaba.publications

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